愛を知らない死神と戦場を舞う少女たち   作:シッシー@連載中

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ついつい停滞してしまいました……

私生活でバタバタしておりまして、半分ほど書いたところで執筆が止まっていました。楽しみにされていた方、申し訳ございませんm(*_ _)m

それではごゆるりとお楽しみください。




第6話

少々興奮気味の百由に背中を押されながら、高等科の廊下を歩いていく。その後ろから、「百由様ー!」と静止を促す声が聞こえてきた。

 

 

 

壱「も、百由様!お兄様をどちらへ……」

 

百由「あら、愛しのお兄ちゃんが心配かしら?大丈夫よ。ちょっと確認したいことがあるだけだから、取って食うわけじゃないわよ」

 

 

 

壱は百由の言葉に顔を赤くし「そ、そういう訳では……」とそっぽを向く。

 

 

 

?「でも百由?一体何を……」

 

百由「簡単な身体検査みたいなものよ。あなたのマギ保有量とかレアスキルとか、リリィとして百合ヶ丘に身を置くならきちんと調べないとね」

 

茜「でも、お兄ちゃんはまだ本調子じゃないのよ?今すぐじゃなくたっていいんじゃないかしら?」

 

百由「今すぐじゃないといけないのよ」

 

 

 

そう言うと、百由は立ち止まって5人に向けて説明をする。

 

 

 

百由「昨日彼のチャーム、ハービンジャーを調べてたのは知ってるでしょ?あれは、並大抵のリリィには扱えない代物だったのよ。彼は療養室でいとも簡単に展開してたけど、実際はかなりのマギが必要なはず。それこそ、天葉でさえもまともに扱えるか分からないわ」

 

茜「あの天葉ですら……」

 

?「天葉?」

 

百由「百合ヶ丘……いや、現役リリィの中でもマギ保有量がトップクラスなの。あの彼女のマギでさえ、ハービンジャーを起動させるのは一筋縄じゃいかない。それを簡単にやってのけたあなたのマギは、本調子ではない今じゃないとおそらく設備の限界を超えて測定が出来ないと思うの。それに、ずば抜けて高い数値でリリィとして登録しちゃうと、万が一存在がバレた時に政府やG.E.H.E.N.A.がなんて言うか分からないし、フィルターを掛ける目的もあるのよ。ま、理事長代行はそんなヘマしないはずだけどね」

 

弥宙「お兄様が本調子の状態だと、何かと都合が悪くなってしまう……ということですか?」

 

百由「そういうことよ。ところで、今は本調子が100としてどのくらいまで体調は回復してるかしら?」

 

?「んー……5割ってところかな?」

 

百由「5割がどんなもんか分からないけど、急いだ方がいいわね!」

 

?「ちょ、ちょっと百由!?」

 

 

 

百由は少年の手を取り廊下を駆けていく。2人が手を繋いでいる姿を見て、頬を膨らせる少女達。彼女らのその不満が今後どのような形で少年に向かうかは、当の本人はまだ知らない。

 

 

 

 

 

そんな百由達と共にやってきたのは、校舎の端に位置する、窓のない巨大な空間であった。数名のリリィがチャームを持ち、訓練に励んでいる。

 

 

 

?「うへぇ広い……ここは?」

 

百由「凄いでしょ?うちの学院で1番大きな訓練場よ。ここでテストをしてもらうわ」

 

?「テスト……まぁ、学科じゃなさそうだね」

 

百由「その通り!これからやるのは実戦に基づいたテストよ。これをご覧なさい!みんなー、ちょっと悪いんだけど離れてー!」

 

 

 

百由は訓練中のリリィ達にそう言うと、手に持っていたパソコンを叩く。するとガゴンという重い音と共に床の一部が降下していく。しばらくして上昇してきた床にいたのは、通常とは形状が一部異なるラージ級サイズのヒュージであった。

 

 

 

?「っ!ヒュージ!?」

 

 

 

少年がハービンジャーを展開して大剣モードにし構えると、百由が静止に入る。

 

百由「ちょちょちょ待って待って!これは私が作り上げたメカヒュージ、その名も"メカルンペルシュテルツヒェン君MkS(マークエス)"よ!」

 

?「……は、作った?それとなんて?」

 

百由「だから、メカルンペルシュテルツヒェン君MkS!今からあの子と実戦形式のテストをしてもらうわよ」

 

?「……えぇと…実戦ってことは、つまり僕はこのメカルン……君と戦えばいいってわけ?」

 

百由「その通り!メカルンペルシュテルツヒェン君MkSは交戦することでリリィの基本情報や戦闘力などのデータ収集ができる、特殊な装置を積んであるの。実際の戦闘を行わなくても、安全にテストが出来るわ。」

 

弥宙「百由様、本当に安全でしょうか……?この間も、メカヒュージ暴走してませんでした?」

 

