ウマ娘短編集   作:こーさん

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更新が遅れて申し訳ないです。
新シリーズ始めたのでプロフィールから飛んで頂けると嬉しいです


賞賛的サクラチヨノオーがトレーナーを染め上げる話

 

地を焼き尽くすような暑さが続く今日この頃。

蝉時雨が何処か遠いものだったと感じさせるような静けさがあるものの、身体を蝕む熱はそうはさせない。

 

廊下ですれ違うウマ娘たちは各々綺麗な髪を揺らしで歩いているが、鬱陶しく感じないのだろうか?

自身の短い髪の毛を触りながら私はそう思う。

 

通い慣れた道を行き、早く着かないかと歩みを速める。

いつもと同じはずなのに何故こんなにも心躍る行為なのかが不思議に感じた。

 

揺れる尻尾と耳を抑え込み、最後に髪が崩れてないかを確認する。

意を決して入室すると、見慣れた光景と身体を包み込む冷気。

 

「こんにちは、トレーナーさん」

 

「こんにちは、チヨノオー」

 

中心に座っていたのは私の大好きなトレーナーさんだった。

 

「トレーナーさん、また無理してませんか?」

 

「まあ……少しだけ」

 

机の上に散乱している栄養剤。

やつれた顔と目の下にある濃い隈がトレーナーさんの体調を語っていた。

 

「いくら忙しいからってそんな……」

 

「君のためにどうしてもやりたかったんだ」

 

「私のため……」

 

トレーナーさんが言った言葉を頭の中で繰り返しながら彼に近づく。

くしゃっと笑うトレーナーさん。

 

「自分のためですよね、トレーナーさん」

 

「チヨノオー?」

 

「トレーナーさんは私に褒めて欲しいから、また無理をしたんですよね」

 

そう言い私は腕を広げる。

無理をしたトレーナーさんを労わるように、大きく笑顔で彼を誘う。

 

席を立ち上がり、ふらふらとした足取りでこちらに近づくトレーナーさん。

そこが帰る場所であったかのようにゆっくりと私の身体を抱きしめる。

 

「お疲れ様です、トレーナーさん」

 

「ありがとうチヨノオー」

 

「でも無理のしすぎはダメですよ。身体が壊れたらどうするんですか?」

 

「でも頑張らないとチヨノオーに褒めてもらえないから」

 

「ええ、ご褒美は頑張った人にしか貰えないからご褒美なんです」

 

トレーナーさんの頭を優しく撫でながら耳元で囁く。

お風呂にも入れてないのか彼の匂いが普段より濃い。

 

「ところでトレーナーさん、今日もまた他のウマ娘に逆スカウトを受けたった本当ですか?」

 

「チヨノオー……なんでそれを?」

 

「えへへ、私トレーナーさんのことなら何でも分かりますから」

 

頭を撫でるのをやめずに私は聞く。

一瞬身体が強張ったのを感じたが、私が怒っていないと判断し安心しきっているトレーナーさん。

 

「でも、そんな悪い子にはご褒美はあげられませんね」

 

トレーナーさんに回していた腕を外し、彼から離れる。

 

「チヨノオー……?」

 

驚いた表情でこちらを見るトレーナーさん。

その表情はどこか泣きそうな感じで。

 

可愛い。

 

「トレーナーさんは私のトレーナーさんですよね?」

 

「そ、そうだが」

 

「なら私以外のウマ娘と話す必要はないですよね」

 

「……」

 

「そうですよね?」

 

「うん……」

 

可愛い。

 

「そんな顔しないでくださいよ、トレーナーさん」

 

「チヨノオー……」

 

トレーナーさんに飛び込み、さっきと同じように抱きしめる。

 

「冗談ですよ、びっくりしましたか?」

 

「ああ、心臓に悪い」

 

安心しきったように私より身体に手を回すトレーナーさん。

でも私はまだやめない。

 

「でも私以外のウマ娘と話すのはやっぱり嫌です。だって私のトレーナーさんなのに」

 

「チヨノオー」

 

「だから私が"おまじない"かけてもいいですか?」

 

「おまじない?」

 

「はい!トレーナーさんが、他のウマ娘から狙われなくなるおまじない」

 

不思議な顔をするも首を縦に振り、肯定の意思を見せるトレーナーさん。

それを見て私はトレーナーさんの首元に噛み付いた。

 

「チヨノオー!?」

 

かぷり、と果物を食べるように。

何度も何度も彼の首元を啄む。

 

空いている方の手で首元を優しくなぞれば、トレーナーさんの身体が小さく跳ねて。

そんな反応を見ながら更に深く私は噛み付く。

 

「チヨノオー……」

 

苦しそうに喘ぐトレーナーさん。

ぎゅっと私の身体をキツく抱く彼、立つことも難しくなってきたのか体重をかけたきたのを私が支える。

 

しばらく経ち、口を離すと粘着性のある水音と首元に現れた真っ赤な跡が目に入る。

それは私がつけた私だけの所有印でありおまじない。

 

潤んだ目で私を見つめるトレーナーさん。

その表情は困惑か、歓喜か。

感じたのは痛みか、快感か。

 

「頑張りましたねトレーナーさん」

 

「チヨノオー……」

 

「痛かったですか?ごめんなさい、でもこうしないと跡は付かないので」

 

「チヨノオーが折角付けてくれたんだ、大丈夫だよ」

 

そう言いトレーナーさんは笑った。

 

その目は何処か暗くて。

出会った頃のあの元気なトレーナーさんの姿は私の中では既に虚像だ。

 

「これでもう他のウマ娘たちから近づかないんだよね?」

 

「はい!大丈夫ですよ」

 

「そうか、良かった」

 

また私は耳元で囁く。

私がやっていることは正しいと、私の言うことを聞かないのは間違ってると伝える。

心も身体も自分色に染め上げ、目に映らせるのは私だけ。

 

いつか私に堕ちるように。

 

「頑張りましたね、トレーナーさん」

 

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