日仏雀恋大戦 最後にアガるのは私!   作:タピタピ

2 / 17

どうもタピタピです。

本当にすみませんでした。近日中に出すとか言ってたのに三週間経ってしまいました。言い訳です。けっこう前に完成したんですけど手違いで原稿を消してしまいましてまた一から書き直してました。

それでは大変お待たせしました。第1話スタートです。


第1話 アドバイス

 

〜三年半後〜

 

 

「竜華〜〜おんぶして〜〜」

 

「もう学校目の前やで?」

 

5月の今日、数週間前まで花が咲き乱れていた正門の桜の木も今では新緑が生い茂っている。一般にゴールデンウィークと呼ばれる休日に私は親友の怜と今年入学した「千里山女子」に向かっていた。

 

 

「せやけどこれから練習試合やろ?体力温存しとかな」

 

「それ、うちもなんやけど」

 

 

怜の言う通り、今日はうちらの所属している麻雀部の練習試合がある。

 

相手は全国常連校「姫松高校」。去年うちらが参加したインターミドルのチャンピオンが在籍している学校だ。

 

去年うちらはベスト8という結果で中学最後のインターミドルを終えた。世間的に見れば十分な成績なのだろうが、足りないのだ。結果うちらは試合後2人で涙を流した。そんなうちら、ひいては怜にとってチャンピオンは準決で敗れた相手、故に今日はリベンジマッチとなるのだ。

 

そのため、怜は昨日からやる気を出しており、私はそれが空回りするのではと心配していたのだが、今の言動を見る限り大丈夫そうかな。

 

 

「にしても、うちも竜華も一軍かぁ……」

 

「まだ補欠やけどね。うちはランキング戦で怜にも負けちゃうし」

 

 

うちらはインターミドルでの成績を認められ、推薦で千里山女子に入学した。そのため、今期最初の部内のランキング戦に参加し、なんとか一軍に入ることができた。しかしさすがは全国常連校「千里山女子」。そう簡単にレギュラーの座はもらえなかった。

 

 

「にしてもセーラはすごいなぁ、ランキング5位でもうレギュラー入りや」

 

「俺を呼んだか?」

 

「うわぁ!?……って、セーラやないか。朝なんやからあんまし大きい声出さんといてーな」

 

「それ言われるべきなんはお前やろ!?」

 

「おはよう、セーラ」

 

「はぁ……。あぁ、おはような2人とも」

 

 

この子は江口セーラ。学ランを着ており、一人称は「俺」。持ち前の運動神経でよく男子と遊んでいるので男子と誤解されやすいが、意外に乙女な部分も持っているうちらの友達である。そして去年のインターミドル準優勝である。

 

 

「今日は洋榎が来るからな。気合もバッチリやで!ついでに30円も返してもらうんや!」

 

「それ、まだ続いとったんか……」

 

 

セーラとは中学の時に出会い、今では大抵の時間はこの3人で過ごしている。……()()()()()()()3()()()

 

 

 

        ******

 

 

 

3人で他愛のない話をしながら正門をくぐり、部室に向かう。部室内にはまだ人はまばらで、置かれている雀卓が、存在感をひしひしと表していた。

 

 

「ほな、軽くウォーミングアップしようや」

 

「せやな〜〜」

 

 

セーラの問いに私は首肯し、怜はのんびりした声で返事をした。セーラはうちらの返事をとると、にかっと笑い、近くの空いている卓についた。うちらもそれに倣い、席につき、肩慣らしを始めた。

 

しばらくすると部員も増え、日も上がってきたので頃合いだと考えて区切り、席を立つと、同じタイミングで外からバスの音が聞こえてきた。

 

 

「全員集合!整列や!」

 

 

監督である愛宕雅枝監督の指示でうちらが整列をしていくと、ドアのノック音が部屋内に響き、一気に緊迫した空気へと変化した。そしてゆっくりとドアが開けられる。

 

 

「失礼します。姫松高校の皆さんが到着しました」

 

「ありがとう。列に戻ってくれ」

 

 

誘導係の一年生が列に戻る。その後ドアの向こう側から数十名の他校の生徒が部屋に入り、1列に並ぶとその中からあちらの監督が一歩前へ出てきた。

 

 

「今日はお招きいただきありがとうございます」

 

「いえ、こちらこそわざわざ来ていただいて。よし、それじゃあ今日は姫松と千里山の練習試合や!とにかく卓に入ること!入らない生徒は気になる相手の牌譜を取るんや!ええな!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

