綺麗なだけじゃない狼谷さん 作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!
カワイイと言われたい……、カワイイって言われたい………。
とんでもない欲が身体の中から湧き上がり、溢れ出してくる。
式守は和泉からどうしてもそう言って貰いたい、と願っている。別に普段言ってくれない~と言う訳ではないが、たまに独り言で【可愛くない……】と言われた事があって、それからと言うモノ、特に言われたい、カワイイと言われたい、と思いだしているのだ。
因みに、和泉はちゃ~んと弁明はしている。
式守の事が大好きな和泉が、彼女を貶す様な事を言う訳がない。ただただ、彼女は格好良い、と思ったから。物凄く格好良いと思ったから、可愛いとは違うな、と言う意味で言ったのだ。
でも、致命的な部分が式守の耳に届いてしまったので、大分拗れちゃったのである。
だから、言われたい、言われたい。猫崎に言われるまでも無く、強く思っている……が。
「式守さん! がんばって!!」
「がんばってくださいっ!」
和泉と御神の応援。
何の画策もしていない純粋な応援を聞いて……その笑顔を見て、八百長などして良いのだろうか?
特に和泉からの応援だ。応えなければならないのではないか。
彼女の中の欲が完全に粉砕された。
結果————
犬束 217
猫崎 187
八満 98
和泉 20
御神 262
狼谷 299
式守 300
「ちょっ、ちょっとまてまて、バケモンか!!? なんだよ、このスコア!!」
「後半3人有りえないんだけどっ!?? 最後はみっちょんと狼谷が突き抜けたけどもっ!??」
ばば~~ん、とフルスコア達成した時はボウリング場に居る皆から歓声が、拍手喝采が湧き起こった。
その中心人物は当然式守と狼谷。
惜しくも、狼谷は最後の1投だけピンに嫌われてしまったようだが、それでも最後の想いを式守に託す、パーフェクトの想いを式守に託して……その結果がコレだ。
「凄い……、パーフェクトゲーム初めてみたよ……。それに狼谷さんも。前よりグッと上手くなってて……負けちゃった」
御神の
その点を2人が最初のゲームで超えてきた。
不思議と悔しさは全くなく、ただただ感服し、尊敬し、憧れる。そんな想いでいっぱいだった。
式守と狼谷はガッチリと握手を交わした。
まさに天上人達の戦い、と言った貫禄だ。
2人はくるり、と振り返る。
その笑みを見て。
「す、すごいっ! 式守さん……フルスコアだ! かっこいい……!」
「和泉さん、手を―――」
「へ? わっ」
式守が言うままに、和泉は両手を前に出して……。
「やりました!」
ぱちんっ、とハイタッチを交わした。
そして、その隣では狼谷が朗らかな笑みを、それでいて満足そうな笑みを浮かべて御神の元へ。
「最後の最後で、ピンに嫌われてしまった。でも、全部出し切れたよ」
「狼谷さん凄かった。凄かったです! ぼくは、最後置いて行かれちゃいましたね……。でも、凄く楽しかったです。ナイスゲーム!」
「うん」
「じゃあ、ぼく達も――――」
「んっ」
式守に倣って、御神は両手を前に出した。
狼谷は目をぱちくりとさせていたが、直ぐにその意図に気付き、横の2人の様にハイタッチを交わすのだった。
「や、マジでアイツら何者だよ……。圧倒的強者のオーラがヤベェ……」
「もはや一般人じゃ入れない領域だよ……」
「ふむ。式守はカワイイよりかっこいいをとったか……。そんで狼谷は狼谷で結構負けず嫌いな所あるんだな」
色々あったけれど、今日は本当に楽しかった……といい笑顔な御神。
そんな御神を見て狼谷も笑う。
正直、烏滸がましい考えかもしれないが、中学時代に出来なかった事を、今沢山取り戻そう、と狼谷は御神に微笑みを向けるのだった。
因みに、結局トップになった式守が、辞退したので、最下位である和泉がおごる、と言うルールは消滅した。
そして続く2ゲーム目も、殆ど式守と狼谷の一騎打ち。それに続く御神、どうにか続く犬束と猫崎、何処か遠い目をしてる八満と和泉。
強者2人の対戦成績? は2勝2敗のイーブンだった。
数日後――――球技大会。
「御神は、どっちするんだっけ?」
