日仏雀恋大戦 最後にアガるのは私!   作:タピタピ

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どうも、タピタピです。

今回は話が結構動きます。多分……。

そういえば活動報告でもお知らせさせてもらったとおりアンケートを実施していますのでご協力おねがいします。

それではどうぞ!!



第14話 ユズレナイモノ

 

 

「おい」

 

 

その会場にたどり着くと、後ろから俺を呼び止める声が聞こえてきた。その声に反応して振り向くと目に入ったのは実に半年ぶりの好敵手の顔だった。

 

その男は俺が視認したのを確認するとにやっと笑みを浮かべてこちらへと歩んでくる。

 

 

「よぉ、半年ぶりじゃねぇか」

 

「……アレイ、なんでここにいるんだよ」

 

 

そこに立っていたのは俺と同じ「絶望の世代」の1人、「戦争屋」アレイ ヴァグナだった。俺が予想してなかった奴の出現にげんなりしていると、それとは真逆にアレイは笑みを一層濃くした。

 

 

「んなもん、お前の顔を拝みにきたに決まってるだろ?」

 

「そりゃあ、世界ランク上げとか賞金目当てならこんな大会来ないよなぁ……」

 

 

今回のこの韓国で開かれている大会はお世辞に言ってもわざわざ世界ランカーが参加するような大会じゃない。賞金だって大した額は出ない。

 

だと言うのにここまで来ているのなら、それはもうそう言う事なのだろう。

 

 

「結構遠かったんだぞ?イギリスから韓国なんてほぼ真逆の位置だからな、おかげでむしろ金はマイナスになりそうだ」

 

「じゃあなんで来たんだ……。俺は今日久々の大会だから慣らしでここを選んでるってのに……」

 

 

俺はとある理由により、大会に参加しないといけないためたまたま近くの韓国で大会が開かれることを知り、選んだに過ぎないのだ。

 

 

「そりゃあ、お前が顔を見せねぇのが悪いよなぁ」

 

「日本にいるんだから見せられる訳ないだろうが」

 

「まず、なんで日本()()()にいるんだ。フランスにいればプロスカウトだって受けれたはずだろ。それを蹴ってまでなんであっちにいるのか、俺には分からねぇ。あっちは確か18歳にならねぇとプロになれないだろ」

 

 

奴は日本という部分を強調してにらみつけるようにこちらを見てくる。

 

実際言っていることは何も間違っておらず、俺はフランスでも何度もスカウトを受けた。そのまま進み続ければ人生も安定で、わざわざ学校にも行かなくともよくなっていたのだろう。日本は麻雀後進国だから、というよりも日本の国の特徴として18歳未満のプロ活動は認められていないのもまた事実なのだ。

 

だが、俺はその道をかなぐり捨ててここにいることを選んだ。

 

 

「よく知ってるな?調べたのか?」

 

「ふん、ちょっとした暇つぶしだ」

 

 

あまりそのようなことに興味を示さないこいつにしては珍しいと思っていたが、そいつは腕を組んで顔を横に背ける。

 

 

「まぁ、その通りだけどな。ただ俺にもやり残しがあったんだ。それを終わらせるためってのが建前だ」

 

「じゃあ本音はなんだよ」

 

 

俺は一呼吸置くと目を向き直る。

 

 

「ーーー龍帝の喉を引き裂くための武器を手に入れるため」

 

「……は?ちょっと待て、なぜお前がそんなものを欲する?お前別にあいつに勝ってない訳じゃないだろ」

 

 

俺のその発言があまりにも想像の埒外だったのか、彼は目を見開く。おそらくその意味が理解できなかったからではない、理解できたからこその疑問なのだ。

 

現在、世界で「絶望の世代」と呼ばれている4人は「支配者」「龍帝」「調律者」「戦争屋」という二つ名で呼ばれており、人々は4人を同格に畏怖の対象として認識している。

 

だが、それには少し間違いがあった。この4人の実力は決して横並びではない。並んでいるのはあくまで「支配者」「調律者」「戦争屋」であり、その中に含まれない「龍帝」だけがひとり上に立っているのがこの4人の中での認識であった。

 

もちろん、負け続けているというわけではない。俺以外の2人は大体勝率3.5割といったところで、俺だけは3割に満たないといったところで留まっている。

 