 

監督の掛け声で各々は散っていき、卓についていった。そして私はというと、

 

 

「セーラ、竜華、怜、まずはお前らや!」

 

「今日は勝たせてもらうで!」

 

「うちもあん時のリベンジや。やったるで!」

 

「……ヤバい卓に入ってもうた……」

 

 

結局はいつものメンツとインターミドルチャンピオンである愛宕洋榎そんの4人となった。私が最後に席に着くと、あたりがざわつき始め、色々な声が聞こえてくる。

 

 

「うわぁ、あの卓入りたくない……」

 

「昨年のインターミドル1位と2位、ベスト8が2人って……」

 

 

私以外の3人はそんな声など聞こえていないのか火花を散らしながら試合の準備をしていく。そして、戦いの幕が上がった。

 

 

 ー 東一局 ー  親 愛宕洋榎 

 

 

「っしゃ!サイコロ回すで〜〜」

 

 

各自に牌が行き渡り、愛宕さんの親で東一局が開始された。

 

 

 

        ******

 

 

 

 ー 七巡目 ー

 

 

「お、ほな一発目や!リーチ!」

 

 

最初のリーチはセーラ。彼女のスタイルはとにかく攻めて攻めて攻めまくると言った超攻撃型で、取られても取り返せばいいという典型的な例だ。

 

高い手を好むが、スピードもあるというのは本当に嫌になる。そして次順、

 

 

「ツモ! 2000、4000!」

 

 

セーラが一発で当たり牌を掴み、卓へと叩きつけた。

 

 

「ん???洋榎?負けてまうで〜??」

 

「うっさいわ。まだ東一局やで、余裕や」

 

 

 

         ******

 

 

 

 ー 南四局 ー  親 園城寺 怜 

 

 

現在点数

 

愛宕洋榎   61200

清水谷竜華  17100

園城寺怜   15000

江口セーラ   5800

 

 

遂にオーラス、現在の順位は愛宕さんのダントツでその点数は2位のうちと3倍以上の差がついていた。そして幸先よく上がったセーラはというと4位に転落している。その原因は南一局に愛宕さんに放銃をしたことだった。その時の愛宕さんの手がーーー

 

 

『ロンや 混一色 対々和 三暗刻 白と發とドラが3つ 36000』

 

『はぁぁぁぁ!?!?!?てめっ、親の時になんちゅうもんあがってくれたんのや!?』

 

『あー、えっとなんやったっけ?うちが負ける、やっけ?笑』

 

『うわぁァァァァ!!!!!やめろぉ!!!!』

 

 

愛宕さんの親の三倍満がセーラに直撃し、それまでの稼ぎでトビこそしなかったものの点数は悲惨なことになり、対して愛宕さんの点棒は60000点を越えた。

 

そして現在のオーラス、うちが一位になるには愛宕さんに三倍満直撃が必須。怜は親のため、親に倍満直撃か、他家への役満直撃、三倍満ツモが求められるも、連荘という手もあるのだ、可能性としては怜の方が高い。

 

そして運命の最終局、うちの手牌はーーー

 

 

(うっわぁ……これは無理やなぁ。はぁ、2位狙いしかないかな)

 

 

持ってきた手牌は五向聴、三倍満どころか跳満すら見えず、しかも国士すら狙えそうにないほどぐちゃぐちゃだった。渋々だが、狙いを2位へ移行しなくてはならなくなった。

 

そして親の怜の一打目。その牌はーーー

 

 

「ん、リーチや」

 

 

いきなり横へ向けてのオーラス、ダブルリーチ宣言だった。

 

 

 

         ******

 

 

 

うちの点は15000、一位の洋榎とは46200点差で、最低条件は洋榎へ倍満の直撃or他家に役満直撃か三倍満ツモだった。だが、

 

 

(いや、直撃は無理やろ?インターミドルで差し込み以外振りこみなしの女やで?なら三倍満ツモるか?キッツイわぁ……。と、なると役満が1番可能性高いんか?嘘やろ?)

 

 

「はぁ……」

 

 

結論としては最悪だった。それでも、諦めることだけは絶対にしたくない。ここで止まっているわけにはいかないのだ。そんな諦めない者のもとに奇跡はやってくるーーー

 

 

 

(っ!この手……!!)

