「なあなあトレーナー、身長の高い女性は好きか?」
「どうしたのゴルシ、そんなこと聞いて」
「いいから答えろよ。それともなんだ、オメーはいちいち言葉の内容を理解しないと気が済まない数学者か何かなのか?それならゴルシちゃんがありがたーく証明してやるぜ」
「いや、大丈夫だ」
何か危険なものを察知したトレーナー。
いやそんなに食い気味で否定されると流石のゴルシちゃんもちょっと傷つく。
「それはさて置き、好きか嫌いかどっちだ?」
「あんまり気にしたことないけど高い方が好きかな」
「そうだよなそうだよな!」
椅子に座っているトレーナーに覆い被さるように抱きつく。
そんなアタシの行動に驚く素振りも見せず淡々と仕事をこなすトレーナー。
「じゃあマックイーンとアタシだったらアタシの方が好きか?」
「んまあマックイーンとはあんまり関わったことないしゴルシかな」
「えへへそうだろそうだろ」
トレーナーのつむじに頭を置き、顎で思いっきりグリグリする。
「痛い痛い!身長縮むだろ」
「トレーナーは彼女より身長が高い方がいいのか?」
「まあ男として……女性より高い方がかっこいいだろ?」
「そうなのか?」
「そうだろう」
トレーナーの身長は175センチと日本人の平均的なもの。
ウマ娘の中でもかなり大きい分類に入るアタシとそんなに変わらないトレーナーは持ち運びが楽で助かっている。
「じゃあヒシアケボノとアタシだったらどっちが好きか?」
「うーんヒシアケボノとも関わりはないからな、ゴルシだろ」
「やーんゴルシちゃん嬉しい〜」
「はいはい、後で遊んでやるからちょっと待ってくれ」
ドラミングをしているアタシを無視して仕事をすすめているトレーナー。
なんだ、そんな光を放つ無機物の方がゴルシちゃんより好きなのか?
「なあなあトレーナー、おっぱいは大きい方が好きか?」
「ッッ……!ゴルシッ!」
吹き出すトレーナー。
その顔は外の夕焼けに負けないくらい真っ赤に染まっている。
「お、なんだトレーナー、照れてるのか?」
「いや、年頃の乙女がそんなこと……はあ、ゴルシだって女性なんだからそういう発言は控えた方がいいと思う」
「ゴルシだってってなんだよオメー!トレーナーはアタシが女以外の何かに見えんのか?」
「いやいやいや……まあ……ね?」
「おいなんだよ、その含みのある言い方は」
アタシが攻めると目を逸らすトレーナー。
「おいトレーナー、アタシを四字熟語で表したらどうなる?」
「奇想天外」
「おい」
「阿鼻叫喚」
「おい」
「喋無美人」
「なんだそれ?」
「"喋らないと美人"って意味らしい。ファンが作った四字熟語だって」
「おい、そいつファンじゃねーだろ」
全てをまとめてゴルシ様なんだぞ!
アタシの全てを愛してくれないやつはファンじゃねー!
「実際顔は綺麗なんだよなゴルシって」
「"顔は"ってなんだよ"顔は"って」
「……」
「目逸らすなよ」
横を向くトレーナーの顔を掴み強引に正面に向ける。
アイツの瞳に反射してアタシの姿が映った。
「やっぱり綺麗だよな」
「おっ、じゃあ彼女にしたいくらいか?」
「そりゃ街中で歩いてたら大抵の男は振り向くだろうね」
真面目な顔でそう言うトレーナー。
やめろよ……ちょっと照れるじゃねーか。
「じゃあアタシ、トレーナーの彼女に立候補してやるぜ」
「はいはい、冗談はさて置き仕事が終わってないの。もう少し待っててくれ」
「……冗談じゃねーのに」
「ん?ゴルシなんか言った?」
「なーんも、口ん中に焼き立てのナンぶち込んでやろうか?」
「やめろやめろ」
こんな感じでアタシがどんだけアピールしても流してしまうトレーナー。
アタシはいつだって本気なのによ!
仕事をしているトレーナーの横顔を見る。
なーんでこんなやつに惚れちまったかなあ。
「……るし……ゴルシ?」
「んあ?」
視線を上げる。
いつのまにかアタシの正面に立っていたトレーナー。
「仕事終わったよ」
「おーおーやっと終わったか。ゴルシちゃん待っている間に世界平和の解決方法わかっちゃったぜ」
「へぇどうするんだ?」
「悪いことしようとするやつをアタシが一人ずつやっつけるんだ」
「途方もないやり方だな」
「そうか?アタシが本気を出せば分身の一回や二回くらいはよゆーだぜ?」
「やめろやめろ、これ以上ゴルシが増えると困る」
「だよな!アタシは魔性の女だからな」
「自分で言うか普通?これ以上増えると手に負えん」
「街中の男全員惚れちまうもんな」
「まあ一理ある」
「だろだろ、どうだトレーナーそんなアタシを独り占めにしねーのか?」
上目遣いでトレーナー見る。
「十分独り占めしてるよ、拉致も逃亡もドロップキックもぜーんぶ」
「お、おう……」
あれトレーナー結構根に持ってる感じか?
「衝撃の出会いだもんな、多分一生忘れないよ」
「おお、これでアタシとずっと一緒だな!」
「そうだな……いやほんと」
「忘れたら夢ん中でも追いかけ回してやる」
「それは困るな」
目を細め慈愛のこもった目でアタシの頭を撫でるトレーナー。
こうしてもらうことを予想して既にヘッドギアは取ってある。
「なあなあトレーナー、アタシが意味のない嘘はつくけど人が傷つく嘘はつかないって知ってるか?」
「うん、前言ってたよね」
「アタシはトレーナーに対して冗談は沢山言うけど嘘はついたことねーんだぜ」
「そうなの?」
嘘だろ、ここまで言ってまだ気づかねーのか?
そんなに朴念仁だとアタシも困る。
「どうしたのゴルシ?」
「あーオメーまだ分かんねーのか?」
「何の話のこと?」
大きく息を吸い深呼吸をする。
レース前と同じような集中した表情で真っ直ぐトレーナーを見ながらアタシは言った。
「アタシがトレーナーのことが好きだってことだよ」