トレセン学園生徒会副会長ことエアグルーヴ。
母の姿を追いかけ自分を律し、トリプルティアラを取ることが出来た女帝。
美しく気高い彼女は全てのウマ娘の理想であり憧れだろう。
まあ私に対してはちょろいんだけど。
「おはようエアグルーヴ」
「遅いぞたわけ、今日は花壇の水やりがあると言っただろう」
太陽の日差しが眩しく思わず顔を顰める。
朝が弱い私にとって早起きは長年の課題であり、こうして彼女との約束も少し遅刻してしまうことが日常になっていた。
「起きる努力はした……」
「ならそれを実行に移せ」
「ごめんごめん」
口調こそ厳しいものだが表情は柔らかく本心からではないことが読み取れる。
数年の月日を重ねてきたエアグルーヴと私。
そんな中で気がついたことが沢山あった。
私の担当バ、エアグルーヴはまず本心を伝えることが苦手だ。
「エアグルーヴ朝ごはん食べた?」
「いや、これが終わった後カフェテリアに向かおうかと思っていたから食べていない」
「ならさ、これ終わった後一緒に食べに行かない?」
「ふん、なんで私が貴様と食べないといけないのだ?で、でもだな……貴様がどうしてもというのなら……」
「あーそうかそれは残念だ……俺はエアグルーヴと食べたかったんだけどな」
「なっ……わ、私も一緒に……」
「でもエアグルーヴは行きたくないみたいだし……」
「いく……」
「ん?」
「私も一緒に食べに行く……」
俯きながらそう言った彼女。
頬が朱色に染まっているのは羞恥から、はたまたこの暑苦しい太陽だからか私には分からなかった。
こういう時のエアグルーヴには素直に褒めて笑顔を見せると更にデレる。
「ありがとうエアグルーヴ、朝から幸せだよ」
「たわけが……」
さっき水やりしていたときより3歩ほどこちらに近づいてくるエアグルーヴ。
ここで揶揄い過ぎるとたわけ(物理)が飛んでくるので気をつけた方がいい。
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時は過ぎ……とはいっても朝の水やりから数時間後。
太陽がてっぺんから少しずれた昼下がり、心地よい冷房と昼食後の血糖値上昇による睡眠欲の増加……もとい眠気が襲ってくる。
トレーナー職は基本多忙であり、深夜遅くまで資料作成や予定の確認など沢山やるべき事がある。
生徒会副会長となるとそれは更に多くなり、彼女自身もそうだが私もそれなりに働かなければならない。
何が言いたいかというとすっげー眠い。
「失礼する……どうした瞳が落ちかかってるぞ」
「……やあ、エアグルーヴ」
反応が遅れた。
視線をパソコンから移すとやはり彼女は少し不機嫌だ。
「貴様、さては寝てないな」
「いや、最近は君に注意されてから気をつけるようにしている」
嘘だ。
こうでもしないと後々面倒くさくなる。
「いや嘘だな、何年一緒にいると思っている。そんなことすぐに分かるぞ」
「いや、本当だって」
問答無用とこちらに近づくエアグルーヴ。
そしてそのまま私の腕を掴み、ソファーへ連れて行かれた。
グイッと引っ張られ、種族差の圧倒的な力に対抗することすら叶わず横にソファーに寝かされる。
エアグルーヴの太ももを枕にして。
「あのさエアグルーヴ、これする必要ある?」
「貴様に倒れられたら私のトレーニングが出来ないだろう?」
私の担当バは甘やかしたいらしい。
カイチョーことシンボリルドルフがぽつりと私に紡いだことをよく覚えている。
「でもエアグルーヴに悪いよ、毎度毎度こんなことしてもらって」
「たわけ、貴様の健康が1番だ」
彼女の立派なたわわのせいで表情こそ見れないが多分優しいものなのだろう。
あ、後彼女はスタイルがとても良い。
本人には言ったことないけどね。
「エアグルーヴ手握って」
「なんでだ?」
「いいからいいから」
「仕方がないな」
そう言い私の手を取るエアグルーヴ。
私はそれを確認した後しっかりと指を絡める。
私より一回りほど小さい彼女の手。
雪のように白い肌と若者特有のもっちりとした……いや待って、私変態とかそんなんじゃないからね?
甘やかしモードのエアグルーヴは私のお願いを大抵聞いてくれる。
可能ならその立派なたわわを触らせて……変態だって?私だって男だもん。
「エアグルーヴ、頭撫でて欲しい」
「今日は随分と甘えん坊だな」
「最初に誘ってきたのは君でしょ?」
「……うるさいたわけ」
手を握っていない方の手で優しく頭を撫でてくれるエアグルーヴ。
日頃の疲れもあってか心地よい安心感を抱きながら私は夢の中へ旅立った。
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私の担当バは寝起きが可愛い。
どのくらい寝たのだろうか、時計を見ると既に門限1時間ほど前でかなりの時間を寝ていたことが理解できた。
撫でている途中で力尽きたのだろうか上からはすぅーすぅーと可愛らしい寝息が聞こえる。
ゆっくりと立ち上がり彼女のことを起こす。
もちろん手は繋いだままだ。
「エアグルーヴ起きて、そろそろ時間だよ」
「……んん、とれーなぁ?」
「トレーナーですよ、ほら起きて」
「もう少し……待ってくれ」
そう言い私の腰に抱きつき、そのまま顔を埋めるエアグルーヴ。
動画や写真に収めたいが、私が握っていた時より強めに手を握られているためカメラを取り出すことが不可能だ。
「ほら、いつまで寝ぼけてるの?」
「んんぅ……ん?トレーナー?」
「おはよう、エアグルーヴ。随分と甘えん坊だね」
「ち、違う!こ、これは……そうだ!服のシワを伸ばしていたんだ!」
「そうかいそうかい」
「やめろ!頭を撫でるなたわけ!」
私の担当バはちょろい。
私がふと漏らしてしまう本音に過剰に反応してしまう。
「いつもありがとう、助かってるよ」
「……それは私もだ」
「え?俺のことが好き?」
「そんなことは言っていない!たわけが!」
「じゃあ俺のこと嫌い?」
「そ、それは……そのまた違う……」
「違うの?大嫌いとか?」
「……だ」
「ん?」
「大好きだ……」
再び私の身体に顔を埋めるエアグルーヴ。
顔に熱が集まるのを感じる。
彼女に顔を見られなくて良かった、こんな君には見せられない。
エアグルーヴのトレーナーもちょろい。
こんなにも彼女のことが好きなのだから。