綺麗なだけじゃない狼谷さん 作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!
今年もよろしくお願い致します。
全学年対抗球技大会での決勝戦がまさかの両方とも2年生!
これは結構珍しい事だったりもする。
1年と言う差は思いの他大きく、やっぱり1年長く文武両道を心掛けてきた上級生の方が体格的にも経験的にも有利に働くのは否めないからだ。
でも、今大会に関しては破竹の勢いで勝ち上がっていく2年生たちに誰もが目を奪われた。
互いにトーナメント表の対極の位置に居たからか、多分決勝で当たるのでは? と大方の予想通り、勝ち上がっていったのである。
「がんばれーーーって応援してたけど、本当に決勝までいっちゃうなんて……」
「すげーよな。俺らの夏なんて、瞬殺だったのに……」
「だからまだ始まってすらないよ犬束くん。だって春だし」
和泉と犬束は、半ば放心気味に我がクラスを見ていた。和泉は最早学年の英雄になっちゃってる自慢の彼女を見て、何処か遠くに行っちゃったのでは……? と少なからず寂しい気持ちもあった。
「僕たちも、応援頑張ろうね。ちょっぴり複雑だけど……」
「うん……」
「まぁ、自分らのクラス応援するのが筋、ってもんだしなぁ。……下手な事して戦犯にでもされちゃ大変だ」
そこに合流したのは御神だ。
両男子共に、見せ場をそこそこに、敗北を喫してしまったので後は女子の応援側に回ってる。
和泉も御神も応援する事で間違いなく、眼下の彼女達の力になっているのだが、それが決勝でどの様に作用するのか、誰も解らない。
2-4は、バレー部である猫崎を中心に、なんと言っても超主力となってる式守の布陣。
そして2-1はなんと言ってもバレー部絶対エースである狼谷の存在がデカい。彼女を中心とし、機能しているチームは生粋のバレー部と見紛う程だ。
どちらが波に乗れるか。どちらがペースをつかむか。
それが注目されている所でもあったりする。
「とーとーここまで来ちゃってねぇ。狼谷」
「ああ。そうだな」
ばちばちっ、と火花を散らす猫崎。
狼谷はそうでも無さそうないつもの雰囲気。
でも、前に出さなくともその闘志は内に秘められてるのが嫌でも解る。猫崎は普段から狼谷と練習を共にしているからこそ、この目の前の狼谷は普段のソレとは割り増しで強くなってしまってるのがよく解るのだ。
「カレピの応援は偉大、ってねぇ」
「…………」
猫崎の笑みに、狼谷は少し、ほんの少しだけ頬を赤らめた。
2階で応援してくれてる御神の存在。それが大きく、大きくなってる事なんて最早確認するまでも無い。でも、改めて口に出されると――――他者からそう指摘されると……、どうしても気恥ずかしいものがある。
でも、だからと言って狼谷はただ黙っている、と言う訳でもない。
「それは、そちらも同じなんじゃないか? ……ね、式守さん」
「っ………!」
狼谷は式守に対して間違いなく、自分と同類。似たような雰囲気、匂いを感じている。確信している。
和泉が応援に回り、そして彼女が一段階集中力を増して進化した姿を目にした瞬間から、決勝の舞台で互いに相まみえるこの場面を予見していたから。
「式守さん!!」
「狼谷さん!!」
【ガンバッテーーー!!】
偶然か必然か……。
本当に丁度良いタイミングで、夫々の想い人からのエールが耳に届く。
耳から脳髄にまで響き、身体の機能が回復して言ってるのが分かる。
傍目から見たらバケモノの様に見えてしまうかもしれないが(失礼!!)、それでもこれまで戦ってきてそれなりに積みあがってきた疲労感が薄れていく。
何処までも戦える気がする。
それは、互いに同じであると、式守も狼谷も解っていた。
「その通りですね。狼谷さん」
「ああ。……でも」
「ええ」
2人は示し合わせた様に頷くと、最高に格好良い顔をして。
「負けないよ」
「負けません」
互いに宣戦布告をし合うのだった。
「い、イケメンが2人になった……」
