今日も今日とてタピタピです。
怜-toki-を4巻まで買いました。2人の出会いってあんな感じだったんですね。でも、この話では完全無視でやっていきまっせw
それでは本編へどうぞ!
〜4月某日〜
桜舞い散る4月。入学式である今日、うちは教室の窓側の自分の机に突っ伏し、周囲からの視線に晒されながらもひとりゴロゴロしていた。
「あぁ〜麻雀打ちたいわぁ〜」
今年うちが入学した「姫松高校」は言わずと知れた麻雀の強豪で、推薦で入学したうちは麻雀部に入ることが確約されている。
うちとしても麻雀から離れることなんて微塵も考えていなかった為、何も不利益はないのだが、流石に入学式の日は部活もないらしく、今日はただ何もない退屈な時間を過ごしていた。
「(あれって愛宕洋榎さんだよね)」
「(去年のインターミドル優勝の!?ほんとにここに来てたんだぁ)」
「(わ、私サインもらってこようかな!?)」
それでもどこからかうちの話がこそこそと聞こえてくる。中学でも同じようなことがあったので正直慣れていることではあるが、やはりどこかむず痒い。
ゆっくりとからだを起こすと、辺りのうちを見ていた視線が一気に散らばる。どうやらうちと話そうという気のある者はまだいないらしい。暇やぁと思いつつも周囲の観察に励もうとしていると、目の前の席の男子が目に入った。
「すかー」
うちのことなど目もくらずに机に突っ伏している少年がそこにいた。
(こいつ、初日から寝てるってマジか?)
大抵の生徒は周囲に溶け込む為、周りと交友関係を結ぶのに高校1日目を費やすが、この少年はそんなことはどうでもいいというかのように机に齧り付くように惰眠を貪っていた。
その少年の寝顔があまりに気持ちよさそうなのが悪いのだ。気がつくとうちはその少年の背中をつつきまくっていた。
「ほれ、ほれ」
「……」
「ほれ、ほれ、ほれほれほれほれ!」
「んぅ、なんだぁ?って、痛い!痛い!」
「お?起きたか?うち愛宕洋榎や。よろしくな」
「……どちら様で?」
ゆっくりと体を起こした少年は気だるそうに後ろのうちの方を向いた。そしてうちの自己紹介に対して返ってきたのはなんとうちを知らないという言葉だった。
「……マジ?」
「ん?当たり前だろ?初対面なんだし」
どうやら本気で知らないらしい。これでもテレビ中継されていたインターミドルで優勝して割と有名になったと思っていたのだが。周囲のうちらの会話を聞いていた奴らもどこかざわざわしている。
「あー、なんだっけ?愛宕、だっけ。んじゃこれからよろしく。それじゃ俺、眠いんだわ」
そうして少年は再び机に伏せた。そして残されたうちはというと何故か無性にこの男子との会話が楽しくなっていた。
周囲の声など気にも留めずに眠っている少年の椅子の天板を思いっきり蹴り上げる。すると彼は「うびゃっ!?」と謎の奇声を発し、跳ね上がるように飛び起きた。その拍子に彼の机の中から一冊の本が落ちる。
「ふふっ……」
カバーがかけられているその本を拾いつつもその奇声に思わず笑みがこぼれる。その声を聞いて犯人がうちだと理解したのか、こちらに振り向くとギッと睨みつけてきた。
「愛宕、てめえ……」
「せっかくの初日や、もっと楽しくやろうや。せっかく後ろの席に絶世の美女がいるんやし、お話するべきやろ」
「じゃあその美女をおれの元に連れてきてくれ」
「貴様……、はぁ、っとそうや、これ落としたで?」
その本を渡そうとしたときだった。カバーが外れ、その本の題名があらわになる。その本の題名は「プロでも間違える!?牌効率 上級編」と、いかにも難しそうな麻雀の問題集だった。
「ん?あぁ、落としてたのか。ありがとな」
「ま、待ちや!お前麻雀できたんか!?しかもその本のレベル的に相当できるタチやろ!?」
「ま、まぁ……」
「ならーーー」
「はーい、みんな席につきやー」
うちの捲し立てるような質問に彼は面倒そうな顔をしつつも答える。ならうちと麻雀をしよう!と誘おうとした時だった、タイミング悪く、先生が入ってきたことで、彼は前を向いてしまい、話すタイミングを完全に逃してしまった。だが、うちの退屈だった放課後の予定は埋まり、それにうちはただただ心を弾ませていた。
******
放課後になるとうちは立ち上がり、先ほどとは違い、アイツの机の目の前に立った。
「麻雀するで」
「は?お前も麻雀できたのか」
「ほんまにうちのこと知らんのな?うち去年のインターミドル優勝者やで?」
うちがそういうと、彼は「えっ?」と漏らすと、次に目をキラキラさせだし、机から身を乗り出してきた。
「お前、強いのか!?」
「お、おう。なんや急に」
「いやー、