といっても俺はその2人には勝ち越しているため、一概に実力が劣っているというわけでもないのだが、いかんせん「龍帝」のオカルトの相性が俺と悪いのだ。

 

 

「あぁ、だが俺らの中で1番あいつに負けてるのは間違いなく俺だ。そして去年、全員があの人には手も足も出なかった。覚えてるだろ?」

 

「……あぁ。今までの人生で初めて『勝てない』と思わされた。あの日のことは忘れられねぇよ……。ーーー世界の頂点はあまりに高かった」

 

 

だがその「龍帝」ですら手も足も出ない人物に出会ってしまった。

 

あの日のことを俺らは一生忘れられないだろう。あの日、彼女は常に笑っていた。最後まで『あぁ、楽しいね!』なんてのたまいながら。

 

 

 

ーーー世界ランキング1位「ワールドレコードホルダー」白築慕。

 

彼女(最強)に俺らは何もできなかった。

 

 

 

「だが、俺らはこれからも幾度もあの怪物や彼女と覇を競う人たちと戦わなきゃならない。だとしたら俺らは一度変わるべきなんだ。そのために俺は今日本にいる」

 

「……理由はわかった。だがなぜ日本なんだ?」

 

 

アイクは渋々といったように頷く。それと同時により具体的に説明しろと口だけでなく目でも訴えかけていた。

 

 

「ここには思い入れがあるから帰ってみたかったってのもあるが、もう一つ、元世界ランキング2位のプロに会いに来た」

 

「日本……2位……小鍛治健夜か!」

 

 

小鍛治健夜、今は第一線を退いているものの全盛期は世界を舞台に活躍した選手であり、数々の成績を残してきた。今は故郷のチームに所属していた。

 

 

「そう、その人と話をつけてきた結果、この大会で優勝したら卓を囲んでもらえるって話になってたんだよ。……つまり、だ」

 

「いつもならそれほど難しいことじゃなかったことだったのに、俺が来たせいで面倒くさくなってしまった、と。ご愁傷様なこって」

 

「はぁぁぁぁぁ……、このストーカーがよぉ……」

 

 

そんな愚痴を吐きながら俺とアレイは会場に足を踏み入れていく。

 

決勝卓の1人が決定した瞬間だった。

 

 

 

        ******

 

 

 

 ー1週間前ー

 

 

お昼ご飯をみんなと食べた後、私は所属している地方のチームの休憩部屋で事務の人からお客さんが来たとの連絡を受けていた。

 

 

「私にお客さん?プロの方でしょうか?」

 

「いいえ。ですがある意味プロみたいなものですよ」

 

「?」

 

 

その人からの返答は曖昧であまり良くはわからなかったが、とりあえずこの部屋に来るらしいので待つことにした。大体ここに来るのなんて日本のトッププロとかぐらいなのでこんな練習中であるはずの真昼間に来る人なんていつもはいないのだが、と考えていると控えめにドアをノックされる。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼します。初めまして小鍛治プロ。姫松高校1年、沖野空亜です」

 

 

ドアから入ってきた人はつい先日のIHにて大暴れした時代を彩る高校生、沖野空亜くんだった。

 

 

「うん、初めまして。沖野くん、君のことはいろんな人から聞いているよ。それこそ慕ちゃんからとかからね」

 

「……っ」

 

 

沖野空亜くん、彼はフランスを拠点に世界的に活躍している選手で、去年のWMRC(World Mahjong Ranking Cup *世界ランキング100位以内にて行われる最大規模の世界大会)にも参加している。そして今年の春に日本にやってきたらしい。IHではその強さで勝利を重ね、団体戦にて無名だった学校を全国5位にまで押し上げていた。

 

そんな大阪住みの彼がわざわざ茨城まで来るほどの用事とはなんだろうか。

 

彼はドアから離れソファに座っている私の目の前にやってきて口を開いた。

 

 

「……聞いてるなら話は早いです。お願いがあります、俺を強くしてくれませんか?」

 

「強く?今の君の年齢でここまであがってきたのは歴代でも君たち『絶望の世代』だけだよ?日本で君たちに勝てるのだってもはや私と詠ちゃんぐらいだろうし」

 

 

