様々な試練を乗り越えて、ようやく落ち着いてきたので投稿再開します。
4月20日(金)
『八幡よ、朕は最上の頂にてお主を待つことにしよう。あ、あと撮れ高の事はちゃんと気にしながら来るのだぞ!』
遂に訪れたXデー。
改めて奉仕部に分厚い紙束を持ってきた材木座を迎えて受け取った瞬間、まるでリバイバルするかのような流れでザイモクザパレスに巻き込まれる。
違いは奉仕部の面々が全員準備を整えていたことだけだ。
前回までは結衣のフロアだった学校エリア以外には立ち入りが出来ないよう、上階につながる階段は木造の門で閉ざされていたがそれも開かれていた。
一歩進めると、光景は様変わりして広間に鎧が飾られていたり、槍や刀がポンと置かれているし、室内なのに吊り橋が渡され、足をかけるとくるんと回りそうなローラーが設置され…?
あれれぇ? どこかで見た気がするなぁ…具体的にはテレビで肉体派が制限時間内でアクションをこなしながら突破するNARUTOとかサスケェみたいなあれ。
そんな戸惑いで足を止めていると、どこかからイラッとする笑い声と共に宣戦布告をしてくる。
『よくぞ来たな! ここは我の城! 風雲義輝城!! 室町を守護する我の元にまでたどり着けるのなら来るがよい!』
「そもそも、来たくて来たわけでもないし、室町に天守閣とか存在しねえよ。戦国時代からだ」
『あぁあぁ! 毒者様とか亜土培座とかそんなのはお呼びじゃないので、ででーん、八幡罰ゲーム!』
「は? うおぉおおおお!!!」
「ひ、ヒッキー?!!!」
材木座が罰ゲームを宣言すると、八幡の足元にぽっかりと穴が開き、物理法則そのままに落ちていった。
「大丈夫?!」
「ヒッキー聞こえる!? あ、あたしたちも一緒に落ちるべきかな?!!!」
「二次被害になるから止めてくれ! ハチマン返事をしろ!」
さしもの雪乃も急展開に素直な心配の声をあげ、結衣は錯乱して穴に近寄ろうとしてモルガナに止められる。
「いや、大丈夫だ! 水が張ってあったから怪我とかはしてない!」
穴の奥から八幡の声が聞こえてくる。
どうやら、落とし穴の中に池のようなものがあって、そこに落とされただけらしい。
「槍衾とかされてたら、流石に即死だっただろうな」
『え、人殺しとかやっちゃだめでしょ。…じゃなくて、我は不殺の誓いを立てし慈愛の剣士なり! もっはっはっはっは!! アフターサービスもばっちりよ!』
心の闇を暴走させられていても、根っこが小心者だからなのか命にかかわる罠はないらしい。
気付けば元の位置にまでテレポートのように戻された八幡がぐっしょり濡れた顔を手で拭っている。
しかし、結衣のフロアでもそうであったが、シャドウは例外なくこちらを襲って来るのだから油断は……
「くそ、制服までこんなに濡れてたら小町に殺される…あっ、タオルすまん」
「ひ、ひっきー、それ」
「arrrrrr(いえいえ位のニュアンス)」
「ん??????」
差し出されたタオルを受け取り、髪の毛を拭おうとしたがその差し出してきた相手はどう見ても人間ではなく、2足歩行をする杖を背負った豚であった。
「…う、うぉおおお! しゃ、シャドウじゃねえか!!」
ずざあああ! と音が出る程に横っ飛びして距離を取る。
慌てて、ホームセンターで購入した護身用警棒を構える八幡。
他の面々も遅れて戦闘態勢に入る。
だが、二足歩行の豚は「あらあらまあまあ」みたいな顔をして動こうとしなかった。
「え? へ? なにこれ?」
経験上、と言っても結衣のフロアだけでしかないのだが、シャドウは人間を見かけると必ず攻撃性を露にして襲ってきた。
見た目が小さく可愛らしいピクシーであっても、好々爺じみたドワーフであっても例外ではない。
だが、この豚のシャドウは何故か無防備な彼らに襲い掛かる事がなかった。
『あっ、そうだ。この中に居る妖たちはお主等から攻撃しない限りは敵対しないようになっておる。
折角、風雲た○し城をリアルに作れたのだし、我の元に来るまで、汝らが盛大にハプニングしてくれるのを我は見守っておるぞ! 撮れ高しくよろ!』
辺り一帯に材木座が告げた声が響く。
「なんだし、その変な安全設計」
「気を遣う所が致命的にずれているわね」
「こんなおかしなパレスは初めてだぜ」
呆けた声を出してしまうのもむべなるかな。
しかし、文句を言っても何もならない。
