どうもタピタピです。
そろそろ8月も終わりですねぇ。今年は中々忙しい夏でした。
さて今回はインハイ予選編です。多分3話ぐらいかかるかなぁ、と。
それでは、本編はどうぞ!
「はぁ、はぁ……」と嘆き続けたテストから約1ヶ月が経った、6月の土曜日。うちらはインターハイ予選の北大阪会場に来ていた。多くの人数がひしめく会場だったがうちらが入ってくるとその視線の殆どがこちらに寄せられる。
「う、うわぁ……視線が痛いわぁ」
「中学の頃にもあったやん。なんなら全国やったし」
「せやけどこれはこれでなんかむず痒いわ」
今回うちが出場するのは個人戦のみで、団体戦は補欠としての参加となっている。現在のうちの部内ランキングは6位で竜華は7位。この学校での個人戦出場枠はランキング10位までのためうちと竜華、そしてランキング5位のセーラはその枠に入っていた。
会場入りしてから少しロビーにて待つと先に到着していた監督がうちらの前へと現れ、それに合わせて集合がかかる。
「みんな、おはよう。さて今日は団体戦や。レギュラーメンバーは出られなかった者たちの思いを背負っていくんや、ええな?」
「「「はい!!!」」」
「うん。それと今回応援に回るものもやるべきことはあるはずや。しっかりそれを見つけて次に活かすんや」
「「「はい!!!」」」
監督は生徒たちの覇気のこもった声に頷くと、次に応援の生徒たちを引き連れて観客席へと向かった。そして残ったのは団体戦レギュラーと補欠のうちらのみとなった。
そこでうちは団体戦メンバーの最年少に声をかけにいくことにした。
「セーラ〜、緊張しとるん?」
「ん?あんまし緊張はしてへんな。寧ろワクワクしてるぐらいや」
「セーラはホントに緊張せえへんね。中学の時も笑顔で決勝卓に進んでったし」
「せやけど緊張なんてするだけ損やろ?」
ニカッと笑いながらそんなことを言うセーラ。こういうところは本当にすごいと思っている。うちなんて試合に出るわけでも無いのに緊張しっぱなしだ。
そんなこんなで3人で話していると、監督が戻り、抽選会への移動となった。抽選はキャプテンが別室にて行われる。それをうちらは応援とは違った部屋で視聴していた。
『続いて千里山女子。前に出てください』
「来ましたね」
アナウンスがかかり、テレビ内でうちらのキャプテンが登場すると誰かがそんな声を漏らし、それによって視線がモニターへと向けられる。キャプテンが箱から紙を取り出すとそれをスタッフに渡し、番号が読み上げられた。
『千里山女子、14番』
「「「おおおおおおおーーーーつ!!!」」」
「っ!」
番号が明かされるとそれまで静まり返っていた会場は急に雄叫びを上げ、そのあまりの声量に思わずたじろいでしまう。
「す、すごい声やなぁ」
「心臓止まるんやないか思ったわ……」
隣の竜華も目を見開いて辺りを見渡している。例年通りなのか先輩たちは特に驚いた様子もなく落ち着いている。その中うちらの様子を見てか、1人の先輩が苦笑いを浮かべながら「全国はこんなもんじゃないよ……マジで」と教えてくれた。その情報にうちらは顔を見合わせ、頬をピクピクと引き攣らせるのだった。
******
『オーラス決着です!北大阪代表は今年も千里山女子となりました!!』
団体戦2日目決勝、陽が暮れる前に団体戦終了のブザーが鳴り響いた。優勝はうちら千里山女子、毎度の事ながら決勝はうちらと三箇牧高校の一騎打ちのような形になった。それでも危なげなく勝利を手にする辺り全国レベルがどれほどのものなのか分からせられる。
「優勝かぁ、ほんまになんもせえへんかったなぁ」
「セーラは大活躍やったな?」
「おう!結構楽しかったで」
この大会においてセーラは確実にチームに貢献していた。決勝を含め全ての試合でプラス終了というこの結果はそうそう達成できるものでも無い。
個人戦ではセーラとも当たる。だけど、それでもーーー
「セーラ」
「なんや?」
「ーーーうちは負けへんよ」
彼を見つけるまでもう負けない。私はまた一つ想いを強くし明日の個人戦に意識を高めて、一度家へと帰っていった。
******
翌日、私はいつも通り怜のうちに迎えに出向いていた。だがいつもとは少し違う光景が目の前には繰り広げられており、それに私は驚きが隠せていなかった。
「と、怜!?なんで!?」
「竜華、おはようなぁ。なんか目が覚めてしもうてちょっと早く準備してたんや。偶には待っててもええやろ?ってなんで空見とるんや?」
「いや、雪は降らへんかなって」
「降らんわ!?降水確率0%やぞ!?」
いやだって……という言葉を飲み込み、怜に笑顔を浮かべる。それを見た彼女は頬を引き攣らせながら「さ、さあ行こかぁ」と言った。
それから2人で歩き始め、まずはうちらの高校を目指し始めた。途中いつもの道で出会ったセーラも合流して数分、正門の桜の木の下に辿り着くとすでに多くの生徒が集まっており、残すはうちらを合わせて数人となっていた。
