「トレーナーさん!こんにちは!」
時刻は3時を過ぎた頃。
元気な挨拶と共に私の担当、スペシャルウィークが入室してきた。
そんな彼女に私は少し悩みがある。
「こんにちはスペ、じゃあトレーニング行こうか」
「はい!」
立ち上がり、ストップウォッチなどの必要機器を持っていく。
トレーナー室を出てターフへ向かう。
隣にスペをくっつけながら。
「あのなスペ、前から言ってるけど距離が近い気がするんだよね」
「距離ですか?」
首をコテンと倒し頭に?を浮かべるスペ。
しかしその腕は私の腕をしっかり掴んでいる。
「うん、少々近い気がする」
「トレーナーさんは嫌なんですか?」
少し困ったように上目遣いでそう言うスペ。
「嫌……ではないんだけどさ、色々とさ……あるから」
むにぃっと形を変える柔らかい双丘。
彼女は無自覚なのかそんなことお構いなしにくっついてくる。
「えへへ、じゃあ別にいいですよね」
「ちょ、スペ……」
そう、このようにスペは私を無自覚に誘ってくるのが私の悩みだ。
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「トレーナーさんとのお出かけ楽しみです!」
「そうだな、レースも頑張ってるしこうやってゆっくりするのも久しぶりだね」
ライバルたちと鎬を削り、ダービーなどを勝つなどの快挙を見せてきたスペ。
今日はそんなスペの休息日だ。
「ショッピングモールで良かったの?美味しいご飯とかでも良かったのに」
「確かにご飯も魅力的な提案ですが……」
こちらを見てスペは言った。
「今はトレーナーさんと一緒に色んなお店を回った方が楽しいですから」
満面の笑みでそう答えた。
そしてそのままぎゅっと私の腕を抱くスペ。
「スペ……?」
「いいじゃないですか、今日は2人きりの"デート"なんですから」
そんなスペの言葉に心が跳ねる。
純粋無垢で天真爛漫、そんな彼女に惹かれない方が無理があるだろう。
彼女は一体私のことをどう思っているのだろうか。
適当な店をぶらつき時間を潰す。
後半はスペに引っ張られるような形になってしまったが彼女が楽しめたなら私も満足だ。
「楽しかったですねトレーナーさん!」
「そうだな、俺も久しぶりに楽しめた気がするよ」
「へへ、それは良かったです!」
「本当にご褒美ってこれだけで良かったの?」
近場のショッピングモールに寄ってただ歩く。
いつでも出来そうなことだったのでスペに再度聞いた。
「いいんです、私にとって休日もトレーナーさんと過ごすことが何よりのご褒美なんですから」
私の手を握りそう言うスペ。
私は優しく彼女の手を握り返した。
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「はわわ……凄い人です」
「そうだな……完全に捕まっちゃったな」
ショッピングモールを出た時間が少し遅かったからかサラリーマンの帰宅ラッシュに捕まってしまった。
とりあえずスペを扉側に移動させ痴漢などの犯罪被害に遭わないよう私が体を使いガードする。
「しっかり捕まっててね、急な揺れとか危ないから」
「はい!」
いつもの元気な返事をしスペは掴まった。
私の胴体に。
「スペ?」
「はい?トレーナーさん」
「いや、手すりとかに掴まった方が良くない?」
「え、でもこっちの方がいいです」
「す、スペ?」
すると急ブレーキを踏んだのか激しく揺れる車内。
「わわ……大丈夫スペ?」
「はい!トレーナーさんに掴まってたから大丈夫です!」
「そうか……」
「でもこれだとトレーナーさんも危ないですね」
「え、スペ?」
「えい!」
可愛らしい掛け声と共に私に抱きつくスペ。
背中に手を回されていて、逃げることのできない正面からのハグ。
「ちょ、スペ!?」
周りに人がいることもあり、小声で彼女に抗議する。
「へへ、これでトレーナーさんも安全です」
「そうかもしれないけどやばいって……」
一応変装用にベレー帽を被ってはいるが見る人が見れば多分分かるだろう。
この状態を記者にでも引っ張抜かれたら私は即警察のお世話になる。
「スペ本当にやばいってこれは」
「大丈夫ですトレーナーさん、顔を見せなければバレないです」
そのまま胸に飛び込むように顔を埋めるスペ。
暴走しそうになる理性をなんとか抑え私は最寄駅に到着するまで過ごした。
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翌日、私はいつものように仕事をしていた。
学園内校舎の方から授業終了のチャイムが聞こえたのを確認し、パソコンのデータを保存した後電源を消す。
トレーニングに必要な物の準備をし、本人が来るのを待つ。
「こんにちは!トレーナーさん!」
「こんにちはスペ、勉強お疲れ様」
いつもと変わらない元気な挨拶。
こっちも自然と笑顔になるのを感じる。
私が椅子から立ち上がると同時に胴に抱きつくスペ。
「こら、スペ離れなさい」
「えへへ、いーやーでーすー」
可愛らしい声で反抗するスペ。
こうされると私はもう何も手出しは出来ない。
「トレーナーさんも嫌じゃないんですよね」
瞬間、ギュッと先程より強い力で抱きしめられる。
「私知ってますよ、トレーナーさんの気持ち」
いつもより数段低いトーンでそう言うスペ。
下を向いている為表情はわからない。
「いつも私が抱きつくと口では否定するのに私のこと拒否しないですよね」
更に体を寄せ、胸を私のものに押し付けるスペ。
「ほら、こうやって私が抱きつくと心臓の音が激しくなるのが聞こえます」
ウマ耳を胸にピトッと当てそう言うスペ。
「好きなんですよね私のこと」
足を掛けられ床に倒される私。
スペはそんな私にウマ乗りになっていた。
「スペシャルウィークがこんなことをする訳ない、そう思っているんですかトレーナーさん?」
制服のリボンに手を掛けそれ外すスペ。
「私がただ無邪気にくっついて、抱きしめて、トレーナーさんとのコミニケーションを取っているウマ娘だとトレーナーさんは思っているんですか?」
上の服を脱ぎ下着姿になるスペ。
抵抗しようと体を動かすがびくともしない。
「そういえばトレーナーさん。お出かけの時美味しいご飯を食べに行かないのかって言っていましたね」
覗き込むように私を見るスペ。
その瞳は黒く濁っていた。
「それじゃあいただきます」