「えっと、ぼくもサッカーの方だよ。だから9時45分から、だね。お互い頑張ろうね!」
「おうよ! 目指せ優勝!! だなっ!!」
全学年がぶつかる球技大会は、この学校の名物行事の1つでもある。
基本的に、最上級生である3年が強いのは間違いないが、それでも時たまに1,2年生が下剋上を突きつける事だってあるから、かなり熱い大会だったりするのだ。
「それにしても、御神っちは身長も高いんだし―――、バレーとかバスケの方が有利な気がするんだよね。そう思わない? 狼谷も」
「ん……それはまぁ、確かに。でも、バレーもバスケも女子種目だからムリじゃないかな」
「それは勿論解ってるよー! でも何だか、勿体ないなぁ、って」
御神は、これまでクラスにあまり目立たなかった方だ。
でも、狼谷と付き合いだして―――あの文化祭の時辺りから自分を出す様にしてきた。部活動こそ、マネージャーを務めている様だが、相応に動ける事は知ってるし、元々の身体能力も悪い方じゃない。
だから、絶対に戦力になるだろう、と言うのがスポーツイベントに燃えてる面子の大半の意見だ。
「まてまてまて~~ぃ! サッカーだってタッパ、体格必要だぜぃ! 何せ、御神はキーパーだ! 見事にセーブしまくってくれる事間違いなし!」
「や、そんな期待されても……って、飯塚くん。ぼくキーパーだったの?」
「身長が必要なのは何もバレーやバスケだけじゃない、ってな! だから、羨ましくなんか、無いんだからねっ!!」
「うわぁ……、何も血の涙? まで流さなくても」
「気持ちは分からんでもない! この世にはどうしようもない事は多々あるのだ! 存分に泣くがよい! 涙の数だけ、強くなれぃ!!」
「ちょっと、明菜~~。なに、そのキャラ?」
「昨日のドラマでやってたヤツだよ~」
「あぁ……スポコン系のヤツね」
わちゃわちゃしているけれども、皆が皆、気合入ってるのは解る。
このクラスには満遍なく運動部が揃っているから、それも有るのかもしれない。
勿論、御神も勝ちたいという欲はある。
「狼谷さん。ぼく、応援に行きますからね」
「ありがとう。私も、可能な限り御神くんの所に行くよ。……見守っててくれた方が力になるのは体験済みだから」
マネージャーとして、バレーの練習を、試合をいつも御神に見守られている。
相応に勉強をしているんだろう、的確な事も先生と一緒になって言ってくれてる、と言うのもあるが、やはり好きな人からの声と言うモノは、本当に力になるのだ。
狼谷は、それを実感しているから。
それに今握られてる手も……。
御神の熱が、自分の熱と混ざり合って、より熱く、より強くなれそうだった。
「ちょっと~~。御神っち? ウチらも頑張ってるんだからね~~? 何分の1かくらいは頂戴よー?」
「おアツいの羨ましいよねぇ、それこそ、羨ましくなんか、無いんだからねっ! って、ツンデレ見せても良いくらいに?」
「わわっ、勿論だよ! 皆の事、応援してる! 頑張って!」
そんな中で、皆が皆、御神を求めてる? 様に集まってきた。
「これは、ハーレムと言うヤツでしょうか? つまり、爆破しなければなりませんね」
「ええ、そうですともそうですとも。リア充爆発と言うヤツですとも」
「ええ、ええ、我らも参戦しますよ?」
そして、その周囲を取り囲む様に男子たちが群がっているのだった……。
その後どうなってしまったのか……詳細は省く。
全種目に共通して言える事だが、今大会はトーナメント形式。故に1度でも負ければ即終わりだ。
1度も負けられない、と言うのが良い刺激となり、更に盛り上がりが増す。
それはサッカーも同じ。
「1-1……か。うーん、ぼくが止めれなかったのが凄く悔やむ……」
延長戦があるのかどうかは聞いてない。
でも、試合の序盤、まさかの和泉の不幸属性? が自分にも付与されたとでもいうのか、何本かボールを止める事が出来たのに……結んでいた筈の靴ひもが解けて転倒してしまった。
その結果、隙をつかれて決められてしまったのだ。
一瞬、和泉の顔が頭に過ったのは許して欲しい。
でも、それも仕方がない。
「御神くん!! がんばれーーー!!」
「御神さん!! がんばってーー!!」
