なのはの場合は、本当にこうなった。
あの戦いから一か月、なのは達に答えを出すと伝えてから3週間はたっただろうか?
未だに、俺の心には誰かを決めるという選択肢はなかったりする。
だったら、皆をでしょ!とぬかしたヴァイスにはきつめのデコピンを食らわせてやったが。
俺みたいな不器用な奴が、全員を幸せにできるわけがないだろうに。それに、誠実さに欠ける。
いやまぁ、リアルハーレムを築いているクロードを別にディスるつもりはないんだよ。あいつはあいつで、立派に皆を愛しているから。
ただ、俺の場合は一人しか愛せないだろうということだけだ。
正確に言うならば、一人候補がいないわけではない。
ただ、それが本当に好意なのかわからないと、言うつもりもない。
俺が決めかねている理由は単純に、俺自身の体についてだ。
なのは達は納得してついてくると決めているみたいだが、実際はそんな生易しいものでもない。
周りのみんなが老けていく中で、俺たちだけが歳を取らず、見た目も変わらずにいるというのは、想像するだけできついものがある。
まるで、自分たちだけが取り残されているような気分だ。
徐々に変質していく自分の体になんとも言えないような、気分になる。
こうなったのは、後悔はない。反省もない。ただ、なのは達をつき合わせたくないという俺のジレンマだろうな。
「おう、緋凰」
「ああ、どうも」
今日は六課ではなく、地上本部に呼び出されていたために本部の廊下を歩いているのだが、本部には顔見知りが多いからか、こうやって声をかけられることも多い。
「そういえば、おめでとう」
「はい?」
おめでとうって何が?俺が、頂に上ったってのを祝ってくれているのか?いや、これ自体は、結構口に出しているが、実際に至ったかどうかを知っているのは、ほんの数人のはずだし、違うだろ。
とりあえず、何がと聞こうとしたのだが、相手が忙しかったために、理由が聞けなかった。
そのあとも、すれ違う人皆におめでとうと祝われるのだが、当の本人である俺が、全くと言っていいほど身に覚えがないので、祝われても嬉しくもなんともない。
そんでもって、何人かの女子はきゃいきゃいと煩いし、何やら悲しそうな表情をされた。
逆に男子からは、憎悪の視線を送られたし。一人なんて、血涙流していたし。
そんなこんなで、本部の中枢部である、おっさんの部屋の前までに到着。
今回の事件の責任をもって、やめようとしていたのだが、本局の三提督や、一部の人間に引き止められてしまって、やめるにやめなかったんだよなぁ。
曰く
『あんたが抜けたら、仕事が滞る』
だ、そうだ。
おっさんもひどく納得してしまったらしく、残ることにしたらしい。
ただ、なんのお咎めもなしとはいかないために、給料7割カット、残業代もなしなど、かなりブラックな内容で働くらしい。
本人的には、問題もなく、また、引き継げる人間が育てばやめると言っているし、いいんだろう。
「おっさん、入るぞ」
「来たか」
執務室に入ると、そこには厳つい顔はそのままだが、前ほど切羽詰まったような表情ではなく、穏やかな表情をしたおっさんがいた。ぶっちゃけ、キモイ。
「なんの用だ」
「何の用だはないだろう。水臭いぞ、緋凰。そりゃ、ワシとお前は部下と上司の関係だったかもしれんが、それでも、教えてくれてもよかったのではないか?」
「はい?」
なにやらおっさんが不貞腐れたような顔をしながら、話しかけてくる。ぶっちゃけ、キモイ。
「いや、なんの話だ」
「もう、準備は進んでいるのか?」
「いや、だから……」
「ふむ。お前は金も持っているし、見た目も悪くない。さぞかし、いい式になるだろう」
式?なにが?解散式のことか?いや、俺の金や容姿は関係ないだろし、一体なんなんだ?
「すまん、話の内容が全くと言っていいほど分からんのだけど。あと、顔キモイ」
「とぼけるな、とぼけるな。仲人はもう決まっているのか?決まってないのなら、ワシなどどうだ?こう見えても、結構な数をやっているぞ」
「仲人?」
仲人っていやぁ、結婚式で挨拶する人のことだよな?
