ハルケギニアの小さな勇者   作:負け狐

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ゼロの使い魔空賊無双猛将伝
はじまりはじまり。


その3

「それで、どうするのかしら?」

 

 とりあえず立ったものの未だ肩を震わせているアンリエッタがそうルイズに問う。対するルイズは、ポリポリと頬を掻きつつもそれは勿論と彼女に述べた。

 

「姫さま、えっと、物資の中の武器を少し分けて――」

「分かりました。では物資輸送の任務は失敗ということで今回の物資の調達費と輸送費を借金に追加しておきますわ」

「何で!?」

「何故って、決まっているでしょう」

 

 完全な状態で物資を届けられないのならば成功ではないからだ。さらりとそんなことを言われたルイズはポカンと口を開けたままアンリエッタの顔を眺め、暫し目を瞬くと横にいる仲間の顔を眺めた。皆が皆、しょうがないから諦めろという顔をしており、思わず彼女の表情が歪む。

 

「幼馴染なんだし、そう言われるのは分かってたんじゃねぇの?」

「……まあ、ね。そりゃあ、姫さまのことだから適当に理由つけるだろうとは思ってたけど」

「じゃあ、諦めなさいな」

「うぅ……」

 

 ぶうたれるルイズの肩を、タバサが優しく叩く。そんな彼女の表情は何かを悟ったようであり、どこか妙な連帯感を持った二人はそのままがっちりと固い握手を交わした。そして才人とキュルケは視線を逸らした。

 さて、じゃあ気を取り直して。そんなことを言いながらルイズは接近してくる空賊のフネを見る。どうやら今度は確実に命中させる位置で大砲を放つつもりらしい。それが分かった船員達が慌てる中、彼女等は一歩前に出る。

 牽制か、あるいは距離の確認か。再度放たれた大砲は一発。真っ直ぐに輸送船へと向かってくる巨大な金属の塊は、フネを穿ち穴を開けんと迫ってくる。

 

「シェフィールド」

 

 それを見つつ、タバサは冷静に自身の同僚へと指示を出す。はい、と緊張した面持ちで返事をする彼女に向かい、大砲迎撃用に例のアレを出せと述べた。

 分かりましたとシェフィールドは返事をするものの、しかしもう目の前まで迫っているあれはもう間に合わない。そんなことを考えて衝撃に備えるように腰を落とし。

 

「あーもう! やってやるわよ!」

 

 飛び出したルイズの飛び後ろ回し蹴りにより弾き飛ばされた大砲の弾を見て口を半開きにしたまま固まった。明後日の方向に落ちていく大砲の弾を目で追った後、錆びついた動きで主の姪に視線を移す。無論タバサは動じておらず、先程と同じように準備を急げと彼女に述べるのみ。

 自身の思考が若干追い付いていないシェフィールドは説明を求めようとしたが、しかし追加で放たれた大砲の轟音によってそれは掻き消された。今度は三発、向こうも先程の光景が信じられなかったのだろう。数は多くなったものの、照準は前回よりも少しぶれていた。

 

「サイト! キュルケ!」

「無茶言うなよ!」

「というつつ、動くのねぇ」

 

 床を蹴り、そのまま跳び上がった三人は突っ込んでくる大砲にそれぞれの得物を向ける。ルイズはつま先を弾にねじ込むと、そのまま向こうへ押し返すように蹴り抜いた。才人は居合で弾を切り裂き、しかしそれだけでは決定打にならなかったので二回三回と斬り付けバラバラにした。キュルケは杖から生み出した炎で塵も残さず弾を消し炭にした。

 ズダン、と三人が甲板に着地する音が、向こうの大砲の音よりも何故か妙に大きく聞こえたのは錯覚ではないだろう、とシェフィールドは思う。

 

「シェフィールド、用意を」

「いるんですか?」

「わたし達は向こうに乗り込む。その間の防備が必要」

 

 言外に、後方支援で構わないと言っているのを感じた彼女は、タバサにありがとうございますと頭を下げた。そして、では早速と腕輪を掲げてそこに口を寄せる。

 

