「す、すまない……」
「大丈夫だ、エアグルーヴは怪我とかしてない?」
「ああ、トレーナーが押さえてくれたお陰でなんとかな」
トレーニングに向かう途中階段から足を踏み外してしまったエアグルーヴ。
慌てて助けようとした私は正面から抱きしめるように彼女を押さえた。
「その……本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だと言っている、たわけが」
恥ずかしくなって話題を逸らすも失敗。
逆に彼女を怒らせてしまった……。
だけどなんていうかその……凄い柔らかかったとだけ記述しておこう。
その後は何の不調もなくトレーニングを続けられた私たち。
エアグルーヴがどこかソワソワしている様子だったのだけが気掛かりだった。
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「変わらないと思うけどなあ……」
「み、見ただけで貴様は体重の変化がわかるというのか?」
「かといって持ち上げて分かるようなものでもないぞ?」
次の日トレーナー室にて。
エアグルーヴからの相談事ということで体重の変化があるかどうか調べて欲しいとのこと。
……私が彼女を持ち上げて。
「その……体重計とかあるんじゃないの?」
「ああ、それなら先日オグリキャップが破壊した。彼女は今、文字通り必死のダイエットを行っているそうだ」
オグリぃぃぃ……。
私は心の中で毒を吐く。
これで私がエアグルーヴを持ち上げなくていいという理由はなくなったわけで実質詰み。
腕を広げて「んっ」と待っている姿はそれはそれで可愛らしいのだが。
「後ろからじゃなくて正面からなの?」
「ああ、後ろからじゃダメだ……」
「何か理由でもあるの?」
「……正確な体重が測れないからな」
「そ、そうなの?」
「ああ、近頃発表された論文にそう書かれていた」
勉強熱心な彼女のことだ、そういうのならそうだろう。
実際彼女のトレーニング技術はそこらの新入りトレーナーと変わらないレベルまであり、時々私が助言としてもらうことも多々あるほど。
「じゃあ体重を量るね?」
「ああ」
広げられた腕の下に私の腕を通して持ち上げようとする。
だが生憎筋肉がない私にはその形だと持ち上げられない。
しかたがなしに彼女の方に近づき、自分の腕の付け根を支点に梃子の原理で持ち上げる。
持ち上げられたエアグルーヴは重力に従って私の方に来るわけだから。
むぎゅゅゅゅぅぅう
そんな擬音が聞こえてきそうなほど私の胸で形を変える彼女の双丘。
予想はしていたがこれの破壊力はなかなかにまずい。
「どうだ?」
「か、かるいとオモイマス。もうちょっと食べてもいいとオモウヨ」
「何故そんなに片言なのだ?」
「なんでもない!ほら減量はしなくていいと思うよ」
「そうか……」
「だから俺から離れてくれてもいいんだぞ?」
「待て……今は……その恥ずかしいからな……トレーナーに体重がどれくらいか知られて」
「持ち上げただけでは分からないんだよな……計量器じゃないんだし」
降ろしたはいいものの私の胸に顔を埋め深く深呼吸をしているエアグルーヴ。
会話の途切れ途切れにむすーっと聞こえるのは……気のせいだろうか?
真相はわからないが頭をぐりぐりと擦りつけているような気もする。
その後30分経ってようやくエアグルーヴから解放された。
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「明日のトレーニングだが坂路をメインにやりたい」
「次の日レースはパワーが重要だもんな」
「ああ、やはり後方から抜き去るにはもう少し力強さが欲しい。だから頼んだぞトレーナー」
「了解した。して、エアグルーヴ……」
「どうしたトレーナー?」
「近くないか?」
「気のせいだろう」
ソファーに腰掛けている私を後ろから抱きしめるようにしているエアグルーヴ。
すぐ横を見れば彼女の顔があるわけで、ちょっとでもその距離を縮めたらその頬に口付けができるのだろう。
それくらい……近い。
「資料見るなら渡すから対面か最悪隣に来てくれればいいのに」
「いや、トレーナーと同じ視座で見ると決めたからな」
「決めたけれども物理的な訳じゃないと思うよその言葉も」
最初の頃はとてもつんけんしていた彼女がここまで自分に信頼を寄せてくれるのはとても嬉しい。
だが彼女には自身に魅力があるということに気がついて欲しい。
頭に感じる頭のたわわ。
たわわがたわけていてたわわわするわけだから必然的にたわけはたわわによってたわわわわわわになるわけだ。
……おっぱい星人?
なんとでも言え、私は男だ。
しかしこのままの状況が良くないのは分かる。
生徒会副会長である彼女がこうも私にベタベタくっつくのは絵面的にもあまりよろしくない。後私の心の負担にも。
「どうしたんだエアグルーヴ?最近おかしいぞ」
「何を言っているたわけ、私は至って普通だ」
たわけはお前の方だ、みたいなことは言えなくて。
怖いとかじゃない。決して尻に引かれているとかそんなのではないことを固く誓おう。
「その……以前のエアグルーヴならこんなことしないからさ」
「……」
「何かあれば聞くから教えて欲しい」
「……笑わないか?」
「ん?ああ、大丈夫だ」
「分かった。その……だな」
手をツンツンと前に合わせ恥ずかしそうな態度をとるエアグルーヴ。
その姿は休日に家に押しかけては掃除に狂っているあのエアグルーヴにはそうそう見えない。
「貴様とのハグが忘れなくてな」
「俺とのハグ?」
記憶が正しければ彼女とハグをしたことはないはず。
彼女からそれっぽいことをされた記憶はあるにあるが。
「階段から落ちそうな時私を助けてくれただろう?」
「あぁ……」
ありましたねそんなイベント。
あの時もむぎゅぅぅうって形を変える胸に役得だと思ったが裏でそんな事が起きていただなんて。
「だから貴様とのハグで形成されるたわけニウムが必要なのだ」
「た、たわけニウム?」
「ああ、これがないと私はどうなるか分かったものではない」
「な、なるほど……」
か、彼女がそういうのならそういうことなのだろう。
だって彼女の知識はそこらの新人……あれこれ前も言ったっけ?
「だからこれからは貴様から私にハグをして欲しくてな」
「マジ?」
「マジだ」
説得どころか習慣化してしまった。
まあでも……私もおっぱい星人だし……まあ。
「分かったこれからそうすr……」
私が言う前に正面から抱きしめてくるエアグルーヴ。
たわけニウムの欠如により禁断症状が出ていたのだろう。
私の身体でぐにゅんぐにゅんと形を変えるおっぱいを尻目に私はそう思ったのだった。