綺麗なだけじゃない狼谷さん   作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!

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キミと文化祭① 準備

 

 

 

――人が私に望んだこと、それなりには応え続けれてきたと思う。

 

 

とある彼女の心情。

これまでも、しっかりと役割を果たしてきたと思う。期待に応える事だって、評価を見てみれば、きっと胸を張れる。

 

 

 

――なら、私自身の望み、望んだことはどうやって叶えれば良い?

 

 

 

自分自身の望み。

なんでも試していけば、楽しさを見出す事は出来たし、上手く出来てきたと思う。

 

でも、言われるがままに、とりあえず試したこと、……それは心から自分が望んだ事、だろうか?

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

今、自分が求めてる事は何なのか。

自分の心がよく解らない。

 

 

ただただ、あの優しい音色が、あの優しい目が、あの優しい心が、全て自分の心に入ってくる。

 

 

 

『……ぁ、これ初めて見る。新しい本だ』

 

 

図書室で、今一心不乱に本を読み続け、たまに 大きな身体を目いっぱい小さくさせて読み続ける彼の姿がある。その姿が可愛い。

 

瞼を閉じれば、彼の姿が浮かび、そしてあの心地良い音色も聞こえてくるかのよう。

 

 

 

「(……これが、虜になる、と言う事だろうか)」

 

 

 

自分で言ってて恥ずかしくなる気分だけど、不思議とそれも心地良い。

似合わないと言われるかもしれないが、それでも良い。

 

他の誰にも聞かれてない自分だけのモノだから。

 

 

ただ―――彼の心にも、この想いが届けばどれ程の多幸感が得られる事だろうか……。

でも、渇望しても、したとしても、自分は何をどうすれば良いのかが解らないからもどかしい。

 

 

何より、彼を傷つけるかもしれない。

これまでの関係性が変わってしまうかもしれない。

それが、どうしようもなく怖く感じる。

 

 

「………………」

 

 

こんなにも自分は意気地なしだったのか、と自己嫌悪になる。

こんなにも他とは違うのか、と驚いてしまう。

 

こんな自分は初めて。

でも、何か、何か1つでも切っ掛けが有れば……。

 

 

 

「そういえば さっき聞いたんだけど 今年も、文化祭でカップルナンバーするんだって」

「あっ! それって同じ番号の相手と結ばれる、ってジンクスがある生徒会が企画してるヤツでしょ??」

「うん。去年はクラスの出し物が忙しすぎて、見つけられなかったけど、今年は地味に狙ってるんだっ!」

 

 

 

何か、何か1つでも背を押してくれる、勇気を出せる切っ掛けがあれば……。

 

 

「案外バカに出来ないジンクスだよね~。去年も結構カップルが出来たって話だし? むむぅ……、楽しみで仕方がない!!」

「まあ、相手次第な所もあるしね~? それに加えて3学年で15クラス以上……見つける方が結構難しいって言う。難易度が高いから楽しめず終わる可能性も高い……」

 

 

彼女の耳に、狼谷さんの耳に次々と入ってくる切っ掛けになるかもしれない情報。

 

 

 

 

「………文化祭の企画」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラスの出し物。その準備はまさに戦争。

準備期間はそれなりに設けられてるんだけど、皆かなり凝ったモノを作りたいから、と時間はある様で全くない。

 

 

「へぇ……、御神クンは手先が器用なんだ」

「………ん。家事は一通りできるよ。必要に迫られて、って感じだけどね」

 

 

少々ギコチないが、それなりに時間をかける事で、狼谷さんとも話が出来る様になった御神くん。

意識改革を始めて、着実に前へと進めている自分自身を褒めてあげたい気分でもあった。

 

でも、それは、成長できたのは クラスの皆、そして狼谷さんのおかげでもあるのを、御神くんは忘れてない。

 

彼女が沢山話しかけてくれて、程よい距離感で付き合ってくれたからだ。図書室でも話題の作品を紹介し合って勧め合ったり、バレー部の事でまだ狙われてる? のを庇ってくれたり。

彼女と接する事が多かったからこそ、御神くんはより自然体になる事が出来たのだと思える。

 

 

「いやぁ、まじで御神クン器用だね。家事出来るって言ってたけど、料理とかも出来るの?」

「え? うん。そうだね。妹と頑張ってきたから少しくらいは」

「へぇ~妹ちゃんがいるんだ! ってか、早っ!! 喋りながらなのに、めっちゃ早っっ!?」

「おまけに完璧!? 女子力高すぎか!」

 

 

 

瞬く間に、ノルマが仕上がっていく。

1時間もすれば、御神くんを神様~~と、崇める様に拝む女子たちもいる程だ。

 

大きな身体に細かな作業、その声もどこか高め。色々なギャップに惹かれる。

 

 

