日仏雀恋大戦 最後にアガるのは私!   作:タピタピ

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……どうも、タピタピです。この度はほぼ失踪という形になってしまい誠に申し訳ありませんでした。

事情は色々ありましたが、これからはまた書いていこうと思います。消えている間にも多くの方が見てくださったようで本当に感謝が絶えません。

評価をくださった、シンタロウさんありがとうございます!本当に嬉しいです!(遅くなってしまいすみません)

それでは、インターハイ終了からです!どうぞ〜

*12話までの一部分を変更しました。ただ、大した変化ではないのでこのまま読み進めてもらって大丈夫です。


第13話 風神

 

 

うちは洋榎にスマホを返すと飛び込むようにベッドに転がる。昨日まで少し散らばっていた私物は明日の帰宅に向けて片付けられており、()()の周りは元通りになっていた。

 

視線を横にずらすと、ちょうど洋榎がスマホをベッドに放り投げたところだった。

 

 

「電話は終わったんか?」

 

「終わったで〜」

 

「なら片付けしような?」

 

 

今現在うちと由子のベッド付近は荷物をまとめ終え、残るは洗顔品など明日の朝に必要になる物のみであるが、対して洋榎の周囲は見るに耐えない状態になっている。

 

 

「……あとでやるわ」

 

「それ言ってもう5時間経ったのよ〜」

 

 

うちの言葉をなんとか受け流そうとする洋榎に対し、由子も援護射撃を繰り返す。

 

 

「……そんなこともあるかもしれへんなぁ。……あぁ、もうわかったって!やりますから、やりますって!」

 

 

流石に2人相手ともなると居心地が悪くなったのか洋榎はゆっくりと腰を上げて片付けを始める。その間暇になっているうちらはテレビをゴロゴロと見ていた時だった。つい先日まで飽きるほど見ていた赤髪が目に入った。

 

 

『こちら女子個人戦優勝、団体戦優勝、MVPを取られました白糸台高校の宮永照さんです』

 

『はい』

 

『今大会は色々とおめでとうございます』

 

『ありがとうございます」

 

『今大会において宮永選手は一度しか負けていません。快勝と呼べるこの結果に何かコメントをいただけますか?』

 

『はい。この結果をこれからも続けられるよう日々精進していきたいと思います』

 

『ありがとうございました!これからのご活躍も期待しております!』

 

 

アナウンサーのその声でインタビューは終わると、うちはテレビから視線を外し、天井を仰ぎ見て呟く。

 

 

「ほんと、何者なんやろうなぁ、あいつ」

 

「今まで全く表舞台に出てこなかったから驚きなのよ〜」

 

 

うちの呟きに由子も同じだと賛同する。

 

実際、宮永照という人物はこのIHまで全く注目されていなかった。だからこそ、多くの学校は彼女のことを軽く見積もり、そしてこの地を去ることになったのだ。

 

姫松だってしっかりとした対策ができたわけではないがそれなりに早く彼女を見つけることができたから何とか2位で踏みとどまれていたのだ。

 

 

「空亜も一目置いてるらしいしな」

 

「へぇ、そうなんか。てことはいつか2人が対戦することもあるんかなぁ」

 

「あるやろうな。なんたってあいつは戦闘狂やぞ?面白そうな獲物見つけて喰らいつかん訳ないやろ」

 

 

洋榎が気だるそうに荷物を纏めながら片手間にそんなことを述べる。

 

実際、空亜は強者と戦いたいという戦闘欲が常に溢れているため、うちも由子も洋榎の言葉を否定することはできず、ただ少しの苦笑いが生まれたのだった。

 

 

 

        ******

 

 

 

その日の夜、うちは自室にていつものことながら空亜から教えを乞いていた。

 

 

「ちがう、ここは四萬。ほら、ここの六萬と八筒。明らかだろ?」

 

「……なんでや?」

 

「いや、だってーーー」

 

 

4月、こいつの答えとも呼べる打ち回しに心を打ちつけられたうちは弟子入りのような形をとり、こうして牌効率や手牌読みの技術を教えてもらっていた。

 

それはたとえ東京でも変わりはない。

 

 

「それじゃ、今日はここまでにするか」

 

