「……うっ……あ、れ?ここ……は」
IS学園に併殺されている医療施設、そこの個室のベッドで目を覚ました一夏は掠れた声を上げる。
「一夏くん!?」
そんな目覚めた一夏に反応して看病していた榛名が座っていた体を起こし一夏が目覚めたことにほっとして笑みを浮かべる。
「俺って……確か……」
「Ⅰ組のイギリス代表候補と戦たんだ」
「そうか……俺……負けたんだ」
一夏の脳裏に浮かぶのは後少しで勝てそうな場面で機体トラブルに見舞われ無数のレーザーが降り注いできた光景。
あの時の一部始終を思い浮かべた一夏は体の底から恐怖で震え上がり、息づかいも荒くなっていく。
それを見た榛名は一夏を抱きしめて落ち着かせる。
「大丈夫、もう大丈夫だから」
「……榛……名……」
暫くして落ち着きを取り戻した一夏はそのまま榛名と大人なキスをする。そこに大切な恋人がいることを確認するように
「榛名は……榛名はどこにも行かないよな?」
「うん、行かないよ」
一方その頃……
IS学園から離れた東京の工業街区、ある理由で無人となった廃工場の前に身を隠しながら、工場に入り込もうとする2人の少女
「かんちゃん、本当に大丈夫?」
「うん。相手はテロリストだけど、こっちには打鉄二式があるから」
あんまり使いたくはないけどねと、少し俯く簪。
簪、そして従者である本音は叢雲を奪ったテロリストの居所を更識家の力を使い特定、叢雲の奪還のためにこうしてこの場にやって来た。
「それじゃあ……行くよ」
簪の声と共に護身用として持っている拳銃を手に持ち、廃工場の門をくぐる2人
そしてその先に待っていたのは先程の光景から一変して白銀の世界が広がっていた
「……………………………………え?」
あまりの非現実的な光景に思考が止まり拍子抜けした短い声を呟く簪。
隣にいる本音もまた言葉にはだしていないが簪と同じように固まっている。
「どういう……こと?」
少し止まっていた思考を動かす簪は先ず、この光景を見渡す。
先程まで見えていた光景とはあまりにも似つかない光景……
少し考えた後、簪通ってきた門を再び抜け、廃工場を見る。
そこに映るのは先程までの白銀の世界ではなく静まり返った廃工場のみ……いやそこにいた本音すら見えない。
再び門を通ると先程見た光景とまだそこで棒立ちの本音の姿も確りとあった。
「認識が変わってる?」
アニメで見る認識阻害みたいなもの?
アニメ好きな簪にとってそれは知識として持っていたものだった。
今見ている光景こそが現実に起きていることで外からは何も変哲もない廃工場として映っていて外の人達には気づかない。
「でも、ありえるの?」
(そんな技術、どこの国も作り上げたなんて話は聞いたこともない)
考えるだけ疑念が深まる中、簪は本音の隣に戻り、本音を正気に戻すと警戒心を強めて建物の中に入ろうとした矢先、声が響いた。
「まさか、短時間でこの場所に辿り着くとは……」
変声機を使っているのか性別は判別できない。
そんな声に釣られて2人は建物の上を見上げるとそれは泰然と立っていた。
全身を黒いフード付きローブで覆い、フードを深く被っていることから素顔すら見ることは出来ない。
そんな謎の人物は建物から飛び降りる。
大凡2階ほどの高さのあるそれを迷うことなく飛び降り不自然なほど静かに着地した。
「っ!打鉄二式!」
異様な光景を目撃した簪は直ぐさま、填めている指輪……打鉄二式の起動させて展開すると薙刀の夢現を構える。
咄嗟のことで本音も驚きの声を上げる中、ISを展開されている状態でも未だに平然としている謎の男は少し感心した声で語りかける。
「いい判断だ。危険を察知して出し惜しみ無しに武器を構える」
「……」
「ああ、安心するといい、別にあなたたちに事を構えるつもりは無いから」
と手をふらふらして無害アピールする謎の人物。それでも警戒心を解かない簪に謎の人物は少し困った雰囲気と何処となく納得している雰囲気を醸しだす。
「それに、君達が来てくれたお陰で色々と手間も省けた」
「それってどういう…… 」
簪が言い終わる前に謎の人物は右手を上げて指を鳴らす。
鳴らした瞬間、この廃工場を覆っていた白銀の世界はパリンといった割れた音と共に砕け散り、外で見ていた光景と同じになる。
「何を!?」
「立った今この廃工場全体を凍らせていた氷を解除しただけだ」
「凍らせて……いた?」
わけがわからない……謎の人物の言動に更に頭を混乱させる簪、そんな簪に謎の人物は声を掛けて気を確りともたせると左手に握っていたあるものを簪へ向けて投げる。
投げたものを少し慌てて受け取ると受け取ったものをみて驚き、再び謎の人物を見る。
「叢雲!?どうしてこれを……」
「本来なら九重コーポレーションに返しに行こうかと考えたが所属である君が来てくれたから、君からそれの所有者に渡してくれないか?」
「……あなたはどうしてそこまで……」
