トレセン学園のカフェテリアの料理はとても美味しい。
他のウマ娘より沢山食べる私にもすぐに美味しい料理をいっぱい出してくれるこの食堂が私は大好きだ。
でも最近は前より沢山料理を食べることができない。
何故か心臓がきゅっとなるような感じがして……胸が苦しいのだ。
「やあ、オグリ。お隣大丈夫?」
「トレーナー!構わないぞ、一緒に食べよう」
でもトレーナーが隣に居てくれたらいつもと同じくらいいっぱい食べることができる。
トレーナーには何か不思議な力でもあるのだろうか?
「邪魔するでオグリにオグリのトレーナー。前座ってもええか?」
「タマちゃん、邪魔するなら帰って」
「すまんすまんそうさせて貰うわ……ってなんでやねん!」
タマとトレーナーが仲良さそうに笑っている。
まただ……また心臓がきゅっとする。
「オグリどうした?手止まってるみたいだけど」
「え、あ、いやなんでもないんだ。少し考え事をしていてな」
「なんやオグリ、悩み事でもあるんか?」
「タマ……実は……」
いや待て……ここで変にトレーナーに心配をかけるのは悪いな。
「いや、なんでもない」
「……そうか、ならええわ」
そしてその後はいつものようにに楽しく会話をしながら食事を終えた。
午後のトレーニングもしっかりこなし、後は明日に向け寝るだけだ。
「お邪魔します〜」
「クリーク!?どうしたんだ」
「ウチが呼んだんや。オグリ昼間何か言いたげやったけど何かあるんちゃうか?」
「タマは凄いな……なんでも知ってる」
私は最近の悩みのことを話した。
食事があまり進んでないこと、トレーナーと一緒にいれば沢山食べれることを。
「あらあら〜オグリちゃん」
「はぁ……オグリ、それウチがあんたのトレーナーと話してたりしたら起きるか?」
「タマ!?分かるのか!!そうなんだ」
「近い近い!芦毛の怪物と言われたオグリがこれか……」
「まあまあ、オグリちゃんも女の子ってことですよ」
「私は大丈夫なのかタマ、クリーク?」
「恋煩いってやつやな、自分の気持ちに素直になると治るで」
「恋煩い?」
「トレーナーさんに真っ直ぐ自分の気持ちを伝えてみれば良いんですよ」
そう言って私の頭を優しく撫でてくれるクリーク。
お風呂上がりだからゴミはついてない筈なのだが……
「分かった、明日言ってみる」
「おう!いつまでも抜けてるオグリじゃおもろないからな」
そんなやり取りを終え私は眠りについた。
次の日、私は早めに伝えた方がいいと思い朝イチトレーナー室を訪ねることにした。
「トレーナー、おはよう。ちょっと話があるんだが構わないだろうか?」
「おはようオグリ、随分早いねどうしたの?」
「私どうやら病気みたいなんだ……」
トレーナーがペンを落とした。
「お、オグリどういう事なんだ?体調が優れないのか?」
私は真っ直ぐ首を振り肯定の意を示す。
おろおろとしながらトレーナーが近づく。
私の心臓がドクンと大きく跳ね顔が赤くなるのを感じる。
まただ、またこの症状だ。
「と、とりあえずどんな感じなんだ?痛む所があるのか?」
「脚などには問題はないんだが……胸が苦しくなるんだ」
「胸って事は体の中ってことか……?」
「トレーナーが離れていると胸が苦しくなって……隣で一緒にご飯を食べるときには治るんだ」
「え?」
「あ!後タマとトレーナーが喋っている時も胸が苦しくなるんだ」
「あ、え?」
そうだ!タマが病名を言っていたな。
「タマが言うには"恋煩い"って言うらしいんだ。私は大丈夫なのか?」
「可愛すぎんだろ……」
トレーナーが頭を抑え、小さな声でそう言った。
「と、トレーナー!顔が真っ赤だが大丈夫なのか?熱でもあるのか?」
「あー大丈夫だ。とりあえず治療していこうか」
そう言い私の手を取り指を絡めるトレーナー。
その表情はとても優しい。
「どう?胸の苦しみはある?」
「ないな……ポカポカする」
「じゃあ次は僕を抱きしめてみてくれないか?」
「い、いいのか?」
「うん、多分これで治るはずだから」
「わかった……」
立ち上がりトレーナーを優しく抱きしめる。
心に刺さっていた棘のようなものが抜ける感じがした。
「君は……温かいな」
「オグリも温かいよ」
私は自然と笑顔になる。
3年間隣で嗅いできたトレーナーの匂いを強く感じる。
私はトレーナーの胸に顔を埋めてぐりぐりとする。
そんな私をトレーナーは優しく撫でてくれた。
クリークにされるのとはまた違う温かさ。
「どう?治った?」
「ありがとうトレーナー。心の棘が無くなった気がした」
よかったよと優しく抱きしめてくれるトレーナー。
私はトレーナーが大好きなみたいだ。
「邪魔するで〜オグリどうや伝えた……か?」
「やあタマ、ありがとねオグリのこと」
「ほんまに邪魔してもーたやん……すまんかったって……オグリ?」
また心がきゅっとする感覚。
このままトレーナーとタマが話すと私はまた病気になってしまう。
私の特効薬はトレーナーだけなのだから。
「タマにトレーナーはやらないぞ!」
「ごめんってオグリそんな怖い顔せんといてや。オグリのトレーナーも満更な顔すんやな!」
トレーナーの方に振り返り私はマーキングをするように高速でぐりぐりする。
そんな私をトレーナーはまた一層強く抱きしめてくれた。
「あーなんとかなったみたいやしウチは失礼するで」
「うん、ありがとうタマ」
トレーナーがふりふりと手を振りタマを見送る。
そんなちょっとした仕草も私は苦しい。
「トレーナー!君は私のトレーナーなんだぞ!」
「随分と甘えん坊さんになったことですこと」
トレーナーは私だけのもの。
その優越感で心はとてもふわふわする。
「トレーナーは私とずっと一緒に居てくれるか?」
「君が望むならいつまでも」
「そうか、それは良かった」
その後移動するたびに隣にくっついているオグリキャップが学園では目撃されたそうだ。
オグリが恋だと気づくのはまだまだ先の話である。