「カモン! ヨルムンガント!」

 

 彼女のその言葉と同時、甲板に置いてあった巨大な木箱が弾け飛んだ。木屑を撒き散らしながらその中に入っていたものはゆっくりと立ち上がる。鎧を着込んだ騎士のような姿をしたそれの大きさは、通常の人間にはありえないほどの巨体であった。

 巨大な見た目では考えられないほどの素早さと滑らかさでシェフィールドの下へと移動したそれは、彼女の指差す方向に従い顔を空賊のフネに向ける。丁度そこには再度大砲の発射がされようとしているところであった。

 

「ヨルムンガント! 迎撃用意!」

 

 命令を了承したと言わんばかりに、ヨルムンガントは巨大な盾を構えるとフネの真正面へと移動する。着弾地点を隠すように立ち塞がったそれに向かい、大砲の弾は容赦なく飛来するが、しかし。

 

「すげぇ! 弾いた!」

 

 先程から目をキラキラさせている才人が興奮気味に叫ぶ。ああいうの好きよね、と少し呆れたように肩を竦めたルイズは、とりあえずこれで守りはどうにかなるかなとタバサに視線を向けた。

 こくりと頷いたタバサは、行こうとフネの縁へと足を掛ける。そうね、とキュルケも同じようにそこに足を掛けた。

 

「サイト、あなたは大丈夫?」

「大丈夫か大丈夫じゃないかっつったら確実に大丈夫じゃない。向こうまでジャンプとか無理だから。俺まだ人間やめてないから」

「さっきの大砲を切り裂いたのは大分こちら側だった」

「っていうかアンタさらっとわたしを人間やめてる扱いにしたわね」

 

 ギロリと才人を睨んだルイズは、じゃあもういいから行くわよと彼の手を取る。へ、と間抜けな声を上げた才人は、そのまま彼女が全力でダッシュするのを感じつつ妙な浮遊感を味わった。

 

「わたしが引っ張ってあげるから、感謝しなさい!」

「うおぉぉぉ!? ちょ!? ルイ――」

 

 下は雲、周囲は空。安定感も何も無いそんな状態になった才人は若干の恐怖で思わず彼女の方へと顔を向け、そして。

 

「……ピンク、か」

 

 勢い良く捲れ上がるスカートの中身を目に焼き付けることで、綺麗さっぱりと忘れ去った。

 

 

 

 

 

 

 空賊達はその光景を呆気に取られた表情で眺めていた。最後の巨大な何かに塞がれたのはまだいい。得体の知れない兵器だったのだろうと見当がつくからだ。

 問題はその前である。どうやらメイドに変装していたらしいメイジが大砲の弾を消し飛ばすのと剣士が弾を切り裂くのは、百歩譲って達人だと納得出来ないこともないが、最後の一人は何だ。

 大砲の弾を蹴り飛ばすメイドがどこの世界にいるというのだ。しかも、魔法も使わずただのジャンプでこちらに乗り込もうとするなどと。

 誰かのおい、という声で我に返った空賊達は、空を飛んでいるメイド服のメイジ二人と身体能力のゴリ押しで跳んでいる少年を引っ張ったメイドへと大砲を向けた。当たれば肉片も残らないであろうが、それは普通の人間が相手の場合だ。無意識に彼女等を人間扱いしなくなった空賊達は、そのまま大砲を点火する。

 が、当然のごとくそれらは躱され、あるいは迎撃され届かない。それどころか。

 

「よ、っと、っと」

「アクションゲームの主人公かよ!」

 

 飛んでくる大砲を足場にして距離を稼ぐルイズへと思わず才人はそう叫ぶ。無論彼女にそのツッコミは通じないので、何言ってるのよと返された。

 そして再びその光景に目を疑った空賊達は、スタリと眼の前に着地した一行に対する反応が若干遅れた。一瞬であったが、致命的なまでに遅れた。

 

「悪いわね、ミスタ。それ、いただくわ」

 

 ルイズの目の前にいた空賊は、その言葉と共に叩き伏せられた。顔面を鷲掴み床に叩きつけ相手の意識を飛ばさせた彼女は、空賊の腰に下げていた曲刀を引っ掴むと眼前に二・三度素振りをする。

