マナシスリフレインー彼女たちとの冒険記- 作:ロイド・カーティス
遥か昔、
戦火は、大陸に住むほとんどの種族を巻き込むほどの広がりをみせ、ついには世界そのものが破滅しそうになります。そのとき、精霊の力を宿した勇者とその仲間たちが魔王を倒して封印しました。こうして世界はついに平和を迎えることになりました――これは物語が始まる前の、古い時代の伝説。
拝啓
貴殿を当学院の特待生として招致します。
同封の乗船券に記載した日時に乗船券をお持ち頂いて
フォトニア大陸最南端にある港町リクサのアクアレーテ港までお越しください。
敬具
セオドリック冒険者学院ー学院長
グリゼルダ・マクウィリアムズ
セオドリック学院―――世界を破滅させようとした魔王を倒した伝説の勇者「セオドリック」が冒険者のために開いた学院であり、冒険者学院の最高学府である。その学院の学院長であり史上最強のメイジと言われるグリゼルダ・マクウィリアムズからの推薦状だ。
快晴で穏やかな波。新入生を迎える絶好の日和で、セオドリック学院へ向けて大きな帆船は順調に進む。そんな中船首で将来に思いを馳せながら海を見つめる僕に声をかけてきた人がいた。
「もうすぐ島に到着ですね」
その声から元気いっぱい楽しみで仕方ないという気持ちが伝わってくる。その声の主がどんな人だろうかと少年は見るべく振り返った。そこには一人の活発そうな少女がいた。
「っていきなりはなしかけちゃってごめんなさい。私はセラフィーナ・アシュクロフト。今日からセオドリック学院に通う新人メイジです」
先程から話しかけてきた少女はセラフィーナ・アシュクロフトと言う金髪のエルフであった。メイジと言ったところ恐らく種族はエルフのなかでも魔法が得意な「ルーンエルフ」だろう。先程からルンルンと言わんばかりに体をリズムよく動かしている。
「間違ってたらごめんね。キミも学院の新入生、だよね?」
体を少し前に倒しこちらを伺うように聞いてきた。その表情と声は心なしか不安そうだ。
「キミの言う通り、僕も新入生だよ。初めまして、クリストフです。」
セラフィーナに少年ーークリストフーーはにっこりと微笑んだ。
「あっ、やっぱり!同い年くらいだと思ったんだ。クリストフって言うんだ。えへへ、よろしくねクリストフ♪」
自分と同じ境遇の人であることもそうだろうが、自分の予想が当たって嬉しいのだろう。喜色満面だ。そんな風に自己紹介をしていた時セラフィーナを呼ぶ声が聴こえる。
「おーい、セラフィーナ」
「あっ、この声は」
何も言わず知り合いから離れてきたのだろうか、あっいけないとばかりに手を顔に当てている。
「いつの間にか船室にいないと思ったら、ここにいたのか」
「ちょっと心配した」
声のする方に顔を向けると二人のヒューマンの少女がいた。
「ごめんね、待ちきれなくて。もうすぐ到着するんだって思ったら、つい。一番に学院を見たくて」
「そういうことか。気持ちは分からないでもないな」
「ふふふ、でしょ?でもなんと、先客がいたんだよ」
「えっと。その人、セラフィーナのともだち?」
仲良く話しているところからあとから二人の少女はセラフィーナや僕と同じく新入生なのだろう。そしてセラフィーナはその質問を待ってました言わんばかりに答えた。
「よくぞ聞いてくれました!この人は私たちと同じ新入生のクリストフ君!今さっき友だちになったんだよ」
「初めまして二人とも。紹介に預かった、クリストフです」
「初めまして、私はフェンサーのミルドレッド・ミルディだ。同じ新入生としてよろしく頼む。」
「わたし、ジルベルタ。ジルベルタ・メイプル。プリースト。よろしく」
剣士のミルドレッドは橙色の髪をしており三人の中で一番背が高く背筋がピシッとしている。育ちがいいのだろう。そして治療師のジルベルタは銀髪で後ろで左右に分けて髪を編んでる。三人の中で一番背が低い。
「あっ、そろそろ学院が見えてくるころじゃない?」
「セラフィーナやぶれたり。第一発見者はもらった」
「ううっ、負けないよ。クリストフ君も手伝って」
「分かったよ。でもこの船が箱庭島に向かってるしもうすぐ島に到着するはずだから、前を向いていればすぐ見えるよ。ほら、島が見えてきたから、たぶんあれだよ」
「私も見えたぞ。ん?待て、何か様子がおかしいぞ。ドス黒い何かが上がってる!」
指さした方角に箱庭島と思われる島がある。ミルドレッドもそれで気づいたのだろう。だが上空に向かって何かが立ち込めていき、次の瞬間
強烈な閃光があたりにはしった。
「な、なんだあの光は」
「みんな無事?」
「うん、クリストフ君、私は無事だよ」
「
先程の突発的な閃光により、目が眩んでしまった。幸い閃光は一瞬であったため、何回か瞬きをして目の眩みは治まった。その中で
一方島の上空では
全体的に黒く禍々しい印象を与えこの世の生物とは思えないーー悪魔とでも言うべきかーー者
