日仏雀恋大戦 最後にアガるのは私!   作:タピタピ

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どうも、お久しぶりです、タピタピです。

長らくお待たせしました。今回はなんと!いつもより3000文字ほど多い大増量パックでございます!

次の話で予選編はラストですかねぇ。てことで本編へどうぞ!


第5話 肝胆相照

 

        ビーーー!!!

 

試合終了のブザーが室内に響き渡る。その中私、清水谷竜華は完成することのなかった自身の手牌から目を背けるように俯いていた。

 

この試合は今日の最後の試合だったので急いで退く必要はない。それでも敵同士が仲良くする必要もないため、既に親友を含む私以外の3人は部屋から退出していた。

 

 

「また、負けた……」

 

 

今回の試合、私は無極天を1局分残してしまった。この試合に勝ちに行くためなら、もっと使い時はあったが、私が優先したのは全国への切符を手に入れること。親番で2回大きく上がり、点を稼ぐことだった。

 

ここまで一回のみ2位に甘んじたもののやはり火力がたりない私にとっては総合スコアで3位というのは中々に厳しいものであった。そのため今回のように無理をいつかはしなければならなかった、そう割り切っていたはずだったというのにーーー

 

 

「……やっぱり、悔しいわ」

 

 

昔から私は常に怜の前に立っていた。そんなこともあって昔から私が怜を助けてあげる立場なんだと思っていた。だけど、怜の雀力はどんどん上がり、今ではこの有り様になっている。

 

 

「あぁっ……あぁぁぁぁ……」

 

 

いつからだろう、私がこうして人知れず涙を流すようになったのは。

 

 

県予選1日目 結果

 

4位 江口セーラ

8位 清水谷竜華

9位 園城寺怜

 

 

 

        ******

 

 

 

県予選2日目、今日は昨日のランキング上位32人のみで行われるため、昨日と比べ人は明らかに数が減っていた。そしてまた、戦いが始まっていった。

 

 

 Aグループ

 

「それや!ロン 12000!」

 

『Aグループ決着!1位は千里山女子、江口セーラ選手!昨日に続き現在は4位と、全国まであと一歩というところにまで迫っています!1位と2位に差が開いているもののそれ以降2位〜8位は接戦となっており、混戦状態です!』

 

 

 Bグループ

 

「ツモ 4000 8000」

 

『こちらも決着です、現在8位以内を七枠埋めている千里山のうちの1人、6位 清水谷竜華選手が今日で成績を伸ばしてきています!!』

 

 

 Eグループ

 

「これやな」

 

「っ!!……ロン 1000点です……」

 

『Eグループは現在5位の園城寺怜選手が差し込み、安い方を無理やり上がらせて、1位を守り抜きました』

 

『いや〜みんなすごいね〜、千里山は相変わらず部内闘争が強いし、今年も圧巻って感じだ』

 

『三尋木プロ的に今年、注目している選手はいますか?』

 

 

アナウンサーから会話のバトンを渡された女性は、首を少し傾げながらうーん、と唸ってから言葉を発した。

 

 

『そうだねぇ……千里山の園城寺ちゃんは()()()と思うよ。オカルトも無しでここまでやれてるのは相当努力の痕が見えるねぇ。それにーーー』

 

『それに?』

 

『彼女の打ち方ーーーフランスの「支配者」に似ているんだよねぇ』

 

『フランスの?えっと……すみません、私まだ浅学で世界のことまでは知識がないのですが、その「支配者」って人は強いんですか?』

 

『はははっ!!強いなんてもんじゃない!!あいつは正真正銘の化け物さ。そんな化け物高校1年生が今、世界には4人いて、うちらみたいなのはそいつらをこう呼んでんだよ』

 

 

 

ーーー絶望の世代

 

 

 

         ******

 

 

 

午前の試合を終え、うちは自身の順位を確認するためにモニターの前に訪れていた。

 

 

「5位……」

 

「怜すごいやん!4位ともほとんど差はないで!やっぱ午前で先輩同士の戦いが多かったから少し点落としてるからやろなぁ」

 

「竜華は、6位やね。やっぱ部長と当たったんが悪かったんやろなぁ」

 

「せやなぁ、それでも部長がいなくなるまでに一度くらいは勝ちたいし、それをこの場で果たしたかったんやけど」

 

 

午前の試合、うち、竜華、セーラは全力を尽くし、順位を上げた。セーラに至っては現在は3位で全国圏内にも入っている。

 

