戯れは微睡みの後で   作:てらバイト

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大変投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。また今日から少しづつ書いていきます。


そして遅ればせながら、アニメ化決定おめでとうございます。毎話録画しなきゃ…


Episode6

(くそ…完っ全に油断してた…)

 

 

爆風によって空高く舞い上がる最中に真っ先に頭を過ったのは、深い失意とほんの少しの呆れ。

やっぱり、もう少し警戒しておくべきだった。

うてなちゃんの友達っていう時点で怪しさ抜群だってのに。

 

 

(ちょっと優しい態度とられただけで気緩めるとか…さっきまでの私は何考えてんだ? 寝惚けてるにも程がある)

 

 

本当、我ながらお粗末すぎる。

見ず知らずの他人に必要以上の期待をした所で、碌な結果にならないなんてのは分かりきってた事じゃん。

勝手に期待して、勝手に裏切られた気分になって…そういうのが馬鹿らしいから、他人に対して最低限しか求めなくなったのに。

…それなのに、私は。

 

 

(はぁ~、布団があったら入りたい……ん? 穴だったっけ?)

 

 

まぁいっか、どっちでも。

今はそんな事より、まずは姿勢制御だ。

 

空中で魔力を吹かしながらクルリと回転し、推進力を殺す。

さて、どのくらい飛ばされたかなっと…うわ、うてなちゃん達ちっちゃ。

どうやら相当派手にぶっ飛ばされたみたいだ。

 

 

(…しっかし、わかんないな。なんでキウィちゃんは私にこんな真似を…?)

 

 

随分と小さくなった二人を遠巻きに眺めつつ頭を捻る。

ただの愉快犯であればまだいい。この程度の茶目っ気であれば、指導次第でどうとでもなる範疇だから。

だがこれがもし、意図せず踏んでしまったレオパルトの地雷が原因だとするならば厄介だ。

忌避感(地雷)の矯正、ましてや他人のをなんて…一筋縄ではいかないのが目に見えてるんだよなぁ…。

 

 

(…やめやめ。こんななんの実りの無い厄介事で悩むとかアホらし……今日はもうこのまま帰ろっかな)

 

 

レオパルトの先輩爆殺未遂(奇行)の動機について問い質したい気持ちはもちろんある。当然、いきなり攻撃された事への怒りだって…けど、それはそれ。

貴重な睡眠時間を削ってまでしたいわけじゃあないんだよね。

こっちはほぼノーダメ(・・・・・・)なんだ。ここは私の方から身を引いて、まる~く収めようじゃないの。寛大で優しい先輩らしくね?

 

 

(…ま、寝てる時にやられてたら絶対許さなかっただろうけど。目覚まし代わりの爆破とか、流石に茶目っ気じゃ済まんて…)

 

 

そこまでされたら問答無用で“教育”だよなぁ。

寝てる私だけじゃなく、お気にのベッドだってただじゃ―――

 

 

(―――あ? ベッド…?)

 

 

そこまで思い至り、反射的に視線を真下へ向ける。

私が立ってた位置、爆心地のすぐ横には…私の大切な…!

 

 

「あぁ…あぁぁぁぁああああ…!」

 

 

気のせいであってくれ。ただの思い過ごしであってくれ。

そんな思いを踏み躙るかのように、バラバラに吹き飛んだベッドの残骸が視界に映りこんだ。

 

木製ベッドフレームの破片、焼け残った羽毛布団らしきナニカ、綿が飛び出た枕だったモノ。

あれは、紛れもなく、私の―――

 

 

「……こいつは、お仕置きが必要だなぁ…!」

 

 

寛大? 優しさ? そんなもん犬にでも食わせてろ。

愛用の寝具ぶっ壊されて黙っていられるほどお人好しじゃないんだよこちとらよぉッ!!

