ある晴れた夏の日、昼のシエスタ。
外の気温と比べ冷房が効いている為、室内の温度はとても快適だった。
昼食摂取後の血糖値上昇の為、自然と下がってくる瞼を無理やり開け何かをする訳でもなくただただ時間を潰す。
コロリと口の中の飴を転がす。
担当からの注意と彼女の健康の為に禁煙を始めたがやはり口が寂しい。
誤魔化す為ならガムもいいと聞くが顎が疲れるので私はこちらの方が好みだ。
「何を呆けている」
「やあエアグルーヴ」
口内の飴玉を噛み砕き彼女に返事をする。
入り口付近で立っていた彼女は既に体操服に着替えており、やる気の方は充分なようだ。
「食べ過ぎは歯に良くないぞ」
「大丈夫、そこら辺の管理はしっかりしている」
そう言いながら胸ポケットに忍ばせていた新しい飴玉を取り出す。
そして開封し、口に入れようとしたところで彼女に手を掴まれる。
「一日三個までだ」
「君は俺の母親か何かなのか?」
「たわけ」
私から取り上げた飴玉を口に含み私の胸ポケットの残りの飴玉も回収するエアグルーヴ。
でも大丈夫だ、そっちの机の引き出しにはまだまだストックがある。
「これも没収だ、次の日に三個配る」
秒で見つかってしまった。
楽しみが配給制となってしまった……
「はぁ……」
「ため息を吐くと幸せが逃げるぞ」
「そのちょっとした幸せが今逃げたんだよ」
私の言葉を無視して飴を鞄に仕舞うエアグルーヴ。
屈んだ時に突き出た彼女の豊満なヒップに自然と視線が寄る。
いけないいけない、担当に邪な感情を持つほど落ちぶれた訳ではない。
私はもう一度大きな溜息を吐き、ソファーに深く腰掛けた。
「悩み事か?」
「まぁちょっとな」
天井を見ていた視線を元に戻す。
腕を組み私を見つめているエアグルーヴ。
悲しいことに私も男だ、彼女の腕によって強調された彼女の胸の方に意図せずとも視線が下がる。
「貴様、何処を見ている」
「ん、少しぼうっとしてた」
悟られまいと嘘を吐く。
「嘘だな、貴様は何かを誤魔化す時にいつも後ろ髪を触る癖がある」
思わず触っていた髪から手を離す。
驚き彼女を見ると何処か勝ち誇った表情をしていた。
「そんなに私の身体が好きなのか?」
体操服の下部を掴み、下へ引っ張る彼女。
服が伸びたことにより彼女のボディーラインがくっきりと分かり、彼女のその豊かな双丘がこれでもかと主張する。
「俺も男だ多少なりとも視線は行く、不快に思ったなら申し訳ない」
「ほう……見ていたのだな」
そう言い私の膝の上に乗り、肩を押さえるエアグルーヴ。
「エアグルーヴ……?」
彼女らしかぬ行動に思わず驚愕の声を上げる。
そんな私を再び無視し顔を近づける彼女。
「たわけ♡」
耳元でただ一言そう言った。
ただ彼女がそう一言喋っただけなのに全身の神経が逆立ち、電流が走ったように硬直する。
「私の身体を見る男はよくいるがまさか貴様もそうだったとは」
顔を耳から元の位置に戻し少し上から私を見下ろすエアグルーヴ。
彼女の黒鹿毛のカーテンが頬を撫でる。
息をすることも忘れただただ彼女の綺麗な目を見た。
普段キリッと私を見ている目は今では弛緩し嬉しそうに細めている。
「ふふふ、そうか貴様もか」
何度も繰り返しそう呟くエアグルーヴ。
息を止めていたことを思い出し急いで呼吸を再開する。
ゼロ距離にエアグルーヴの顔。
麻薬のように私を犯す彼女の香りは私の理性を着実に削り、本能が目の前の雌を喰えと言っている。
少し顔を突き出せば届く彼女の唇。
「そんなに見たければ見ればいい」
近づけていた顔を離し、上の服を脱ぐエアグルーヴ。
彼女の勝負服を彷彿とさせる瑠璃色のブラジャー。
はち切れんばかりに実ったそれを彼女は大きく揺らした。
「どうした、口が空いているぞ?」
親指で私の舌をなぞり、その手をそのまま自身の口へ持っていくエアグルーヴ。
大きく舌を出し、丹念にそれを舐め続ける。
その姿はとても煽情的で前に突き出そうとしている腕を意地で止める。
「頑固だな、そろそろ素直になれ」
ぐいっと私を抱きしめ、自身の胸を私の胸に押しつけるエアグルーヴ。
私の胸の上で何度も形を変える彼女の双丘。
布一枚越しに感じる彼女の確かな柔らかさと彼女の顔が目の前にある。
そしてもう隠すこともできないくらい隆起した私のソレを詰るように腰を動かすエアグルーヴ。
倒れ込むように私の首に顔を埋め、カプリと私の首を食んだ。
「エアグルーヴ……」
懇願する様に、情けを含んだ声で彼女に問う。
「どうした、私の身体が好きなのだろう?」
しかし楽しそうに、妖艶な笑みを浮かべるエアグルーヴ。
私の視覚、嗅覚、触覚を支配した彼女。
そんな彼女に抵抗出来る訳もなく、されるがままに遊ばれる。
「まだ……戻れるから……」
「こんなのにしているのにか?」
弄ぶのをやめないエアグルーヴ。
ただ彼女を突き飛ばせば終わる話。
しかし私にはそれをする理性は残っていなかった。
「貴様になら何をされても構わないのだぞ?」
再び顔を近づけたと思ったらそう耳元で囁くエアグルーヴ。
──私の中で何かがぷつんと切れた。
「エアグルーヴ!」
彼女を押し倒して唇を奪う。
恋慕なんていう薄っぺらいものではないもっと深くそして醜いもの。
エアグルーヴの口を舌でこじ開け中を蹂躙する。
私の愛欲、肉欲、淫欲、全ての欲を彼女に注ぎ込む。
時折彼女の口から漏れる吐息とトロンとした表情。
指と指を絡め合い、私は獣のように夢中で彼女に貪りつく。
「トレーナー……」
彼女が私を呼ぶ。
上気した顔、もうどちらの熱か分からない。
「来てくれ……」
建前も立場も全て放って彼女に重なる。
もう抵抗する気もないし、止まるつもりもない。
私たちはその日一線を超えた。