「提案ッ!トレーナー達の利便性を考え各部屋にシャワー室を設置する!」
突如言われた理事長の思い付き。
多忙を極めるトレーナー達は、寝る時間や帰る時間すら惜しみ今日も今日とて業務を続ける。
その為、前までは匂いや、清潔感の観点から近場の銭湯に駆け込むなどをしていたトレーナー達。
そんな彼らの為を想っての判断だろう。
まあ私達トレーナーは猛反対したけど。
「トレーナーさんこんにちは!」
「やあダイヤ、こんにちは」
眠い目を開け、担当を出迎える。
そこには笑顔を浮かべ私を出迎えている担当バ、サトノダイヤモンドがいた。
彼女とは三年の月日を経てそれなりの関係を築けてはいると思う。
そう、それなりの関係を築いてるからこそこのシャワー室を作るのは反対したのだ。
ウマ娘との信頼関係の飽和。
行き過ぎた彼女達の愛による暴行事件。
そもそも人間とウマ娘という種族差がある中、飛び込んでいるトレーナー達に人権などないに等しいものだが表向きは日本最高のトレーニングセンターことトレセン学園。
早急に対処すべき問題だが未だそれは上手くいかず、私も寿退社をした同僚を何人も見送っている。
その中でのシャワー室の設置。
これはもう"襲ってください"と言っているようなものだろう。
「あれ、トレーナーさんまた徹夜ですか?」
「うん、終わらせなきゃいけない資料沢山あるから」
机の上に置かれた山積みの書類。
一晩経っても処理できないあたり本格的に気合を入れなきゃ間に合わないだろう。
「あ、早速使っているんですねシャワー室」
「よく分かったね、理事長には感謝をしなきゃ」
「いつもよりトレーナーさんからシャンプーの匂いを強く感じます!」
「まあ流石に風呂に入らずにダイヤに会う訳にはいかないもんね。香水とかで騙してもいいんだけどダイヤは苦手だったよね」
「うう……あの強い匂いが苦手で……申し訳ないです」
「いいのいいの、ウマ娘は元々人間より嗅覚が優れているんだから」
机の側に寄りバインダーを手にする。
「じゃあダイヤ、トレーニング行こうか」
「はい!よろしくお願いします!」
既に体操服に着替えており、準備は万端。
彼女の向上心には私もよく救われている。
ターフに移動し、ストップウォッチなどの必要機器を準備する。
ダイヤはというと準備運動がてらターフを軽く走っている。
「トレーナーさん準備が終わりました!」
「うん、じゃあ今日はスタートの練習をするね」
ヒシアマ看板の近くに立ち、構えるダイヤ。
ん?なんかやけに力んでないか?
「はあぁっ!!」
「うわっぷ」
私の合図と同時にスタートをするダイヤ。
凄まじい踏み込みだったのだろうか、飛び散るターフの芝生。
私はモロにそれを喰らうことになった。
「あわわ……トレーナーさん!ごめんなさい!」
「い、いや大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」
「でもトレーナーさんの身体汚れてしまいましたね」
上目遣いでこちらを伺うダイヤ。
しかしその瞳は静かに揺れている。
「大丈夫だよ、土くらい払えばなんてことないから」
「そうですね……すみませんでした」
何やら考え込んでいるダイヤ。
その怪しさに私は気づかないフリをすることしか出来なかった。
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「ダートコースですか?」
「ごめん!予約の欄間違えてたみたい!」
寝ぼけていたのか芝のコースを選んだつもりがダートコースを予約していた。
「うーん座学にしてもいいんだけど……」
「ダイヤまだ走りたいです!」
「そうだよな……じゃあ重馬場を想定して今日はここでやるか」
「はい!ありがとうございます!」