その原因となったのは午前のグループ分けだった。何故かうちら一年生団体戦メンバーを除く先輩たちが、ほとんど同じグループに入ったのだ。そのおかげか、うちらの順位は上がり、対して先輩たちは勝ち負けを繰り返して順位を落とすという結果になっていた。

 

対して、唯一独走している我らが部長は現在全試合をAトップ(自身以外がマイナス)で終わらせており、その餌食となったのが運悪く同卓してしまった竜華だった。

 

 

「今も1人独走中やしな。対して攻撃力が高い訳でもあらへんのに誰も和了れへんから勝手にAトップになってるし、俺としては最悪の相手やで」

 

「……せやな」

 

「竜華?」

 

「ううん。せや、早くご飯食べよ!うちもうお腹ペコペコやわぁー」

 

「俺もお腹すいたわー」

 

 

竜華が急に声のトーンを上げる時はこれ以上は詮索しないでほしいという意思なのだと、うちは昔から知っていた。だからこれ以上の詮索ははやめておこうとうちも「せやな」と相槌をうち、2人についていくのだった。

 

 

 

        ******

 

 

 

それから4時間が経過し、残すはあと1試合となった。

 

現在の順位

 

1位 ーーー    +291

2位 江口セーラ  +236

3位 ーーー    +205

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー全国出場枠

4位 園城寺怜   +204

5位 清水谷竜華  +201

 

 

セーラは2位として既にインターハイ出場が決定。一位のうちらの部長も確定、残す1枠はうちと竜華、3年の先輩の奪い合いとなった。

 

全員のスコアに差はほぼなく、本当に最後の1試合で全てが決まる。

 

そんな中うちの相手はーーー

 

 

「今日は明日はないから全力でやってくれるんか?」

 

「……」

 

「まぁ、全力でぶつかるだけやな。さて、()()最終決戦や」

 

 

なんの因果か、昨日と同じ席に座る竜華が再びうちの前に立ち塞がった。

 

 

 

 ー 東一局 ー  親 清水谷 竜華

 

 

起家は竜華。だとしても竜華は基本的には東場で爆発することは無いのでいつも通り和了ろうと手牌を確認したその瞬間だった。

 

 

(……っ!?竜華!?あんた、まさか無極天使っとるんか!?)

 

 

極寒の冷気が自身の体を這うように流れてくる。非常事態に慌てて竜華を確認すると、間違いなくその目から光は失われており、無極天が発動していた。

 

 

(な、なんで発動してるんや!?一応コントロールは出来てる言うとったから出来るのは知ってたけど、今までは集中しきれない東場は避けてたやないか!?)

 

 

そんな混乱している事もきっと理解している上で竜華の一打目が卓上に放たれた。

 

 

 ー 5巡目 ー

 

 

「リーチ」

 

 

遂に彼女からのリーチがかかる。だというのにうちの手は未だに二向聴、上家もうちを警戒してか、読まれてなかなか鳴ける牌を捨ててこない。そうなってはもうーーー

 

 

「ツモ  国士無双 16000オール」

 

 

ーーー誰も彼女を止められない。

 

 

 

 ー 東一局 一本場 ー  親 清水谷 竜華

 

 

 点数状況

 

清水谷竜華  73000

園城寺怜    9000

ーーー     9000

ーーー     9000

 

 

1局目から親の国士で既に点差は全員と64000点差。まだ東一局なのが救いだと、そう考えていた。が、ここで試合に対しての第2の誤算が現れた。

 

 

(……ちょっと待て、なんでさっきの局と圧迫感が変わっていないんや?ま、まさかやろ……?)

 

 

急いで竜華に視線を向ける。その目は未だに光を失い続けていた、つまりーーー2局連続、無極天状態。

 

それが意味成すのはもちろんーーー

 

 

(ここでうちらをトバして終わらせるつもりなんか!?)

 

 

冷や汗が垂れてくる。今まで竜華は東場及び連続での無極天の使用はしてこなかった。理由としては以前、彼女が体力がもたないから、そう話していたからである。だが、それも中学の頃の話、ならば今はどうなのか。それを考えなかった結果がこれだ。

 

そもそも昨日止められたのもツモと配牌が良かったに過ぎない。そして今止めるのにもう一つ不利な要因として存在しているのは他家の戦意喪失であった。

 

 

(そりゃそうなるわな。初っ端親の役満ツモ、そんでもってその恐怖がまだ続くなんてうちだって今すぐ投げ出したくもなるわ)

 

 

だがそれでも諦められない。今までだってこんな状況がなかった訳ではない。だからこそ希望を持って進むしかないのだと自分に言い聞かせ配牌を開く。

 

だがーーー

 

 

(配牌、六向聴……?)

