綺麗なだけじゃない狼谷さん 作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!
いよいよ本番。
ここから始まるのは群雄割拠、戦国の世!
「―――っしゃ! じゃあ、売り上げ1位を目指して~~……」
クラス一丸となっての文化祭と言う名の戦場に赴く。
是非とも、勝利を掴み、盛大な打ち上げを行うそれを夢見て。
「野郎ども! やったるぞーーーー! 暴れるぞーーーー!!」
『うおおおおおおおお!!』
「野郎じゃないけど、私達も頑張るよーーー!! やっちゃうよーーー!!」
『よっしゃあああああ!!』
「あ、暴れるのは駄目だよ……?」
「ふふふ」
クラスの士気も上々。
と言うか気合入り過ぎて、熱気の様なモノが渦巻いてる様に思える。
「……でも、ぼくも、頑張らないとだね」
「ふふ。御神くんも大分気合が入ってるみたいだね」
「ッう、うん! 頑張ったからね。皆で頑張ったんだから。例えどんな結果でも胸を張れると思うけど……、やっぱり最高の結果を残したい、って思っちゃってるから。ぼくにしては欲張りな気もするけど、皆の
文化祭一緒に回る約束を狼谷さんと交わしたのが、3日前で本当によかった……としみじみ思うのは御神くん。
それまでは身体や頭、心……正直バグを起こした? と思われても仕方ない程だった。
家では家族に心配されて、学校でも皆が頭に《???》を浮かべてて、色々と大変だった。
何だか妹は不機嫌気味だった気がするが。
「ところで、キミはカップルナンバーの番号は幾つだったのかな?」
「ぼくですか? えっと……77番です。あはは、ラッキー7で何だか縁起が良いですね。幸先良いってこの事を言うのかなぁ……。見合う様に頑張らないと」
御神くんは、懐から生徒会が主催している名物企画のハート型厚紙用紙を取り出した。
可愛らしい丸文字フォントで7と7が並んでいる。
折角の数字なのだから、運だけに頼らず自分自身も頑張ろう、と心に決めていた。
御神くんのナンバーは、まさにラッキーな番号だ。
今日皆で1位を目指そうと意気込んでる中に、この事実を嬉々として入れたい気分なんだけど……、流石に恥ずかしいからそれはしない。
「―――そうか。…………そう、だったんだな。御神くんも………」
「? 狼谷さん、顔がなんだか……」
狼谷さんがニコリと笑ったかと思えば、今度は顔をほんの少しだが赤くしていた……気がする。
でも、丁度朝の日光が、彼女の顔を明るく照らしたから、そう見えただけなのかもしれない。
「――――凄いよ。御神くん。こんなことってあるものなんだね」
「え? え?」
「ほら、これを見てくれ」
狼谷さんから一枚の紙……件のカップルナンバーの用紙を見せられた。
目を凝らして視るまでもなく……、そこにはしっかりと書かれていた。
「え? あれ? ……これ、7、7……?」
「うん。どうやら私達の番号は一緒みたい、だね」
「凄い偶然ですね……。全校600人くらい人数が居るんですけど……」
指を折り折り、確率の問題を頭の中で展開させるのは御神くん。
勉強は結構得意だ。クラスでも常に上位に位置しているし、テスト期間中は頼られる事もある。だから、今回もせっせと確率を求めようとしているんだけれど……………一向に答えが出ない。
「……こんなコトもあるんだね。初めて一緒に回りたい、と想った相手と選ばれるなんて。少し怖い気もするけど、嬉しい」
「ぁ、あぅ、あぅあぅあぅ……ッッッ」
とても雅なリアクションをする狼谷さん。
髪をかき分ける仕草、表情、佇まい、全てが絵になって、全てが御神くんにとって刺激的。心臓が高鳴るのが止まらない。
可能であれば、高鳴り続けてる自分のこの心臓を止めてしまいたい―――と思った事なんて初めてだ。
でも、やっぱり思うのは自分と狼谷さんが釣り合うのか? と言う点。
一緒に回るだけでも十分出来すぎなのに、この展開。
「ぼくなんかが――――」
「ストップ」
「んっ!」
つい、口から言ってしまったが、直ぐに狼谷さんの人差し指に阻まれた。
「私はもう答えを言ってるよ。……キミだから良いんだ、って。後はキミの気持ち次第……かな。こればかりは私にはどうしようもないから」
