どうも、タピタピと申すものです。
至らぬ点も多いことかと思いますが、みなさんに楽しんでいただけるよう誠心誠意頑張っていきます!
それでは本編へどうぞ〜
*今作品は怜-toki-の内容は含まれておりません。ご了承ください
第0話 ハジマリとオワリ
ーー太陽は沈もうとしているにも限らず、その暑さは収まりを知らぬ夏のある日、ある街の公民館の一室ではトン、トン、と不規則な音が部屋内に響いていた。
「っしゃ!リーチ!!」
卓に座っている3人、そのうちの1人の男の子が掛け声と共に牌を横に曲げる。
「ま、またぁー!?」
「むぅー」
その声に反応するのは一緒に卓に入って打っている女子2人。3人は外の暑さなど知らないというように、冷房が効いた彼らしかいない部屋で麻雀を打っていた。
「お!それロン! タンピンドラ1 7700!」
「うっ、はい……」
******
「また、空亜に負けたぁ〜〜!!」
「いや、竜華は二位やん、うちなんてまたラス(最下位)やで……」
「言っても怜も竜華と2000点差しかないけどな」
「せやけどラスはラスやし、もう一局や!次は空亜を倒すで!」
打っているうちの1人、怜と呼ばれる少女は椅子から立ち上がり、先ほど一位だった空亜と呼ばれた少年に指を指して宣言する。
「でも、もう5時やで?教室のみんなも帰ってもうたし……そろそろ帰らんと先生に怒られんねんで?」
「まぁ、あと『ダメに決まってるでしょ?』せ、せんせー……」
「ほらほら今日は帰りな、夏休みなんだし、明日もここに来て打てばいから」
後ろから怜の肩をガシッと掴み、無理やり座らせたその女性は少女たちに帰宅を促していく。その様子を見て空亜は自身の荷物を掴み、帰宅のために席を立った。
「ほら、先生もそう言ってるし今日は終わりだ。怜、竜華帰ろう」
「うん♪」
「ん、明日こそ、やな」
そうして3人は卓の電源を落として、その部屋を出ていく。そして、先生が最後に戸締まりをすると、誰もいなくなった部屋には先ほどまでの小気味いい音はなく、ただ外の蝉の鳴き声だけが部屋内に響いていた。
******
俺、沖野空亜はもう出会って2年になる園城寺怜と清水谷竜華の2人と近所の公民館で行われていた麻雀教室から家へと帰っていた。
「今日は俺が1番勝ったなー」
「昨日はうちが勝ったもん!」
「最近、うち全然一日通して一位なれてへんなぁ……」
今、俺たちは小学6年、来年には中学生になる。こうして3人で自由にやれるのはもしかしたらあと半年になるのかもしれない。
「2人は中学でも麻雀続けるのか?」
「なんや藪から棒に。うちは続けるつもりやで?竜華と空亜も続けるんやろ?」
「俺はこれからもやっていくよ」
「うちもー!そもそも怜のいるところにうち、ありやもん♪」
「うちもやで~、りゅーか~♪」
竜華がそういうと、怜は彼女の胸に飛び込み、思いっきり彼女に抱きついた。
……この2人は俺が会う以前からの親友同士、それ故にとても仲がいいのだが、
(あー、この雰囲気だと俺が居ずらいんだよな……)
まぁ、もう2年こんな調子なので正直なにかしても疲れるだけと諦め、もとい慣れてきたところはではあるのだが。
「っと。俺の家こっちだから。それじゃ2人ともーーーまた明日な。」
「うん。また明日な〜」
「明日はうちが勝つで!」
2人に手を振り、背を向けると、俺は家へ向かって歩き出した。そうして歩くこと数分、おれの住んでいるマンションに到着すると自身の部屋へと向かう。
「ただい、ま……」
慣れ親しんだドアを開けた先、そこにあったのはーーー大量のダンボール。それを理解した瞬間、
「……あぁ、そう、なのか。」
俺はただ、玄関に立ち尽くしていた。
******
私には、親友と大事な友達がいる。それがあの部屋で先ほどまで一緒に卓を囲っていた怜と空亜だ。
