「むむむ……」
ごろごろーごろごろーと私はベットの上で転がる。
「むむむむむ……」
ベッドのシーツがヨレることも気にせず無心でごろごろとベッドに転がる。
こんなに騒がしくして大丈夫かと思うが同室であるルームメイトはトレーニング終わりで疲れているのか可愛らしい寝顔を見せていた。
「何故なのでしょう?」
廊下ですれ違ったウマ娘さんたちがお話ししていた内容。
"ウマ娘とトレーナーの恋愛は結ばれない"
笑いながら話していたその内容が私にとっては深く刺さった。
だって私、サトノダイヤモンドはトレーナーさんのことが大好きだったから。
「むむむ……」
枕に顔を埋めながら足をバタバタとベッドに打ちつける。
納得のいかない事柄。
誰に似たのか好奇心を止めれず、納得のいかないものに対してはとことん突き詰めるタイプの私。
「わからないです……」
年齢差か、或いは単純にトレーナーたちにとってウマ娘は"生徒"であり恋愛感情を向けるものではないのだろうか?
「ジンクスです……」
私は心の中で固く決心した。
「これはジンクスです!!」
「うわわ!ダイヤちゃん!?」
絶対にトレーナーさんに振り向いて貰う、一人の女性として惚れてもらうと。
私は勢いよく布団を被り、就寝した。
「ねぇダイヤちゃん?大きな声出してどうしたの?ねぇダイヤちゃんってば〜」
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「それでサトノさんは私のところに?」
「はい!マックイーンさんならどうすればいいか知ってると思いまして!」
翌朝、カフェテリアで食事をしているマックイーンさんを見つけ、最近気になっていたお話のことを話した。
「ところでなんですが、何故それを私に聞きにきたのですか?」
「マックイーンさんとてもトレーナーさんと仲が良さそうに見えるので……何か秘訣があるのではないかと思いお聞きしました」
一心同体。
その文字を体現したような関係のマックイーンさんとトレーナーさん。
今では学園内でもトップに位置するステイヤーの彼女だが、恋愛面においてもトップに位置するとか。
「え、それは初耳なのですが?」
「そうなんですか?結構噂になってますよ、付き合っているって」
「付き合ってなんかいませんわ、私とトレーナーさんはそんな甘い関係ではありません」
「ミーティングの時にゼロ距離なのにですか?」
「……」
「休日にトレーナーさんの家に通っているのにですか?」
「……」
「他にも……」
「ええ、付き合ってますよ」
「本当ですか!」
マックイーンさんがトレーナーさんと付き合っていたなんて意外だった。
なら、マックイーンさんにどうすればいいのか聞くのが一番だろう。
「自分の魅力を知って貰うんですよサトノさん。まあ私はトレーナーさんの魅力を逆に知ってしまったっていうのがオチなんですけどね」
「なるほど……自分の魅力を知ってもらう……」
自分の魅力……
それを知ってもらう、理解してもらう。
いや、受け身だとこのジンクスは破れない。
「わからせるんですね!」
「さ、サトノさん!?」
「あれ?でもマックイーンさんの場合はわからされた?」
食堂がざわつく。
目の前にいるマックイーンさんも顔を抑えてプルプルと震えている。
「マックイーンさん?」
「サトノさん……頑張ってください……」
「はい!絶対にわからせてきます!」
新たな決意を胸に私は食堂を後にしました。
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「トレーナーさん!」
廊下でたまたま後ろ姿を見つけ私は走り出す。
「ダイヤ……おっと」
駆け寄るスピードを抑えないままトレーナーさんに突撃する様に抱きしめる。
昨日の悶々とした考えやマックイーンさんのお話を聞いてから今はただただトレーナーさんに会いたかった。
「こんにちは、トレーナーさん」
「こんにちはダイヤ、とりあえず離れて貰えると助かるな」
「嫌です」
トレーナーさんの腕を抱き、廊下を一緒に歩く。
自分の魅力を知ってもらう為にも距離は近い方がいい。
ふとトレーナーさんの顔を見ると何やら難しい表情をしていて、動きも少しぎこちない。
「どうしましたトレーナーさん?」
「いやさ……どうしても離れない?」
「はい!どうしてもです」
逃がさないように手を繋ぐ。
男の人のゴツゴツとした指、それを一つ一つ自身のものと絡める。
こうして腕を組み、しっかりと手を握りながら歩く。
その姿は側から見たらまるで。
「えへへ、恋人みたいですね」