 

見つからないよう、浮遊したままベーゼちゃん達の後ろへそっと回り込む。

いつの間にか変身を終えていた二人は、背後に陣取る私に気付かぬまま会話を続けている。

…ちょうどいい、最後のチャンスだ。釈明があるなら聞いてやるよレオパルト。

 

 

「れ、レオパルトちゃん!? なんでいきなりこんな…!」

 

「え~? だってアイツ、アタシを差し置いてベーゼちゃんと楽しそうに話してんだもん。そんで気付いたら衝動的にドーン! っていうか~」

 

「動機が軽すぎる…ど、どうしよう、大丈夫かなレーヴさん…」

 

「大丈夫っしょ~変身してたし~…あ、でも今の一発だけでやられてたら逆にウケるよね。もし無様なカッコで地面にノビてたら…ひひ、写真撮ってSNSに晒してやろ~っと」

 

「やめてあげてよぉ! ……あられもないボロボロ変身コスは、見てみたいけど…

 

 

…ふ~ん、要はただの私怨ときまぐれが導線って訳ね。

オーケー、問答無用でギルティだ。

何の憂いも無い100%のお仕置きが確定したぞこんボケぇ…。

 

あと、うてなちゃん…もといベーゼちゃん、聞こえてんぞ。なに私にまで劣情の視線を向けてんだ? 見境無しかよ。

私にはどこぞの百合カップルみたいにそっちの気は無いんだから、そういうアブナイ劣情は魔法少女にだけ向けといてよ頼むから。

何が悲しくて後輩からの魔の手に怯えなくちゃいけないんだよ…ただでさえロードさまのパワハラに苦しんでるってのに。

ったくよー、どいつもこいつも……お?

 

 

『あまりやりすぎないでくれ給えよ。替えが利くとは言え、一から補充するのは骨なんだ』

 

 

二人の真正面に居るヴェナと目が合い、こちらに釘を刺す様な思念が送られてくる。コイツ、直接脳内に…!

まぁ悪の人材をスカウトするヴェナからすれば当然の懸念か。折角集めた有望な新人が身内争いで退場したらイヤな筈だ。

この忠告は、それを危惧してのものなのだろう。

 

ま、ただの杞憂なんだけどね。

 

 

『わ~ってるって。ちょっとお灸据えるだけだから』

 

 

いくら頭に血が上ってるとは言え、さすがに優先順位は履き違えないって。

この私が、自分に代わって雑用押し付けられそうな新人を自ら潰す訳ないじゃん。

 

送り返した思念から私の真意を汲み取ったのか、ヴェナは納得したように小さく頷いて視線を逸らした。…なんだ? 妙に聞き分けがいいな。

これ以上の忠告は無駄だと思われたのか。それとも端から関心が薄いのか。

…まあいい。どちらにせよ、私のやる事に変わりは無い。

 

 

「その心配には及ばないよ、二人とも。あの程度の不意打ちでやられてしまうような凡愚なら、今日まで生き残ってはいないさ」

 

「あ~? んだよヴェナちゃん、随分とパイセンの肩持つじゃんかよ~。依怙贔屓ってんだよ、そういうの~」

 

「ボクはただ事実を述べているまでさ。それよりもレオパルト……キミは、自分の心配をした方がいいんじゃないかな」

 

「はぁ? どゆこと?」

 

 

レオパルトの軍服チックな下半身パンイチ変身コスを眺めながら、お仕置き内容を吟味する。

どうすっかな~…まぁ、今回は初犯だし? 引き摺られてもアレだから、かる~くで許してあげよう。

 

 

「ゆめは、ハッピーレーヴは…ああ見えてかなり短気なのさ」

 

 

 

 

 

 

「人聞き悪いなぁ…短気さで言えば、ロードさまとかのがよっぽどでしょ?」

 

 

レオパルトの腰に抱き着くように後ろから腕を回し、がっちりとホールドする。

…意外と悪くないな、抱き心地。スタイル良いだけはある…。

 

 

「んな…!? テメッ、いつの間に…!」

 

「レーヴさん!? ご無事だったんで……え、無傷(・・)…?」

 

