第2話でございます。
今回は少しだけ短めのお話です。キリのいいところがとても中途半端になってしまって……(矛盾)
それではごゆるりとお楽しみくださいませ。
ガキンッ!!!
ハービンジャーを振り払い、受け止めていたヒュージの爪を押し返す。押し返された勢いでヒュージが後退りしたため、蒼太達との間に距離が出来た。
周囲のリリィが悲鳴や困惑の声を上げる中、蒼太は背後にいる後輩へと振り返ることなく声をかけた。
蒼太「ミリアム、その子を連れて下がって。早く!」
ミリアム「わ、分かった!お主、こっちじゃ!」
?「は、はいぃ!」
ミリアムが偶然持ち合わせていた自身のチャームと共にいたリリィの手を引いて距離を取る。それをマギの波長で確認した蒼太は、ハービンジャーを構えてヒュージを睨みつける。
蒼太「……どこから湧いて出やがったんだ?このクソ野郎が。今日は大事な日なんだよお呼びじゃねえんだわ」
蒼太の言葉に反応したのか、ヒュージが爪を構えて攻撃態勢になる。それを確認した蒼太は舌打ちをして姿勢を低くして足にマギを集中する。
そして周囲に居たリリィの髪や服を大きく靡かせる衝撃波を出しながら一直線にヒュージへと飛び込む。
一瞬の出来事で反応が送れたヒュージの顔面に下方からハービンジャーを振り上げる形で一撃を叩き込む蒼太。その勢いで弾き飛ばされたヒュージは、正面玄関に建てられている柱に激突し体の半分をめり込ませた。
さらに蒼太は追い打ちをかけようとハービンジャーを構えるが、ヒュージもやられてばかりではなく3本ある爪で反撃をしてくる。
蒼太は華麗な身のこなしでそれらを回避し、バランスを取りながら着地したかと思えば、めり込んだ柱から抜け出したヒュージに向かってさらに攻撃を加えていく。
ハービンジャーを盾のように使いながら攻撃を防ぎ、弾き返して隙が出来た一瞬で反撃を2発、3発と繰り出す。
蒼太の実力を知ってる者はヒュージの出現に驚きつつも慌てる様子はなく、蒼太が当然のように勝利すると確信していた。
しかし、蒼太はヒュージと交戦しながらどこか感じる違和感の正体を探っていた。
蒼太(こいつ、どこかで見たような気がするんだよなぁ……校外での戦闘中じゃない。確かこいつは……)
蒼太が次々に繰り出される攻撃を弾き返しながらヒュージの出処を模索する。そして思い出した1人の顔。
蒼太の同級生で、赤いメガネをかけたアーセナルの姿を。
蒼太「……工廠科にいた標本用じゃねぇか。百由何やってんだ……」
バク転で襲いかかる爪を避けながら、予想もしなかった答えに辿り着き呆れる蒼太。
蒼太「ある程度のダメージで抑えて生け捕りか?百由も無茶言ってくれる……」
可愛がっていたヒュージがバラバラになって肩を落とす友人の姿を思い浮かべ、蒼太はため息を付きながらも戦闘を繰り広げる。
絶命させずとも戦闘不能状態にするために、爪や関節部に集中して攻撃を行う。
そして最後の決め手となる攻撃を行おうとしたその時、背後に突然現れたマギを感知して蒼太が驚きの表情を浮かべるのと同時に、左後ろから自身の名を呼ぶ声が聞こえる。
亜羅椰「お兄様!加勢致しますわ!」
蒼太「っ!バカ!亜羅椰!」
亜羅椰は蒼太の焦る声を気にもとめず、目にも止まらぬ速さで一直線にヒュージへと突撃していく。
亜羅椰のアステリオンがヒュージのコアを捉えようとしたその時、突如としてヒュージから大量のガスが噴射された。
亜羅椰「わぷ!ちょっ、なによこれ!」
ガスに飲まれ見えなくなった亜羅椰の戸惑い声が真っ白の空間の奥から聞こえてくる。
そんな状況下でもヒュージのマギを感じ取ろうと意識を集中する蒼太は、亜羅椰の間合いに入り込むヒュージの爪を捉え、ガスの中へと飛び込んでいく。
蒼太「亜羅椰!伏せろ!!!」
亜羅椰「お、お兄様?!」
突然ガスの中から迷うことなく自分の元へ駆けてきた蒼太に驚く亜羅椰は、伏せろという命令に反応が遅れてしまった。
蒼太「っ!クソ、一旦引くぞ」
蒼太が亜羅椰を抱き抱えてその場を離れようとしたその瞬間、ガスの中から現れた鋭い爪が亜羅椰の首があった場所を掠め、爪から発生した衝撃波が蒼太の頬を引っ掻きながら再度ガスの中へと消え失せていった。
蒼太は亜羅椰を抱きながらガスの外へと逃げ出し体制を整えようとしたが、負のマギが遥か遠くへ去っていくのを感じ取ったため警戒を解いた。
蒼太「……逃げやがったな、クソッタレが」
ガスが晴れ、ボロボロになった地面の上でヒュージが去っていった方を睨みつけながら投げるように呟く。
そんな蒼太の腕の中で、亜羅椰は青い顔をしながら小さく震えていた。
蒼太「亜羅椰、大丈夫?怪我してない?」
亜羅椰「お、お兄様……お顔に傷が……」
青い表情をした亜羅椰の瞳には、右頬の傷から顎にかけて血を流している蒼太の顔が映されていた。
蒼太「ん?……あぁ、大丈夫だよ。亜羅椰が怪我せずに済んだからさ。ね?」
血を拭いながらそう笑顔で答える蒼太であったが、素直にその言葉を受け入れられるほど亜羅椰の焦りは軽いものではなかった。