百由「大丈夫よぉ、何度もプログラムを見直して、各システムのエラーも虱潰しに確信してるから。あ、それとこれ腕に巻いてね。血圧とか色々調べられるブレスレットだから。よし、じゃあこっち来て!ほらほら早く!」

 

?「ちょ、ちょっと……」

 

 

 

言われるがまま百由に手を握られメカヒュージの前に連れて行かれる少年。その後ろ姿を、心配そうに5人の少女達が見つめていた。

 

 

 

樟美「いっちゃん、大丈夫……だよね?」

 

壱「多分……お兄様なら仮に暴走しても抑えられると思うし」

 

茜「百由、もしお兄ちゃんに怪我なんてさせたら怒るわよ……」

 

弥宙「その時は私も一緒に説教するよあかねぇ」

 

月詩「私もー!」

 

 

 

そんな元気な月詩の声を背中で聞いた少年は、「全く……」と小さく笑いながらメカヒュージの前に立つ。

 

 

 

百由「弾丸で色々やらせちゃってごめんねぇ」

 

?「大丈夫だよ。ハードワークは慣れっこだからね」

 

 

 

少年が笑いかけると、にへっと笑って百由も答える。

 

 

 

百由「じゃあ始めるわよ!メカルンペルシュテルツヒェン君MkS起動!」

 

 

 

百由のその一言で、メカヒュージの目に光が灯る。ガゴンと重い音を立てて、メカヒュージが起動し少年を捉える。百由はそれを見届けると、伍人組の元へ戻り腕を組んで少年の背中を見守る。

 

 

 

?「来いよ……」

 

 

 

彼の声に答えたのか、メカヒュージが一瞬動いたかと思えば、その鋭い腕が少年を目掛けて迫る。その速度は、並大抵なリリィですら反応が難しい速度であった。

 

一瞬の速さで迫る攻撃を、少年は大剣状態のハービンジャーで防ぐ。メカヒュージの攻撃と少年のマギの衝突で、訓練場内にはバリバリッと空気の割れる音が響き渡り、周辺で見学していたリリィ達は耳を塞いだ。

 

メカヒュージの攻撃を弾き返すと、足にマギを集中させ、さらに攻撃を重ねてくるもう1つの腕をジャンプで避け一気にメカヒュージに対して距離を詰める。

 

 

 

?「そりゃあ!!」

 

 

 

ハービンジャーをメカヒュージの頭部に叩きつける。鈍い音と共にハービンジャーのブレードが装甲を叩き割りめり込んでいく。しかし、腕を振り回して少年に打撃を与えようと攻撃を仕掛けてくるため、1度メカヒュージから離れ地面に着地する。

 

それを狙ったかのように、2本の腕が攻撃を畳み掛けてくる。少年はハービンジャーを巧みに操り、連続で攻撃をしてくる腕を弾き返す。その動きは全くの無駄がない動きであった。

 

上下左右、不規則に責めてくるメカヒュージの腕を一つ一つ弾き返しながら、確実にダメージを与えていく。そのせいか、メカヒュージの腕には僅かにヒビが入り始めていた。

 

少年はメカヒュージの2本の腕を同時に抑え込むと、ハービンジャーにマギを集中させ弾き飛ばす。バランスを崩され隙が出来たメカヒュージに対し、距離を詰めて攻撃を加えていく。

 

走ってメカヒュージに近づくと、姿勢を低くし腹の下へと滑り込んでハービンジャーをショットガンに変形させて弾丸を撃ち込む。甲高い悲鳴を上げたメカヒュージに対し、滑り込んだ勢いでぐるりと背後に回りこみ大剣モードで装甲を斬りつけていく。それでも収まることのないメカヒュージの攻撃をひらりとかわしながら続けて攻撃を加えていく。

 

その姿に、見学していた伍人組始めリリィ達は言葉を失っていた。

 

 

 

茜「す、凄い……」

 

百由「死神……ヒュージを殲滅させるなんて聞いていたけど、ここまでとはね……」

 

弥宙「やっぱりお兄様凄い……!」

 

月詩「カッコイイ……」

 

 

 

立て続けに攻防を繰り返す少年であったが、一瞬の隙を見てメカヒュージから離れ距離を置く。全く上がっていない息を小さく吐き、あちこち傷だらけのメカヒュージを睨む。向こうも、こちらを睨みつけるように腕を上げ攻撃態勢に入る。

 

 

 

?「やるか……」

 

 

 

そう一言呟くと、ハービンジャーにマギを集中させていく。マギクリスタルにルーン文字が浮かび上がると、ガシャガシャと音を立てて巨大な鎌へと変形する。それを右の脇に添える形で構え、姿勢を低くしメカヒュージを睨みつける。

 

少年の足元に魔法陣が浮かび上がると、周辺のリリィ達の髪や制服を大きく靡かせる衝撃波を生み出しながら一瞬でメカヒュージと距離を詰める。

 