「せやな。今日もありがとうございました。あ、そういえば今日園城寺と清水谷から洋榎に連絡があってな、あんたの家を教えてほしいってことやって、うちが教えたんやけどよかったか?」

 

 

うちが事後報告という形で空亜に尋ねると空亜は悩む様子もなく頷いた。

 

 

「怜と竜華が?あー、そういえば場所教えてなかった気がするな。わかった。そうだ、どうせならお前らも来るか?」

 

「園城寺と清水谷か……確かにちょっと興味あるな」

 

 

うちは当時()大した実力はなく県予選落ちであったため大した結果を残せていない。そんな頃のうちが一種の憧れを抱いていた2人と対戦できると言うのならそのチャンスをものにしないわけにはいかないだろう。

 

うちが決心を固めている傍ら同じく部屋にいた由子と洋榎は首を横に振った。

 

 

「私はパスやね。これから家族旅行で大阪にいられなさそうなのよー」

 

「あー、うちも無しやな。ちょっと用事があるんや」

 

「そうか。じゃあ日にちは……別にいつでもいいか。別に誰かいるわけじゃないしな」

 

 

空亜の両親は未だ海外におり、空亜自身も大会で稼いだ賞金により家を建てている(両親名義)ので、人を呼ぶことに日時は関係がない。そのため、うちも自由に出入りができると言うわけだ。

 

 

「じゃあ、来週の土曜にでもするか。洋榎、あいつらに伝えといてくれるか?」

 

「ん」

 

 

こうしてIH後最初のイベントが決まったのだった。

 

 

 

        ******

 

 

 

IHから1週間、私と怜はバスに揺られていた。と言ってもそれほど長い道のりではない。大阪を南下しているだけだ。

 

そうして揺られて30分程度、指定されたバス停で降り、少し歩くと1つの一軒家に辿り着いた。

 

 

「こ、ここであってるんよな?」

 

「そうやな……。てっきりアパートとかかと思ってたんやけどちゃんとした一軒家やんけ」

 

 

一人暮らしには大きすぎる家を見て、本当に合っているのかとおろおろしていると、突然ガチャっという音と共にドアが開いた。

 

その音に釣られてそちらに目を向けると出て来たのは紫髪の綺麗な少女だった。その彼女はこちらを見つけるとため息をつく。

 

 

「さっきからなんでそんなとこ立ち尽くしてるんや?空亜が待ってんで」

 

「あー、えーっと、誰?」

 

 

初めて見るその顔は、うちらの疑問を受け取ると少し照れながら頷いた。

 

 

「あぁ、そかちゃんと向かい合っては挨拶しとらんかったな。どうも、姫松高校一年、末原恭子です。まぁ、そのよろしく」

 

 

末原恭子、つい先日聞いたその名前に私は思わず手を叩く。

 

 

「あぁ!末原さんか!うち清水谷竜華いいます、よろしくお願いします!」

 

「うちはその保護者の園城寺怜です、いつも娘がお世話になってます」

 

「いや、言うなら逆やろ、怜!?」

 

 

末原さんに合わせてうちらも挨拶を返すと同時に怜が初対面だと言うのにボケをかましたので、私は急いで訂正を入れる。末原さんとは初対面だと言うのに、誤解されたらたまったものではない。

 

その様子を見て、思わずと言った感じで末原さんが軽く吹き出していた。

 

 

「やっぱ、おもろいなぁ2人とも。洋榎の友人なだけあるわ。それじゃあ、うちが言うのもなんやけどいらっしゃい、やな」

 

「「お、おじゃましまーす」」

 

 

そう言えばなぜ、末原さんご空亜の家にいるのだろう、と思ったものの、何か用事があったんだろうなと自己完結をし、家に足を踏み入れると綺麗な玄関に一足の男性用の靴が置いてあり、ここに彼がいるのだということが嫌でもわからされてしまう。

 

そんな私の心情を知る由もなく、末原さんが慣れた足取りで廊下を進んでいく。それについていくしかないうちらは辺りをきょろきょろしながら歩いていた。

 

 

「空亜、2人が来たで」

 

「お、来たか。今度はすぐ会えたな」

 

 

そして末原さんが1つのドアを開けると、そこには部屋着姿の空亜が本を片手間に座っていた。彼もこちらに気づくと笑みを浮かべる。

 