「なにさ、私がノーダメなのがそんなに意外…いや、どちらかと言えばがっかりのが強い感じなのかな? 嗜虐系変態ハードレズのベーゼちゃん的には」

 

「ななな、何を言うのですっ!? わ、私はただ純粋に心配してっ」

 

「ほんとに心配してる奴は先輩のボロボロ大破コスなんて期待しないっつーの…あのさぁ、そろそろ自重ってのを覚えてくんないかなぁ?」

 

「う゛っ…や、やめてください、そんな凍てつくような眼差し……新しいナニカに目覚めてしまいそうです…!」

 

「いや、興奮じゃなくて反省をしてほしいんだけど…」

 

「おいっ、いつまでアタシ越しでくっちゃべってんだ! いい加減離れろや!!」

 

 

おっと、ベーゼちゃんと漫談してる場合じゃない…って、お次は拳銃? えらく物騒な魔法使うねぇレオパルトちゃん。人間武器庫かよ。

さっきの手榴弾を見るに、多分『銃火器を創造する魔法』って所か。発動も早くて、シンプルに強い。厄介な魔法をお持ちでこって。

 

……なんて、使わせなきゃ関係無いけど。

 

 

「させないよ。『メルティ・タッチ』」

 

「うッ!? …………ぐぅ」

 

「れ、レオパルトちゃん!?」

 

「“『直』は素早いんだぜ”…なんてね。だいじょ~ぶ、魔法で寝かせただけだから」

 

 

我ながら初見殺しだよな~この戦法。対策知らない相手ならワンタッチで即入眠。タネが割れると弱いけど、入りたての後輩相手ならこれで十分だね。この手に限る…。

 

さてさて、それじゃあぐっすり眠ってもらった事だし…早速お仕置きタイムといきますかね。

無残にも散っていったマイベッドの恨み、ここで晴らさでおくべきか…!

 

 

「あ、あの、レーヴさん…レオパルトちゃんを眠らせて、どうするつもりですか…?」

 

 

横たわったレオパルトちゃんへと手を近づけ…触れる直前、動きを遮るような一声に動きを止める。

 

……はぁ~。

そりゃあまぁ、止めに入るわな。ベーゼちゃんは。

 

 

「……どうって、別になんて事はないよ。おイタをした後輩にすこ~しばかりお灸を据えるだけだって」

 

「…その魔力を籠めた手を使って、ですか?」

 

「おっ、さっすが鋭いね~ベーゼちゃん。正解正解…やっぱさ、人って多少の苦痛が無いと反省しないと思わない?」

 

「そ、それって…」

 

「止めても無駄だよベーゼちゃん。愛しのマイベッドを破壊された深い悲しみは、後輩の制止程度じゃ治まらないんだ…それとも、力づくで止めてみる?」

 

「……!」

 

「友達の苦しむ様が見たくないってんなら、そうするといい。私としては一向に構わないよ……怒りのぶつけ先は多いに越した事ないからさぁ」

 

 

そう言って魔力を放ちながら凄んでやれば、私の狙い通りベーゼちゃんはたじろいで一歩後退る。

変態嗜虐モードに入ってないベーゼちゃんなら脅しが通じるとは思ってたけど…いや~よかった、私の予測が当たってくれて。

ポテンシャルが未知数の相手とは極力戦いたくなかったから、向こうから退いてくれるというなら万々歳だ。むしろホッとしてるまである。

 

 

(怖がらせちゃってごめんねベーゼちゃん…でもね、私にも譲れないものってのがあるんだよ)

 

 

顔を俯かせているベーゼちゃんを見ていると、なけなしの罪悪感が胸の内に広がってゆく。

私の心にそんな良心が残っていたとは、自分でも驚きである。

だが、それはそれ。これはこれ。

レオパルトには、いたずらにベッドを破壊した罰をしっかりと受けてもらう…まぁヴェナに釘刺されてるし、大した事はしないけど。

 

魔力を纏った自分の手に視線をやる。

眠っている対象に触れ、私の魔力を直接送り込む…そうすれば、レオパルトへのお仕置きは完了だ。

私の望むままのユメ(悪夢)を、たんと味わわせてやる。

 

さぁて、どんなのがいいかな?

