愛を知らない死神と戦場を舞う少女たち   作:シッシー@連載中

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シッシーです。

ようやくBOUQUET編をスタートすることが出来ました!
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!!!

ここで、BOUQUET編をスタートする上での注意事項がございます。

※基本アニメのストーリーに沿った展開を予定しておりますが、1部オリジナルストーリーを入れたり、他の作品(柳隊出撃します、アームズ、新潟奪還戦など)を交える形となりますので、何卒よろしくお願いします。

完結までまたしばらくのお付き合いとなりますが、ごゆるりとお楽しみください。


BOUQUET編
第1話


春。

 

凍てつく寒さが和らぎ、桜の花が陽の光を浴びて綺麗に輝く心地よい季節。

 

鎌倉府に学舎を構える世界的な名門ガーデン『百合ヶ丘女学院』では、本日高等部の入学式が執り行われる。

 

学院に唯一の存在である男性リリィ、星咲蒼太は新たに高等部へ入学する後輩達を出迎えるために身支度を整えていた。

 

 

 

コンコンコン──

 

蒼太「どうぞー」

 

 

 

蒼太が特別寮の自室にやってきた客人に声をかけると、ドアが開き金、銀、翡翠の頭が覗き込んできた。

 

 

 

天葉「おはよ、蒼太。準備終わった?」

 

蒼太「おはよう天葉。今終わったよ」

 

 

 

同じ高等部2年の天野天葉が声をかける。その後ろには今年から高等部に進学する江川樟美と田中壱の姿があった。

 

 

 

蒼太「壱と樟美もおはよう。今日から高等部だね」

 

壱「おはようございます、お兄様。今日から同じ高等部なんてまだ実感湧かないです。えへへ」

 

 

 

頬を指で掻きながら、嬉しそうな笑顔で壱が答える。

 

 

 

樟美「蒼太兄様、おはようございます!」

 

 

 

元気な声と共に、蒼太へ樟美が抱きつく。それを蒼太は優しく抱き締め返し、その綺麗な銀色の髪を優しく撫でる。

 

 

 

壱「こ、こら樟美!お兄様困ってるでしょ!」

 

蒼太「いいのいいの、今日も元気だね樟美。それにしても2人とも、よく似合ってる」

 

 

 

壱と樟美は高等部の制服に身を包んでおり、昨日まで着用していた黒を基調とする中等部の制服とは違う新鮮さがあった。

 

 

 

壱「ありがとうございます!ちょっと着るのに苦労しましたけど……」

 

天葉「デザインが中等部のとはまた違うからねぇ」

 

 

 

天葉は制服のスカートの両端を持ち上げてポーズを決め、蒼太に「どう?」と問いかける。

 

 

 

蒼太「天葉は見慣れてるけど、よく似合ってるよ」

 

天葉「んー……そうじゃなくてさ……」

 

蒼太「……可愛いよ。天葉」

 

天葉「えへへ」

 

 

 

蒼太の言葉に嬉しそうな笑顔になる天葉。その様子を見て、何か言いたげな樟美と壱。

 

 

樟美・壱「……」

 

 

 

壱は樟美の隣まで来て蒼太の顔をじっと見上げる。蒼太は何かを求める小さな少女たちを見て小さく笑い、そして2人一緒に抱きしめる。

 

 

 

蒼太「……2人も可愛いに決まってるでしょ!」

 

樟美・壱「きゃー!」

 

 

 

まるで父と娘の戯れのような光景を見て顔が綻ぶ天葉。普段この時間の特別寮は静かであるが、今日ばかりは賑やかな声が響き渡る。

 

そんな賑やかな時間を過ごす4人の背後から、今の状況とまるで真逆な冷たい声が聞こえてきた。

 

 

 

鶴紗「朝から騒がしい……」

 

蒼太「……あ、鶴紗。おはよう」

 

鶴紗「……おはようございます、蒼太様。廊下、塞がないでもらえます?」

 

 

 

蒼太達の元へやってきたのは、蒼太と同じく特別寮に入寮している安藤鶴紗。蒼太と同じ強化リリィであり、とある事情から蒼太と交流を持っている。

 

 

 

蒼太「あぁ、ごめんよ鶴紗。ほら皆、ちょっとこっちにズレよう」

 

 

 

蒼太の呼びかけに素直に応じた3名は廊下の端に避ける。そして、鶴紗は蒼太達に見向きもせずに去ろうとした。

 

 

蒼太「あ、鶴紗」

 

 

 

蒼太の声に立ち止まる鶴紗。しかし顔をこちらに向けることは無く、黙って蒼太の次の言葉を待っていた。

 

 

 

蒼太「新しいの買ったから、後で渡しに行くね」

 

鶴紗「……ん」

 

 

 

相槌とも言い難い返事を残し、その場を去っていく鶴紗。天葉達は蒼太に対しての態度に少々ご立腹であるが、蒼太は小さく笑ってその後ろ姿を見送る。

 

 

 

 

 

嬉しさに心躍る暖かいマギを放つ、素直になれない少女の後ろ姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、チェリス教導官に入学式の会場に向かうように声を掛けられた4名は、蒼太の残りの準備を早急に済ませ特別寮を後にした。