彼のお願いは麻雀に関わらずスポーツ全般に通ずる一生無くなることのないものであった。だが彼は世界ランキングでも上位をとるランカーの一人、強さには自分なりの答えを出しているはずなのだ。

 

日本でそれほどまでの強さを持っているのは私の確信が持てる限りは私と詠ちゃんぐらいであった。それほどまでに日本の麻雀のレベルはまだ発展途上なのだ。

 

 

「……それでも自分は勝てるって言いきれるんですね」

 

「100%勝てるとは流石に言えないよ。でも、君じゃあまだ私には勝てないだろうね」

 

 

IHと彼の試合は軽く見させてもらった。()()()()()()()は本当に高校生なのか、と目を疑うような強さで、きっと10年前の私なら普通に負けていたことだろう。だけど私だってこの10年間ただプロをやっていたわけではない。一応私は世界にも出ていたことだし。今時点で彼に負けることはそうそうないだろう。

 

 

「1年前の俺ならそんなわけないと一蹴したと思います。今じゃあそんな言葉出そうにも出せませんが」

 

 

私の言葉に大した反抗もなく沖野くんは私の言葉を飲み込む。随分慕ちゃんにしてやられたみたい。

 

 

「ずいぶん慕ちゃんにコテンパンにされたみたいだね」

 

「はい。だからこそ今日俺はここに来たんです」

 

「……そっか。でも君程度の実力者ならわかるよね?そんな簡単に強くなることなんてできない。強くなるには地道に努力するしかないんだよ」

 

 

そんなことは彼もよくわかっていることだろう。例外を除いて強さなんてそう一長一短で手に入るものではないし、ましてそれを高めていくのはさらに厳しいことだ。

 

 

「はい、それは重々承知の上です。ここに来たのはとあることを教えてもらいたいからです」

 

「一体何を……?」

 

 

 

「ーーーオカルトの制約をなくす方法についてです」

 

 

 

「オカルトの制約をなくす方法なんてあるの?少なくとも私は知らないよ」

 

 

そんな方法があるということを私は聞いたこともなかった。世界で戦っている人の中にもオカルトに制約をかけている人も多くいる。私はオカルトを得たときから制約なしで戦えていたのであまりそのようなことを考えてこなかったというのもあるかもしれない。

 

それだけオカルトというのは人の人智を超えたものなのだ。

 

 

「でも白築さんに言われたんです。『君はどうしてわざわざそんな制約を自分にかけているの?』って」

 

 

慕ちゃん???

 

 

 

        ******

 

 

 

 ー5か月前ー

 

『し、試合終了!!今までこれほどまでに沖野空亜が完敗を喫した相手がいたでしょうか!?これで「絶望の世代」全員が1人の前に敗れ去りました!圧巻!この人に土をつけられる相手は果たして存在するのか!?準決勝を制したのはは前年度チャンピオン白築慕だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

俺は卓に突っ伏していた。

 

ここまで手が出なかったのは俺が弱かったあの頃ぐらいだろうか。あの頃はただひたすらに明華を超えることだけを目標にがむしゃらだったからあまり1回負けることに思うこともなかったが、今となってはたった1回の負け、それだけが重く肩にのしかかっていた。

 

そんなことを考えて突っ伏していると後ろから肩を誰かにつつかれた。今は顔を下にしており誰なのかを確認するためにも顔を上げなければならず、俺は重い体を起こして顔を上げる。すると目に入ったのは白髪と先ほどまで嫌になるほど見た日本人の顔だった。

 

 

「……あなたですか、白築さん」

 

「うん、試合お疲れ様。楽しい試合だったよ。君ら全員すごく強かった」

 

「……それは俺に対する嫌味ですかね?」

 

 

俺は目線を下げ表示されている点数を見る。

 

 

白築慕  89000

沖野空亜  7200

ーーー   4900

ーーー  ー1100

 

 

「いや、君は間違いなく強かったよ。この場にいる人は全員もれなく世界に名を連ねる実力者、その中で飛ばずに2位、これで強くないなんてそうそう言う人いないよ」

 

「あくまでそれは世間一般の話ですよね。俺からしたらこんなんトラウマものですよ?」

 

「そっかぁ……。あ、そういえば1つ聞いてもいいかな?」

 