“死別系”はさすがに重すぎだし…ここは定番のハードホラーにしておくか。

ふふふ…寝苦しそうに顔を歪めて呻く姿が目に

 

 

 

 

 

 

「―――なるほど、理解しました。レーヴさんの言うお仕置きとはすなわち……お尻ペンペンの事ですねっ!

 

 

浮か、ぶ……………

 

…………?

 

 

 

 

「は???」

 

 

…聴き間違いか?

今、この場にはそぐわないあり得ねー言葉が聴こえたような……。

 

 

「粗相をした子に恥辱と痛みで反省を促すお尻ペンペンは、お仕置きとして古来からの定番…! しかもそれを眠らせたレオパルトちゃんにやろうだなんて…あぁ、なんてマニアックな趣向……」

 

「ちょ、ちょい待ちベーゼちゃん。キミはなんか大きな勘違いをs」

 

「レオパルトちゃんを眠らせたのは敢えてですよね? 意識がある状態でするよりも眠らせて完全に意識を断ってからお尻を叩けば、一発目の威力と衝撃は正に雲泥の差…! ふふふ、見た目によらず激しい責めがお好きなんですね、レーヴさんて」

 

「いや、だから違うんだっt」

 

「大丈夫です遠慮なさらず! もし万が一レオパルトちゃんに何かあってもわたしがしっかりと介抱致しますので、レーヴさんは気にせずオシオキをなさってください!」

 

「話しをk」

 

「お灸を据えるのでしょう? 壊されたベッドの恨みを晴らしたいのでしょう? ならば、躊躇う理由など無い筈です! ハァ、ハァッ……さあ、早くお仕置きを! 痛烈な責めに身悶えるレオパルトちゃんの痴態を、早くわたしに見せてください! さぁ、さぁ、さぁッ!!

 

 

……言葉を失うってのは、こういう事を言うんだろうな。

どうやらベーゼちゃんの頭の中では、“お仕置き=お尻叩き”という謎の図式が出来上がっているようで、そのお仕置きの瞬間を今か今かと心待ちにしている…という状況らしい。

 

いや、意味わかんねえよ。

まずお仕置き内容をスパンキングだと断定してるのが謎だし、何故かベーゼちゃんがレオパルトへのお仕置きに乗り気なのもまた謎だし…。

てか、まず止めろよ!

友達がピンチになってんだぞ、仲裁するなり強引に引き留めたりするだろ普通は。

なのに……

 

 

(何だよ、その期待に満ちた目は…頬を赤らめて息荒げてんじゃねーよド変態が! )

 

 

止める素振りも見せず、ベーゼちゃんはありもしないお仕置き(スパンキング)を待ち侘びている。

爛々と輝かせているその目は、完全に変態スイッチが入っている時の目と全くの一緒で。

魔法少女達へと向けていた、興奮に濡れた瞳で、私とレオパルトをじいっと見つめていた。

 

や、やめろ…そんな脳内ピンクな妄想に私を巻き込むんじゃないっ!

私は、私はただ…ベッドの恨みを晴らしたかっただけなのに…どうしてこんな……。

 

 

(……何というか、こう…興を削がれるっていうか…どうでもよくなっちゃったなぁ。ベッドの恨みとか、お仕置きとか…)

 

 

さっきまで心の中で燃え上がっていた怒りの炎が急速に萎んでゆくのを感じる。

生まれて初めてだよ、あれだけの怒りの感情を無に帰されたのは。理解を越えた変態は全てを台無しにするんだなって…。

 

もういいや。今日のところは帰ろう。

これ以上ベーゼちゃんのペースに乗せられたら頭がおかしくなりそうだし、何より疲れた…今の私には一刻も早い休息が必要なのだ。

レオパルトは…放置でいいか。適当に放っておいても、色々とギンギンなベーゼちゃんが好き勝手調理してくれる事だろう。

 