「…………ご、ごめんなさい。もう言わない様に、って思ってたのに……」
「なら、良かった。……それで どう、かな?」
「こ、こうえい、です! こんな、き、緊張し過ぎて、ガチガチで頼り無いぼく、ですが……ッッ が、頑張りますからっ!」
全ての面で上に位置する狼谷さん。あまりにも恐れ多い気持ちがあり過ぎて、大変なのだが。
「………ちょっと、手。良いかな?」
「ふぁ、ふぁい!?」
そこで、狼谷さんの手が伸びてきた。
伸ばされて掴まれた手。とても熱く、燃えている様に熱い。
そして、自身の首元に御神くんの手を宛がう。
「ッッ~~~~~!!??」
一体何を!? と思って本当にパニック大パニック。
クラス中が盛り上がりに便乗して大声を上げようとしてしまうが。
「私も緊張してる。キミと同じく緊張してる。こんなこと初めてだ。……生まれて初めて」
「ッ……!?」
最初は自分の事だけで精一杯で狼谷さんの事が解らなかった。
でも、自分の手に意識を最大限集中させる。
自分の鼓動以外にも交わる様に伝わってくる狼谷さんの熱と鼓動。
平常心に見える彼女の中では、熱く燃え滾っているのが伝わってくる。
「光栄と言ってくれて、恐れ多いとも言ってくれるが、私もキミと同じなんだ」
どんなに超人で、スゴク美人で綺麗な狼谷さんでも、同じ人間。
彼女の何を今まで見てしまったのだろう? と御神くんは思う事でどうにか平常心を取り戻す事が出来てきた。
忘れていた訳じゃない。彼女に、狼谷さんと一緒に回ろうと言ってくれた日から、完全に止まってしまっていたんだ。
「かーみやっ! よろしく頼むよ、文化祭のエース!!」
「御神も頑張ろうぜ!! 前代未聞の1年チャンプ! 目指せ、ジャイアントキリング!! 打倒、全クラスだっっ!!」
この時 光の速さで、手を引っ込める事が出来たのは奇跡の一言。
そして、狼谷さんは直ぐにクラスの皆と話の輪に入れるのは流石の一言。
「きゅ~~~っ」
「わーーー! なんだなんだ!?? 御神倒れるなっ!??」
御神くんは色々と限界が来ていたから、力が抜けちゃった様子。
真島くんに倒れ掛かる形で。
「今日、ぼくは式守さんに告白しようと思ってる」
「……うん。応援、するよ」
「その、御神くんは……? 狼谷さんの事大好きだよね?」
「ッ………ぅ、ぅん」
休憩時間で、トイレに向かう際にバッタリと和泉くんと出会った。
それなりに時間は貰っているし、何より狼谷さんと一緒に文化祭を回る時間は十分、十分過ぎる程確認したから大丈夫だ。
確認すればするほど、顔面が発火してるのでは? と思う程熱くなるし、緊張もするが……、それは仕方ない。
因みに、和泉くんも同じ様子だ。
和泉くんの様に解りやすく、赤くなってるのを自覚しちゃえば、誰にでも解りやすい姿になっちゃってると、苦笑いをして、緊張緩和も出来る。
少しだけ和泉くんと学校の屋上へと赴いた。
まだ時間は大丈夫だし、話す内容が内容だから、あまり聞かれない様に場所を移した。
「最初は、狼谷さんの事は、手の届かない人、高嶺の花だって思ってた。ぼくなんかと住む世界が違う人だな、って。……でも、それはぼくが勝手に距離を作ってたって事に漸く気付けたよ。時間……かかっちゃったけど」
「気持ち解るよぉ。男女問わずあんなに綺麗でスタイルも良い人だしね。人集りだっていつもできてるし」
「うん。それもある……かな。狼谷さんが誘ってくれたんだけど、ぼくが選ばれる価値あるのか? って。……選んでくれたのは、彼女なのにね。何度も怒られちゃったよ。【自分の事を、
綺麗だとか、スタイル良いとか、可愛いとか、容姿で好きになった訳じゃない。
勿論、それらは重要な要素の1つである事実は変えようもない。中身が重要と言う話も綺麗事だ! と言うし、否定できない。
でも狼谷さんの事が気になりだしたのは、やっぱりバレー部勧誘の時からだと思う。
昔の事もあるし、警戒していたり、……女子と話をする事自体、トラウマを抱えていた。
それでもゆっくりと、確実に、自分の中に彼女が、彼女の優しさが入ってきてくれていたんだ。過去の痛みを癒してくれる様に。
だから、あんなにあっさりと打ち明けられる事が出来たんだって思う。
気付いたら口に出ていた。まるで息をする様に自然に、いじめの事を打ち明けられた。