「そ、相乗効果で凄い事になってる……」
互いに顔を真っ赤にさせてる和泉と御神。
それを見て呆れるは犬束。
「いや、だから女だろ。イケメンいってやるなよ、和泉。んでもって、御神の言いたい事は解る!」
犬束が言う様に御神が言う事は実は正しい。
何故なら、あの狼谷や式守が向き合った瞬間……、或いはこの両チーム決勝の舞台が決まった瞬間、かつてない程にボルテージが高まり、更には8割がた女子の黄色い声援がこの体育館に響き渡っているのだから。
「なんか、狼谷VSみっちょん、みたいな構図になっちゃってるケド、負けらんないのはこっちも一緒なんだよね~~」
正直、天才2人に凡人が入っていける訳ない、と何処かで思ってる猫崎。
天才に胡坐をかいている様な人種であれば、雑草の実力、見せてやる! と息巻いてやれるつもりではあるのだが、この2人は程遠い。
本人は否定しているけど、狼谷は見た目、飄々とこなしてる様に見えて、その中身は十分過ぎる程、周りが見れば十分過ぎる程ストイックだし、手を抜いてる様子も見えない。
式守もそれは同じ。
あの不幸体質の和泉の傍で彼女やれてる時点で、不幸を吹き飛ばしてる姿を見た時点で、それを継続されてる時点で、どこの修行僧だ? と思ってしまう程毎日の鍛錬がハンパじゃない。
どっちも身体能力が極めて高く、更には互いの有利性、能力向上要素である彼氏持ちと言う属性も備わってる。
客観的に見たら、どっちが勝つのかなんて全くと言って良い程解らないけど……、今回は悪いが当事者。
「狼谷にかーつっ!! 優勝するぞーー!!」
「「「おー!」」」
士気を高めて、皆で優勝するんだ、と声を上げた。
そしてそして、勿論ながら猫崎の様な考えを持つ者は、彼女だけじゃない。
「ふぃ~~~、おんぶにだっこ、ってわけにはいかないよねぇ。ほんと凄いんだけど」
早乙女は、狼谷と同じく唯一のバレー部。狼谷には届かないかもしれないが、猫崎とだって張れるだけの身体能力を持ち合わせていて、ハードな練習にだって付いていけてる。
「頑張ってくださいっ!!」
そして、向けられてる視線の種類は少々違ったとしても、御神はクラスのマドンナ(笑)で王子様(笑)な所もあり、ヒロイン(笑)な場面もあるギャップ萌え全開。そんな彼の声援もあるのだ。
狼谷だけに格好良い所を見させて終わり~と言うのは勿体ない。
「これが最後! 頑張るよ!!」
「「「おー!」」」
この後、まさに歴史に刻まれる名勝負を繰り広げられるのだった。
2-1
球技大会を終えて、クラスへと帰るとその黒板には―――。
祝☆ 2-1! バレー優勝おめでとう!!
と大きく描かれ、ちょっとした飾りつけもされていて大騒ぎだった。
「凄いよ! ほんと凄かったよ狼谷! カッコよかった!」
「やっぱ決勝戦も凄かったけど、優勝候補の3年生やっつけちゃったのも心に残る! 感動した!!」
「これから、皆で打ち上げいこうよ!」
「よっしゃああ!」
我らがヒーロー、我がクラスのヒーローとなった狼谷は少し照れくさそうに笑っていたが、それもまた雅。絵になるし思わずキュン死、悶え死しそうになる者達多数。
「本当にすごかったです。狼谷さん。日頃の練習の成果、ここまで発揮出来てましたね」
「……うん。ここまでとは私も思わなかった。凄かったね。……でも、やっぱり私は……
狼谷は何かを言おうとしたその時だった。
勢い良く、クラスの扉がバンッ! と開かれたのは。
「おっそーーーい! 今から打ち上げ行くよ!!」
まず最初に入ってきたのは勝手知ったる他人のクラス、猫崎。
そして続けざまにわらわら~~と雪崩の様に押し寄せてくるのは2-4のメンバー。
「やべーよな! 初の同時優勝! なんて」
「フツー引き分け~なんて無いよ。バレーで引き分けで終わるトコなんて見た事ないし聞いたこと無いもん」
「でも、流石に時間オーバーするくらいデュースが続いたら……ねぇ? 先生たちも苦笑いしてたしさ」