 

 

それでも届かない時があるのだと、思い知らされる。

 

 

(ああ、これはもう……)

 

 

ダメだ。心が折られかけ、ヒビのような音が聞こえた時だった。

 

 

『怜!』

 

 

「っ!?」

 

 

誰かの声がうちの心を掠めていった。その声に跳ね上がったうちは無意識的に辺りを見渡す。もちろんその声の本人がいる、なんてことは無くそこには顔をポカンとさせた2人と無表情ながらも心配しているようにも見える親友がうちを見ているという光景だけだった。

 

 

「あ、えっと。すみません」

 

 

このなんとも言えない空気にしてしまったことに謝罪をし、改めて牌に目を向ける。相変わらずの酷い手牌だが心にあったはずのヒビは無くなっていた。何故麻雀をするのか。その答えを今のうちは思い出せたから。

 

 

(もう、大丈夫。迷わない。私は絶対空亜に会いにいくんや!!こんなところで負けてられないっ!!何が六向聴や!諦めないことの大事さはうちが誰よりもわかってるやろ!!)

 

 

 

        ******

 

 

 

  ~数年前~

 

 

 

現在うちらは中学1年、空亜がいなくなってから既に1年が経過していた。

 

あの出来事から数ヶ月、うちらはなんとか2人で立ち直り、1つの目標を決めた。

 

     『インターミドル 優勝』

 

この目的にしたのには勿論空亜が絡んでいる。今現在、うちらが空亜との再会に使える手札はそれこそ麻雀というつながりのみだった。ならうちらが探すだけじゃなくてあっちからも見つけてもらおうという話になったのだ。

 

その為にはまずは全国的に有名にならなくてはならない。そこで目標に定めたのがテレビ中継もされるインターミドルだった。

 

その為にこの一年間麻雀に全てを捧げてぶつかってきた。だがーーー

 

 

「怜、来年だってあるし、一緒にまたがんばろ?な?」

 

「……」

 

 

1年目の結果は、県予選敗退だった。

 

それでも県5位と、周りは善戦したと褒めてくれる。だが、同時期に麻雀に力を入れ始めた竜華は2位という結果を残して一年生ながらに全国への切符を手にしていた。

 

大会が終わり、家に帰ってからその日はひたすら泣いていた。今までの努力はなんだったのだろうか、どうして自分には竜華のような人並み外れた才能がないのだろうか。何度も自問し、答えを望んだ。

 

 

「……あ、れ?朝日……」

 

 

ずっと泣いて、考えてを繰り返していたせいで気がつけば日付は変わり、太陽が顔を出していた。その太陽に、目を向けた次の瞬間だった。

 

 

「え……」

 

 

ーーー太陽が緑色に輝いていた。後に調べると、この現象はグリーンフラッシュといい、様々な条件が積み重なり、奇跡的に見られるものらしい。

 

元々うちは少し小高いところに家が立っており2階から大阪湾の水平線が見える立地であった。それでもこの光景が見れるなんて話は聞いたことがなかった。

 

「グリーンフラッシュは幸運を呼び込む」そんな言い伝えがあるらしい。もちろんその時のうちがそんなことを知っているわけもなかったのだが、なぜだかうちは体を窓から乗り出し、祈るように手を合わせて願っていた。

 

 

「っ!うちはっ!もう一度空亜に会いたいっ!!だから、勝つための才能を……いや、アホかうちは……。こんなのーーー

 

 

ーーーうちは、願わないっ!!諦めないっ!!努力だってまだまだしてみせる!!足りないっていうなら全てを捨てる!!うちは絶対に空亜に会いに行くんや!!!」

 

 

全力の宣言、終わった後は色々考えてたのが嘘みたいにスッキリしていた。

 

そして、お母さんに「朝から近所迷惑でしょ!」と、うち以上の大声で怒られ、正座させられたのだった。

 

 

 

        ******

 

 

 

あれから練習を繰り返し、2年で全国へ初出場し、去年はベスト8まで勝ち上がることができた。だが、当初の目標である「インターミドル優勝」は叶うことなく高校生を迎えてしまった。あの時も悔しかったが、もう、挫けるようなことはしていない。

 

人間は死ぬ気で努力すればどうにかできると、教えてくれたのは他でもない自分自身。なら、今のこの窮地だってどうにかできる筈だ。

 

もう一度自身の手牌を見つめ、相手を観察し、最適解を求め出す。牌効率だけでは最適解には辿り着かない、全ての情報を組み込む。

 

 

(っ!無極点状態だと、考えることも多すぎや!でも、未来は1つしかあらへん、その答えを……!)