じゃあね、ベーゼちゃん。

そんなにスパンキングが見たいなら自分でするといい。

 

 

 

「あ~…ごめんベーゼちゃん。ちょっと急用思い出したから、私帰るね。悪いんだけどさ、レオパルトへのお仕置きは代わりにベーゼちゃんがやってk」

 

「―――は? 何を馬鹿な事を仰っているのですか、レーヴさん」

 

「えっ」

 

「お仕置きというシチュは、“罰を下す者”“罰を下されるべき者”の両者がいて初めて成り立つものであり、それこそが醍醐味なのです。それを、ただの傍観者であるわたしに委ねるだなんて……ダメです、無理です、到底受け入れられません」

 

(ぬぁぁあああめんどくせえええ!)

 

 

思いもよらない返答に思わず頭を抱えてしまう。

こ、コイツ…人がわざわざ乗っかりやすいように仕向けてやったってのに…。

変態プレイにこれ以上私を巻き込むなってのが分かんないかなぁ!?

 

 

(あ~もう…わかったよ、上等だよクソッタレ)

 

 

そっちが何が何でも我を通したいって言うなら、是非もない……それ相応の対応をしてやろうじゃないか。

思いを実現させるにはそれを通すだけの力が要るって事を、その身体に教え込んでやんよ…!

 

その為にもまずは、ベーゼちゃんを同じ土俵に引きずり込まないといけない。

食いつきそうな餌は…そうだな、アレでいいか。

多感な女子中学生はあのワード(・・・・・)に弱いって相場が決まってるもんさ。

 

 

「これじゃあ埒が明かないし…よし、ベーゼちゃん。頑なでイカレちゃってるキミの為に、一つ私からステキな提案をしてあげよう」

 

「わたしはいつも通り平静のつもりですが…何です? 生半可な代案程度ではこちらも引く気は―――」

 

「今から私とキミで闘りあって、勝った方が負けた方に“何でも”一つだけ言う事を聞かせられるってのは―――」

 

「やりますっっ!!!」

 

 

うっっわ、速攻で釣れたよ。2Fで反応してきやがって…。

まぁ誘いをかけた側からすれば素直な方がありがたいけど、ここまで食い気味だとそれはそれで引くよね。

ここまで旺盛だと、最早思春期という言葉だけでは誤魔化しきれないぞベーゼちゃん。

 

 

「な、何でも? 本当に何でもでいいのですか? 後から『やっぱり無し』なんて通りませんよ?」

 

「いいよ。どうせ私が勝つし……そうそう、ちなみにこっちの要望(リクエスト)は『私が立ち去るのを邪魔立てしない』だからね。私には早くベッドで寝…じゃない、大事な用事が立て込んでるんだよ、用事がさ」

 

「……へぇ、随分と自信がおありのようですね。自分が負けるなど露程にも思っていない、と? …ふふっ、いいでしょう。それでは始める前に、わたしも勝った時の要望を先にお伝えしておきましょう」

 

 

そう言ってベーゼちゃんは一呼吸置き、にんまりと嗜虐的な笑みを浮かべる。さて、どんな無茶振りが飛んで来るのやら。

ベーゼちゃんの変態ぶりを嫌と言う程味わい、変態性を学習した私にもう油断は無いぞ。何が来ても動揺してなるものか。

 

 

 

 

「―――私が勝ったら、『レーヴさんはレオパルトちゃんの代わりにお尻を叩かれる』…それが、貴女へ提示する私の望みです♥」

 

「…な、なんっ………なんで…?」

 

 

ほぼ反射的にお尻を守るように手を後ろ側にサッと回す。いやいやいや…そうはならんやろ…。

一体どういう思考を経たら『代わりに尻を差し出せ』なんて願いに行き着くんだよマジで。お前の頭はハッピーセットかよ!