 

特別寮から本館へと向かう道は桜並木となっており、心地よい暖かさと相まって春の訪れを感じることが出来た。

 

 

 

蒼太「そういえばアールヴヘイムの襲名式、お疲れ様」

 

天葉「うん、ありがと」

 

 

 

 

 

アールヴヘイム。

 

かつて百合ヶ丘女学院のみならず、世界的にも最強と言われたレギオンである。

 

作戦行動30戦無敗。強大なヒュージに対抗する最後の手段であるノインヴェルト戦術の基礎を生み出し、その活躍は他のガーデン、レギオンに大きな影響を与えた。

 

御台場迎撃戦の後に各々の方向性の違いなどから惜しまれつつも解散となったが、幼稚舎より活躍が期待されていた五人組、そして初代アールヴヘイムのメンバーである天葉、依奈、茜、学院内でもかなりの実力者である亜羅椰と辰姫が加入したレギオン『スクルド』が外征旗艦レギオンとしてアールヴヘイムの名を学院より指名されたのだ。

 

 

 

 

 

蒼太「これからの活躍が楽しみだね」

 

天葉「そうねぇ。せっかく名前をもらえた訳だし、頑張らないとね」

 

蒼太「天葉が主将であかねが副将、依奈が司令塔で……」

 

樟美「あっ……蒼太兄様それは……」

 

蒼太「え?……あ」

 

壱「……」

 

 

 

樟美の言葉で蒼太は隣を歩く壱を見る。少し頬を膨らませ、どこか不貞腐れている表情の壱は、吐き捨てるように口を開いた。

 

 

 

蒼太「ご、ごめん壱……」

 

壱「私は司令塔として十分に活躍出来るはずです……納得いきません」

 

 

 

スクルドがアールヴヘイムの名を襲名した際、初代アールヴヘイムで司令塔を務めた依奈がそのまま司令塔を継続することが決まった。

 

しかし、本来主将になるはずだった立場を天葉に譲った壱もまた司令塔を希望していたため、同じ役職を巡って2人の関係は険悪である。依奈は関係改善に務めているようだが、壱は心を開こうとしないのだ。

 

 

 

壱「……依奈様がすごいお方なのは知ってます!でも私だってド素人じゃないんですから……功績を積めばもっとお兄様に褒めてもらえると思ってたのに……」

 

 

 

 

壱の言葉の最後が聞き取れずに蒼太が聞き返すが、「な、なんでもありません!!」と強めな口調ではぐらかされ、右腕に抱きつき顔を埋めてしまう。それ以降の追求は壱を本気で怒らせてしまうことを蒼太は知っているため、それ以上何も言わなかった。

 

 

 

壱「……それはそうとお兄様、今日ハービンジャー必要ですか?」

 

 

 

壱が蒼太の背面を目で追いながら問いかける。蒼太の腰には、彼が作り上げたユニークチャーム『ハービンジャー』が備え付けられていた。

 

 

 

蒼太「なんか嫌な予感がしてるんだよね……」

 

樟美「ひぇ……嫌な予感、ですか?」

 

蒼太「暖かくなると元気な子達がハメを外したりするからね。一応の用心だよ」

 

 

 

あははー。と蒼太は笑うが、壱、樟美、天葉の3名は少しばかりの胸騒ぎを感じた。

 

そう、彼の「予感」はよく当たるのだ。

 

 

 

そんな話をしながら本館の正面玄関へとやってきた一行は、多くのリリィが野次馬となって集まっている光景に首を傾げ、その中心にいる人物たちに気付くと呆れてため息をついた。

 

 

 

亜羅椰「中等部以来お久しぶりです。夢結様」

 

夢結「……何か御用ですか?遠藤さん」

 

 

 

アールヴヘイムの問題児、遠藤亜羅椰が蒼太の同級生である白井夢結に絡んでいた。

 

その光景は先輩後輩の微笑ましい再会ではなく、お互いの殺気が感じられる張り詰めた空気感であった。

 

 

 

蒼太「……元気だねぇ」

 

壱「亜羅椰のやつ、夢結様にやってんのよ!」

 

樟美「喧嘩売ってるんだよ、いっちゃん」

 

壱「止めます?天葉様」

 

天葉「あたしは興味あるかなぁ。蒼太は?」

 

蒼太「現状維持でいいんじゃない?いざとなったら僕が止めに行くよ」

 

壱「じゃあ見てますか」

 

 

 

周りに大量のギャラリーが集まってるのをひとつも気にしない、血の気の多い2人のマギが高まっていくのを肌で感じる蒼太。そして、亜羅椰は自身のアステリオンに手をかざしマギを集中させる。

 

チャームに埋め込まれたクリスタルにルーン文字が浮かび上がると、斧のような形状へと変形させた。

 

スタンバイ状態からの抜刀。戦闘開始の合図だ。

 

 

 

壱「あいつ、抜きやがった!」

 

蒼太「……」

 

 

 