その姿を確認した親友はおもむろに空亜に向けて走り出すと思いっきり彼の胸に飛び込んだ。

 

 

「くーあ〜」

 

「おおっ!?と、怜。元気だったか?」

 

 

怜の飛び込みを何とか受け止めた空亜はその体勢のまま頬を胸に擦り付けている怜の頭をポンポンと優しく撫でる。

 

それに満足したのか怜は空亜から離れると、笑みを浮かべて揺れていた。

 

 

「元気やで〜。()()()1週間で会えたからなぁー」

 

 

ただ笑顔とは裏腹にその声にはどこかおぞましいものを感じたのは空亜も同じだったのだろう。

 

 

「そ、そうだな」

 

 

怜のその圧に頬を少しピクピクさせながら何とか頷き返していた。その様子を見ていた末原さんも隠そうとせず顔をしかめている。

 

この状況を少しでも和らげようとした私の判断は間違ってないと思う。

 

 

「うちもおるんやけど〜??空亜〜??」

 

「竜華さんも元気そうですなによりです」

 

「なーんで、カタコトなんや……」

 

 

ただ、どうも私も怖がらせてしまったようだ。

 

私の言葉に何故か敬語で返した空亜はうちらから目を逸らし、あっ!と何かを思い出したかのように話題を転換させた。

 

 

「にしてもここまで遠かっただろ、とりあえずゆっくりしてけよ。そうだ、恭子家の案内しといてくれないか?俺飲み物用意するから」

 

「了解や。うちはいつものな」

 

 

その意図に気づいた末原さんがすかさず肯定し慣れている風に要望を言うと、空亜は乗り切ったと言わんばかりににほっとした顔をする。

 

 

「あぁ。2人は何にする?麦茶、緑茶、紅茶、コーヒー、オレンジジュースくらいならあるけど」

 

「うちは麦茶でいいかなぁ。怜は?」

 

 

先程まで炎天下の下にいたので、冷たい麦茶がいいなぁと思いながらその要望を伝える。一方で怜は目をキラキラ輝かせながら、

 

 

「うちもいつものやで!」

 

「お前は今日初めて来ただろうが……」

 

 

と言った。それに対して空亜は何を言ってるんだこいつ……、と言ったように怜を見つめていたが、怜はその様子を意に介することもなく、

 

 

「でも、これから何度もくれば『いつもの』にもなれるんやろ?」

 

 

と宣った。その言葉に空亜は意表をつかれ、一瞬動揺していたものの、目を閉じると、薄く笑みを浮かべて答えた。

 

 

「……そうだな。いつでも来てくれ。今まで無理させた分、遠慮しなくていい」

 

「やったで!じゃあオレンジジュース!」

 

 

その時の怜の笑顔はまるで満開の桜のようで、その2人の姿を見て私はやっと心の底から思えたのだ。

 

 

 

ーーーまた彼と笑い合える日々が帰って来たのだと。

 

 

 

        ******

 

 

 

恭子が2人を伴って家の案内をしている間、俺は頼まれた飲み物を用意していた。いつもうちで練習しているときは夜遅いことが多いため、恭子はコーヒーを飲むことが多くなっていた。そのこともあってかコーヒー大好き少女になっていたのだ。

 

 

「えっと、怜はオレンジジュース、竜華は麦茶だったな。っと、じゃあお湯沸かしますか。ん?」

 

 

そうしてお湯を沸かしているといつもは使っていないために電源が落とされているスマホが振動した。今日は2人が来るということもありスマホを持って来ていたんだった。

 

そうしてお湯を確認してからスマホを取り耳元に当てる。

 

 

「はい、もしも『あー!やっと出てくれましたね!?』……やっべ」

 

 

スマホから聞こえた声は3年間で飽きるほど聞き飽きた少女の怒鳴り声だった。

 

 

「ひ、久しぶりだな明華。元気にしてたか?」

 

『元気です!って、そうじゃありません!!な・ん・で!電話かけてくれないんですか!!前に話したのなんて3ヶ月前ですよ!?』

 

「いや、1週間前に話してるじゃないか……」

 

『足りてません!!私言いましたよね!?毎日電話してほしい、って!!』

 

 

