「トレーナーさん、危ないのでこっちに行きましょう」
担当バであるマンハッタンカフェに手を引かれ人通りの多い場所に連れて行って貰う。
どうやら私は"そっち系"に好かれているらしく、俗にいう怪奇現象によく巻き込まれる。
「なあカフェ。俺を守ってくれるのはとてもありがたいし助かるんだけど」
「はい」
「手繋ぐ必要あるの?」
そう最近カフェが近い、物理的に近い。
確かに怪奇現象の類には慣れたが中には命の危機に関わるものもいる。
それから守ってくれるカフェは命の恩人であるのだが最近は他のことにドキドキさせられる。
そう今の状況だ。
「私の近くにいればあなたは安全です。守りはやっぱり硬い方がいいですから」
「それが手を繋いでる理由?」
「はい」
自信満々に答えるカフェ。
確かに安全なのだが視線が怖い。
もちろん生きている方の……
今やカフェは菊花賞を制したスターウマ娘。
本人曰く、見られないから大丈夫だと宣言しているが。
まあ、バレバレだろう。
街行く人たちがチラチラとこっちを見ているような気がしないでもない……
カフェが楽しいならいいだろう。
「トレーナーさん次はあそこのお店に行きましょう」
「へぇこんなところにコーヒー専門店なんかあったんだ」
「私のお気に入りのお店です」
「ならカフェに見繕って貰おうかな。家のコーヒー切らしちゃって……」
「分かりました。私のおすすめと豆と淹れ方を教えますね」
「それはありがたいな」
「外泊届けは出していますのでこの後すぐに行きましょう」
「分かった……って何処に?」
「トレーナーさんのお宅ですが?」
「え、俺の家来るの?」
「そうですよ?」
お互い頭に?を浮かべながら会話をする。
え、俺が間違ってるの?
いつ間にか繋いでた手は離され、今やカフェに腕を抱かれている。
私の家に行くことがよっぽど楽しみなのか心なしか表情が明るい。
「トレーナーさん、早く行きますよ?」
「んあ、すまないそうしようか」
理解しようと考え込んでいたらカフェに呼ばれてしまった。
この状態のカフェに何を言っても無駄なので大人しく自由にさせておく。
「「ただいま」」
声を揃えて家に入る。
ちなみに同棲はしていない。お邪魔しますが正解なのでは?
「トレーナーさん……あなた今こんなところに住んでいるんですか?」
「え、何か悪いものでもいるの?」
「ここに"います"」
怪奇現象の類はあったがやはり何か住んでいるらしい。
「危ないので私に寄ってください」
「分かった……」
この手に関しては完全にカフェの専門であるため私は大人しく従う。
「カフェ?」
「離れないでください」
「うん危ないもんね」
「そうです……」
「でも抱き締める必要あるの?」
「それは……すぅー、私が近くに……すぅー、いなければいけないんです……すぅー」
めっちゃ吸ってる。
息を吐くことも忘れて吸っている。
「上着も脱いでください」
「え?服も脱がないといけないの?」
「その服は危険です。呼び寄せてしまうので」
「分かった……」
言われた通り服を脱ぐ。
カフェはそれをじぃーっと見ている。
「脱いだよ?」
「私が追い払うのでしばらく預かってもいいでしょうか?」
「いなくなるなら……」
カフェに着ていた上着を渡す。
受け取ったカフェは大事そうに抱え最後に一吸いしてカバンに閉まった。
「最後にトレーナーさん……」
「どうしたのカフェ、まだいるの?」
少し表情を曇らせたカフェ。
ゆっくりと首を縦に振った。
「トレーナーさんに取り憑いています」
「えぇ、俺に憑いてるの?」
「トレーナーさんの後ろで笑ってます」
振り向いてみるが生憎私は何も見えない。
カフェは私の顔の方を凝視しており、相当な霊が取り憑いていることが窺える。
「追い払うことは厳しいのか?」
あまりにも真剣な様子のカフェに思わず聞いてしまう。
「いえ、一つだけ方法があります」
「本当か!」
「はい」
覚悟を決めたようにこちらを真っ直ぐ見るカフェ。
「その方法って……?」
「私とのキスです」
「……」
「……」
「もう一回」
「私とのキスです」
「……」
「……」
「それで本当にいなくなるの?」
「はい」
「ほっぺ?」
「口ですが?」
「カフェはいいの?」
「もちろんです」
怒涛の質問ラッシュにも淡々と答えるカフェ。
今までのことは黙認できたがこれは流石にまずい。
「カフェ他の方法はないのか?流石にそれはまずいよ」
「ないです」
ぶった斬られた。
清々しいほどの否定。
「お願いします……」
「了解ですトレーナーさん」
私は首を縦に振ることしかできなかった。
「これで居なくなったと思いますが油断は禁物です」
心臓と理性が爆発寸前だったが、なんとか乗り越えた。
カフェの苦労もあってか一応追い払えたらしい。
「やっぱり物件なのかな。引っ越した方がいいの?」
「いえ、学園から近いのでこのままで大丈夫です」
「学園から近いと大丈夫なの?」
「はい、私が通い易いので」
「通うつもりなの?」
「そうですが?」
再び飛び交う?の嵐。
自分が正しいと曲げないカフェと正しいのか疑問に思う私。
結局何を言っても無駄なので折れるのは私なのだが……
「戻ってくる可能性があるので今日は私と一緒に寝ましょう」
「そうしようか」
私は考えるのを諦めた。
その後、靴下の片方が無くなったり、漫画の順番がバラバラになったりなど少し面倒くさい怪奇現象が増えた。