 よし、と別の空賊へと躍り掛ったルイズは、相手が剣を振り下ろす前に切り裂いた。ぐらりと倒れる体を蹴り飛ばし別の空賊の動きを制限させると、そのまま脳天に剣を叩き込む。くるりと体を回転させ、倒した空賊の背中を足場に飛び上がると、銃を構えていたまた別の空賊に剣を振るった。

 その辺りで持っている曲刀はへし折れた。

 

「脆い! ったく、安物使ってんじゃないわよ」

「無茶言ってやるなよ。相手は空賊だぞ」

 

 空賊の鳩尾に日本刀の柄をねじ込みながら、才人はそれだけを返した。そして、倒れた空賊の持っていた斧を掴むとルイズの方に投げ付ける。それを受け取ったルイズは、あからさまに不満そうな顔をした。

 

「武器を忘れたお馬鹿が選り好みとかしてちゃ駄目よぉ」

「うっさい!」

 

 炎の鞭で数人を薙ぎ倒しながらキュルケは笑う。そんな彼女に悪態をつくと、ルイズはぶうたれたまま斧を振るい始めた。別段それで急にピンチになるなどということもなく、空賊は変わらずあっさりと吹き飛ばされた。

 そしてやはり斧は数回の攻撃でへし折れた。

 

「武器、いるの?」

「いるわよ。わたしは素手が苦手なんだから」

 

 やれやれ、と肩を竦めたタバサは目の前の空賊の手首に杖を叩き付け、おかしな方向に曲がったそれから曲刀を奪い取ると放り投げた。空賊は後頭部に追撃を与えて黙らせた。

 よし、と曲刀を握ったルイズが残った空賊に襲い掛かる。そして数回振るい破壊されたそれを投げ捨てると、ギロリと残る空賊達に目を向けた。ちなみにここまで凡そ十分程度。数十人いた空賊は七割以上が倒れて動かなくなっていた。

 一歩踏み出す。ルイズのその動きに合わせ緊張のあまり襲い掛かった空賊は、武器を持った腕を捻られそこを基点に一回転をした。ゴキリと嫌な音が鳴ったが、当然彼女は気にせず相手の落とした武器を拾う。

 

「さて、もういいんじゃない?」

 

 その切っ先を残った空賊へと向け、ルイズは言い放つ。それに合わせるように才人が日本刀を鞘に納めながら彼女の隣に立ち、キュルケとタバサも余裕の表情でそこに並んだ。未だ数は空賊側の方が上であったが、しかしそんなものが何の役にも立たないというのは等の本人達がよく分かっている。彼女の言葉に何を言っていると返す者すら現れないのがその証左だ。

 降参か、全滅か。現在の状況を見る限り既に全滅と言っても過言ではない状況であるが、それでも一応ルイズはそれを向こうに委ねるらしい。一応倒れている奴らも生きているし、と彼女はそれらを見やった。若干危ない状態の者もいるが、まあ自業自得だと意識から外した。

 

「それで、どうするのかしら?」

 

 そんなルイズの言葉への返答はどこからか放たれた風の刃であった。奇襲であった為に一瞬回避が遅れたルイズは曲刀でそれを防ぎ、そのまま飛び退る。綺麗に真っ二つにされた曲刀を見て、彼女は少しだけ驚いた表情を浮かべた。

 お頭、と誰かが叫ぶ。その声と共に残っていた空賊達の群れが左右に割れ、数人の空賊を伴った髭面の男がゆっくりと歩いてきた。先程まで倒してきた有象無象の連中とは違う装飾を施したマントを付けているその男は、髑髏の飾りがついた一本の杖を真っ直ぐに彼女等に向けている。

 くい、と顎を動かす。それにへい、と答えた男の後ろの空賊達は、残っていた下っ端をまとめ上げると再び臨戦態勢を取った。つまり、そういうことなのだろう。

 

「あら、全滅がお望み?」

 