 

 

その瞬間だったーーー

 

 

(!?な……世界が緑色に包まれて……竜華が、和了っとる!?いや、おかしいやろまだ今は3巡目のはず、なのになんでこれはパッと見11巡目ぐらいになってるんや?……まさかこれ『未来』なんか?)

 

 

世界が急に緑へと変貌し、気がつくと竜華が満貫を他家から和了していた。だが、この世界が現実でないことは明らか、そしてうちが出した結論はこれは何らかの形で見えた『未来』なのではないか、というものだった。

 

 

(これが本当に未来なんだとしたらうちは竜華を止められなかったってことになる。せやけど、今竜華の和了りの形がわかってるなら現実で何が1つアクションを起こせば止められるんやないか?)

 

(うちの手牌は……二鳴きの一向聴。まぁ六向聴からしてみればようやってる方やと思うけど、止められへんかったんか。そんでこの手牌、河、最適解は別にあるんやろうな)

 

 

考えをまとめ、ふぅ、と一息つき目を瞑ると世界はいつも通りの色に戻っており、代わりにみんながじっとこちらを見ていた。

 

 

「え?」

 

「君、大丈夫かい?」

 

 

室内にいた審判がうちのそばに駆け寄り声をかけてきた。何のことかと思っていると対面の竜華が無機質に教えてくれる。

 

 

「怜、急に動きを止めてたんやで?まぁ、10秒ぐらいではあったけど」

 

 

10秒……。うちの体感としてはあの世界に1分はいた気がしていたので少し戸惑いを覚えるも、大事にするほどでもないと周囲に一言謝りを入れて、審判も納得、試合が再開された。

 

さあ、逆転開始や、竜華。

 

 

 

        ******

 

 

 

「……」

 

 

何か、おかしい。その違和感を感じたのは5巡目だった。

 

いつもなら既にテンパイしているはずの手牌は未だに一向聴のままになつている。通常、怜はうちと相対すると、速さ重視でどんどん鳴いて安手で仕留めていくが、今はまだ一鳴きもしていない。

 

そこに違和感を感じたのもだが、1番は他の選手の副露率だった。

 

全員が二鳴きしており、そして鳴いているのが全て怜の捨て牌からなのだ。そのせいでうちは手が上手く作れないという状態に陥っている。

 

 

「ポン!」

 

 

そして再び下家が怜の捨て牌からポンした。これで三副露、ここは下家が和了るかと思ってしまった次巡、うちが手を一向聴からテンパイにし、ダマで通そうとして不要牌を捨てた時だった。

 

 

「……ロン 3900」

 

「……え?」

 

 

思わず声が漏れる。おかしい、当たるはずのない牌だった。だというのに、何故、今怜は手牌を倒して発声をしている?

 

 

「な、なんで……」

 

 

混乱からか無極点を操作するだけの集中は切れてしまい、それと同時に二局連続使用した疲れがどっと押し寄せてくる。思わず倒れそうになる。

 

だが、それよりも不可解なのは今の和了った手牌だった。

 

 

(これ、元々配牌六向聴やったのを、和了ったんか?そもそも初手五萬切りとか、普段の怜なら絶対にやらないやり方やし、なんかおかしい和了りやな)

 

 

牌効率とはまさに真逆の打ち方で和了りを手にした怜。親こそ流れたものの現在の点差はまだ50000点以上の差がある。怜は火力が高くはないはずだから追いつくのは至難の業だろう。なら、私が、すべきなのはーーー守ること。

 

 

そうして次局への戦意を高める私。しかし、のちに考えてみれば今このタイミングで気づくべきだったのだ。

 

 

「……っ」

 

 

怜の体温が急上昇し、視線を下に下げ続けていることに。

 

 

 

         ******

 

 

 

 ー 南三局 ー

 

 

 現在の点差

 

清水谷竜華 64000

園城寺怜  17000

ーーー    6300

ーーー    2700

 

 

現在は南三局を迎え、試合は私の単独トップで進んでいた。

 

親番での無極点の使用は対策されていると予測して控え、そして現在のこの局で使用した。そして選手の体温を確認していた時だった。

 

 

(怜!?ちょっと待ってや!?この体温、発熱、それも39度越えの熱やで!?なにが起こっとんのや!?)