「こっち?こっちってどっちや、まさかあっちなんか!?」
「何言ってんだお前?って、んなことはどうでもいいんだ。さぁ、打つぞ!」
「まてまてまて!2人じゃ打てへんやろ!?」
立ち上がりどこかに行こうとする彼の肩を掴み、なんとか席につかせる。
「た、たしかに。ん?でもよ愛宕、ここって麻雀の強豪校なんだろ?」
「せやな。それがどうしたんや」
「なら、こうすれば良くね?」
そういうと彼は席から立ち上がり、教壇に立つと体をのけぞり、そして
「愛宕洋榎と麻雀打ちたいやついるかぁ!!!!出てこいや!!!」
「嘘やろ!?」
奴は思いっきり叫んだ。それはもうクラス内のみならず学年全体に聴こえるような大きさでだ。それを聞いたからか、段々とドア付近に人が集まってきている。
そしてその中、数人が手を上げてくる。見た感じ6、7人しかも全員女子だろうか。どうもうち目当てみたいな感じになっているのが少し恥ずかしく思ってしまうのは仕方のないことだろう。
「おぉ、すげぇ。名前言っただけで集まるなんてな。チャンピオンっての嘘じゃなかったんか」
「お前、信じてなかったんか?」
「なんか、オーラがなぁ……」
「自分、めっちゃ失礼な奴なやな」
ふん!と怒っています感を出して腕を組むうちに彼は「すまんすまん」と手を合わせてくる。とまぁ、とりあえず人数は集まり、残すは場所のみとなったのだが。
「んー、あとは場所なんだが。ここの部室って使えないのか?」
「あぁ、確かに。ならうちが顧問の先生に掛け合ってみよか」
「できるのか?」
「これでもうちは姫松期待のホープやからな。顧問の先生とも何度か話してるし、任せとけや!」
去年、ここから誘いを受けた際にここの顧問兼監督さんと初めて会って、それからちょくちょく話をしたりもしている。
「よし、なら職員室行くか。えーっとさっき手を上げた人はついてきてくれー」
その言葉に続いて彼は前のドアから出て行った。
******
「ええで。にしても面白い組み合わせやなぁ」
「どういうことですか?」
職員室へ赴くと、奥の方にいた麻雀部の顧問の善野監督の姿を見つけ、早速部室の交渉をすると、二つ返事でOKをもらえた。だが、返事の際に先生が妙ににやにやしているのが一つ気にかかる。同じように思っていたのか彼も先生の言葉の意を探ろうとしている。
「いやなぁ、まさかこの学校で愛宕さんが最初に戦うのが君だとは思ってもいなくてな?この学校随一の好カード、うちも見してもらうで?」
「……俺のこと知ってたんですか」
「偶然やで偶然。去年の世界ジュ「ス、ストップ!」……いけない。ちょっと喋りすぎたな、悪かったわ。ほな、早く部室に行こか」
善野監督の話を無理矢理止めた彼は監督に促されると、足早に職員室を出て行った。しっかりと一礼していくあたり、真面目なのだろう。彼の後を他の女子たち+監督と一緒に出て行く。
そこから歩いて他の教室よりも格段に広い部室にたどり着くと、うちは近くの卓につく。そしてその上家に彼が座り、移動最中に決めた他の2人も卓についた。
「よーくうちの実力見とけや!」
「おう、お手柔らかにな」
サイコロが回り、監督が見ている中うちの高校最初の試合が始まった。
******
「ツモ 4000 8000」
点数
彼 91400
愛宕洋榎 3900
女生徒A 3200
女生徒B 1500
「これで終局だな、ってどうした愛宕?」
「…………」
言葉が出なかった。それどころか思いつきもしなかった。
去年、インターミドルで優勝したうちには「守りの化身」という二つ名がついていた。それは持ち前の読みによる防御率の高さからきており、あの大会では放銃はゼロに抑えた。そんなうちが何度も放銃を繰り返し、そして後一歩でトビというところまで追い詰められたのだ。
他の2人もことごとく削られ、今は意気消沈としている。
監督は先程部室から出て行った。さっきの発言からしてこうなることを分かっていたのだろうか。
「お前、何者や。去年のインターミドルでてなかったやろ」
「あぁ。日本のは出てなかったな」
その言葉を聞いたからか、一緒に打った女子が目を見開き、ゆっくりと口を開いた。
「え!?あ、あの……人違いやったら悪いんやけど、フランスのーーーさんやないですか?」
「フ、フランス!?フランスってあの海外のフランスか!?」
「いや、それしかないだろ。にしても良く知ってたな俺のこと」
呆れたようにうちに返してくるが、そんなことに構っていられるほど心に余裕はない。
「あ、えっと、去年の世界ジュニア見てたんで」
「ほうほう。つまり君はあの俺の不甲斐ない試合を見たと」