開幕から精神的に疲労感を覚えながら、改めて攻略に進む。
ただし、それからの道のりは簡単なものではなかった。
「動く歩道の途中にローラー仕込んでやがる! 落ちるぅ!!」
「ワガハイはハムスターじゃねえぞ!」
絶妙な隙間の空いたローラー群が設置されていたり
「バランス感覚が試される道のようね。いいわ、私が先に…きゃぁ!!!」
「ゆきのんが横から飛んできた小っちゃいシャドウに吹っ飛ばされたぁ!!」
不安定な橋が架けられた断崖を渡ろうとすれば丸っこいシャドウ(スダマ)に突き落とされたり
「フロアボスだ! って、戦闘にならないなら、別にいっか………
って、なんで追いかけられるのぉ!! 急に風が! 流されるぅ!」
「おいこら待て、こっちくんじゃねえよ、何掴んで、あっちょっと待って困りますお客様、困り、おきゃくさまぁあああああああ!!」
FOE(コッパテング)と目が合った瞬間、持っていた扇で煽られて突風で吹き飛ばされ(るのを身代わりにし)たり…
ありとあらゆる場面で、階下の池へと落としにかかる。
なお、たまにクリームで満たされた池もあり、その周辺だけは八幡とモルガナは完全に無視されて、女子を執拗にシャドウたちが狙う。
苦みを感じる粘っこいクリームらしい(結衣の身代わりに落とされた八幡談)
だが、そんなフラストレーションの溜まる空間に、誰よりも先に雪乃がキレた。
うへへへ、と下種な笑みを浮かべて追いかけてくるシャドウを『ザン』で真っ二つにしたのだ。
「そう、最初からこうすればよかったのよ。あちらが敵対しない、初撃をくらうまで攻撃を加えないと言うのなら、初手は必ず先制できると言う事。だったら、全てを見敵必殺すれば煩わしいトラップにだけ気を付ければいい。そうでしょう」
疑わしきは、いや変態は死ねと言わんばかりの平坦さに殺気を持った口調である。
ゆらり、と心の闇を纏ってもいないのに、黒い威圧感を放つ雪乃。
「そうだよ。ゆきのん頭いいね。ていうか、下心が透けて見えてほんとキモイ。無理、キモイ」
それに気圧されるでもなく、激情にかられる結衣が同意する。
「えと、あぁ、まあ、じゃあ、俺は前みたいに索敵に回るわ」
「わ、ワガハイは回復役に努めよう」
少々の役得(濡れた女子)で目の保養をしてしまった八幡には拒絶できる強い意志はなかった。
というか普通に怖い、本当に怖い。モルガナも尻尾クルンてなる。
だが、仕掛けを作動させるために隠れているだけで、シャドウは結衣の時と比べ物にならない程多い。
連戦となることも多く、回復役が居なければ、事前に準備したアイテム類がなければ、早々に方針を転換するしかなかっただろう。
「ようやく、最上階まで来れたわね」
「もう、本当に最悪。早く帰ってお風呂入ってご飯食べたい!」
「じゃあ、開けるぞ」
そう言って、天守閣の一番奥に続く襖を一息に開けた。
『つまらーーーーん、お主等エンターテイメントに向いてなさすぎ! 視聴者のこと考えてくんないとさぁ』
八幡たちが戦意マシマシで天守閣の最奥にまでたどり着いて出された第一声がこれである。
露骨にため息をつきながら、ふかふかの座布団に身を埋めたままの黒材木座が三人に愚痴を吐く。
『我、別にバトル物が見たかったわけじゃないんですけどぉ…
女の子がキャーキャー言ってれば、それだけでバカな視聴者(読者)なんてどうとでもなるんだからさぁ。
その辺、理解できてないっていうか。まぁ素人だから仕方ないっちゃ仕方ないよなぁ』
襖の奥の部屋には畳張りでごく普通の和室が広がっていた…ただし、金ぴかと言う悪趣味な配色を抜きにすれば。
眼に悪すぎる一室にめまいすら覚える三人に追撃として自分勝手な意見を垂れ流す。
なお、モルガナだけはなんだか懐かしいなとか思ってる。
記憶の片隅にあった芸術家のパレスが脳裏によぎっているのかもしれない。
『こう、需要が分かってないんだよね。そんな体たらくで本当に我の作品をちゃんと評価できるわけ?』
いくら悪神の欠片のせいで暴走しているからと言って、元々の目的は忘れられている訳ではない。
おそらく、ザイモクザがこのようなアトラクションみたいなパレスの最奥で待っていたのも。
自分の努力を違う形で他者に味合わせたいと言う感情の発露なのかもしれない。
『一番重要なのは由比ヶ浜嬢のスケベ映像なのに、結局落ちたのは雪ノ下嬢だけ。
そのスタイルだとサービスシーンには足りないでしょ!
