愛を知らない死神と戦場を舞う少女たち   作:シッシー@連載中

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明けましておめでとうございました

私生活で流行病にかかったりデスマで地獄のような残業をしたりと執筆はちょこちょこやりつつも全く活動が出来ませんでした……

第7話は少しだけ短めです。某シュッツエンゲルの二人との絡みを持たせたかったので。

それではごゆるりとお楽しみください。


第7話

史房「蒼太さん、あなたを百合ヶ丘女学院普通科1学年椿組への編入を正式認可致します。これからよろしくお願いしますね」

 

 

 

朝の名前が公表された後、蒼太は史房に呼ばれて理事長室へと招かれた。そこには生徒会の3名と理事長代行の咬月がおり、蒼太の1年生への正式編入の手続きが行われていた。

 

笑顔の史房からは小さな手帳が渡される。それは百合ヶ丘女学院の生徒であることを証明する生徒手帳であった。

 

中には学院の校則や制度、非常事態の際にすべきことなどが、簡潔でありながらも分かりやすくまとめられている。そして、背表紙には蒼太本人の身分証明が記載されていた。

 

 

 

蒼太「ありがとうございます、史房さんのようなお強い方と同じ学院に在籍出来て光栄です」

 

史房「いえいえ。私も最強と謳われる貴方を後輩に持てることは何よりの誇りですから」

 

 

 

普段規律に厳しく堅い史房も、この時ばかりは心底嬉しそうな笑顔で蒼太に答えていた。その笑顔に、「女子校の生徒となる唯一の男子」として少々緊張していた蒼太も笑顔になる。

 

 

 

咬月「これから何かと迷惑もかけるかもしれんが、よろしく頼む」

 

蒼太「はい、こちらこそよろしくお願いします。理事長代行」

 

 

 

理事長席から立ち上がり、蒼太の近くまで歩み寄って手を差し出す咬月に、蒼太は笑顔でその手を取る。晴れて百合ヶ丘女学院の生徒となった蒼太に対し、生徒会3名は拍手で出迎えたのだった。

 

 

 

 

 

蒼太「えっと、これは持ってくかぁ。あぁ、これは有難く頂いていこうかな」

 

 

 

理事長室から療養棟に戻った蒼太は、学院に保護されてからほぼ自室と化していた部屋の片付けをしていた。

 

編入の手続きが終わった後、理事長室にやって来た特別寮の支配人を務めるシェリス・ヤコブセン教導官と顔合わせをし、部屋番号のタグがついた鍵を渡され、特別寮への入居が許可された。引越しの真っ最中である。

 

 

 

コンコンコン——

 

蒼太「はい、どうぞー」

 

?「失礼致します」

 

 

 

片付けをしている蒼太の元に、1人の生徒が訪ねてきた。光沢のある紫色の長い髪を靡かせるお淑やかな雰囲気の生徒は、記憶力の高い蒼太ですら思い出せない……と言うよりは初めて会うリリィであった。

 

 

 

若菜「初めまして。わたくし、2年生の槇若菜と申します。噂の蒼太さんと1度お話してみたかったのですが、お邪魔でしたでしょうか?」

 

蒼太「初めまして。1学年に編入になります、星咲蒼太と申します。どうぞお構いなく」

 

 

 

蒼太は若菜に笑顔で返すと、椅子を2つ取り出して若菜を促す。その1つにお礼を述べて若菜が腰掛け、それを見てから蒼太もベッドに座り込む。

 

 

 

蒼太「ごめんなさい、今引越しで片付けの真っ最中で散らかり放題なんです……」

 

若菜「いえいえ、こちらこそ急に押しかける形になってしまって申し訳ありません……あら。蒼太さん、椅子が1つ多くありませんか?」

 

蒼太「質問に質問で返す形になってしまい申し訳ありませんが、そちらの方はよろしいんですか?」

 

 

 

蒼太が部屋の出入り口を指さすと、若菜は頬に手を添えて「あらあら」と困ったように声を出した。

 

 

 

若菜「まぁ、どうしましょう。もう気付かれてしまいましたわ……流石ですわね。ふふっ、こちらにいらっしゃい」

 

 

 

若菜がそう言うと、開いた出入口にひょこっと小さな頭がこちらを覗いた。その顔とその人物が持つマギに、蒼太は見覚えがあった。

 

 

 

?「姉様……」

 

蒼太「あれ、あなたは……」

 

若菜「ご紹介致します。わたくしの愛しのシルト、天野天葉です。ほらソラちゃん、ご挨拶しましょう?」

 

 

 

天葉と呼ばれた少女は若菜の隣までやってくると、何故か真っ赤にした顔で小さく口を開いた。視線は蒼太の方を向かず、あちこちあちこちに旅をしてしまっている。

 

 

 

天葉「あ、天野……そら、は……です……ぅぅぅぅ………」

 

 

 

か細く自分の名前を言うと、顔をうずめる形で若菜に抱きつき背後へと隠れてしまった。

 

 