「さてと」と亜羅椰を慰めながら共に立ち上がった蒼太が周囲を見渡すと、眉間に皺を寄せた見慣れた顔と目が合った。
史房「何をなさっているのですか?あなた達」
生徒会ブリュンヒルデ、出江史房がアステリオン片手に蒼太達の元へとやってきた。
史房「先程、校内の研究施設から生体標本のヒュージが逃走したと報告が入りました。出動可能な皆さんには、捕獲に協力していただきます……っ!蒼太さん、その傷は……」
史房が蒼太の頬に出来た傷に目をやると、そのまま背後にいる亜羅椰へと視線を移す。
亜羅椰が原因であると勘づいたのか険しい顔つきになる史房に、亜羅椰はそそくさと蒼太の背後へと隠れてしまった。
蒼太「その例のヒュージと一悶着ありまして、これはその時自分の不注意で付けた傷です。亜羅椰は関係ありませんから」
史房「ですが……」
蒼太「史房さん」
優しく柔らかい声で名を呼ぶ蒼太の目が史房に訴えかけると、諦めたのか小さくため息をついた。
史房「はぁ……では怪我の件に関しては目を瞑りましょう……蒼太さんと後ろの遠藤さんも、捕獲に協力してください」
蒼太「分かりました」
蒼太が史房からの指示で逃げたヒュージを追いかけようと背後を振り返ると、そこに先程までいた亜羅椰の姿はなく少し離れたところで壱に首根っこを掴まれてズルズルと引きずられていた。
亜羅椰「私の勝負うううう!全然戦ってない!!!」
壱「行くよー亜羅椰。お兄様、ご機嫌よう」
蒼太「ご機嫌よう、壱。亜羅椰をよろしくね」
亜羅椰「お兄様あああああああ!!!」
すっかりいつもの調子に戻り喚き散らす亜羅椰を見て小さく苦笑する蒼太は、壱に託して隅で小さくなっていた少女の元へ向かう。
蒼太「大丈夫?怖かったね」
?「い、いえ!大丈夫です!ほら、この通り!……わわ!」
そう言って立ち上がろうとした小さな少女は、足に力が入らず蒼太の方へと倒れてしまった。
蒼太「……大丈夫じゃないでしょ?」
?「は、はい……」
蒼太にもたれかかったその小さな体は恐怖からか小刻みに震えており、足にも力が入っていないようだった。
蒼太「あんな急に来られると怖いよねぇ……ちょいとごめんよ」
?「ふぇ?……ひゃあ!」
蒼太は少女の膝の裏へ腕を伸ばし軽々と持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこである。
?「あの!えっと!えぇっと……」
蒼太「星咲蒼太。2年生だよ」
二水「ふ、二川二水です!あの、蒼太様これは……」
蒼太「二水だね、よろしく。今歩けないでしょ。こういう時は上級生に甘えるもんだよ」
二水「あ、あう……」
顔を真っ赤に染めた二水は頭から湯気を出しながら蒼太の胸元へ顔を埋めてしまう。後ろで亜羅椰の絶叫が聞こえたがそれを無視しつつ二水を連れていこうとすると、小さな灰色の頭が蒼太の行方を遮る。
ミリアム「なんじゃ?早速落としたのか」
蒼太「ミリアム、そういうこと言わないの」
自身のユニークチャーム、ニョルニールを肩に担いでジト目になっているミリアムが蒼太を揶揄う。
ミリアムは高等部進学と共に工廠科と進んだため同じ工廠科の百由と交流があり、その繋がりで蒼太とも顔見知りであった。
ミリアム「ほぅ……相変わらずの無自覚じゃの。そこのお主」
二水「は、はい!」
ミリアム「ライバルは多いぞ?せいぜい頑張るのじゃ。ま、その1人であるワシを倒せればの話じゃがな」
少し頬を赤らめ胸を張りながらそう言うミリアムだが、彼女の言葉に今どれだけのリリィが敵意を生んだことだろうか。
「無自覚は君だ」という言葉を飲み込んだ蒼太は、はいはいとミリアムの頭を撫でて、ミリアムに対するいくつかの冷たいマギに冷や汗をかきながらも、二水含め実戦経験のないリリィ達を連れて一時的な待機場所とされた体育館へと連れていこうとする。
その時背後で聞こえた声に蒼太の足が止まった。
?「私もお供します!」
楓「なんですって?」
?「お役に立ちたいんです!」
先程の桃色髪のリリィが、夢結と楓の2人と共にヒュージ捕獲へと同行しようとしていた。
夢結「……いらっしゃい」
夢結は少し考えた後に共に来るように言って1人歩き出してしまう。楓がそれを慌てて追いかける後ろで発せられた名に、蒼太の記憶が覚醒する。
梨璃「あの、私一柳梨璃っていいます!」
振り返らずに聞くその名に、蒼太は小さく笑う。
二水「……蒼太様?」
蒼太「……ん、なんでもないよ」
蒼太の頭の中に蘇る、薄れていた2年前の記憶。ヒュージ相手に友を守ろうとした勇敢な少女の姿を思い浮かべ、蒼太は心の中で呟く。
蒼太(……立派になったね、梨璃)
アニメ1話を3つに分けるという計画性の無さが出てますね。
また無意識に1人落とす蒼太君でした。
次回はアニメ第1話分を完結させるために少し長めになるかと思います。
ホント計画性ないですね()
次話もよろしくお願いします。