「何、昔みたいに本局の奴らを毛嫌いするつもりなど、毛頭ない」
「待て、待ってくれ」
「一体どうしたというのだ?」
痛む頭を押さえながら、マシンガントークするおっさんをとりあえず止める。これで、止まらなかったら物理的に止めるしか方法はなかった。
「まるで、俺が結婚するみたいな言い方だな」
「するのだろう?この本部どころか、本局までその話は広がっているが?」
なん、だと?一体いつの間に……はやてが広めたのか?いや、いくらあいつでも、さすがに人の人生を狂わせるようなことは…するかもしれんが、さすがに俺のお仕置きが怖くて、今回はせんだろう。一生を決めることだし。
「誰と?」
「本局の武装隊の高町だろう?奴の関係者が言っておったぞ。本人も否定してないとか」
「なのはーーーーーーーーーーっ!!!」
腹の底から天に吼える。ようやく、今回の騒ぎの原因が分かった。そして、犯人もだ!
「おっさん」
「な、なんだ?」
「悪いが、俺は用事を思いついた。席を外すが構わんよな?」
「あ、ああ」
俺の目を見て本気と悟ったのだろう。おっさんは、素直に許してくれた。
執務室から出た俺は、あらゆる障害を無視して、目的地へと向かった。場所は六課の訓練場だ!
「なのはぁっ!」
「なーに、紅莉君?」
ニコニコと笑顔で俺に呼ばれたのが嬉しいと隠さずに近づいてくるなのは。
「一体どういうことだ!」
「なんのことかな?」
俺に詰め寄られても笑顔を崩さないなのは。しかし、今の俺の心眼ならぬ真眼を舐めるな!笑顔の下に隠された、企みが成功して嬉しいといった表情を見逃すかぁっ!
「お前、どういうつもりだ!」
「どうって、私と紅莉君が結婚するよって言っただけだよ?」
「俺はまだ、誰とは決めて」
「だからだよ」
「なに?」
突如真面目な顔になったなのはに今まで猛っていた気持ちが、落ち着く。
「だって紅莉君、私たちのためって言って、なんだか逃げそうだったから。ねぇ、紅莉君は私のこと嫌い?」
「いや、嫌いではない」
「じゃあ、好き?」
「ああ」
それは間違いなく言える。
「あう、そういうところがずるいんだよ」
自分で振っておいて、自分で照れてどうするんだ。
「ねぇ、紅莉君」
「なんだ」
「私はね、紅莉君が好き。初めて会った時から、ずーーーーっとね。だからね、逃がさないよ?」
「くっ、ははは、ハハハハハハッ!」
「もう、笑うことはないでしょ!」
ぷくっと頬を膨らませるなのはをよそに、俺は大声を出して笑い続ける。
ああ、そうか。俺は、昔からなのはに捕らわれていたのか。
そうだ、そうだな。結局、なのはのために俺はきっと剣を取り続けてきたんだ。
始まりは母さんでも、きっかけはきっとなのはだろう。
かつて救われた俺は、結局なのは無しではいられなかったんだろうな。
「やれやれ、敵わないな」
「えへへ、そうだよ」
なにやら得意げななのはの頭を乱暴に撫でた後、フェイトやすずかに俺の今後を話すために移動した。泣かれてしまったが、最終的には祝福してくれたのは嬉しかった。
後日、すずかを送り届けるついでに、かーさんたちに報告したところ。
「でかしたわよなのは!流石、私の娘!」
「いや、桃子。そこで、褒めるのはどうかと……」
「何を言っているんですか!私だって、かつては士郎さんを籠絡するために、まずは子供の恭也と美由希を餌付けして、士郎さんが餓えているであろう日本食を持っていたんですから!」
「あれは、そんな理由だったのか!?」
「てか、かーさん。初めて会った時はそんな気配みじんも感じなったよ!?」
「恋する乙女は強いのよ?ねー、なのは」
「ねー?」
そろって首を傾けるかーさんとなのは。まさか、こんなところまで遺伝しているとは……
「とーさん」
「いうな。後悔はない」
いや、それは俺もなんだけどさ。改めて、女は怖いと実感した。
と、言うわけで、なのはENDでした。
ヴィヴィオを使って外堀を埋めたなのはは、最終手段として、紅莉との仲も外堀から埋めて、逃げられないようにしましたとさ。
ちなみに、ヒロインがなのはでも、前書きで書いてある通り、このようなENDでした。
なのはさん、さすがやでぇ。