叢雲をいとも簡単に手放した謎の人物に戸惑いを隠せない簪。一夏以外が使うことも出来ない叢雲だが……その気になれば何処かの企業や国に高値で売りつけることも出来たはずがそれをしなかったことに不思議に思った。
「それに関しては語るつもりはないです。それと、建物内にいる気絶しているテロリストの身柄はお願いしますね。では失礼させてもらいます」
「ま、待って!?あなた何者なの?」
謎の人物はここでのやるべきことを終えたからか後始末を簪達に任せ、この場から去ろうとするが簪は慌てて待ったをかけて人物に何者なのかを訪ねる。
訪ねられた謎の人物は少し無言で考えるとあえて言うならと呟いた後、言葉を続けた。
「氷帝……そう呼ばれている……」
氷帝は名前を名乗った後、氷帝の周りが霧に包まれ、霧が晴れた後、そこにいるはずの氷帝の姿は消えていた。
「はい、お疲れユウキ」
廃工場から少し離れた人気のない路地。
そこにいた薄紫色の髪をした少女は先程の氷帝をユウキと呼ぶと彼女の視線の方からやってくる氷帝はため息を溢して頭を覆っていたフードを取る。
「ルー……どうして簪達が来たこと念話で知らせてくれなかったんだ?」
索敵してたんなら事前に察知もできただろう?と簪と遭遇することを避けたかったユウキはルーと呼ばれた少女を軽く睨むと少女はその視線を軽く流す。
「別に問題とかはないんでしょ?それで?IS学園に戻るのよね?」
「一応、今後のことでフェイトさんと話し合っているという建前で出てきたからね。長引かせると怪しまれる。」
それじゃあ転移を頼むとルーに声を掛けると二つ返事で了承し、ユウキの足元に魔法陣が展開された後、その上に乗っていたユウキは姿を消す。
転移を無事に見送った後はルーの足元にも魔法陣を展開すると彼女もまた姿を消すのであった。
翌日……
「俺が……クラス代表に?」
波乱の戦いから一夜が明けISのシールドのお陰で軽傷で済んだ一夏は翌日にはユウキと一緒に教室にやって来ていた。
教室に入ってきた当初クラスの女子達に駆け寄られ体の心配をされたが一夏は大丈夫と心配してくれたクラスメイトに言葉を返す。
そして朝のホームルームでフェイトがやって来て行事や連絡などを伝えた後、余った時間で一夏にⅢ組のクラス代表にならないかと訪ねてきた。
「うん……昨日のこともあって少し言いづらいのはあるんだけどね」
「……普通、このクラスで一番強いグランガイツが出るべきなんじゃ……」
「まあ、それはそう思うよね……」
遠慮気味のフェイトに一夏は自分ではなく昨日の決闘で全勝しているユウキが出るべきではともっともな意見を述べるが、フェイトもわかっている顔で苦い笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「ユウキに関しては……その……織斑先生から出場NGが出ちゃったの」
「……はあ!?」
「織斑先生曰く、ユウキが出たらクラス代表戦のバランスが崩壊する……って」
「…………」
なんだその巫山戯た理由は……
織斑先生の言い分は確かに聞こえはバランスのためと納得は一応出来るが……今のIS学園事情を考えれば、優秀な人材を固めているⅠ組の勝利は確実、一夏から見たら自分のクラスを脅かすユウキを取り除きたいという織斑千冬の私怨にしかみえなかった。
「あと、これに関してはユウキも了承済みだから彼の出場は無理だと思ってね?」
「ええっ!?」
続けてフェイトが口にした言葉に一夏は再び驚きユウキの方を見る。
ユウキもわかってましたと言わんばかりに苦い笑みを浮かべていて、少し言いづらそうに口を開ける。
「実は昨日のうちに相談されてまして……元々あまり目立ちたくもなかったので……その……」
ごめんなさいと両手を合わせて軽く会釈するユウキを見て少し言いたかった言葉も言う気を失せた一夏はため息を溢す。
「それに織斑くんも専用機、無事に戻ってきたみたいですし……打鉄でイギリス代表候補をあそこまで追い詰めたんですから今度はいけると僕は思いますよ?」
「……ああ」
ユウキの言葉に一夏は短く答え首からぶら下げている刀型のネックレスを手に持ち昨日の叢雲を渡されたときのことを思い出す
昨日の夕方頃に簪が来て、奪われていた叢雲は無事に一夏の元へ返ってきた。
ただ簪が取り戻す前に氷帝という謎の人物がテロリストを全て無力化していて叢雲もその人物が取り戻していて、一夏に渡すようにと簪に受け渡されたらしい
「……私も別に強制してるわけじゃないよ。クラス代表は立候補があればそうするし出たくないのであれば棄権っていう手もあるから」
「……いや、やります」
「一夏くん」
「大丈夫。俺もあんな形で負けて悔しいし……今度はこの叢雲で勝ってみたい」
「そっか……わかった。それじゃあⅢ組のクラス代表は織斑一夏くんに決まりました。これからよろしくね織斑くん」
フェイトの言葉に一夏は、はいと力強く応えると周りのクラスメイトも頑張れと声援を送られ、出場を決意した一夏を見て昨日の敗北でも折れていない。親友を見て他に気づかれないように微笑んだ。