 抜かせ、と髭面は叫ぶ。幹部らしい空賊がそれに合わせ行け、と指示を飛ばした。同時に空賊の頭も杖に精神力を込め始める。

 

「キュルケ、タバサ、サイト」

「はいはい」

「雑魚はこっちで引き受ける」

「任せたぜ、ご主人様」

「ん。ありがと」

 

 ニコリと笑うとルイズは一直線に突進。それを援護するように三人も駆け出した。

 

 

 

 

 まずは、とキュルケが幹部に目を向ける。激しい動きを行いつつ銃で狙いを付けるその動きは、成程確かに先程までの連中とは違うのだろう。

 

「ま、そうは言っても」

 

 杖を振る。眉間を撃ち抜くはずであった弾丸は炎の壁にあっさりと阻まれ、追撃に現れた下っ端は地面から湧き出てきた炎の蛇に弾き飛ばされる。阿鼻叫喚のその中に、キュルケはゆっくりと足を進めた。

 ちぃ、と舌打ちをした幹部は持っていた斧を構えると彼女に襲い掛かる。が、キュルケは半身をずらしてそれを躱すと手首を杖で打ち付けた。その程度で得物を取り落とす程ではないと彼女を睨んだ幹部であったが、しかし次の瞬間激痛により手首を押さえてのたうち回る。

 

「あら、お気に召さなかったかしら。その腕輪」

 

 彼の先程杖を打ち付けられた腕には炎が巻き付いており、熱と圧力でギリギリと締め付けている。必死で消そうと転がったところで、それは一向に衰えない。

 そんなキュルケの少し後ろでは、タバサが同じように空賊を吹き飛ばすところであった。幹部は防いだらしいが、下っ端は纏めて床に転がっている。すっきりした、と一人頷く彼女に向かい、幹部は鋭い蹴りを放った。相手は小柄な少女、加えて持っている杖は大振りな取り回しのしにくいもの。となれば接近戦はこちらが優位。そう判断しての行動だ。

 

「甘い」

 

 が、生憎と相手はガリア北花壇騎士。その蹴りを杖でいなすと、脚を巻き込むように回転させた。バランスを崩し、しかし残った脚で飛び上がり蹴りを放つ幹部を見て少しだけ目を見開いた彼女は、杖を手放すと二撃目を跳んで躱す。

 杖を持たないメイジはただの人。ニヤリと笑った幹部は体勢を立て直し再度蹴りを放たんと足を振り上げる。

 が、しかし。

 

「甘い、と言った」

 

 その前に懐に飛び込んだタバサが肘打ちを幹部の鳩尾にねじ込んでいた。一瞬息が詰まり動きが止まったのを見逃さず、彼女は床の杖を拾うと呪文を紡ぐ。風の槌で脳天を揺らされた幹部は、そのまま膝を突き倒れ伏した。

 さて、とタバサは向こうを見やる。才人が幹部との剣戟を行っているのが視界に入った。どうやら相手は二刀流で、それなりの使い手らしい。下っ端は次々と倒される中、幹部は未だ健在であった。

 

「意外とやりにくいな、二刀流」

 

 苦い顔をしながら自身の得物を正眼に構える。二刀流と一刀流の戦い、ということで有名なものを一つ思い出した才人は思わず笑みを浮かべたが、しかしその場合負けるのは自分だということに気付き表情を苦いものに変えた。いかんいかん、と頭を振って気持ちを切り替えると、足に力を込め一気に間合いを詰める。

 

「ここは巌流島じゃねぇんだよ!」

 

 向こうにとっては全く意味不明な台詞を叫びながら、才人は袈裟斬りに斬撃を放つ。それを片方の剣で受け止めた幹部は、カウンターとばかりに残っていた方の剣を突き出した。相手は既に武器を振り下ろしている。体勢が整っていない状態ならば避けられまい。そう判断した男は勝利の二文字を頭に浮かべた。

 

「ガキの頃よくやったもんだけど」

 

 その瞬間、真下からの斬撃で突きを放っていた剣は叩き壊された。衝撃で腕を跳ね上げられた体勢となってしまった幹部は目を見開くが、そこに映るのは先程の斬り下ろしから瞬時に斬り上げに繋げたらしい才人の姿が見えるのみ。