「狼谷さんらしいね。ぼくも彼女が優しいの知ってるから。御神くんの気持ち、解るつもりだよ」
「………そっか」
和泉くんの言葉に、御神くんは笑顔を向ける。
そして、空を見上げた。
透き通った青い空、白い雲も所々に空を彩ってる。
星や月、夜空も綺麗だったが、青空もこんなにも綺麗に見えるのは、きっと心晴れやかだから、だろうか。
「……ぼくは、スゴク恵まれてるんだなぁ。大切なトモダチが沢山出来て、好きな人が出来て、……ほんと、ぼくには勿体ないや」
風を身体に感じる。
学校に幸せを感じる日が来るなんて、あの時は思っても無かった。
だからこそ、今この瞬間を大切にしたい。
「和泉くん」
「ん?」
「ぼくのトモダチになってくれて、ありがとう」
「! あはははは! こちらこそだよっ! ありがとう、御神くん!」
気恥ずかしくなりそうなセリフなんだけど、和泉くんだからだろうか。こんなにも簡単に口から出す事が出来たのは。
「……さぁ、ぼくも頑張らなきゃ」
「えっと、確か御神くん達のクラスって喫茶店だったよね?」
「うん。執事喫茶だよ」
メイド喫茶の方が良いのでは? と言う男たちの願望が教室内に慟哭したが、女子たちに圧倒されて、執事喫茶に落ち着いた。
でも、格好良い女子の皆の姿を見るのもヨシ! とくるっ、と手のひらを返した皆の姿は本当に面白かった。
「和泉くん達は?」
「えっとね、ぼくらのトコも飲食関係。お祭りをベースにしたコンセプトだから、金魚すくいとか、ヨーヨー釣りとかもあるかな」
「おぉ……それは色々と大変そうだね。危険物も多そう…………、和泉くん、だいじょうぶ?」
「が、頑張るよ!」
不幸体質をどう頑張っても難しいのには変わりない。
でも、和泉くんも御神くんに負けないくらい頼りになるクラスの皆がいるし、何よりも
「おーい、御神くん」
「和泉さーん!」
「「!!」」
突然、後ろから声がして驚いて振り向いた。
屋上は基本的に開放されてるけど、出し物等は一切ないので、来る人は殆ど居ないからちょっと驚きながら。
「式守さん!」
「狼谷さん!」
ここに来たのはそれぞれの意中の人達だった。
4人で軽く挨拶を交わした後、直ぐに本題に入る。
「すまない。まだ休憩時間なんだけど……」
「皆、大変なんだよね? あはは……。ごめんなさい。解ってたつもりだったんだけど、ちょっと話したい事があったから。直ぐに行きます」
「和泉さん、ゴメンなさい。こちらは和泉さんに確認して貰いたい事がある、って言われて。屋台の集計の件ですが……」
「ああ! ゴメンなさい! それぼくの仕事だ! 直ぐ行くよ!」
4人が集まるのは初めての事、かもしれない。
それぞれ頼りにされてる事が嬉しい様子でハニカんでいた。
和泉くんの場合は、ちょっぴり心配な面があるけれど、それもきっと大丈夫だと思わせてくれる空気が間には流れている。
「―――そうだ。和泉くん、式守さん」
「はい?」
「ん?」
屋上から出ていく際に、2人を呼び止めた。
「2人で、文化祭を回る時に……、ぼくの、ぼくたちの喫茶店に寄ってみてくれない……かな? 最高のおもてなしを、約束したい」
そっと、和泉くんと式守さんに差し出したのはメモ帳。
サプライズ企画 12:00~
と書かれていた。
「わぁ、サプライズ企画ってなんだろう!? 面白そう!」
「御神さんが行うんですか? 凄いですね!」
2人とも興味を持ってくれたようで、嬉しくなる。
御神くんはにこやかに笑う。すると、まるで意図したかの様に柔らかく温かい風が4人の間を撫でた。
前髪が風に揺られて、御神くんの表情を露にすると。
「2人にピッタリなものだと思うよ。……期待、してて」
その笑顔を見て、2人ともが顔を見合わせる。
和泉くんも式守さんも、お互いに顔を見合わせるのには、正直まだまだ慣れていない筈なのに、この時は自然に2人で見合って笑顔でいられた。
「楽しみにしてますっ!」
「楽しみにしてるねっ!」
そして、笑顔で喫茶店に向かう事を約束してくれた。
「狼谷さんのおかげ……です」
「? 私は特に何もしてないと思うけど」
「いいえ。狼谷さんのおかげで、ぼくはもう一歩、前に進めるんです。だから――――――……」
御神くんは、そういうと狼谷さんの方を向いた。
「ぼくを