八幡、我はお主に確かに撮れ高を頼んだのだがなぁ。
白い液体に溺れて『うええ苦いよぉ』ってなる由比ヶ浜嬢がなければ意味が無いだろうが』
多分、きっと、いや、スケベ心が殆どを占めているのかもしれない。
でも、こんな風に暴走しているのは全部悪神の欠片が悪いんだよ。
材木座本人はこんな事を思っても口に出せる程の根性も無いから、セーフだから。
だけど、材木座本人がセーフではあっても、ザイモクザが許されるとは言っていない。
「…そう」
一言で十分だった。
「「ひぃ!」」
一人の男子と一匹の猫が肩を抱き合って震えている。
一瞬錯乱してペルソナを呼び出して己を殴って気絶しようとすらした。
それだけその声には恐怖しか感じられなかった。
だと言うのに、どっしりと座り込んでいる彼は何も気づかずに大きくため息をついている。
可哀想でもなんでもなく当然に屠殺されて出荷されるんだよね。
もう一人の優しい彼女の目はそんな何の感情も無い色をしていた。
「いいわ。ならあなたのお望み通り、書いてきた自称傑作の批評をしてあげましょう」
『ぴょ?』
本当は酷評とかされずに良い所だけを挙げて自信をつけてちやほやされたかったのかもしれないが、今更口に出した事は戻らないからもう遅い。
「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ。文法のメチャクチャさに始め、『てにをは』すらまともに使えない不勉強。自己満足だけの文章に、予想の付きすぎる話の展開。脱いでおけばいいと言わんばかりの雑なお色気シーンに心理描写も無く必然性も無い主人公礼賛のヒロイン。お人形遊びを見せられているみたいでとても気持ち悪い。地の文が長いから目が滑るし、難しい漢字を使えばいいと思っている読み難さ。伏線にしたい事が見え見えの癖に一切回収もされないし、そもそも完結すらしていない作品を人に読ませるのはマナー違反でしょう。矛盾する真面目に考えていない行き当たりばったりの浅い設定。結論を言いましょう、あなたは独善的で人を見下し、笑い方も気持ち悪くて、服装のセンスも最低で、日本語もまともに書けなくて、剣術なんてかじったことすらない、でたらめなルビを振って、悦に浸るだけが目的の、気が向いただけでまともな勉強もせずにちょっと書いてみたってだけの自慰行為にしかならない、ゆとりの国のポンコツ中二愚劣害悪産業廃棄物よ、死ねばいいのに」
そこまで言わなくたっていいじゃないか。
今にも泣き崩れてしまいそうだった。八幡が。
ぜえはぁと息を乱しながら、突きつけ続けた指をぷるぷる震わせながら睨み付けている。
『う』
「そもそも、あなたの様に活動力だけあって、人の役に立たない人をなんていうか知っている?
無能な働き者、っていうの。人の役に立つどころか、積極的に邪魔になりに来る害悪。
むしろ、比企谷くんのように無能な怠け者の方が相対的にマシ」
「おっと、俺にまで流れ弾が飛んできたぞ」
「それに、あなたの言う需要なんて、『あなただけが望む』独善でしかないじゃない。
創造を謡うのなら、誰にも生み出せない自分自身を表現しなさいよ。
芸術って言うのは自己表現の一種なの。こんな誰かの表現を切り貼りしたような物でシコシコ自慰してるみたいなものはね、妄想って言うの」
「ゆ、ゆきのん、ちょっときつくない?」
「雪乃殿をキレさせたらダメだな。くわばらくわばら」
まるで、目の前の材木座すら目に入っていない勢いで雪乃は矢継ぎ早に続ける。
彼女の言う言葉は、本当は一体誰に向けて言っているのか?