左手に付けていたヘアゴムを取り、ポニーテールに纏めるダイヤ。
普段はおろしている為、隠された首元がとても扇状的だ。
「トレーナーさん?どうして目を逸らしているんですか?」
「い、いやなんでもないよ」
「……じゃあ私コースに移動しますね」
「う、うん」
何やら納得のいっていない様子のダイヤ。
渋々といった様子でコースに移動した。
「スタート!」
私の合図で駆け出すダイヤ。
慣れないダートコースということもあり今回は少し短めの距離にしている。
「うん、想定してたくらいのタイムだダイヤ。よく頑張ったね」
「本当ですか!ありがとうございます!」
私の方に歩き出すダイヤ。
しかし、彼女は突然歩みを止めた。
「ダイヤ?」
「あ、いえ何でもないです」
私に向かって駆け出すダイヤ。
「あれ?あー……」
「ッッ……!ダイヤ!」
自身の脚を引っ掛けたのか私の目の前で転びそうになるダイヤ。
私はそれを抱きしめる形で受け止めた。
「トレーナーさん……ありがとうございました……」
「びっくりした……脚の方は大丈夫?」
「はい!トレーナーさんが支えてくれたので無事です!」
「良かった……で、ダイヤそろそろ離してくれてもいいんだよ?」
「えー分かりましたー」
名残惜しそうに私の体から離れるダイヤ。
「あ!トレーナーさんに砂がいっぱい付いてる!」
「あー本当だ、でもこれも払えば大丈夫」
視線を下に向け自身の状態を見る。
細かい砂が沢山付いている状態だが、まあ何とかなるだろう。
「でも……そのトレーナーさん……」
「うん?」
モジモジと少し恥ずかしそうに話すダイヤ。
「その……受け止めて貰った時ダイヤ沢山汗かいてたから……」
「あーなるほど……」
「その……トレーナーさんが嫌じゃなければ……」
「分かった、シャワー浴びてくるね」
「うぅ……申し訳ないです」
「じゃあ今日のトレーニングは終了ね、ダイヤも砂付いてると思うからシャワー浴びてからミーティングにしようか」
「了解です!」
器具の片付けをし、一緒に校舎へ向かう。
その時、彼女の尻尾が大きく揺れていた。
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「ふぅ……なんだかんだいって直ぐにシャワー浴びれるのは嬉しいな」
最初に悪態こそ吐いたが、やはり便利といえば便利だ。
やっぱり理事長には感謝を……
「失礼します」
「だ、ダイヤ!?」
突然中に入ってきたダイヤ。
急いで壁に掛けていたタオルを取り大事な所を隠す。
「ど、どうしてここにいるの!?」
「寮の方のお風呂皆んな使ってていっぱいで……トレーナーさんが中にいるし一緒に入ろうかなって」
えへへーと笑うダイヤ、可愛い。
いや、そういう問題じゃない!
「いやいやいや、待って俺すぐ出るから!」
「わ、わ、危ないですよ狭い所で暴れたら」
外に出ようとする私を抱きしめて止めるダイヤ。
タオルこそ身に纏っているがそれはほぼゼロのようなものでものすんごい柔らかさを肌で感じる。
「ちょ、ダイヤ離れて!」
「いーやーでーすー。一緒にお風呂入りましょ!」
グニングニンと形を変える彼女の双丘。
ゴリゴリと削られる私の理性。
これは"早急"に対処しなければ……ってしょうもないこと考えている暇なんかない!!
「ふふ、これで二人っきりですねトレーナーさん」
「ダイヤ……?」
「シャワー室の設置、提案して正解でした」
「ダイヤ!?」
前言撤回、あの理事長次会ったらいつも持っている扇子で頭引っ叩いてやる。
「さあ、トレーナーさんここにはダイヤとトレーナーさん二人っきりです」
私の手を取り、自身の立派なソレを押し付けるダイヤ。
怪しく微笑む彼女、全て彼女の掌の中だったみたいだ。
「トレーナーさん、これからもずっと一緒に居ましょうね」