「あ、はい」

 

 

久しく感じていなかった気持ちを俺が何とか抑えていると、ふと思い出したように白築さんは疑問を発した。

 

 

 

「ーーー君はどうしてわざわざそんな制約を自分にかけているの?」

 

 

 

「……は?」

 

 

その質問に対して俺の第一声はあまりに素っ頓狂なものだった。俺にはこの人が何を言っているのかまるで意味が分からなかったのだ。

 

その雰囲気を感じ取ってか、白築さんがあたふたし始める。

 

 

「あっ……、いや、うーん……うん、これやっぱ無し!忘れて!」

 

「え、いやいやいやどういうことですか!?教えてくださいよ!」

 

「ごめんそろそろ時間だ、行かなきゃ」

 

「え、ちょっ!」

 

「来年また会えることを楽しみに待ってるね」

 

 

そう言うと白築さんは少し小走りに会場を後にした。

 

その疑問をただ与えられただけの俺は1人残された部屋でただ頭を働かせてそれを考えるも、結局答えは欠片も見つからなかった。

 

 

 

        ******

 

 

 

その話を聞くとなんとなくその時のことが理解できてきた。

 

 

「なるほどね……。多分慕ちゃん自身もフィーリングで感じ取ったんだろうね、試合したら分かったと思うけどあの子感覚派だから」

 

「……それは確かにそうですね。じゃあ小鍛治さんはそれを言語化できますか?」

 

「うーん、ごめんなんだけど私は分からないかな。そもそも私はもともとオカルトに制限なんてかけたことないから……」

 

「そう、ですか……」

 

 

私のその返事を聞くと沖野くんは本当に肩をがっくしと落とす。でも実際私にアドバイスできることなんてないだろう。

 

 

「でもそれを知れたことは大きな進歩なんじゃないかな。私じゃあ大したアドバイスはできないけれど、まあここまで聞いちゃったからね、練習相手ぐらいにはなるよ」

 

「いいんですか?あなたに得なことなんてないのに」

 

「うん、私も君には注目してるんだよ。ただ、1つ条件を設けさせてもらうね」

 

「はい、何ですか?」

 

「どこでもいいから世界大会で優勝してきて。それが条件かな?」

 

 

彼ならその程度の条件にひっかかるようなことにはならないだろう。ただ私が彼の実力をその場で見てみたいというだけだ。

 

 

「どこでもいいんですか?あ、なら今度韓国のほうであるんでそっちに参加したいと思います」

 

「うん、それでいいよ。ただオカルトの練習は続けながらだよ、それこそIHみたいにね」

 

 

彼は今年の3月にそのことを指摘されてからずっと続けていた、だからこそ彼は()()()()の力しか出せていなかったのだ。

 

 

「流石にばれてましたか。はい、続けていくつもりです」

 

 

 

      ******

 

 

 

「おら、ロン 12000」

 

「ひっ……」

 

 

アレイの強い発声に相手がびくっとしてしまう。

 

 

「おい怖がらせるんじゃねぇ」

 

 

俺の注意を受けると彼はこちらを睨み、苦言を呈してくる。

 

 

「んで、てめえはなんで手加減なんてしてやがる」

 

 

ー 南2局 ー

 

 

アレイ  46000

沖野空亜 35000

ーーー  13000

ーーー   6000

 

 

 

「……うっせぇ」

 

「てめえ、勝たなきゃいけねえんじゃねえのか?とっとと本気出せよ」

 

「……」

 

 

分かってる、分かってんだよ……、こんな調子のままじゃいけないなんて俺が一番分かってんだよ。

 

だが未だに手にはなにも掴めておらず、そこにあるのはただの虚無感のみ。

 

答えなんて微塵もわからない。何をすればいいのか、何を変えればいいのか。

 

 

だが、ただ1つだけの俺が譲れないもの、譲れない思い。

 

 

 

 

 

 

 

「………………さっきからグダグダと、うっせえんだよ。俺に指図すんじゃねぇ。俺の上に人がいることを俺は決して認めない」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー俺は支配者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 





ということで今回は空亜くんの意味深エンドで終わりました。それは次の話で答え合わせとなるといいですねー。

それではまた次の話で会いましょう!評価、感想、アンケートのご協力よろしくお願いします!

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