そして青みがかかった銀髪の女性ーーグリゼルダ・マクウィリアムズーーが戦っていた。
突如箱庭島にて復活した魔王に対抗できるのがグリゼルダしか居なかった。学院長として学院の被害を抑えるべく魔王を挑発して上空を高速で移動し空中戦を繰り広げている。
「ッ!予想外に予想外だな。まさかこんなに早く魔王が復活するとは」
「しかも今日は
グリゼルダが悪態をつく。
そちらの事情は知ったことではないとばかりに魔王はグリゼルダを攻撃する。かつて世界を破滅させようとした魔王の攻撃は1や2ではなく様々な方向から機関銃の如くエネルギー弾が襲来する。当然当たっては一溜まりもないだろう。エネルギー弾は赤黒く見る者に恐怖心を抱かせる。
だが史上最強とは伊達ではないと言ったところか、障壁を自身の周りに展開し魔王の攻撃を凌ぎつつもお返しと言わんばかりに一瞬で魔法陣を敷き極太の光線を魔王に当てた。復活したばかりで本調子でない所為かさすがの魔王もダメージを受けたようで先程から仕掛けていた攻撃を止めた。
グリゼルダの脅威度を再確認したのか魔王は確実に仕留めるべく動きを止め、強力な攻撃の放つ準備を始めた。
「このバカみたいな量のマナの収束、辺り一帯を吹き飛ばすつもりか!?」
青かった空は魔王により辺り一帯は赤く染まってしまった。マナの収束は魔王が展開した三重の毒々しい紫の円環により行われているが、さすがの魔王でも直には放てないのか円環の中心で収束しきるのを待っている。先程まで機関銃の如く放たれていたエネルギー弾とは当然比較にならない。
グリゼルダの言う通り辺り一面など簡単に吹き飛ばしてしまうのだろう。
「こうなってはこのグリゼルダ・マクウィリアムズ、禁じ手を使わざるを得ないな」
グリゼルダが片手を上げ魔王に向けた。幾重にも且つ巨大な魔法陣がグリゼルダから魔王へ向けて敷かれていく。それと同時にグリゼルダの元へと瞬く間にマナが集ってきた。
「覚悟しろ、魔王!」
決意の籠もったその一言とともに、グリゼルダの禁じ手が放たれた。その攻撃は一筋の光線となり、魔王に直撃した。禁じ手なだけあってかその攻撃は強力であり、魔王に断末魔をあげさせ爆発四散させた。
箱庭島上空での戦いは突発的に発生したが、船を止める間もなく終わったためそのまま航行し続け、箱庭島の港に辿り着いた。本来なら引率の教員や新入生を歓迎する在校生がいるはずである港周辺は、魔王の出現の所為で人が居ないため静寂である。
「な、なにがあったんだ。強烈な光線であの禍々しいやつを倒した様だが?」
「ものすごいマナの奔流だったけど、あんな魔法があるだなんて」
「……人が空から降りてくる」
「行ってみよう」
最初、船からではよく見えなかったが、最後の攻撃でなにかを倒したのだけは視認できた。その後光線の発射元が光っておりゆっくり島に降りてきていた。人が居ないためいざという時に現状把握をして教員に報告できるように辺りの様子を窺いながらも光源の元へと4人は走っていった。
走った先には人が居り、苦しいのか息遣いが荒い。
「人が倒れてるぞ」
「!あれは……グリゼルダ学院長だ」
「だ、大丈夫ですか」
戦いの影響だろうか降りてきた瞬間は力尽きたかのように地面にうつ伏せになっていた。先頭を走っていたミルドレッドが一番に見つけ、次に見つけたクリストフは学院長と呼んだ。倒れていた学院長はセラフィーナの声掛けに反応していることから幸いなんとか意識はあり、セラフィーナとジルベルタルは学院長を助け起こし楽な姿勢へと体勢を変えた。
「ん……だ、大丈夫だ。……ありったけのマナを使った、だけだ」
「それより、ちょうど……よかった」
「他の教員に知らせてくれ……」
「魔王は、倒した……と」
「私は、マナを使いすぎて……しばらく起きない、かもしれない」
「あとは、頼んだ……ぞ……と」
「ちょ、ちょっと気をしっかり−−!」
クリストフが声掛けするも、息も絶え絶えでなんとか意識を保っていた学院長だが、伝えるべき要点を伝えたら意識を失ってしまった。学院長が意識を失うと同時に首元にある青いアクセサリーが光を発していき、4人は眩しいのか目を瞑った。
そして、しばらくして光が収まり、目を開けてみると驚くべき光景が写った。
「こ、これは……!?」
「え……」
「空から舞い降りた大人のお姉さんが」
「お子様になっただとぉ!?」
「……せつめいぷりーず」
「そ、そんなのーー」
「私が教えてほしいくらいだよーー!」
様々なことを経験したベテランの冒険者なら多少驚けども、適切な対応ができたかもしれない。
しかし4人は冒険者どころか、本日冒険者養成所のセオドリック学院に入学予定の生徒である。つまり、まだ冒険者ですらないのだ。この短時間且つ連続で発生した出来事に4人ともキャパシティオーバーしても無理のないことだろう。
マナシスリフレインアップデートこいこい