 

 

 

ーーーさあ、この一打で欲しいものを掴みに行こう

 

 

この手でダブリー、三色、タンヤオ、平和とドラが1つが確定。高めで一盃口もつく。これが直撃すれば逆転一位だ。

 

うちはゆっくりと余り牌を河に出す。その牌はゆっくりと横へ曲げられ、そして卓上に声が響く。

 

 

「ん、リーチや」

 

 

うちのダブリー宣言後、一瞬静まり返った周囲だが、数秒経つと一気にざわめきに包まれた。それは卓についている3人も例外ではない。

 

 

「いや、ありえんやろ!?ダブリーと三倍満!?どないなったんねんこの台!?」

 

「うち、ダブリー嫌いやねん……」

 

「お得意の読みができへんもんね」

 

「さぁ、みんな早くうちのダブリーの糧になってな〜」

 

「「「鬼か!?」」」

 

 

 ー 三巡目 ー

 

 

(!!!洋榎から当たり牌の八萬……せやけどこれやと一盃口はつかんから裏ドラ次第になってまう。……???何を悩んどるんやうちは、こんなもん選択肢は一つに決まってるやろ!)

 

 

「それロンッ!」

 

「っ!?い、18000……!!裏ドラか!!」

 

「せや。さぁいくで」

 

 

そうしてうちは手を王牌へと持っていく。その光景をうちらだけでなく周囲にいた全員が一心不乱に見つめていた。そしてドラ表示牌の下、その牌をゆっくりとひっくり返す。それが示す裏ドラはーーー

 

 

 

 

 

 

        9索だった。

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃぁっ!!!耐えたで!!!」

 

 

うちの手はタンヤオで作っていたためドラはのっていない。つまり、負けである。

 

 

「いや、なんでやねん!?雰囲気的にうちが逆転する感じやったろ!?うちが主人公になる感じやったやん!?」

 

「なに言うとるの怜?」

 

 

そんなこんなで結果は

 

点数

 

愛宕洋榎  43200

園城寺怜  33000

清水谷竜華 17000

江口セーラ  5800

 

 

白熱の初戦は洋榎の勝利で幕を下ろした。試合で疲弊したうちは部室の端にあるベンチに腰掛け、休んでいた。

 

 

「はぁ〜〜疲れたわぁ〜〜」

 

 

既に先程打っていた卓には別の部員たちが入り、必死に牌と睨めっこしている。

 

その様子をなんとなく見ていると、次の瞬間うちの周囲は辺り一面影が差した。その原因にゆっくりと頭を上げた時のうちはきっと、それはそれは気だるそうな顔をしていたことだろう。

 

 

「なんの用や?あんたは卓に入らへんのか?」

 

「まぁ、ちょっとした世間話にでも付き合ってくれや」

 

 

うちの隣に腰掛けたのは先程うちを倒してくれやがった洋榎だった。

 

 

「まぁ、別にええけど。……次はうちが勝つで。そんで日本一になるんや!」

 

「次も勝つんはうちやで。……なぁ、怜。世間話は冗談で1つ教えて欲しいことがあるんや」

 

 

世間話というのが建前だというのは怜もわかっていた。たがまさかあのプライド高い洋榎が、うちに頼みごとなんて考えておらず、彼女にとっては珍しいことなのでうちもその言葉に耳を傾けることにした。

 

 

「なんや?」

 

「怜は場の空気を読むんが得意なんやろ?」

 

 

なんで知ってんねんという疑問も出てきたものの、今まで幾度となく戦ってきた相手、それに雑誌の取材等も受けているのでそこまで気にすることなく受け答えをする。

 

 

「せやな。中学の頃はずっとその練習の繰り返しやった」

 

「……その判断根拠を教えてほしいんや。どうかお願いします」

 

「っ!?」

 

 

次の瞬間、洋榎は周りの目を憚ることなく、うちに頭を下げた。彼女のイメージである大雑把でプライド高いと言ったものからは考えられないほと丁寧に。それほどの思いがこの仕草には乗っているのだ。それだけの思いを断るなんてこと、うちは出来そうもなかった。

 

 

「ええで。せやから早く顔をあげや」

 

「え、ええんか!?」

 

「いや、なんでそんな驚いとるんや!?あんたが頼んだんやろ!?」

 

「だ、だってあんたの技盗もうとしてるんやで?なんでそんな簡単に……」

 

 

教えようとしている技、人読みと呼ばれるそれは牌のみならず、人から相手の手を読むやり方である。()()()から必死に極めてきた、だからこそ、

 

 

「大丈夫や。血反吐を吐いても出来へんから」

 

「っ……」

 