まくしたてるように問い詰める明華は久々の会話だからかなかなか止まることなく、言葉を放ち続ける。

 

 

「あー、そんなこと言ってたような……」

 

『まさか忘れてたんですか!?この人でなし!!』

 

「ごめんって、これからはまぁ、善処するからさ」

 

『それしないやつじゃないですかぁ!……でもよかった、嫌われてなくて……』

 

「何だって?」

 

 

怒っていたと思っていたら急な小さな声になったため、何を言っていたのか聞き取れなかったが、なんとなく空気がほぐれてきたのを感じた俺はあいつに悟られないようにそっと胸を撫で下ろし、沸いていたお湯を止めた。

 

 

『なんでもないですよーだ。そういえば、聞いてくださいよ空亜さん、私世界ジュニアでーーー』

 

 

 

        ******

 

 

 

『それで、お母さんがですね?』

 

 

話し始めてから10分ほど経ったものの、未だに明華が話をやめる様子はなかった。だが怒らせてる側であるためこちらから言い出すというのもなかなか厳しいところである。

 

だが、そろそろ急がねばコーヒーも冷めてしまう。覚悟を決めた俺は頷きながらも言葉を切り出していった。

 

 

「雀さんは相変わらずだな、明華、すまないがそろそろ切らせてもらっていいか?」

 

『えー、まだ話し足りませんよー』

 

 

俺の言葉に本当に残念そうに答える明華。本当に、俺の周りにはいつも我慢ばっかりさせてるな……。

 

 

「ごめんって、今うちに客が来てて待たせてるんだわ。12月には一旦そっち戻る予定だから。まぁ、それまで待っててくれよ」

 

『毎日電話ください』

 

「……3日に1回で勘弁していただけないでしょうか」

 

『んもう!分・か・り・ま・し・た!!それでいいですから忘れないでくださいよ!』

 

「頑張らせていただきます」

 

『それじゃあ、体調にだけは気をつけてくださいね、愛してますよ』

 

「あー、俺も愛してるぞー」

 

 

交渉を重ねなんとか週1で許してもらうと簡単な()()を交えて通話を切る。そしてスマホを耳元から話し、視線を上げるとドアに隠れるようにして竜華がこちらを覗き込みながら立っていた。

 

 

「何してるんだ竜華?」

 

「っ!!いやぁ〜なんか遅いなぁ思って様子見に来たんやけどなんか楽しそうに誰かと連絡してたからどうしようかなーって」

 

 

俺の言葉にビクッと反応した竜華はそろーっとドアから姿を出してこちらにやってくる。時間にして既に10分以上が経過しているのだ、飲み物の用意にしては長過ぎるだろう。

 

 

「あー、すまん。コーヒーだけ今仕上げるから。砂糖入れて、よし完成だな」

 

 

先ほど沸いたお湯でコーヒーを作ると砂糖をほんの少し加えて仕上げ、他の飲み物をお盆に乗せて竜華の方へと向かう。

 

 

「ありがと〜。さっきの電話誰やったん?」

 

「フランスの泣き虫からだよ。随分電話してなかったもんで相当激おこだったがな」

 

「泣き虫?」

 

 

そのあだ名にピンと来なかったのか竜華は首を傾ける。

 

まぁ、テレビに出ているような時の明華からは想像できないような言い方であるたのでピンとこないのも無理はないだろう。実際、あっちにいた時は泣きまくってたんだけどなぁ。……特に最後は。

 

 

「ま、そんなことより早くこれを届けに行かなきゃな。あいつらは卓部屋にいるか?」

 

「うん。にしても空亜の家広いねんなぁ。1人で寂しくならへんの?」

 

 

寂しくなる、か……。そう言えばフランスから初めてこっちにきた夜は多少寂しかったかもな。今では、友達も増えたから、そんな気持ちも忘れてしまっていたが。

 

 

「そうでもないぞ。正直俺なんて麻雀の勉強してたらすぐ時間なんてなくなるし、それに恭子もよく来てるからな」

 

「末原さんはけっこう来てるん?」

 

「あー、まぁ大体2、3日に1回か?部活で解消できなかったり、放課後の1対1の練習とかが長引いたりすると来てるなぁ」

 

 