「ん、3人とも来たな。よーし、ならそろそろ行くで〜、今いないやつは会場に先乗りしてもらってるから安心せい」
「うちらが最後やったんかいな。まだ集合時間20分前やのに」
「みんな張り切っとるんやろ。なにせインターハイやしな」
インターハイ、全ての高校生の集大成を掲げる場所、その場所に私は挑戦しようとしている。その意味を理解するとそれは重く心にのしかかってきたが、決して立ち止まろうと言う気持ちにはならなかった。
******
会場に乗り込むと昨日と同じように会場が騒ぎ出す。さらに今日は個人戦ということもあって昨日よりも人が多いからか、その声量も上がっている。
個人戦参加メンバーは既に発表されている初戦の相手を電光掲示板で確認するよう言われ、うちら3人は固まってそれぞれの名前を探していった。
「お!あったで!」
「うちも見つけたわぁ」
「えー、もう?ってあったわ。BFやね」
怜はB、セーラはAG.、そして私はBFに振られ、取り敢えず初戦からうちらの中で潰し合いと合う形にならなかったことに安堵する。それに全員特に強い人との戦いにもならなかったのはまさに僥倖と言えるだろう。
名前を見つけたうちらが集合場所に戻り、他の生徒も集まり全員揃ったのを確認して監督が個人戦の流れについての確認を始めた。
「あー、今日と明日の流れを覚えてるとは思うけど一応確認しとくで?まずはリーグ戦を今日をかけて10試合行う、そのスコアをもとに上位32位が明日の決勝リーグに進む。決勝も今日と同じ仕組みのリーグ戦でそのスコアが上位3名がインハイの出場権を得るっていう仕組みや」
今日の参加人数は大体400人、その中から3人となると勝ち抜くのは相当大変そうに見える。それに3位に入るということは同じ学校同士でも競り合いが始まるのは避けられない。
「それじゃ、みんな最善を尽くすんやで!解散!」
監督から解散の指示が出ると各自試合の準備へと移っていく。うちらの中で怜は最初の試合、セーラと私はその次の試合のため、まずは怜の見送りに一緒に向かうことにした。
「それじゃあ行ってくるわ」
「頑張ってな」
「全員ぶっ飛ばしたれや!」
あまり緊張した様子を見せることなく対局室へ入っていく怜。昨日は自分が出るわけでもないのにガチガチに緊張しとったけど一日あって落ち着けたようだ。
セーラも怜が負けるとは鼻から思っていないようで見送りを終えるとモニターがある部屋へと向かい空いている席にドスッと腰を下ろし、その横に私も座る。
『それでは北大阪大会、個人戦1試合目を開始します!』
アナウンサーの掛け声で試合が始まり、怜の対局室も照明が落とされて卓が動き始めた。私は手を握り、祈るようにして見入っていた。
******
ー 東一局 ー
試合開始のブザーがなると照明が落とされ高校最初の公式大会が始まった。約一年ぶりとなるこの感覚に緊張は感じず、むしろ気分は高揚していた。
一打一打に想いが積み重なるインターハイ、その舞台に立とうとする者たちもまた想いを持っているのだと分からせられるこのヒリヒリとした感覚に全身が粟立っていく。
周りも当たり前のように勝ちに来ている。互いの目を見るだけで試合ではそれがわかる。今までの努力がこの一瞬にかかっているのだから。だがそれはうちも同じこと、いや、それ以上だ。うちはーーー
(絶対に空亜に会いにいく!)
「ロン! 5800や!」
******
「それじゃあ午前の部、おつかれー!」
「「お疲れー」」
午前の4試合を打ち切ったうちらは現在昼食となっていた。昼食は各自自由となっていてどこで誰と食べてもいい。だから結局は3人で食べることにしていた。
「とりあえずは全員勝てたな」
「せやな。まぁそれほど強い相手にまだ当たってなかったってのが大きいけどな」
「それでもよくやってると思うで?怜だって手応えあったやろ?」
「そうやなぁ、まぁ今日は調子が良い気はするわ」
初日の午前、うちらは3人とも1位を取り続け、全体順位としてはトップ10に全員が入り込んでいる。一位とは言っても試合内容によってスコアに差が出るためこういう試合方式だとやはり攻撃力のあるセーラがうちらの中で頭一つ飛び出すような形になっている。
「今のところはまだうちらの中で3位いないはいーひんけど全員10位には入れてるし、全国も目指せそうやな!」
「そんなうまくいくんかなぁ……」
「まぁ、とにかくうちらがするべきなんは勝ち続けることやな」
「うん」
そうして怜は私の作ったお弁当を口に頬張りながら幸せそうにはにかみ、私はそれを眺め、セーラは午後の戦いに胸を躍らせて体を揺らすというなんともな光景が繰り広げられた。そして時間もそれに合わせて流れていき、ついに明日を決める午後の試合が始まった。
******
『それでは10試合目を始めます。A〜Zの対局室の選手は準備をしてください』
「ん、それじゃあ行くで」
「おう!やってこい!」