 

 

怜に急いで目を向けると、既に目は焦点があっておらず、手もおぼつかない。こんな状況で続けさせたりなどしたら

 

 

(怜の体がもたない……!!)

 

 

ただでさえ病弱なあの体でこの体温、いつもなら既に倒れている状況だが、未だに打ち続けられているのは執念からだろうか。だとしてもこの状況をうちが見逃すわけにはいかない。

 

だがきっとここで私が申告したら怜は激怒するんだろう。でも、私は彼女を、親しい人を再び失うことはできなかった。

 

そしてうちは無極点を解除し、そして試合の中、ゆっくりと手をあげた。

 

 

「審判」

 

「どうされましたか?」

 

 

審判がうちの元に来ると事情を聞いてくる。その間試合はストップし、怜は今も辛そうに体を椅子にかけている。

 

そんな彼女をうちは指を指して言った。

 

 

「園城寺さんが危ない状態です。発熱してます」

 

「え?」

 

 

審判はすぐに体を怜へ向けて確認を行う。今も辛そうに息をしていた怜は自分に視線が来ていることを感じとったのか体を起こすも

 

 

「っ……」

 

 

危うく転倒しかけてしまう。審判も流石におかしいと感じたのか怜に「失礼します」と断りを入れ額に触れると深刻な顔つきになっていく。だがその近くで今の状況をやっと理解した怜が発熱しているにも関わらず顔を青ざめさせていた。

 

 

「な、なんや……、うちは大丈夫や。続行しようや……!」

 

「何言ってるんだい君。こんな状態で試合を続けはさせられないよ」

 

 

怜の発言を審判は聞くも首を横に振り、そしてどこかと連絡を取り始めた。おそらく怜を医務室へと運ぶのだろう。

 

そんな風に流れていく様子をただ眺めていた時だった。

 

 

「竜華!!」

 

 

急にうちの名前が叫ばれた。顔をそちらへ向けるといたのは熱からか、はたまた怒りからか顔を赤くして立ち上がって私を睨みつける親友だった。

 

 

「なんで止めたんや!!分かってたやろ!!うちがどんだけこの大会に思いを載せてたか!!」

 

「せやな。知ってたで」

 

「じゃあなんで止めたんや!!……まさか自分が勝ち上がるためなんて言うんや無いやろうな!!」

 

「……は?」

 

 

一気に心の中が、冷えていくのを感じた。

 

ーーー誰が、今まであんたと一緒に麻雀してきたと思っんとねん。

 

ーーー誰が、あんたの気持ちを私以外で理解できると思っとるんや。

 

ーーー誰が、世界一大事な親友を蹴落としてまで彼の元に行きたいと思うねん。

 

怒りは次第に悲しみ、呆れに変わり、そしてーーー

 

 

「ーーー怜、ちょっと黙っててや」

 

 

私は無極点を使っていないというのに無感情になり、怜を見つめていた。

 

 

「っ……」

 

 

怜は冷静になったのか、下を俯いた、瞬間だった。

 

 

        ドサッ

 

 

怜が限界を迎え、床に倒れた。そして起き上がらない。

 

 

「怜!?」

 

 

私は心を乱したまま急いで怜の元に駆け寄る。気絶していて脈拍も安定していない。

 

 

「怜!怜!」

 

 

怜のあまりに異常な様子に冷静を失った私はひたすら彼女の名前を呼んだが、もちろん返事はない。

 

どうすれば。そう考えて辺りを見渡そうとした時、ドアが勢いよく開かれ外から救助員の人が担架を持って入ってきた。

 

私を押しのけてゆっくりと担架に乗せられていく怜は苦しそうで、彼女を助けるために手を挙げたというのに何も変えることができなかった。その自責の念が私に重くのしかかっていた。

 

 

「園城寺怜さんの体調不良のため、この試合は無効試合とします。スコアについては本部側で判断しますので選手の皆さんは退室してください」

 

 

残っていたうちらに審判がそう告げると全員が会場を出ていく。ただ私だけを部屋に残して。足が動かなかった。

 

その後私が動いたのはスタッフに再度移動を促されてからだった。

 

 

 

 

 

 

 





次はいつもの文章量に戻ると思いまする。まだ主人公が大して出てきませんが大丈夫なのか?これ。

評価、コメント等お待ちしています!モチベ上がるんで!

それではおやすみなさーい。
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