怜とは小3の頃から、空亜とは小4の頃からの付き合いで、それまで特別仲がいいといった友達がいなかった私にとっては2人は本当に大事な人になっていた。
「怜ー、そろそろ行くでー」
「あと1分!」
小学生最後の夏休みはずっと3人で過ごしていて、今日もうちらは麻雀を打とうと約束をしていた。そして今、うちは怜が出てくるのを待っている。
待つこと数分、中からドタドタと慌ただしい音が聞こえ、「行ってきまーす!」という声が聞こえると、親友がやっと顔を現した。
「すまんなぁ、遅れてもうた」
「ええよ。行こ♪」
慌ただしく出てきた怜と合流し、いつも通りの道を太陽の日差しが降り注ぐ中のんびりと歩いていった。だがどこか親友の顔は暗かった。
「今日こそは空亜に勝つで!昨日は負けたし。ね、怜?」
「せやな……」
「ど、どうしたんさっきから。具合でも悪いん?」
怜は昔から病弱で、今でもかかりつけの病院にはお世話になっている。
だからこそ私は常に怜の体調に気をつけてはいる、からこそ、今の様子はそれとは違うように感じていた。
「……何か、胸騒ぎがすんねん」
「胸騒ぎ?」
「せや。まぁ、気にしても意味ないし、はよ行こか」
「う、うん」
そんなこと気にしない、そう言っていた怜だったが、私の前を歩くスピードはきっと無意識だろうが、段々と早くなっていた。そのおかげと言ってはなんだが、公民館にはいつもより早く着くことができた。
「おはようございまーす」
「……まーす」
「あ、二人ともおはよう。来てもらって急なんだけど少し話があるんだけど、いいかな?」
公民館の一部屋、いつもうちらが卓を囲んでいる部屋に入ると、中には教室の先生と数人が既に打っていた。うちらに気づくと先生はなんともいえない顔でこちらに近づいてはそんなことを言ってきた。
******
「それで、話というのは?」
その後、部屋の外、中の冷気が漏れ出す廊下に呼び出されたうちらは先生と対峙していた。この女の人は竹原先生、麻雀教室を開いていて、高校ではインターハイにも出場している凄い人だ。
「うちらだけでいいんですか?空亜はいませんけど」
「……ちょうどそのことでね」
先生が若干俯き、それを見てしまった私は自身の心がざわつくのを感じつつもなかなか紡がれない先生の言葉を待った。そして、先生はうちらを見つめ、苦しそうに、重々しくその言葉を告げた。
「ーーー彼、ここやめるって」
******
うち、園城寺怜は朝から心に妙なざわつきを覚えていた。病気、ではない。今まで経験したことのないこの感覚は、うちの不安を余計に煽り、そしてーーー
「彼、ここやめるって」
「え……え?」
その言葉を聞き、理解するまで数秒、理解した時にはうちは腰が抜け、ゆっくりと床にへたり込んでしまっていた。
「怜!」
「だ、大丈夫……やない。先生、な、なんで空亜はここを?」
「朝、彼がここに来て言い残していったわ。引っ越し、だそうよ」
引っ越し?この街から?それってつまりーーー
「空亜が、ここからいなくなる!?」
「せ、先生!まだ空亜はこの街にいるんですか!?」
その問いに先生はゆっくりと首を横に振った。
「それは流石に分からないわ。あなたたち彼の家は知ってるの?」
「い、いえ。うちは知りません」
「うち、知ってる」
「怜!?なんで!?」
そっか、竜華は空亜の家を知らんかったんやな。竜華はうちが彼の家を知っていると聞くと、とても驚いた顔をしていた。
確かあの日はーーー
~半年前〜
「空亜、竜華のとこ行くで〜〜」
「おう、今行く」
寒い日が続く12月、今日は珍しく竜華が風邪をひき、学校を休んでいた。その日の放課後、うちと空亜は竜華のお見舞いに行こうとしていた。
「なんかお菓子でも持ってってあげた方がいいか?」
「せやな。空亜なんか持っとらんの?」
「あー、俺の家にあった気がするわ。一回うちに寄っていいか?」
「おお、空亜の家初上陸や♪」