 

蒼太「えぇと……星咲蒼太です。若菜さんのシルトってことは1年生……同い年だね。よろしく」

 

 

 

その声に反応した綺麗な金髪の頭は、こくりと小さく頷いた。

 

 

 

若菜「あらあら、ごめんなさい。少し緊張してるみたいで……ほらソラちゃん、椅子を用意してくださったのだからこちらに座りましょ?」

 

 

 

若菜は天葉にそう促し、当の本人は真っ赤な顔を俯かせながら素直に椅子に座る。

 

 

 

蒼太「素性もあやふやな男性といきなり仲良くなれる人なんてそうそういないですよ。お気にならさず」

 

若菜「実はそんなこともないんですよ?」

 

天葉「っ!姉様!」

 

若菜「あらあら、ごめんなさい。これ以上はお節介かしらね。ふふっ」

 

 

 

そう言うと若菜は天葉の頭を優しく撫でる。俯き気味の真っ赤な顔は更に赤みを増し、今にも湯気が出てきそうな状態であった。

 

 

 

蒼太「天葉って……もしかして僕の名前を付けてくれた人?」

 

 

 

その言葉に、天葉の肩が大きく跳ねる。それを見て、若菜は口元を手で押さて小さく笑う。

 

 

 

若菜「ふふ、そうですよ。蒼太さんが初めて来たあの日からソラちゃんときたらずっとあなたのことばかりで……ね?」

 

天葉「ね、姉様ぁ!」

 

蒼太「あまり深く聞くと僕も恥ずかしくなりそうな……」

 

 

 

若菜曰く、天葉は療養棟に蒼太を運び込んだ1人であり、あの日以来蒼太の安否を非常に気にかけているとのこと。基本誰とでも隔てなく交流を持てる天葉だが、蒼太のことになると人一倍敏感になっているようだ。

 

 

 

天葉「ううぅ……」

 

耳まで真っ赤に染め上げた顔を両手で隠し、何時ぞやの茜のようになってしまった天葉。そんな天葉に、蒼太は感謝の言葉を口にする。

 

 

 

蒼太「ありがとう。ここに来てまだ友達って言える人が少ない……というかほとんどいないから、そうやって気にかけてくれる人がいて嬉しいよ。片手、貸してくれる?」

 

 

 

天葉は蒼太に促されるように右手を差し出す。その手を取り、蒼太は乱れたマギを鎮めていく。その力強くも優しいマギを感じ、若菜は感服の眼差しで見つめる。

 

 

 

蒼太「落ち着いた?」

 

天葉「……うん、ありがとう。スッキリしたよ」

 

 

 

笑顔で答える天葉。その顔には、もう緊張で赤く染ってしまう雰囲気など微塵も感じなかった。

 

 

 

蒼太「あ、そうだ。せっかくこうやってお話する機会なので、お茶菓子でも如何ですか?」

 

 

 

そう言うと、蒼太は部屋の棚から個包装になった和菓子の詰め合わせを取り出した。それを見て、若菜の顔が綻ぶ。

 

 

 

若菜「まぁ、ありがとうございます。ではわたくしはお茶でも淹れさせていただきますわ」

 

蒼太「若菜さんはお客様ですから、ゆっくりして頂いて大丈夫ですよ」

 

 

 

蒼太が笑って返すと、若菜は心底嬉しそうな笑顔になる。

 

蒼太が備え付けのケトルで湯を沸かし、お茶の準備をしてる背後で何やらコソコソと話し声が聞こえてくる。蒼太はその内容が聞き取れなかったが、女性の内緒話に聞き耳を立てる趣味は持ち合わせていないので気にせず準備を進める。

 

 

 

蒼太「こんなものしかありませんが、お待たせしま……した?」

 

若菜「あら、ありがとうございます……ん?あぁ、お気になさらず。ふふっ」

 

 

 

なんの事かと笑顔を向ける若菜の隣で、頬を少し赤らめてモジモジと体をくねらせる天葉。蒼太は頭の上に?を浮かべながらも、用意したお茶や茶菓子をテーブルに並べる。

 

 

 

蒼太「どうぞ」

 

若菜「では、いただきます……ズズ……あら、とても美味しい」

 

天葉「いただきます……」

 

 

 

お茶を飲み、少し天葉が落ち着いたところで世間話に花を咲かせる3人。互いの好きな物や戦術のことなどと、女子高生らしい会話からリリィとしての会話まで時間を忘れて語り合い、静かな療養棟には賑やかな3人の笑い声が響き渡った。

 

そんな楽しい時間もあっという間に過ぎ、気が付けば空は夕焼けに染まっていてまもなく夕食の時間であることを時計の針が知らせていた。

 

 

 

若菜「蒼太君、本日はありがとうございました」

 

蒼太「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございます」

 

 

 

親しみを込めた呼び方で名を呼ぶ若菜の、綺麗なお辞儀に笑顔で返す。そんな若菜の隣で、頬を少しだけ赤くした天葉が声を上げる。

 

