ウマ娘短編集   作:こーさん

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ファインモーション(22)変わらないもの

 

「わー久しぶりの日本だ!」

 

4年ぶりの日本。

4年も経てば何かしら変化があると思っていたが変わっていたのは駅の近くにあったコンビニがラーメンチェーン店に変わったくらいだ。

 

「殿下、一応お忍びで今回は来日しているのですからあまり騒がないようにお願いしますね」

 

「ふふ、分かってるよー」

 

そう言い私は変装用の帽子を深く被る。

目の前にあるラーメン屋さんも私にとってはとても魅力的だけど……

 

今日はもっと楽しい場所に行くんだから。

 

 

「おー懐かしき我が母校」

 

門の通り中に入る。

目の前に広がる校舎へと続く並木道。

 

「ふふ、ここも変わってないや」

 

少し軽い足取りで道を歩く。

私の我儘から護衛は隊長さんのみにしているため、二人並んでとことこと歩き続ける。

 

時間が時間なので殆どの生徒は授業中なのだろう、ターフには声ひとつ聞こえない。

まあわざわざこの時間を狙って来日したんだけどね。

 

コツコツと廊下を歩く。

ここも何も変わらない。

 

真っ直ぐ進んで右に曲がる、最後に前から4番目の部屋。

 

「もしかしてだと思ってたけどここも変わってないのね」

 

毎日のように通った部屋。

伝えたいことが多すぎてノックを忘れて入室した時は怒られたっけ。

 

コンコン。

 

私は同じ失敗はしないんだよー。

入室の許可を貰うが返事がない。

 

「むぅ〜入るぞ〜」

 

私はちゃんと聞いたもんね。

扉を開けて中を見る。

 

いた。

 

業務机に顔を伏している私の元トレーナー。

部屋の中はチーム設立の為か、私が居た時より物が増えている。

 

隊長さんに合図をして一人にしてもらう。

ここからは二人の時間だよ。

 

彼の近くに行き顔を覗く。

 

4年ぶりに見る顔。

新人ほやほやの時と違いちょっと男らしくなっている顔。

切る時間もないのか若干長めに揃えられた髪。

 

「君はちょっと変わっちゃったのかな?」

 

ぼそっと一人呟く。

ふと机に視線を向けると写真立てが何個か置いてあった。

 

その一つを手に取る。

 

「わぁ懐かしいな、これURA優勝した時の写真だ」

 

日本に来て挑戦した新しいこと。

隣には涙でぼろぼろの彼と笑顔の私。

変わってないものもちゃんとあることに心が少し躍る。

 

思い出を振り返るのもそろそろおしまい。

大事なのは今、だよね。

 

「貴様ぁ〜この私がここにいる中お昼寝とは生意気な〜」

 

「んん……」

 

呼びかけてみるが疲れているのか中々目覚めない。

 

「貴様ぁ〜」

 

うりうりしてみる。

 

「んん……はい、起きました。どうしましたか?」

 

まだ目が開いてないようでこちらに気がついていない。

彼が自分で頬を叩き意識を覚醒させた。

 

「すいませんちょっと寝てました。どういった用事でぇ……え?」

 

「ふふ、来たよ〜」

 

「ふぁ、ファイン!?どうしてここに?」

 

「大事な用があって今日はお忍びで来日だよ」

 

「そ、そうか。4年ぶりか?随分大人になったなあ」

 

「むぅ、ずっと子ども扱いしてたの?」

 

「そういうわけじゃないさ。なんて言うかあの頃は愛くるしい……?」

 

「結局子ども扱いじゃん!私怒ったからね。つーん」

 

「すまなかったって、許してくれよ」

 

「そんなことよりほかに言うことあるんじゃないの?」

 

ちらっと彼の事を見て会話を促す。

 

「おかえりファイン」

 

「ただいま、トレーナー」

 

お互い弾けるように笑い出す。

4年間という隙間はなかったかのように話し合う。

 

チームのこと、仕事のこと、ラーメンのこと。

アイルランドのこと、王女としてのこと。

 

お互いあの頃の思い出は避けているかのように話を続ける。

現状報告もほどほどにして、そろそろ本命に入る。

 

「ねぇトレーナー、いつかに行った温泉旅行覚えてる?」

 

「もちろん、ファインが当てたあれだよね」

 

商店街のガラガラで当てた旅行券。

 

「星を見ながら散歩をした時に私が言ったこと覚えてる?」

 

キョトンとするトレーナー。

残念覚えてないか。

 

「私は君といるのが好き。君といる時の私が好き」

 

王国の娘ではなく、一人の生徒として、一人のウマ娘と見てくれた君。

 

「ずっと、いつまでも」

 

私は卒業してアイルランドに帰っちゃったけど、人々に、そして君に沢山のものを残したよ。

 

「「君のファインモーションでいさせてね」」

 

声が重なる。

驚きつい彼の方を見てしまう。

 

彼は柔らかく笑い言った。

 

「俺もファインといる自分が好きだった。毎日振り回されて、注意して、遊びまわった君との日々の中にいる自分が好きだった」

 

私は思わず涙が出た。

彼はそのまま言葉を続ける。

 

「ファイン、俺は君だけのトレーナーになれたかな」

 

「あ、当たり前だよ」

 

涙が止まらない。

声も上擦ってしまうがそんなこともうどうでもいい。

 

「き、君は私にたくさんのことを教えてくれたよね。走ること、の楽しさや、ウマ娘として、の生き方」

 

トレーナーは黙って聞いてくれている。

 

「変わっちゃう、ものとか変わらないものとか、沢山あるけど」

 

涙を拭いて真っ直ぐトレーナーを見る。

 

「君との思い出が変わらなくて良かった」

 

トレーナーは立ち上がり頭を撫でてくれる。

四年ぶりの彼の手。

この優しさも温もりも変わらない。

 

「ねぇトレーナー」

 

彼に抱きつき胸に顔を埋めたまま話す。

 

「私と、ファインモーションとずっと一緒に居てくれませんか?」

 

ずっと言いたかった彼への言葉。

やっぱり私君のことが大好きみたい。

 

「もちろんだよファイン、いつまでも俺は君と一緒にいる」

 

四年後の今日、私が「変えた」日常。

「変わらなかった」私たちの思い。

 

これから先、沢山変わっちゃうことがあるかもしれないけど。

 

私は君だけのファインモーションだよ!

 

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