入ってきて、夫々が健闘をたたえ合う。
でもこれは驚く事じゃない。もしも、2-4のメンバーが来るのがもう少し遅かったら、自分達が2-1の方に行っていただろう。
そう、口々に言っているが、実は優勝したのは2-1だけじゃないのだ。勿論、バレーボールの競技で。
一体何を言ってるか解らない! と思われるかもしれないが、これも先ほど口にしていた通り、バレーとは25点の3セットマッチで行われていて、互いに1セットずつ取り、そしてラストの第3セット目で事が起きた。
24-24と白熱した第3セット。バレーはルールで最後の手前、24点で同点だった場合、25点を先に取ったとしても勝利ではなく2点差をつけなければならないデュースと言うルールがある。
つまり、勝利する為には26-24、27-25と言った具合に連取しなければならないのだ。
そして最後のデュースの時……、互いが譲らず点を取っては取られて、ミスしてはフォローし、を繰り返した結果—————もう大分ボロボロ、疲労困憊なのにも関わらず、両チーム40点代の大台まで乗ってしまったのだ。
仕舞には、バレー以外の全競技が終了して、全校生が集結して大応援していて……、あまりの熱の強さに先生たちも目を丸くし、これは後のスケジュールを考えたら、もう致し方なし。
両チーム優勝! と言う結果に落ち着いたのである。
それで、折角だから2クラスで打ち上げをやろう! となったのがついさっき。
「あ、あの! 写真良いですか!?」
「お、狼谷センパイですよねっ!? わたし、大ファンなんですっ!!」
「わ、わぁわぁ! 式守センパイと狼谷センパイが揃ったら――――――」
そして、やってきたのは2-4のメンバーだけでなく、あの試合を見て……と言うより、あの試合での活躍っぷりを見て駆けつけてきた下級生たち(8割以上が女子)。
「……すごっ」
思わず圧倒される御神は、ひょっとして……と1つの結論に達する。
「和泉くん、この波に押されて
「さ、逆らえませんでした……」
「つーか、このクラスにたどりつけただけでもスゲーよ。猫崎とかどうやってここまでやってきたんだろ? って未だに思う。アイツもメチャクチャ並ばれてたし」
そう言えば、猫崎が一番最初にクラスにやってきたなぁ~と思いだす。
あの試合の活躍度合いを考えたら、狼谷や式守だけでなく、猫崎だってそうなっていてもおかしくない。
「すごい。学校のヒーローになっちゃったね? 狼谷さん」
「あ、あははは………。流石にここまでのは初めてだ」
スタイルよく、背も高い彼女はファンを作りやすい。
きゃあきゃあと黄色い声援を浴びたり、視線を向けられたりすることも多々ある。本人はそれをあまり気にしてない様子だったが、流石にここまでの大所帯になってしまったら苦笑いの1つや2つ、出てしまう様だ。
「ぁ……、ひょっとして、あのひと!」
そして、軈て注目は狼谷だけでなく、その隣に居た御神にも向けられる。
彼も身長180センチ。クラスの中でもトップクラスの高身長だから当然と言えば当然。
そして、何より―――――。
「学祭のピアニストっ!!?」
「ソラ様っ!??」
「ま、まさか狼谷さんとソラ様が――――――」
「ヤバい! すごい!! すごいっっ!!」
視線を集めてしまったのは御神も同じ。
ピアノを披露した時から身バレは全然OKになっていたのだが……、流石にこの量は困ってしまう。
そして、苦笑いをしていた狼谷だったが、流石に顔を赤らめながら無数の女子たちの眼差しを向けられる御神に対しては面白くない様だったので、彼の前に立ち……。
「すまない。これから2-4と打ち上げがあってね。またの機会にしてくれないかな」
お願いをしている――――様なんだが、何処となく有無を言わせない、と言った迫力アリ。
そして、それもまた良い! と黄色い声援が再び湧き起こる。
狼谷と式守、更には御神が起こした熱は、当分冷める事は無く、中々打ち上げの場に向かう事も叶わなかったのだった。