「ん?まだ俺の家に来たことなかったっけ?」
「ないで。っと、ここで時間使うのはもったいないわ、早よ竜華の元に行くで!」
空亜の手をとって学校から帰り、数十分。空亜の案内でたどり着いたのは高そうなマンションだった。少し辺りをキョロキョロしながらも、置いていかれないように空亜の横について歩いていく。
「……怜、ちょっと落ち着けって」
あまりにキョロキョロしすぎていたようで、空亜がうちから距離をとり、少し引いていた。そんな彼に対しうちは
「ごめんなさい」
腰を九十度に曲げて謝罪するしかなかった。
******
「さ、入って」
「お、お邪魔しまーす……」
空亜の家に到着すると、うちはリビングのソファに座って空亜の手土産探しを待っていた。時間もあるので、ぐるっと彼の家を見渡すとまず感じたのは
(やけに物が少ないなぁ。確か3人家族言っとったんやけど)
あまりに生活感のない様子に少し違和感を覚えてしまう。それでも至る所から空亜の痕跡がついていて、いやでもここが彼の家なんだと理解させられてしまう。
「お!これなんかどうだ?」
「うまそうなゼリーやん。お見舞いの品としては妥当やな」
「だよな!んじゃあ、そろそろ竜華のとこに行きますか」
「おー」
それから空亜の家を出ると竜華の家へと向かい、竜華に会うと、辛そうにも笑う親友がいた。とりあえず彼女がキツくない範囲で雑談をし、幾分経つとうちらは彼女の家のドアをくぐった。
そして時は現在。うちと竜華は先生に「その家に行ってみたら?」という言葉通り、半年前の記憶を頼りに彼の家へと向かった。
「ずるいわ怜」
「いい加減機嫌直してーな竜華」
隣の親友はうちが自分の知らない間に彼の家に上がっていたことを知り、さっきからずっとこの調子だ。そんな彼女を尻目に向かう道を見るとあの日のことが思い出される。
「……あのマンションやな」
「で、でっかいなぁ……」
うちらの前にそびえたつマンションはちょうど真上に上がってきた太陽に照らされ、あの時より重おもしく感じた。だが、それでも行かなければならないと、中へと入っていった。
******
「沖野さんならもうここにはいないよ?」
「「……え?」」
「朝に息子くん連れて別れの挨拶にきてたわ」
中には入れないため、管理室を訪ね、マンションの管理人さんに尋ねるとその人は淡々とそんなことを口にした。空亜がいない、その事実に気づかないふりをしたくても現実はそれを許してはくれず、事実彼はここにはもういない。
なんとか管理人さんにお辞儀をし、その後はどちらもなにを考えるわけでもなくただただ歩き続け、最後には偶然たどり着いた公園のブランコに腰掛けていた。
「「……」」
どちらも一言も発さない。それは彼との関係がたかが2年、それだけで言い表せるほど、浅くないということを表していた。
それからどれくらいの時間が経っただろうか、既に日は沈み、空には満天の星が自らが1番だと主張するように輝いている。
「……なんで、空亜は何も言ってくれなかったんやろ……。うちらの事、空亜はそんなに大事でもなかったんやろか……」
「そんなの分かるわけないで、竜華。……うちらが知り得ることやないんやから」
「せやけどっ!!……せや、けど……っ」
「……」
親友の声にだんだんと嗚咽が混じってくる。それを聞いているだけでうちも視界が揺らいできた。
「く、あ……くぅ、あ……あぁ、……あ、あぁ……」
竜華はブランコから崩れるように落ち、足が汚れることも厭わずにただ涙を流していた。
もう、彼はいない。いつもなら明るくこんな空気を吹き飛ばしてくれる彼はここにはもういないのだ。それを理解してしまったら、もう、流れ出した涙は止まることを知らなかった。
はじめての投稿なのでおぼつかなかったですが、なんとか出来ました。
次話も近々出していきます。が、頑張るぞーー
以上 あとがきでした