 

「秘剣、燕返し!」

 

 っぽい何か。そんな気の抜ける言葉を続けながら再度攻撃を行う才人により、幹部は沈黙を余儀なくされた。

 よし後は、と彼はルイズを見やる。徒手空拳となってしまった彼女は船長の魔法を躱しながら使えそうな得物を探っていた。向こうは恐らくトライアングルクラス、拳の一撃で勝負を決めようとすると少し骨が折れる。そう判断しての行動である。

 

「ていうか、何でそんな強さのメイジが空賊を」

 

 呟き、そういえばそうだったと思い直した。このフネはレコン・キスタの所属、つまりこの船長もレコン・キスタなのだ。ある程度の輩が指揮を執っていても何ら不思議ではない。

 そこまで考え、上手い具合に捕縛すれば情報が引き出せるかもしれないと彼女はほくそ笑む。場合によっては借金を減らせる可能性があるかもしれない。

 

「ないない」

 

 高笑いを上げるアンリエッタが頭に浮かび、眉を顰めた。むしろ捕縛出来なかったら借金を増やす可能性の方が高い。そう思い直しげんなりした表情を浮かべたルイズは、ああもうと吹っ切るように叫んだ。

 

「とにかく、まずは目の前の相手よ」

 

 船長の杖から魔法が放たれる。それを見切り回避したルイズは、一足飛びで間合いを詰めると掌底を打ち込んだ。が、今までの戦闘を眺めて予想していたのか、ルイズの拳は空を切る。む、と少しだけ目を細めた彼女は、そのまま相手の回避した方向に回し蹴りを放った。

 

「やっぱり、荒事に慣れてるわね」

 

 追撃も躱されたルイズはそうぼやき、さてではどうするかと一歩下がりながら顎に手を当てた。剣があれば、デルフリンガーがあれば話はすぐに解決するが、今はそれは望めない。一応シルフィードに取りに行ってもらっているが、この短時間で往復するのは流石に風竜といえども無理がある。

 となれば、やることは限られるわけで。

 

「武器、武器、っと」

 

 辺りを見渡す。転がっている下っ端の周囲に落ちている曲刀を拾うと、ダンスを舞うかのように回転し斬撃を放った。空賊下っ端程度の腕ならばこれで終わり、オーク鬼でもばっさりといきかねないそれは、しかし船長が予め用意しておいた魔法によって防がれた。風の刃とかち合った曲刀はザクリと切り落とされ、再びルイズは無手となる。

 

「……普通の攻撃じゃ駄目みたいね」

 

 敵の補給艦を叩く役目を負っているのだ、下っ端では対処出来ないメイジや剣士を数人相手にしても勝てるだけの能力がなければ務まらない。そう判断したルイズは、落ちている武器を拾うのは諦めた。その代わり、拳を先程よりも強く握り込む。

 

「……って」

 

 邪魔者がいないか周囲に視線を巡らせていたルイズは、三人が幹部を片付けているのに気付いた。どうやら船長の方も周囲に気を配れていなかったようで、今ようやく現状を眺めて驚愕しているのが見える。それでも戦意を失わないのは意地か、はたまた自棄か。

 まあそれはどうでもいい、とルイズは才人に向かい叫んだ。終わったんならそれを貸せ、と。

 

「壊すなよ! お前とデルフ程じゃないけど、大事な相棒なんだから」

「分かってるわよ」

「後ルイズ。どうせなら、バッチリ決めてくれよ」

「分かってるわよ!」

 

 向こうが行動を起こす前に、と才人から日本刀を受け取ったルイズは、それを肩に担ぐ構えをとった。腰を落とし、足に力を込め。向こうが呪文を詠唱するタイミングに合わせ、それを解き放つ。

 

「みっともない姿を見せるのは、もう終わりよ」

 

 すれ違いざまに相手の杖を切り裂いたルイズは、背後に回られたと船長が気付き振り向く頃には既にトドメの一撃を放っていた。

 




※空賊は無双される方です。

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