「よく出来てるな」
担当バがミニサイズとなったぬいぐるみことぱかプチを触りながら私はそう呟く。
URAが中心となって作っているこのぱかプチはファンのためのグッズであり、ハイクオリティかつゲームセンターなどで簡単に手に入れられることから人気の商品。
そのぱかプチに私の担当バ、エイシンフラッシュが商品に抜擢されその見本品が企業から私に送られてきたのだ。
「白か……」
裏を向けて確認する。
何を確認したかは言わない、ええ絶対に。
「こんにちはトレーナーさん。それは……私のぱかプチですか?」
「お、いいところにきたねフラッシュ。そうだよ、君のぱかプチだよ」
「ふむ……白ですか。あまり好んで履くことはないんですが」
「ふ、フラッシュ?」
「いえ、少し気になった点があったので」
「そ、そうか……」
「なんですかトレーナーさん、私が嘘をついているとでも思っているんですか?」
私の態度が気に入らなかったのか頬を膨らませ不満をアピールするフラッシュ。
「なら確認しますか?私が今日何色を穿いているのか……」
「ふ、フラッシュ?」
スカートの裾を掴み、たくしあげようとするフラッシュ。
「や、やめてフラッシュ!」
「冗談ですよトレーナーさん。えっち……」
「それは酷くないか!?」
そんなやり取りをしながら詳細を彼女に説明する。
彼女が許可を出してくれるなら企業の方に私が連絡してめでたく商品化という話だ。
「ねぇ……やっぱりこれを改善点に上げるの?」
「ええ、納得いきません」
「俺の字で書くから俺が不満に思っているみたいじゃん」
ぐちぐち言いながらも"パンツの色は白以外がいい"と記載する。
「だって私、白なんて履きませんから」
「知らないけどさあ」
「あら、でしたら確認しますか?」
「フラッシュ!!」
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「あれ、まだあったんだぱかプチ」
昨日フラッシュと話し合っていた例のぱかプチ。
しかしその姿はどこか変で。
「大きくなってる……?」
成人男性の手のひらくらいの大きさだったものが今や椅子に鎮座しているくらいに大きくなっている。
試しにそれを抱き抱え椅子に座る。
「おお、これはなかなか……」
抱きしめるように膝に置くと、ぱかプチの頭がちょうど私の顎下くらいにありサラサラと気持ちのいい生地が私の顔を撫でる。
サイズ感もぴったりで、少し小さいが抱き枕にも出来なくはない感じだった。
「黒か……」
昨日念入りに彼女に注意されたので少し気になってよく見てみるとそこには真っ黒な闇があった。
そうか……黒なのか……
「フラッシュは友達と買い物って言ってたよな」
一応トレーナー室の鍵を閉めて仮眠室へ移動する。
「これは……確かにいいな」
ギュっと抱きしめると確かにある質量感。
人間は何かを抱くと落ち着くと言われているが本当だったらしい。
連日の疲れがあってか私はぐっすり眠ることが出来た。
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「いや、これはおかしいだろ」
その次の日、私はいつも通りトレーナー室に入室するとそこにあった奇妙な光景に思わずツッコんでしまった。
ぱかプチである。
企業の方からは試作品は自由に持って帰ってきていいと聞いていたので嬉々としながら家にそれを持って帰った筈なのだが何故かトレーナー室にいた。
「デカすぎるだろ」
そう、フラッシュのぱかプチがいるのだ。
しかもそのサイズは160センチほどで、いつもみたいな人形特有グデッとしている可愛らしい座り方ではなくしっかりと立っている。
そう、自立しているのだ。
「それにしても……よく出来てるな……」
見た目、サイズ共にほぼほぼエイシンフラッシュそのもの。
違う点といったら本人みたいな整った体型ではなく、着ぐるみみたいな丸っこいスタイルの部分だろう。
「とりあえず……端に寄せるか」
部屋の中心に居られても困るので移動させようとする。
「お、重たいなっ……これ」
中に鉄でも入っているのではないかというくらいの重量のそれ。
しかし、運ぼうとした時に私は気がついてしまった。
「抱き心地が良すぎる……」
人形はデカければデカいほどいい。
これは昨日証明されたことであって、人一人分くらいのサイズのぱかプチはそれはそれは素晴らしいものだった。
「落ち着く……」
少し力強く抱きしめる。
「んんっ……」
「ん?」
ぱかプチから一旦離れる。
そしてもう一回強く抱きしめる。
「んんんっ……」
「んんんん???」
やけに聞き慣れた声。
ぱかプチの中からする少しくぐもった女性の声に私は嫌な予感がした。
「フラッシュ?」
「……」
反応はない。
試しにフラッシュのぱかプチの胸の部分を人差し指で突き刺す。
「んあっ……」
「出てこいフラッシュ、もう隠し通せないぞ」
やはり中からくぐもった女性の声。
ついでにいうとめちゃくちゃ柔らかかった、何がとは言わないが。
「バレたなら仕方がありませんね」
「ひぃ……」
ビリっと肩付近から急に生えてきた腕。
そしてそのままその腕がぱかプチの頭をもぎ取った。
「ひぇ……」
「こんにちは、トレーナーさん」
無惨に転がっているぱかプチフラッシュの頭を気にせずフラッシュは話し始める。
脱皮の如く脱いでいく彼女の姿に私はただただ恐怖しか抱けなかった。
「ふ、フラッシュこれは?」
「トレーナーさんは人形を抱いて寝るのが好きなんですよね?」
「ど、どういうこと?」
「昨日、トレーナーさんが仮眠室で幸せそうに私のぱかプチを抱いて寝ていたので」
「見てたの!?」
でもフラッシュは友達と遊びに行った筈で……
「……担当バならトレーナーさんの行動くらい簡単に分かります」
「本当は?」
「合鍵使って入りました」
ペシっと自分の頭を叩く。
こんなことをする娘じゃなかったはずなのに。
というか合鍵は渡していない。
「ではトレーナーさん、ベッドに行きましょう?」
「え、なんでよ」
「17時36分、いつものお昼寝の時間より6分ほどオーバーしています。早く仮眠室に行きましょう?」
「まさかだけどフラッシュも寝るの?」
「はい、トレーナーさんに抱かれるためにですが」
「待て待て待て」
間違ってはいないが間違っている。
彼女とは断じてそんな関係じゃないし、そんなことをしたこともない。
「そもそも門限の時間とかあるでしょう?」
「いえ、既に遅れると連絡しています。トレーナーさんに抱かれるので、と」
再び自分の頭を叩く私。
明日大騒ぎになることが目に浮かぶ。
「寝ないんですか、トレーナーさん?」
「いや、ダメだよフラッシュこんなことしたら」
「柔らかいですよ?」
胸を強調して私に問いかけるフラッシュ。
こてんと首を傾げるその姿はとても可愛くて。
「寝ようか」
「はいっ!」
今日一番の笑顔を浮かべた彼女の手を引き私は仮眠室へ向かった。