見境が無いとはさっき確信してたけど、まさか本当に狙われるなんて…。

 

そんな恐れの感情が表に出てしまっていたのか。

私の顔を見たベーゼちゃんは、気を良くしたように愉し気に口を開く。

 

 

「そんなにも意外でしたか、わたしの要望は? こちらとしましては至極妥当なものを挙げたつもりでしたが…」

 

「どこの世界の妥当だよ…というか、本当になんで? キミは、レオパルトのあられもない姿が見たかったんじゃないの?」

 

「はいっ、それはもちろん! レオパルトちゃんが苦痛と屈辱に喘ぐ顔を見たいという気持ちは今も変わらずありますし、現に先程まではもうその事で頭が一杯になってしまいました」

 

「……先程までは(・・・・・)?」

 

「えぇ、先程までは。……レーヴさんが悪いんですよ? わたしがお仕置きを提言した時に、あんなにも怯え引き攣った、いじめ甲斐のある表情で誘うものですから。つい、嗜虐心がくすぐられてしまって…うふふ♥」

 

「……っ」

 

「構いませんよねぇ? “何でもいい”と仰ったのは、他でもない貴女なのですから……まさかとは思いますが、自分から言い出した提案自体をふいにするなんて無粋な真似はしませんよね? ……ねぇ、レーヴさん」

 

 

不気味な悪寒が背中を伝う。今度は私が後退りする番だった。

妖しく細められた目に射抜かれながら、私は数秒前の自分の迂闊さを呪った。

ベーゼちゃん相手に“何でもいい”なんて言うのは、あまりにも軽率だったと。

 

……どうしよう、猛烈に要望変えたくなってきたんだけど。

『金輪際、私に関わらないでほしい』とかに今から変えるのは…さすがにダメかなぁ…。

 

 

「……あのさ、さっきの要望なんだけど―――」

 

「ダメです、変更は認めません。今になって怖気づいたのかは知りませんが、これは貴女から持ち掛けた勝負事…反故などせず、自分が発した言葉には最後まで責任を持っていただかなければ」

 

「そ………そっか~、そうだよね! 言いだしっぺの私が後出しで好き勝手やっちゃあ破綻しちゃうもんね! あ、あはは~ごめんごめん、ついうっかり~…」

 

「分かっていただけたのなら結構です。人は誰しも間違うものですから…うふふ」

 

「あはははは……」

 

「ふふ、うふふふふ……」

 

 

 

 

 

 

 

「今更正論ぶった事ほざいてんなよクソヤバ女が…! そんなに泣かされたいのかなぁ!?」

 

「あはっ! そんな顔も出来るんですねぇ、感情に溢れてとても素敵です! ではお次は……苦痛に歪んだお顔を見せて頂きましょうッ!」

 

 

支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)を振りかぶりながら迫るベーゼに対し、溜め込んでいた魔力を解放し迎え撃つ。

レオパルトといい、先輩を舐め腐りやがって…こうなったらとことんやってやる。

 

今までの恨み辛みも上乗せして、まとめて清算してやるってんだよぉ!

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、あとの事はよろしく~。私は…くぁあ。帰って寝っからさぁ…」

 

二人分(・・・)の介抱を事も無げに頼むとはね…まぁいいだろう、承ったよ」

 

 

あの後、戦闘の余波で目覚めたレオパルトも加わり、結局二対一の不利な状況で戦うことになりましたとさ。途中参戦はルールで禁止スよね?

 

今回のドンパチで学んだのは、軽々しく重大な約束を交わしてはならないという事だ。

もう二度と“何でも”なんて口にはしないぞ…特にベーゼちゃんの前では絶対に…。

私はそう固く心に誓い、後始末を全てヴェナに押し付けナハトベースを後にしたのであった。

 

…え、結果? 当然私が勝ったよ。

伊達にちょっと長く先輩やってないってこったね。ぶい。

 

 

 








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やっぱ…悪のヒロインの光堕ちを…最高やな!
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