「よっしゃぁ! オレも御神に負けてらんねーな! オレの女子力も見てくれ!!」

「はいはい。気合だけはいっつも満点だよ。月島は」

「女子力見てくれ!! って男の子のセリフ、初めて聞いた~~」

 

 

ふおおお、と気合を入れながら同じく裁縫を頑張る男子たち。

苦笑いしつつも、楽しそうな女子たち。

本当にこのクラスの雰囲気は最高だと思う。

 

その後も、順調に着々と準備は進んでいき―――。

 

 

「っとと、そうだ。先生に頼まれ事があったんだ」

 

 

せっせと仕事を熟していた御神くんは、もう1つ仕事を頼まれていた事を思い返して、立ち上がった。

 

 

「ごめんね。皆。ちょっと用事を済ませてくるよ」

「いてら~~!」

「早く帰ってきてね! 大戦力抜けたままじゃ大変!!」

「うわぁぁん、御神くぅぅん、みすてないでーーー!」

「な、泣かないで! ちゃんと戻ってくるから」

 

 

たまにリアクションが大きく、驚いてしまう事もある。それもまたどこか楽しい、と思っているし、何より頼りにされている事も嬉しい。

 

足取り軽やかに、職員室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

そして―――そんな帰り道の事だった。

見事にホームランボール? を側頭部に受けた和泉くんの姿を捕らえたのは。

 

 

「わ、わぁぁぁぁ!! だ、だいじょーぶ!??」

「うぐぐぐ………」

 

 

この光景だけは中々慣れる物じゃない。同じクラスだったら慣れてたかもしれないが、どう見ても怪奇現象の類だと思ってしまうから、心臓が高鳴ってしまう。

 

 

 

そして、驚くべきなのはアレほどのボールがジャストミートしたと言うのに、五体満足でいられる和泉くんのタフさだろう。

 

 

 

何も無かったかの様に起き上がって普通の受け答えをしているのだから。

心配しても大丈夫の一択なので、話題を変える事にした。

勿論、話題は文化祭の事。

 

更に付け加えると――――和泉くんの恋愛事情。

 

 

「―――そっか。和泉くんは式守さんに告白するんだね。文化祭の日に」

「っ~~~~、お、思わず言っちゃった!! だってだって、御神くんが恋愛小説読んでるの見ちゃったから、つい……。でも恋愛モノ好きって、今考えたらちょっと意外かも、って思っちゃった」

「ぼくは、ジャンルは問わないよ。どんなモノでも目を通すだけだから。多少の好みはあるけどさ? ―――恋愛モノも好き。温かい気持ちにさせてくれるから。人と人との繋がりって良いなぁ、って思わせてくれるから好き。……だからってサスペンスとかホラーとか、暗い話が嫌いってわけじゃないけどね」

 

 

和泉くんは勇気がある人だと思う。

 

誰かに告白する―――なんて、相応の勇気が無ければ出来ない事だって思うから。今まで見てきた小説で、勇気を振り絞らなかったヒロインや主人公は居なかった。

 

 

 

「―――和泉くんなら、大丈夫じゃないかな? キミは優しいし。式守さんもきっと、和泉くんの事、大好きだと思うよ」

「えっっっ!!?? だ、だいすきって……っっ。い、いや、その、うれし、うれしいっ」

「ふふふ。大丈夫大丈夫。肩の力を抜いて」

 

 

和泉くんの肩にそっと触れて、軽く叩いた。

 

 

「自信を持って。絶対大丈夫。和泉くんなら大丈夫」

「~~~~っっ、あ、ありがとう! 御神くんっ!! ボク、頑張る!! 頑張るからっ!!」

「うんうん。……って、和泉くんっ!?? 力強いっ、首っ、首締まってる!! 極まってる!!」

 

 

背中を大きく強く、御神くんに押された和泉くんは、どうやら感慨極まったようで思いっきり力いっぱい御神くんを抱きしめた。

線が細そうに見える和泉くんだが、潜ってきた修羅場の数? 降りかかってきた不幸の数だけくらいは身体が強化されている様で、見かけによらずかなりの力持ち。

 

あわや、極め堕とされる寸前まで言った所で解放された。

暫く談笑しながら、夫々の教室へと戻る寸前に、和泉くんが笑顔で言った。

 

 

「御神くんが背中、押してくれたから! ボク、頑張れる! ありがとうっ!」

「うん。あ、その前に、文化祭の準備の方も頑張ってね? ぼくも頑張るから」

 

 

ぎゅっっ、と互いに固い握手を。両手の握手を交わす2人。

男2人な構図なのだが……、何処か誤解されかねない? 雰囲気がある様な気がするのは、2人のやり取りをもう暗くなった廊下、教室の入り口で見ている人。

 

 