あいつは部内で1、2を争うぐらいの真面目だからなぁ、1日練習すればわからないところなんて100個は見つかるだろうし、それを全部解決しようとしたら流石に時間も人も足りてないからなぁ。

 

俺が強くなろうとしてるやつの手伝いをしない理由なんてある訳ないし。

 

 

「2、3日に1回!?……空亜は末原さんと付き合ってるんか?」

 

 

その俺の回答になぜか驚いた竜華は目を見開いてこちらを覗き込み、可能性のかけらも無いようなことを言い出した。

 

 

「ははは!!そんな訳ないだろ?ただの友達兼教え子だよ」

 

 

その問いに俺は思わず笑いが飛び出してしまう。恭子とはあくまで友達兼師弟関係であり、そんなことになったことは一度たりともない。

 

その発言を聞いてか竜華は顔をいっそう険しくしていた。

 

 

「……同級生をそのペースで連れ込むのはなかなかヤバいんとちゃんうんか?」

 

「そうらなのか?フランスだとあいつがずっと一緒にいたからなぁ、感覚が鈍ってんのか?」

 

 

まあ、単純に国が違うからという理由もあるだろうけど、やっぱしフランスに慣れちまってんのかなぁ。

 

 

「風神と?」

 

「あぁ、明華は毎日うちに来て夕食食べて寝てたからな。あいつのお母さん、博士だから忙しくてな、うちの両親もほとんどが泊まりでの仕事だったから互いに1人ってのもつまらないってことで一緒に生活してたんだよ」

 

 

竜華の疑問に俺はフランスのことを思い出す。

 

あの頃は明華に追いつくために毎日必死に麻雀を繰り返し、明華とご飯を食べ、寝ていた。今考えてみれば1日のうち学校以外(休み時間を除く)はずっと一緒にいたように思う。そんなんだからお似合いだ、なんだと色々からかわれたのだろうが。

 

 

「毎、日……よく風神のこと襲わんかったな?」

 

「お、襲うって……互いにその気がないんだからそんな事起こる訳ないだろ。あーでも学校で2人で居たりすると冷やかされたりみたいなのはあったなぁ、まぁほとんど冗談みたいな感じだったけど。あぁ、でもたまーに女子に膝で突かれたりしたんだよなー」

 

 

あいつ人気あるくせに俺とずっと一緒にいるから彼氏作れないし、それに前に彼氏を作ればみたいに言ったらなんでかその日はずっと無視されたし。まぁ、ケーキ作って一緒に寝て何とか許してもらったんだけど……。

 

 

「……」

 

「まぁ、あいつモテるしその辺には困らんだろ」

 

(……これ、風神苦労しとったんやろうなぁ……結局堕としきれへんかったみたいやし。そりゃあ学校の人らもそんなもんを毎日見せられたら手もでるわ……)

 

 

険しい顔で1人考え込む竜華。何を考えてるかわからないが、まぁ聞いてこないということは俺が関わるべき内容ではないのだろう。

 

と、そんな話をしていると気づけばさらに時間が経ってしまっていた。俺は竜華を促して歩き始める。と言ってもすぐそこであるが。

 

 

「さて、2人を待たせても悪いな。竜華ドア開けてくれ」

 

「うん。2人とも、来たでー」

 

「お、やっと来たんか。恭子ちゃんここで一旦ストップや」

 

 

竜華がドアを開けると中にいた2人は卓に座ってタブレットと河で何かをしていた。

 

俺らが来たことでそれは中断され、怜の一言で恭子が力を抜いて椅子に背中を預けて天を仰ぐ。

 

 

「……せやな。空亜、飲み物くれ」

 

「コーヒー作ってんだけど、お茶の方がいいか?ほら、俺の」

 

「すまんな」

 

 

そう言って俺用で持ってきたお茶をもらった恭子は一気にそれを飲み干した。その様子を見ていた怜が目をキラキラとさせてこっちを見ていたが、俺はそれに気づかないふりをして視線を逸らした。

 

 

「うわぁ、いい飲みっぷりやなぁ。それで2人は何しとったん?」

 

 

竜華の一言で意識を戻した恭子は少し恥ずかしそうにお盆にコップを戻した。

 

その恥ずかしさからか何も答えない恭子を見て怜が竜華に回答する。

 

 