蒼太が万が一を考えハービンジャーに手を伸ばすと、それと同時に張り詰めた場にそぐわない声が亜羅椰と夢結の交差する視線を遮った。

 

 

 

?「はーいそこ、お待ちになって」

 

 

 

茶色いウェーブのかかった髪をなびかせて、亜羅椰と夢結の間に割って入る少女。この2人の間に入ろうなど余程の自信家か、それとも度胸のある人物なのか。蒼太は僅かながら感心しつつその少女を眺めていた。

 

 

 

亜羅椰「何?あなた」

 

楓「お目にかかり光栄です。私、楓・J・ヌーベルと申します」

 

 

 

亜羅椰の苛立ちに見向きもせず夢結の正面に立ち、楓と名乗った少女。その名を聞いて、遠くから眺めていた4人はとあるチャームメーカーの名前を思い出す。

 

『グランギニョル』

 

フランスに本社を置く、カリスマ的人気のチャームメーカーだ。

 

 

 

蒼太「……ミシェル・ヌーベル社長のところのご令嬢……だね」

 

壱「それに彼女自身もかなりの実力者です……しかしなんで割って入ったんですかね?」

 

蒼太「まぁ恐らく……」

 

 

 

蒼太が言葉を続けようとした時、楓が夢結に対し頭を下げた。

 

 

 

楓「夢結様にはいずれ、私のシュッツエンゲルになって頂きたいと存じております」

 

 

 

蒼太含め、1部のリリィは「やっぱりか」とため息をついた。

 

白井夢結。百合ヶ丘女学院の中で最も著名なリリィである。彼女のファンは多く、シュッツエンゲルになって欲しいと願う下級生は少なくない。

 

そんな夢結に契りを申し出た楓は、背後で喚く亜羅椰と対峙するために抱えてたケースを開けチャームを取り出そうとする。

 

しかし、チャームに触れようとしたその手が突如として現れた別の手によって抑えられてしまった。

 

 

 

?「だ、ダメだよ!楓さんまで!」

 

蒼太「……へぇ」

 

 

 

蒼太が瞬きをしたその一瞬で、楓の間合いに入り込み静止を促す桃色髪の少女。その動きは楓や亜羅椰、天葉ですら驚きの表情になる程であった。

 

 

 

?「リリィ同士でいけませんよ!」

 

楓「私のかっこいい所を邪魔なさらないで!」

 

亜羅椰「邪魔なのはあなた達でしょ!」

 

夢結「……いいわ。面倒だから、3人まとめていらっしゃい」

 

 

 

収集がつかない状況に呆れ返った夢結が、3人まとめて相手取ろうと自身のチャームケースにマギを送り込みながら睨みつける。

 

なので天葉が蒼太にそろそろ辞めさせようと促し、蒼太が腕に抱きつく壱に断りを入れて4人に向けて1歩踏み出す。

 

そして感じる、蒼太の背筋を撫でる悪寒。

 

 

 

蒼太「……」

 

天葉「……どうしたの?」

 

 

 

天葉の問いかけに返すことも無く、腰に据え付けたハービンジャーを手に取る蒼太。野次馬リリィたちの後ろに広がる何も無い空間をただ静かに睨みつける。

 

そして一瞬見えた空間の歪み。

 

 

 

蒼太「……っ!」

 

 

 

天葉達が驚いて名前を呼ぶが、蒼太はそれに答えることはなくただ一点だけを睨みつけて、大剣に変形させバチバチと電撃が走るハービンジャーを構えながら真っ直ぐ駆け出す。

 

 

蒼太「っ!ミリアム!伏せて!」

 

ミリアム「……な、なんじゃ?!蒼太様とな!?」

?「……え、えぇ!?」

 

 

 

ミリアムと呼ばれた灰色ツインテールの少女と、そばにいた茶髪のリリィが驚きの声を上げる。その声を聞いて、その場にいた全員の視線が蒼太に集まった。

 

 

 

蒼太「くっ!」

 

 

 

蒼太はミリアム達から僅かに離れた空間を切り裂くようにハービンジャーを縦に振りかざす。

 

その瞬間、激しい音と共にハービンジャーのブレード部分からバチバチと大きな火花が飛び散り、その場にいたリリィ達は驚きの表情や声を出し咄嗟に伏せた。

 

そして火花を散らす中心から蒼太が睨みつけていた何も無い空間へと徐々に亀裂が走っていき、ひび割れた空間がまるで周囲を映し込む鏡のように派手な音を立てながら崩れ落ちていく。

 

そして露わになる、ミリアム達の顔の寸前まで迫っていた巨大な爪。

 

ハービンジャーが盾となって食い止めたが、もし数秒遅れていたらミリアムと共にいた少女はこの爪に串刺しとなっていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼太が睨みつけた『何も無い空間』

 

そこに居たのは、特異装甲で周囲に擬態した一体のミドル級ヒュージだった。




新章一発目、最後まで読んでいただきありがとうございます!

早速ヒュージを登場させました。これは前章よりも前から考えていたことでやっと書けたと肩の荷が降りました(;´Д`)

次話もよろしくお願いします!!!
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