一夏が叢雲を起動させた同時刻…
レゾナンスのカフェテリアでは優希とシャルロットが紅茶を片手にのんびりと過ごしていた。
「ふぅ、落ち着くね」
「そうだな…それでシャロ?例の物は?」
「そんなに急かさなくてもちゃんと持ってきてるよ」
紅茶を一口飲んだ後、優希は本題に切り出してきてそれに対してシャルロットは急ぎすぎと少しふて腐れながら持っていたバックから小さな箱を取り出し優希に渡す
受け取った優希はその箱を開けて中に菱形の首飾り、彼の搭乗機になるオーディンの待機状態だった
「オーディンの調整は束さん達が完璧にしてくれてるから問題ないよ、それと偽装の方も」
「それは結構なことで…シャルはどうするの?地球に帰ってきたのなら故郷に帰郷するのもありだと思うけど」
「うーん…少しぶらぶらしたらカルナージに帰るよ、そうだ優希は両親に顔を出さないの」
「……」
オーディンを受け取った後、シャルロットに故郷に顔を出したらどうだと勧める優希だがその言葉をそっくりに返された優希は押し黙った。
優希の心中は察していたシャルロットだが彼女は自分の二の舞になるのではないかと冷や汗をかく
何処か思い当たる節があって押し黙る優希にすかさずフォローを入れる。
「む、無理にとは言ってないよ。だけど私の国は滅んじゃったし…まだ会いに行けるのなら行くべきじゃないのかな…って思っただけだから」
フォローしているというのに徐々に暗い顔をして俯いていくシャルロット
彼女の故郷、フランスはとある
そのことから周辺国からは呪いや何処かの某国の陰謀だと囁かれ、何処の国も統治を放棄し亡命しようとするフランス人を病原菌とみるように駆逐される。
いまやフランスは無法地帯へと変わっていた。
だからこそ一度は故郷を完全に失ったシャルロットはまだ帰ることが出来る優希に問い掛けたが優希もまた退くことはなかった。
「もし帰れば僕が誓っていることが揺らぎそうだから…帰らない……分からず屋って思われるかも知れないけどね…目的も終わったことだからもう帰るよ、会計は僕が持つからシャルはゆっくりしていって」
そういって優希は話を切り上げ、席を立つと財布から2人分のお金を置きカフェテリアから立ち去っていく
「…バカだよ…優希は」
立ち去っていく後ろ姿を見ながらそうシャルロットは哀しげに口ずさんだ
こうして男性操縦者達の休日は過ぎていき、入学から1週間後の放課後
遂に1組の身内騒ぎに巻き込まれた3組の1組対3組のリーグ戦が行われようとしていた。
観客席には噂を聞きつけた生徒達が集まっていて主に1組と3組のクラスメートは全員揃い、後は興味本位できた見物客ばかりだった。
そんなアリーナの中央には既にイギリス代表候補生のセシリア・オルコットが専用機であるブルーティアーズを身に纏い獲物が来るのをまだかと待ちわびており、そんな立ち姿からブリュンヒルデによって選ばれた選りすぐりの1組や男卑思想の女子からは歓声の声が上がっていた。
「きゃあーっ!!!!!セシリア様!男なんていうゴミ屑をぶっ殺してください!」
「1組こそ選ばれし強者!!格下に思い知らせてやってください!」
そんな明らかに染まりきっている生徒達に3組等は完全に退き気味で観客席を見ながら巻き込まれた2人の心配をしていた。
「織斑くんにグランガイツくん…大丈夫かな?」
「どうでしょうか、噂では上の圧力で練習すら出来なかったと聞きますし…心配ですね」
「きっと大丈夫だよ!2人なら何とかなるって!」
一夏とユーキのクラスメートである2人を心配しながらアリーナを見下ろし、隣にいるその娘の友達は噂で耳にした情報を口にして心配する中、もう一人の生徒がは大丈夫と暗く沈んでいるムードを明るくするように振る舞う。
「大丈夫、一夏くんとグランガイツさんなら大丈夫…!」
「白河さん…」
そんな中、榛名は結果がどうあれ無事に終えることを手を祈るように握りしめ、それを横で見ている香澄は心配した顔で見ていた。
そして互いの声援が飛び交う中、3組側のいるデッキでは予想外な出来事にその場にいる全員が驚いていた
「本当なのか!?簪!?」
「う、うん、配送中の車両がIS否定派のテロリストに襲われて、乗っていた人達は無事だったけど叢雲を奪取されたって…」
本来なら昼過ぎ頃には一夏の専用機、叢雲は一夏の手元に渡る手筈になっていた。
しかし昼の間にはIS学園に九重コーポレーションの関係者は現れず午後の授業を受けて放課後にもなり来ないことから企業代表のある簪に確認を取ったところ今回の事件が発覚した。
「…フェイトさん…今回の件…」
「うん、少し焦臭いかな」
どうすればとあたふたする一夏と簪から離れる形でユウキとフェイトは小声で奪取されたことがただの偶然とは思えず。誰かの陰謀ではと囁く。
「取りあえず機体がない以上、理由を説明して一夏くんの試合は棄権するって伝えないとね」
これが最善だと一夏の棄権を伝えようとユウキに話すとフェイトは直ぐに頷きデッキの通信機で管制塔へと連絡を入れようとしたとき、部屋に備え付けられたスピーカーから部屋全体に声が響き渡る。
《織斑一夏、相手が待ちわびている、さっさとアリーナに出て来い》
その声は織斑千冬で強きの声は一夏を試合に出そうとしていた。
それを聞いたフェイトがすかさず通信機で管制塔に繋げる。
「こちら、Bピット、ハラオウンです。一夏くんの機体がトラブルで届いていません、今回は棄権ということで」
《棄権?そんなもの認められん。試合は予定通り行う》
「なっ!?ですが一夏くんには」
《機体は打鉄を手配してある、これは命令だ、勝手なことは許さん》
それだけ言い残しスピーカーからは織斑千冬の声は聞こえなくなり、悔し顔を滲ませるフェイトは通信機を戻し面目のない顔で一夏達に顔を合わせる。
「ごめんなさい、私の認識が甘かった…」
「フェイト先生のせいじゃない!流石に姉さんじゃ分が悪すぎる。それじゃあ打鉄に乗って戦ってくる」
謝るフェイトにそうじゃないとフォローをする一夏、そして一夏は用意されていた打鉄に向かって走っていき、その後ろ姿を見てユウキは神妙な顔つきで気になることを考えていた。
(いくら何でも、手回しが良すぎる…それに叢雲のことだってあれを知ってるのは極一部だけだし……)
「……まさかな」
ユウキは考えついた答えを否定して備え付けられたモニターに視線を向け一夏の戦いを見守るのであった。