「普通に河読みの練習やで。この程度でへばるなんて恭子ちゃんもまだまだやな〜」

 

「……沖野、こいつも十分異常や。まぁ、お前ほどやないが」

 

 

その回答を聞いて恭子が顔をげんなりさせながら俺に話してくる。流石は全国常連校と言ったところであろうか、恭子をもってそこまで言わせるのは本当にすごいことだと思う。

 

 

「まぁ、インターミドルベスト8らしいから、流石ってとこだよな。おかわりは?」

 

「いや、大丈夫や。それより打とうや、そのためにここまで来たんやし」

 

「そうだな。じゃあ竜華もそこに掛けてくれ」

 

「うん」

 

 

ほぼ完全に復活した恭子に合わせて俺が席に着くとそれに合わせて竜華も席に着く。それから数時間、牌の小気味よい音が部屋中に響き渡っていた。

 

 

 

        ******

 

 

 

それから時間は経ち、太陽は真上に上がり現在の時刻は午後1時を回っていた。

 

恭子は満足した、ということで帰宅したが2人はもう少しここにいるらしく今は昼ごはんを竜華に作ってもらっているところであった。

 

 

「竜華、すごいな……」

 

 

残っていた食材で料理を作り上げる竜華のあまりに早過ぎる手腕に思わずそんな言葉を溢すとその言葉に反応したのは怜だった。

 

 

「せやろせやろ〜〜」

 

「お前は竜華じゃないだろ……」

 

「竜華とうちは一心同体、2人で1人や!」

 

「そうなのか。竜華、俺も手伝おうか?」

 

「いや、大丈夫や。ありがとうな。怜の面倒でも見といてーな」

 

「OK」

 

 

竜華のその言葉に頷くと俺は怜の横に座る。ちゃんと俺の部分を開けてくれる怜も相変わらず優しいと思う。

 

 

「うちはペットか何かなんか?」

 

 

言葉を流された怜が不満足そうに言葉を並べるが、実際ベッドに寝っ転がる姿はネコそのままであった。

 

 

「まぁ、一心同体言うなら1人が高スペックならバランスを取るために怜がその、なぁ?」

 

「濁しても分かるわ……。ひどいわぁ〜〜空亜がいじめるぅ〜〜」

 

 

怜はそう言っめじたばたした後、頭を俺の膝の上に乗せてきた。そして頭をぐりぐりしながら唸る。

 

 

「お、おい、怜?」

 

「なんや?……うーん、やっぱ男子の太ももは硬いなぁ。空亜のしか知らんけど」

 

「いや、知らんし」

 

 

そんなことを言いながら決して頭を上げない怜を見ているとーーー

 

 

「ふひゃっ!?」

 

 

いつのまにか彼女の頭に手を置いて撫でてしまっていた。その急なことに驚いた怜は体を跳ねさせて頭を上げた。

 

 

「なっ、ななな何すんねやいきなり!?!?!?」

 

「おぉ……すまん、何か手が勝手に。その、悪かったな」

 

「……別に、嫌ではなかったねんけど」

 

「そう、か?」

 

 

小さく呟いた怜だったが、俺は聞こえてしまったために返事をしてしまうと、聞こえているとは思っていなかったのか、怜は顔を朱に染めながらソファに顔を埋めて唸っていた。

 

 

「//////うぅ〜竜華ぁ〜〜!空亜がいじめたり優しくしたりするぅ〜〜」

 

「別にええんとちゃう?4年ぶりなんやしとことん甘えれば。さて、料理できたで、みんなで食べよ?」

 

 

その様子を確認した竜華は料理をこっちに持ってきながら慈愛に満ちたような女神のような視線で怜のことを眺めていた。

 

 

「ありがとな竜華」

 

「サンキューや竜華。あと甘えるんは恥ずかしいから……今度や」

 

「そかそか^^」

 

 

そうして俺らも運ぶのを手伝いながら3人して席に着くと、手を合わせてーーー

 

 

「それじゃ」

 

「「「いただきます」」」

 

 

結論。竜華は女神だった。

 

 





さて、やっと明華が登場しましたね。長かった……。

それでは評価、コメント大変励みになるのでよろしくお願いします!

次はいつになるのか、出せたら1週間以内、多分2週間以内になると思います。それではまた次回!
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