これは……始まりの夢……そう……まだ僕が氷帝になる前の物語……
「……はぁ……はぁ……」
この日も僕は同じことを繰り返していた。
重い石材をロープで力一杯牽引して指示された場所に持っていく作業……
石材を運びきったらまた石材が置いてある場所へ直ぐにいってこれの繰り返し。
これがほぼ丸一日続く。
まだ年齢二桁に入ったばかりの僕に取ってそれはかなり無理な作業だった。だけど拒否権なんてない……あるのはやるか……死ぬかの実質選べるのは一つしかなかったから
ただこの作業をしているのは僕だけじゃない……他にも沢山いる。僕より若い子供やおじいちゃんまで老若男女かなり多い。
今日も三人ほど死んだ。死因は遂に力尽き死んだり、この場所の支配人達に反抗して殺されたり様々……
始めの頃は悲鳴を上げたり嘔吐した……だがそれが1カ月、2ヶ月と経過したら、なにも感じなくなった。
この施設全体にブザーが鳴り響く。これが今日の作業終了の合図だ。
この合図の後は仕事がまだ残っているもの以外は決められた収容部屋に戻り就寝する。
寝る前には食料も配布される。といってもパンや穀物少量に水少々と気休め程度だが……
なけなしのそれで腹をわずかながら満たすと直ぐに冷たい石の床で眠りにつく。
ただ、寝てたら体中痛いし、悪夢を見るから眠れない時もある。
それがこの施設で奴隷として働かされている僕の一日だった。
そして次の日も同じことが起きると思っていた。
「……??」
いつも通り、石材を運んでいた途中後ろ側から騒ぎ声が聞こえてくる。
ただ日本語で喋ってなかったから内容まではわからなかった。
いつもとは違う騒動に自然とその方向を振り返る。
そこにあったのは騒動を起こす暴徒と化した複数の人間と高電圧が流れる警棒を振るい、暴徒を粛正する支配者達の姿。
当時の僕は何が何だかわからなかったが恐らく、彼等は密かに進めていた脱獄計画がばれこうして粛正されているのだろう。
だがそうもいかなかった。
1人が支配者達をくぐり抜け、半狂乱に小型のナイフを振り回し近くの奴隷を切りつけていく。
既に彼からしたら目に映る全員が支配者達と変わらないようで行く手を遮るものは全て自分を始末する人間にしか見えないのだろう。
当初、僕はこの暴動を見ていることしか出来なかったけど……直ぐにそれは僕にも矛先が向けられた。
ナイフを持つ男性が何人か切りつけた後叫びながら僕にナイフの矛先を向け走り出す
彼からしたら棒立ちに立っていた僕が邪魔だから殺そうとしていたのだろう。
迫り来るナイフとそれによる伴う痛みと死に恐怖して上手く動けなかった僕は久しぶりに恐怖心を感じ、目を背けるように目を閉じ、その場で蹲る。
目の前に来た男性は雄叫びを上げそんな僕にナイフを振り落とし……
その時だろう……僕の中にあったものが弾けたのは
目を閉じ蹲る僕は一向に来る痛みがなかったことに不思議に思って目を開けると異様な光景が広がっていた。
僕に切りつけられるナイフは僕の目の前で止まっていた……正確に言えば僕と男性の間に張られていた薄い水色かかった白銀色の障壁に止められていた。
僕も男性……周りにいる奴隷達も何が何だがという目でその光景を凝視していたけど男性は直ぐにそんなことも考えられなくなった。
後ろから来た支配者達に思いっきり頭部を強打され息絶えた……即死だった。
暴徒は完全に鎮圧……脱獄に関わっていた人間は全て処分され……次に支配者達の視線を向けられたのは当然僕だった。
大勢の支配者達が僕を囲い、徐々に距離を詰めると大人数で僕を押さえ込もうとする。
「やだ、死にたくない!?お父さん!お母さん!お姉ちゃん!一夏!榛名!簪!!」
殺されると考えた僕は磨り減って薄れていた感情をこれでもかという位に爆発して抵抗した。
「……■■■」
見えない力で1度は支配者を吹き飛ばしたりもしたけど、いつの間にか背後を取っていたここの奴隷とは違う少女により意識を刈り取られ、その場で僕は倒れた。
そして次に目覚めたとき……僕はこことは違う別の場所にいた。