今日の最後の試合の前に休憩していたセーラに言葉をもらい、対局室Kに向かっていく。現在うちは2回2位に甘んじる結果となり、総合順位は9位となっていた。セーラは4位、竜華は7位と、2人に遅れをとってしまっている。
明日は今日の結果が引き継がれるため1位を取りいくものの、明日には既に確定で進むことができるので少し心構えも緩くなってしまう。そんな考えをした自分の頬を思いっきりはたく。
「っ!よしっ!!いくで!」
左頬を赤くしながらもうちは対局室のドアを勢いよく開けると既に1人の生徒が席に着いていた。その少女は長い髪をたなびかせながらこちらへ向く。
「待っとったで、怜」
「竜華……。最後の最後に当たってしまったんか」
最後の試合その相手は親友「清水谷竜華」だった。左頬が赤いのもいつもなら心配してくれるが、そんな様子はない。彼女はいつものほんわかした表情ではなく試合の時のただただ冷たい竜華であった。
「随分余裕そうやな?」
「そんなことないで?これでも結構緊張しとるんや。怜には4月に負けとるし、うちにとってはリベンジ戦やからね」
「そやったな。それでも今日もうちが勝つで?」
「そ。できるとええな?」
相変わらずの冷たさを感じさせる竜華の瞳に吸い込まれそうになるが、もうそれさえも慣れている。それだけの数を彼女とは打ってきたが、どこか今日の彼女はいつもよりも冷たく感じる。
無言で竜華と向き合っていると他の2人も入ってきて、席に着いた。そして試合のブザーが今鳴り始めた。
ー 東一局 ー 親 ーーーー
南家からのスタートで試合が始まる。竜華は割とスロースターターなところがあるためできれば南場までに稼いでおきたい。
「……ふぅ」
(集中や。まず親、まだ心拍数も低めやな。落ち着いてるってことは伸ばせば行ける風な手やろ、速さはない。下家はちょっと心拍が早いな、このスピードだと多分染め関連のそこそこ大きそうな手やろか。竜華はうん、やっぱり速めの手で東場は流す感じで行くつもりやな。)
データを取り終えるころには巡目は三巡目になっており、うちの手も鳴けば一向聴のタンヤオ、ドラ1になっていた。打点は低いもののうちは和了を優先とするため、そこは気にしてはいかない。積極的に鳴いていく。
(竜華からは多分鳴ける牌は出てこないやろなぁ。やっぱ親からは筒子がこぼれそうや。ならーーー)
そうして牌効率から離れて少しずらす。すると次巡、
「それポンや」
予想通り五筒が余ってきたのでここで鳴いていく。これで聴牌。そして下家が、
「それなんやなぁ。ロン 2000」
うちの欲しい牌を出してくれる。これがうちの麻雀、竜華もこんなことは百も承知だろうけどまだやっぱし入りきれていないようだ。
それでも手加減なんてできない、する余裕もない。その後もうちは親で連荘を2回、東場合計で5回の和了をし、プラス13000まで持ってきた。だが、ついにここで目覚めてしまった。
ー 南一局 ー 親 ーーーー
ー 8巡目 ー
「ツモ 2000 4000」
「っ……」
竜華の初和了、しかもいきなり満貫に仕上げている。その竜華の瞳には光がなくなっており、竜華の本気である「無極天」が発動していることが伺える。
無極天は簡単に言えば超集中のことで、竜華曰く相手の体温、心拍、ひいては手配までもがあらかた分かるらしい。小学生の頃から不定期ではあるものの使えていたこの技は彼がうちらの元からさった際にさらに竜華が鍛えたもので、今なら自分で使用するタイミングさえ図れるらしい。控えめに言ってチートだろう。
******
ー 南四局 ー 親 清水谷 竜華
「リーチ!」
現在うちがトップのままオーラスに突入した。うちと2位の竜華の点差は11000点、先程親で上がって少し広がったもののまだ安心できる点数ではない。
南二、三局は竜華は無極天を使用してはこなかった。彼女の無極天はうちの知っている限り3局分しか体力がもたないため、おそらくこの親で全てを使ってくるだろう。だがここで親を速攻で流されれば彼女は二局分をロスすることになる。つまりーーー
(明日の為に今ここで稼いでおくっちゅうことか。ここで勝つのは当たり前やと、いや違うか。ここで勝負できへんかったらインハイには行けへんのやろな。流石やで竜華。でも、ここで止める!!)
そして今、卓上にはうちのリーチ棒が突き出された。現在は5巡目、リーチのみだが、両面待ちでそこそこ出そうではある。もちろん無極天を使っている竜華は振り込まないだろうが、彼女はうちへの振り込みを避けるために恐らく手を変えてくるだろう。
だがーーー
「竜華、またうちの勝ちや。 ツモ 500 1000」
そんな時間が彼女に与えられることはなく、俯く彼女には無慈悲にも、試合終了を告げるブザーが卓上に鳴り響いた。
ということで、予選1日目が終わりです。2日目は結構書くと思うので気長に待っていていただけるとありがたいです。
それでは評価、感想等お待ちしております。