「だ、ダイヤ?」
「さあトレーナーさん、教室に行きましょう」
先ほどより軽い足取り。
トレーナーさんに会っただけで気分が浮かれてしまう自分の単純さに驚くが今はこの幸せな時間を噛み締めたい。
そんな想いを胸に秘めながら少しトレーナーさんを引っ張る形でトレーナー室に向かった。
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「ほらダイヤ離して」
「分かりました……」
名残惜しさを感じながらもトレーナーさんの腕を離す。
室内では腕を組む理由も手を繋ぐ理由もない。
「俺は少しやらなきゃいけない作業があるからちょっと待っててね」
「はい」
私がせっかく居るにも関わらず仕事を始めるトレーナーさん。
……面白くない。
コソコソとトレーナーさんに気付かれないよう近づく。
集中しているのかパソコンから画面を離さず私の行動に気づく気配もない。
「えい!」
私はそんな掛け声と共に後ろからトレーナーさんを抱きしめた。
「うわ……びっくりした」
「えへへ、ダイヤですよ」
「そうだな」
一瞬だけこちらを振り向き確認するもそのまま作業を開始したトレーナーさん。
どうしても私に構って欲しい、私の話を聞いて欲しい。
そんなことを考え、私はどうしたらトレーナーさんがこちらに集中してくれるか考えていた。
「むむむ……」
わざとらしく頬を膨らませてみるも反応なし。
私から抱きしめられ、尚且つ耳元で唸られているのに無視。
「むむむむむ……」
ふと視界に入ったトレーナーさんの耳。
ウマ娘にとって耳というのは大事な器官であり、とても敏感な場所。
なら人間であるトレーナーさんも一緒かもしれない。
「はむっ」
「ひやぁぁああ」
乙女のような悲鳴を上げるトレーナーさん。
こちらに椅子を向け、困惑と羞恥の顔で私を見るがそれを無視してトレーナーさんの膝の上に乗る。
その姿はコアラの赤ちゃんが母親にしがみ付くようなものであり、私は離されないよう首元に腕を回し力いっぱい抱きしめる。
……とはいっても本気でやればトレーナーさんが潰れてしまう為加減はしている。
「さっきからどうしたの、ダイヤ?」
「トレーナーさんが構ってくれるまで離しません」
私のこの発言は本気だ。
例えトレーナーさんが仕事を始めようとも離さないし、立ち上がろうとも意地でも離さない。
「分かった、ダイヤの話を聞くよ」
「本当ですか……?」
「本当本当、ほらパソコンも閉じた」
トレーナーさんの行動を確認し終えた後、正面を向く。
わずか30センチほどの短い距離。
そんな状態のまま私は話を始めた。
「トレーナーさんはダイヤのことどう思ってますか?」
「そりゃ自慢のウマ娘だよ」
「それだけですか?」
「真っ直ぐひたむきで負けず嫌い。自分の納得のいかないことがらには特に一直線なお嬢様かな」
「違います!」
「えぇ?」
「じゃあ質問を変えます。私を彼女にすることができますか?」
「だ、ダイヤ?」
抱きしめていた腕に力を込め、近かった距離を更に近くする。
先ほどと同じようにすぐ近くにトレーナーさんの耳があるわけで。
「私はトレーナーさんが好きですよ」
ぼそっと耳元でそう囁く。
「トレーナーさんが振り向いてくれないのなら振り向くまでアピールします、こんな風に」
匂いを擦り付けるようにトレーナーさんの顔を胸元に沈める。
抵抗しようとするも種族差での力を使い抑え込む。
トレーナーさんの爆発しそうなくらい五月蝿い心音が私の身体を通してはっきりと聞こえる。
恥ずかしさで真っ赤になっている顔も、離れようと必死になっているその姿も全てが愛おしい。
背中をトントンと叩かれ慌ててトレーナーさんを離す。
「だ、ダイヤ……」
「私の魅力、まだ知って貰いますよ」
呼吸が出来たことを確認し、再びハグしようとする。
「分かってるよ!ダイヤは十分魅力的だ!」
「トレーナーさん……?」
ハグをしようと思ったがその手を止める。
「俺には魅力的過ぎるんだ……勘弁してくれ」
真っ赤になりながら顔を抑えるトレーナーさん。
自然と笑みが浮かぶ。
「トレーナーさんはずっと私のことが好きだったんですか?」
「そ、そういう意味じゃ……」
「でもとても魅力的なんですよね」
「はい……」
「今こうして抱きしめられているのも?」
「そうです……だから降りてくれると助かる」
「嫌ですっ!ダイヤのことを好きになってくれるまで離しませんから」
「え、あ、ダイヤ……ちょ、あぁ、待って……」
その後私の魅力をたっぷりわからせて無事、私は付き合うことができた。