突然の事で反応が遅れたメカヒュージに対し、車のタイヤのように体を回転させながら脇に添えたハービンジャーを使って連続で斬りつけていく。

 

そして背後に回り込み、巨大な鎌を振り回しながら攻撃を仕掛けてくるメカヒュージの腕や足をバラバラに斬り裂いていく。その攻撃はヒュージを殲滅させる、まさに"死神"そのものであった。

 

足を失い、バランスを崩したメカヒュージの頭頂部目掛けて、少年はハービンジャーを構えて舞い上がる。そして、落下する勢いを使い回転しながらメカヒュージを真っ二つに斬り裂いた。

 

ヒュージはコアを破壊されると大爆発を起こすため、少年はその場から離れた所へとジャンプし身のハービンジャーを構えて安全を確保する。しかし、相手はメカヒュージであり、真っ二つにされた体は目から光を失いながらガラガラと音を立てて崩れていく。それはテストが終了した合図でもあった。

 

肩に鎌を担ぎ、メカヒュージが崩れる際に発生した風で靡くマントを纏い、亡骸に視線を送る少年の姿を、その場にいたリリィ達は言葉が出ずにただ見つめていた。

 

 

 

 

 

咬月「規格外の戦闘力……とな」

 

百由「いやー驚きましたよぉ。あのメカヒュージの戦闘力はほぼギガント級に近いレベルで調整していたんですが、いとも簡単に真っ二つにされちゃうなんて」

 

史房「ま、真っ二つ?!百由さんの作ったメカヒュージがですか?」

 

百由「そうなんですよぉ。それはそれはもう綺麗にパッカーンと」

 

史房「私も見たかった……」

 

咬月「彼もこの学院のリリィの1人だ。戦闘の見学の機会はまだある。また次の機会を待つとしよう。それで、収集したデータは?」

 

百由「こちらです。まぁなんとなく想像はついているかと思いますが、マギ保有量は学院内1番ですかね。1度の攻撃で使われるマギ、移動速度、戦闘時の血圧、心拍数、血管内の酸素量、戦闘後のマギ保有量……全て規格外です。まさに、世界最強と謳ってもいいレベルですね。彼自身は本調子ではないとの事ですが……」

 

史房「世界最強……レアスキルは?」

 

百由「まだ未確定ですが、マギを巧みに使用しています。メカヒュージはリリィが訓練の相手として戦えるように人工的に発生させたマギで作動しますが……その……あくまでも仮定の段階ですが、マギを視認しているようです。」

 

咬月「……マギが可視化して見えている……という事かね」

 

百由「可能性の段階ですが、有り得ます。全てのマギの流れをその目で判断することによって、相手の攻撃に関する動きを先読みしたり出来る。実際、茜の乱れたマギに気付いてマギ交換を行っていますので、リリィやヒュージ問わず全てのマギを可視化することが彼のレアスキルだと考えても良いかと」

 

咬月「ふむ……尚更学院で保護する理由が出来たな……ご苦労であった」

 

百由「いえいえ〜。では理事長代行、史房様、ごきげんよう。」

 

 

 

笑顔で部屋を後にする百由を見送り、咬月が口を開く。

 

 

 

咬月「……出歯亀はこういったことに敏感だ。彼を学院の最優先保護対象とし、学院周囲の警戒レベルを上げる。」

 

史房「了解しました。日中、及び夜間の見張り担当のリリィに通達を出します。」

 

咬月「うむ。」

 

 

 

史房は咬月に頭を小さく下げ、受け持った仕事のために部屋を後にする。

 

 

 

史房(出歯亀って、何……?)

 

 

 

これがジェネレーションギャップであることを史房はまだ知らない。

 

 

 

 

 

彼が百合ケ丘女学院に来て1週間が経ち、最初は男のリリィとして警戒していた生徒達もすっかり打ち解けた。

 

メカヒュージとの戦いの様子は瞬く間に学院全体に広まり、放課後には日が落ちるまで是非戦術を教えてほしいと彼の療養部屋に生徒達が押しかけていた。

 

そんな平和な日々な続いていた百合ケ丘女学院のロビーには、朝から人だかりが出来ていた。

 

色めき立つ少女達の目線の先にあるのは、掲示板に貼られた1枚の生徒会による通達であった。

 

 

 

 

 

 

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生徒会より各位

 

先日より公募していた殿方の名前が決定したので、下記の通りここに通達する。

 

 

 

 

 

命名:星咲 蒼太

かな:ほしざき そうた

 

 

 

命名者

 

普通科1年椿組 天野 天葉さん

 

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脇に添える構えはルビーから持ってきました。タイヤのようにグルグル回るのはクロウも使ってる戦い方ですね。

いや戦闘シーン難しいわこれ……

名前がやっと出せました。ここまで長かった。

天葉が名付け親であることと、名前の由来は次回出せたら……いいなぁ……
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