「和泉さん。皆、和泉さんが抜けて困っちゃってますよ?」

「わっ! ごめんごめん―――って、式守さんっっ!??」

「………はい。私です。……おじゃま、でしたか?」

「そそそ、そんなことないから! 直ぐ戻るよっ!!」

 

 

今このタイミングで式守さんと顔を合わせるのは厳しかった。

元々、同じ班だから教室に戻ったら絶対に顔を合わせる訳で、ほんの少しだけ遅いか早いかだけの違いなのだが、和泉くんはテンパってしまう。

 

 

大慌てで、ぴゅ~~っと教室に入っていった。勿論、御神くんに挨拶するのも忘れずに。

 

 

「あははっ」

 

 

御神くんは、笑顔で和泉くんを見送った後、式守さんの方を見た。

何やらスゴク複雑そうな顔をしているのだが、生憎御神くんには、ハッキリその表情は見られない。

ただただ、きっと上手くいくだろう事を思い浮かべて、和泉くんの隣にきっと式守さんが居て、幸せそうに笑ってる姿を思い浮かべて、笑っていた。

 

 

「あの、その―――……和泉さんを、送ってくれてありがとうござい、ます……」

 

 

式守さん的には楽しそうに話をしていた2人を見てちょっぴり妬けた気分だったりする心境。話の内容は聞いていないが、2人で固く握手を、それも両手の握手を交わしているシーンは目撃している訳であり、少しだけ表情が硬い。

 

 

「い、いえ。ぼくのクラスはこの先にありますし。たまたま、和泉くんと合っただけなので。……ちょっと、大変でしたが」

「そ、それはお疲れさまでした……、改めてありがとうございます……」

 

 

 

御神くんの、【ちょっと大変】の意味を重々理解したのだろう。加えてその表情を読んで、相応な事があったのを簡単に想像して、改めて頭を下げた。

 

 

 

「―――えっと、式守さん」

「あ、はい。なんでしょうか?」

 

 

 

和泉くんが言うべき事だから、それよりも先に直接言っちゃうなんて野暮な事はしない。

でも、ただ一言だけでも告げたかった。

 

 

 

「頑張ってくださいね」

「………え?」

 

 

 

ただ、応援をしたかった。

2人は本当にお似合いだと思ってるから。あんなに優しい人だから、幸せになって貰いたい、って思うから。

 

 

「みっちょんみっちょん、そんなトコで油売ってないで~~ーーーって! おおっ!?」

 

 

そんな時、にゃっ! っと顔を出したのは式守さんや和泉さんよりも更に顔見知った人。

猫崎だった。

 

 

「おおーー! 御神じゃん! どーしたの? ひょっとしてウチのクラスに臨時助っ人、的なノリで来てくれたの!?? わぁぁ大歓迎だよぉぉ!!」

「ええっ!? や、あの、その、違うよ違う。ぼくは―――」

「そうだよ。キミは私達のクラスで大事な仕事が残ってる」

 

 

猫崎に教室に引き込まれそうになりかけたその時、肩をそっと掴んでくれたのは……。

 

 

「あ、狼谷!」

「悪いね。猫崎。流石に彼は譲れないよ」

「あっはっはっは! 解ってる解ってる! ちょっとした冗談なのに、御神ってば反応が可愛くてつい―――ね?」

 

 

ぱちんっ、と片目を瞑ってウインクする猫崎。

また揶揄われた、と意識すると同時に、少しだけ頬を膨らませた。

 

 

「もう……、猫崎さんのは冗談でも、冗談に聞こえない事が多いのに」

「ごめんごめんってば。んじゃ、みっちょん早く仕事再開するよーー! 狼谷と御神もまたね~!」

 

 

素早く去っていった。

まさに猫の様にすばしっこい。

式守さんも、先ほどのエールの意味が解らず、聞きたかった様子だが、クラス内が修羅場となってるので、これ以上作業を遅らせる訳にはいかないから、と頭を軽く下げて猫崎と一緒に戻っていった。

 

 

そんな2人の後ろ姿を見送ってると、手に感触がある。

 

 

「お疲れ様。御神クン。そっちの仕事は片付いたかい?」

「うん。勿論だよ。………どちらかと言えば、和泉くんの方が大変だった……かも」

「それは……心中察するよ。それと…………」

 

 

狼谷さんと一緒に、クラス内へと入ると―――。

 

 

「うわーーーー! よーーやく帰ってきた!!」

「今日のノルマ、まだ全然終わりが見えないーーー!! た、頼む、HELP~~!」

「装飾班、手伝ってくれぇぇぇえ!!」

「まったまったぁぁ! まだ衣装班だって終わってないんだから、御神っち貸出禁止!!」

 

 

「……想像以上に、キミが抜けた穴は大変だったみたいでね。だから、帰ってきて早々で申し訳ないが手を貸してくれると助かる」

「あははは…… 了解です。直ぐに取り掛かるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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