 

 

天葉「あ、あのさっ!」

 

蒼太「?」

 

天葉「また、遊びに来てもいい……かな?」

 

 

 

少しばかりの緊張が入り交じった声に、蒼太は笑顔で天葉の頭を撫でながら答える。

 

 

 

蒼太「うん、いつでもおいで。明日からは特別棟の部屋にいるからね」

 

天葉「……っ!うん!」

 

 

 

満面の笑みで答える天葉。その2人の様子を見て、若菜は優しく微笑むのだった。

 

部屋を後にする2人。その後ろ姿に、蒼太は声をかけた。

 

 

 

蒼太「あ、天葉」

 

天葉「ん?」

 

蒼太「もし用があるならいつでも言っていいからね。わざわざ隠れながら追いかけてこなくても大丈夫だから」

 

天葉「……え?」

 

 

 

今日初めて、天葉の顔が青くなった瞬間であった。

 

 

 

 

 

若菜「……ねぇ、ソラちゃん」

 

天葉「はい、姉様?」

 

若菜「蒼太君……カッコよかったわね。ふふっ」

 

天葉「……っ!」

 

 

 

若菜の言葉に、驚きの表情をする天葉。天葉が蒼太を気にかけていたのは紛れもない事実であるが、若菜もまた、男性との友好関係がない年頃の少女であるため今回の1件で蒼太に対し僅かではあるが心を寄せるようになった。

 

 

 

若菜「あらあら、そんなに驚いたかしら。わたくしだって人間だし一人の女の子ですもの……ふふっ、一先ずはお近づきになれて良かったわね」

 

天葉「……はい、とても嬉しいです。いつでもおいでって言ってくれました……えへへ……」

 

 

 

今日のことを思い出し、また赤くなった顔の両頬に手を添えて、体をくねらせながら嬉しそうに答える天葉。それを見て、やれやれと呆れながらも愛くるしさに小さく笑みを零す若菜。

 

天野天葉。学院1のマギ保有量を持ち身体能力も高い有能なリリィ。

 

槇若菜。戦術理解が高くノインヴェルト戦術やヒュージとのデュエルも完璧にこなす有能なリリィ。

 

誰もが実力を認め尊敬するそんな2人は、あの死神に一目惚れした、恋する乙女である。

 

 

 

天葉「そういえば姉様。潔癖症なのに蒼太のお部屋は大丈夫だったのですか?」

 

若菜「蒼太君ばかり見てたからお部屋の状態なんて気にしていなかったの」

 

 

 

愛は潔癖症すら無効化する。頬に手を添えて照れた表情の若菜を呆れた表情で見つめる天葉は一つ学んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

史房「……それで?若菜さん達とのお話が楽しくて引越しが進んでいない……と?」

 

蒼太「そればかりは本当にごめんなさい」

 

史房「よりにもよって若菜さんとだなんて……羨ましい……」

 

 

 

その後、蒼太は部屋の電気が付いていた為様子を見に来た史房に引越しが済んでいないことを咎められていた。

 

ダンボールの山を前にへたり込んでいる蒼太に駆け寄り何事かと聞けば、全く終わっていないとの事だったので、余計な心配をしたと呆れつつ本日中に引越しが終わるように手伝いをしている。

 

 

 

史房「……意外でした」

 

蒼太「?」

 

史房「蒼太さん、強くて優しくて礼儀もしっかりしているので、非の打ち所が無いお方だとばかり思ってました」

 

 

 

史房は蒼太の方を向き、小さく笑いながら答える。その笑顔に、「皆さんが思ってるほど出来た人間ではないですよ」と返しながら荷物をまとめていく。

 

ふと外を見ると、満天の星空と満月の月明かりが百合ヶ丘女学院の校庭を照らしていた。物音一つしない静かな夜は、ここが戦場の前線であることを忘れさせる。

 

蒼太はそんな夜空を見上げて、ふと1年前にヒュージから助けた1人の顔を思い出した。

 

 

 

(……彼女がもし生きているなら、この空を見上げているだろうか……)

 

 

 

ヒュージに追われながらも勇敢に友を助けようとした、勇気ある桃色の髪の少女。

 

百合ヶ丘での生活が楽しくてすっかり忘れていたが、あの日と同じ満天の星空を見上げ、蒼太はあの名も知らぬ優しく強い少女に思いに耽ける。




若菜様の喋り方って難しいですね。新潟奪還戦でもそれほどセリフがあった訳でもなかったですからねぇ。

最後の少女は皆さんお馴染みの子です。どう関係が出来ていくかはブーケ編で書いていきますわ。

投稿に期間が空いて申し訳ございませんでした。次回もどうかお待ちいただけると幸いです。


【3月2日】最後の箇所の「四葉の髪飾りを付けた少女」を削除致しまた。ブーケを見返して気付いたんですが、2年前はまだ付けてなかったんですよねぇ……はい、あの子ですよ。

いずれ登場しますので、しばしお待ちを……
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