「まぁ、ええんよ。それなりの理由があるんやろ?あ!じゃあそれ教えてもらえたら言ってあげるわぁ」

 

 

うちの承諾に洋榎は本気でぽかーんとしてたものの、やがてゆっくりと語り始めた。

 

 

「……勝ちたい相手がおんねん。1ヶ月前、うちのクラスメイトの男子にうちは負けたんや。全く歯が立たなかった」

 

「あ、あんたが!?」

 

「せや。何度も直撃を受けて、トビこそせえへんかったけど、本当に酷い有様やった。だから、うちはまだまだ強くならないとならへんのや」

 

 

彼女の異名は「守りの化身」。その名の通り、去年のインターミドルでは差し込み以外一度も振り込むことなく大会を勝ち抜いた。振り込みもせいぜい彼女がリーチした時か、ダブリーのような運が絡んだ時のみだという。

 

その彼女が放銃をし続けた。それはあまりに荒唐無稽すぎる話なのだ。

 

 

「教えてもらってもええか?」

 

「せやな。うーむ、まずは人の動きを見ることやな」

 

「動き?顔の変化ってことか?」

 

「ちゃうちゃう。表情だけやあらへん。筋肉の収縮、ツモのスピード、相手の重心の変化、人から取れるありとあらゆるデータを脳内に溜め込んで、処理するんや」

 

 

顔だけでは少なすぎる。ならどうすればいいのか、その答えは相手にあった。人の全てを知り尽くし、叩き潰す。それがうち、園城寺怜の麻雀だった。

 

「お前、病弱やなかったんか……そんなんできるわけ」

 

「出来るわ。あんたの目の前にやってる奴がおんねんから。まぁ流石に1試合本気でやったら休憩は必要やけどな〜〜」

 

「そ、そうなんか。とりあえずありがとうな」

 

 

一瞬、信じられないものを見るような目で見られた気がするが、まぁ気のせいだろう。

 

 

「そのクラスメイトはどんくらい強いんや?」

 

「ん?コテンパンやで。現在148戦1勝147敗や」

 

「うわぁ……絶対やりたないわ」

 

 

ここまで強いとなると、やはり一つの可能性がうちの頭の中には浮かんできていた。

 

 

「なぁ、その人ってオカルト持ちなんか?」

 

 

ーーーオカルト。それは科学的に証明できない能力を意味する言葉で、麻雀で名を馳せているような人は大抵オカルトを所持し、他を蹂躙しているのか、現在の麻雀界だ。

 

それゆえにうちや、竜華、洋榎のような無能力者は常にオカルトに対抗し続けなければならないのだ。だからこそ、その馬鹿げた力はオカルト由来のものだと思っていたのだが、

 

 

「いや、違うらしいで?あーでもオカルト自体はある言うとったわ。なんでもうちには意味がないから使わないとかなんとか」

 

「いよいよもってバケモンやな……オカルトなしでその実力かぁ……」

 

 

素でそれなら世界的にも名が知られていてもおかしくは無さそうだが、そんな人の情報()()()では聞いたことはない。

 

 

ひとり思案していると横に座っていた洋榎がゆっくりと立ち上がった。どうやら目の前の卓が空いたので入るつもりらしい。

 

 

「やってみるんか?」

 

「せや。やってみないことにはなんとも言えへんからな。アドバイスありがとうな怜。また打とうや」

 

「そうやな。まぁ頑張ってや」

 

そう言うと、洋榎は笑みを浮かべて頷き、前の卓についた。

 

あのインターミドルチャンピオンをボコボコにした相手、そんな話を聞いて好奇心が疼かないわけもないのだ。

 

 

(一度会ってみたいなぁ。絶対に戦いたくはないけど)

 

 

そんな思いを胸に秘めながら、うちはあと少し〜〜とゴロゴロとソファの上で自由を満喫するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次の話も書きますが、いつまでとかはちょっとなしにします(トラウマ)涙。

次話には例の化け物の正体が明らかに!高評価、感想等していただけるとありがたいです。

そう言えば牌画像変換ツールはスマホからはできないと言うことで多分使わない方面で行くと思うのでご了承ください。それではまだ、会いましょう!

牌変換ツールを用いてより麻雀要素を強くした方が良い?

  • もっと麻雀が欲しい!ツールも使って!
  • もっと麻雀は欲しいけど、ツールは別に…
  • ツールは欲しいけど麻雀より恋愛多めで!
  • ツールや麻雀より、とっとと恋愛見せろ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。