彼の初めて見る落ち込み顔に少し面を喰らう。ちなみに世界ジュニアとは各国の代表同士が戦い合う世界大会である。一般的には高校生が参加するU-18が有名だが、彼の年齢からして恐らくU-15の中学生が参加している方だろう。
それを知ってうちは今日何度目かわからないワクワクを心に宿していた。
「世界レベルの実力ってことか……えぇな」
「ん?」
「めっちゃええな!!こんな強い奴と戦える、ここに来て正解やったわ!!」
国内の同学年内で優勝してしまったうちはどこか麻雀の熱を冷ましていたのだろう。だからこそ思っても見なかった好敵手の出現に体の熱は上がって行くばかりだった。
その言葉を聞いて、彼もニカっと笑った。
「負け犬の遠吠えか?」
「黙れや!?」
******
初めてアイツと戦ってからというもの、うちは幾度となく挑み続けた。そして初めて勝ち星を手にした日は5月の雨が降る放課後だった。
いつも通り部室でうちは彼を正面に見据えて卓についていた。部活終わりの7時、うちらは決まったメンツで毎日卓を囲んでいる。
「今日こそ勝つで!」
「それも何回聞いたことか。洋榎、お前まだ一回も俺に勝てたことないじゃん」
「今日こそは勝ってその余裕顔無くさせたるわ!な、2人とも!」
そう言ってうちは他の2人を交互に見やる。
「うちはあんたらのレベルについて行くのすら辛いで……」
この少女は末原恭子、彼と最初に打っていた1人で彼の正体を見破ったのが他でもない恭子だった。現在はうちらと一緒に麻雀部に所属している。
「うちも勝てるよう頑張るのよ〜」
この少女は真瀬由子、うちとは同じクラスで麻雀部で仲良くなった。彼女の家柄から彼女自身もお嬢様らしく、常に落ち着き払っている。
2人とも麻雀部で、1年の中では上位層に食い込むほどの実力を持っている。だがそれでもーーー
「ま、いつも通りのんびりやろうか」
ーーーコイツだけは別格すぎる。だがそんな奴でも無敵というわけではない。試合をしていれば圧勝の時こそあれど、危ない時だってあるのだ。それでもまだ1位を誰かに手渡したことはないのだが。
そんなこんなで今日も打っているうちらは公式の試合でもないので、雑談を交えながらやっていたのだが、彼に変化が起こったのはとある話題を恭子が出した時だった。
「そういえば今週末は千里山との練習試合やったか?」
「千里山……あぁ、セーラたちが行ったとこか」
「千里山?ってとこは強いのか?」
「うちと同じ大阪の全国常連校なのよ〜。大阪は人が多いから南と北に予選が分かれてて北の千里山、南の姫松って言われてて、こことはなにかと縁があるから練習試合を年に数回やるらしいのよ〜」
「おお!強そうだな!」
「またお前の強い奴とすぐ戦いたくなる癖が出とるで」
「仕方ねぇだろ?だってワクワクするじゃねえか」
この1ヶ月で彼はうちの部の全員を蹴散らした。そこで分かったのは彼は強者と戦うことを喜びとして生きているということだ。こういうところはセーラによく似ている。
「しかも今年は洋榎の優勝した去年のインターミドルの2位とベスト8が2人入学したらしくて、うちらの世代最強の高校は千里山って言われてるぐらいなんや」
「へぇ……」
「あっこに行ったのはセーラと竜華と怜「は?」ん、なんや?」
うちの補足を途中で切ったそいつは妙に驚いた顔をして、「い、いやなんでも……」と言ってうち続けた。だがそれはいつもの調子とはかけ離れた試合内容だった。そしてオーラスーー
「お?それええんか? ロン 16000や」
「え?えっ……うえぇぇぇぇぇ!?!?!?」
「か、勝った?」
うちの見え見えの萬子の染め手、他の2人ですらオリていたその手に奴は無警戒にも五萬を切り、放銃をした。
その結果、うちは1位に、そしてアイツはラスへと転落した。
「ま、マジかよ。倍満なんて当たったのなんて何年ぶりだ?やるな洋榎」
「いや、見え見えの萬子染めやで?」
「珍しいのよー」
「……」
勢いで誤魔化そうとするが、正論パンチで撃沈。
「なんやお前らしくもないな。千里山に気になってる奴でもいたんか?」
「……いや、いねぇよ。そんなやつ。いやー、それにしても久々に負けたなぁ」
「ふふーん!遂にうちがお前にゴミつけたったで!」
「いや、それはイジメやろ。つけるなら土にしとけや」
「それに俺はまだ137勝1敗だしーまだ全然勝ち越してるしー」
妙な感じだった彼も少し元に戻り、うちは勝利の余韻に浸っていた。そんなうちのことなど気にも止めず、彼ーー沖野空亜は降りしきる雨の中うっすらと笑みを浮かべていた。
リアルも落ち着いてきたので次は2週間以内に投稿したいなぁ。
それでは感想、評価等はどしどしお待ちしています、執筆の力になるので。