「ナイスセーブだぜリク!!」
「良い試合してんじゃん、それに御神っち、めっちゃ止めてる!!」
「がんばれー」
和泉達が応援に来てくれてるから。
折角応援に来てくれてるのに、こけた時に和泉の顔を思い浮かべてしまって申し訳ない……と、御神は思いつつ、大事無かったので、しっかりと靴紐を結び直して集中している。
それ以降、変な事は起きないので不幸属性付与? などは無く、ただの不注意、しっかり結んでなかった事に対する結果だと、御神は自分を戒めた。
「おお……、正直、1回戦は3年生だし、優勝してもおかしくないチームって言われてたから、難しいかも? って思ってたら……」
「うん。凄いね。皆頑張ってる! よっしゃぁ、ラスト5分! 出し切れーーー!!」
「………がんばれ、がんばれ」
狼谷は、ぎゅっと拳を握りしめた。
普段は、自分が試合をする側で、よく声援・応援を背にプレイをしていた側だと言えるだろう。でも、こうやって誰かを、好きな人を全力で応援する事、ハラハラするこの感覚、全てが新鮮で初めてで、心が騒めいた。
御神が倒れた時はより顕著に想い、大丈夫だと知った時の安堵感も半端じゃない。
ここまで頑張ったのだ。ここまで上級生相手に食らい付いてるのだ。最後の最後まで―――――。
「頑張れ! 御神くんっ!! 皆っ!!」
普段の狼谷からは中々考えにくい程の大きな声で、エールを送る。
一瞬、ぎょっとした女子たちだったが、直ぐに良い笑顔になり、続きざまに声を出した。
「ふぅ………」
皆の守りの固さもあって、相手のシュートの威力・精度共に抑えてくれてる。だからこそ御神もここまで粘って獲る事が出来ている。
互いに支え合いながら、互いに高め合いながら、ここまで頑張ってきている。
それに加えてこんなにも声援を貰ったら――――もっともっとやらなきゃならない、と思ってきた。
「ここで決めれたらヒーローだよ。真島くん、飯塚くん」
「へっ! わかってんよ!」
「やってやるって!」
ボールを拾い、御神は真島へとパスを送る。
「(御神は、皆の声援に、……狼谷の声援に応えた。さっきのシュート、あれマジでやられた!? って思ったのに、獲ってみせた。……なら)いい加減、俺らも決めねぇとな! 何本外してんだ! って感じ!?」
「右に同じ!!」
残り時間を確認。
後、数分———程度。
学校の球技大会だ。アディショナルタイム~なんてモノは無い。
だから―――。
「最後の攻撃だ! いっくぜぇぇ!!」
【おおおお!!】
これを最後とし、持てる力を全部ぶつける。
「ボール獲られても許してくれよ! 御神!!」
「倒れるなら前のめり! でやってくる! 御神っち!!」
その後は見事な攻撃だった。
まさしく特攻の二文字。
3年生をたじろかせる程の、残り少ない筈の体力・気力を全て注ぎ込んだ代物。
後の試合の事は考えない、この試合で全て出し切る。
そもそも上級生で、優勝候補筆頭の相手に後の事を考えていたら勝てる訳がないから。
そして、最後の最後———。
「こっのっっ!!」
「ッッ!!」
上級生側にもプライドと言うものは有る。
負けない、負けてたまるか、と気迫には気迫で押し返す様に、相手のボールをインターセプト。
そのまま、クリアしてディフェンスラインが確実に上がってきてるから、そのままシュートを決めてやる! と大きくけり出した。
「カウンターだ!! これで決める!!」
「やっべ! 下がれ―――――!!」
最後の最後、攻撃に全振りしたつもりだったが、だからと言って諦めたりはしない。追いかけようと駆け出したその時。
「オーライ!!」
「な!!?」
「ええ!?」
何故か、センターライン付近までキーパーである御神が上がってきていた。
キーパーが上がってきている事に全く気付いてなかった。
そのまま、御神がボールをトラップすると、蹴りだしてパス。
「カウンターのカウンター、だよ!!」
「いっけーーーー!!!」
それは固いディフェンスに生まれた穴。
御神のパスから攻め入った結果————シュートが決まった。
2-1
優勝候補を下した。
その瞬間、皆は わーーー! と言う大絶叫と共に、御神の方に駆け寄ってダイブするのだった。