「自分の中に一本の芯も持たないあなたのような薄っぺらい人間が、誰かの心に響く存在になれるわけがないじゃない」
『う、う、うるちゃーーーーーい!!』
ぴしゃりと言いきった雪乃に、材木座がとうとう爆発する。
『うるさい、うるさい、うるさい! 我が正しい、我は面白い、我は素晴らしい!』
「ね、ねえ。これ、なんかやばくない?」
「…ザイモクザの反応が急速に増大し続けてるぞ!!」
「俺のアナライズがヤバい事になってるんだが」
自分を肯定する言葉を言い聞かせるように、呟く。
その一言ごとに、ザイモクザの黒く染まった身体がミチミチと音を立てて肥大化していく。
それに伴って、八幡のアナライズがさっきまで『雑魚』と表示していた材木座の力が『ちょっ、これやばい』と変化していく。
「すこし、言い過ぎたかしら?」
「あれで少しって言うなら、お前の心にある匙は由比ヶ浜並に大雑把だな!!」
「なんであたしまで酷いこと言われるの?!!」
「ひとまず、攻撃するわ『ジオ』!!!」
「あっ、馬鹿!!」
憤慨する八幡と結衣を尻目に、攻撃する雪乃。
変身バンクに攻撃するとか、お約束が分かってないね。
結衣の時に味を占めたのだろうか。
だが、それも意味が無かった。
「効いてない? 嘘でしょう」
「あいつ、電撃属性に強い耐性があるんだよ!」
「じゃ、じゃあ、あたしのペルソナで! ザシキワラシ『サイ』!!」
「ワガハイも続こう! ゾロ『ガル』!!」
電撃耐性があるのなら、と念動と疾風で攻撃する。
『我はすごい、我は最強、我は創造主』
「うそ、こっちも効いてなくない?!」
「わ、ワガハイのペルソナでも少しダメージが出ただけだと?!」
「いや、違う耐性も………こいつ、嘘だろ。ひとまず逃げるぞ!! 適当な窓から外に出ろ!!」
アナライズの表記がドンドン肥大化していく事に、信じがたく思いながら八幡たちは天守閣から脱出した。
『我はでかくて、強い。我は唯一無二。我は………』
今更の話であるが、ペルソナには飛行能力が備わっていない。
自由自在に生身の人間が空中を飛び回るには、認知の力が弱すぎる。
ただし、情報生命体のように実在の物質体ではない為、浮遊能力は須らく備えている。
簡単に言えば、飛べ無くても浮かぶだけなら何とかなるのだ。
『破壊鬼神義輝城、我は神なり』
「ロボットだこれぇ!!!」
ペルソナに捕まってゆっくりと地面に落ちながらの現状を端的に結衣が叫んだ。
城と一体化して材木座っぽい顔をした巨大ロボットに変形していたのだった。
「それでも、やることに変わりはないわ! 電撃がダメなら『ザン』!!!」
「…っ、あ、あたしも、もう一回! 『サイ』!!」
誰よりも早く正気を取り戻した雪乃が、巨大ロボット鬼神義輝に魔法を撃つ。
つられて結衣がつづく。
『むぅ? 今、なにか、したか、なぁ?』
「うそ」
「反則じゃない?」
「全く効いてない、だと」
だが、巨大な質量とはそれだけで脅威であるのだ。
顔面近くに魔法が突き立ったが、ぴんぴんしていた。
「ひ、比企谷くん! 分析の結果は?!」
「せめて弱点が分かれば何とか出来るだろ!」
「ちょっと待て、でかすぎてアナライズが直ぐに終わらねえんだよ!!」
巨大である、つまりはそれだけの質量を持っていると言う事で、分析にかかる時間もそれ相応に長くなる。
出会い頭にひっそりとしかけた分析結果は役立たずなデータとなっている。
あまりのスケールの違いに、八幡のアナライズでは出力不足であった。
『ふむ、では、次は我の番であるな。一撃で終わってくれるなよ』
「う、うわわわ! 攻撃が来るよ!!」
「散開!!」
目に見える程の力の塊が収束されていくのに慌てて回避行動を取ろうとするが、未だに地上に届かず、空中で踏ん張りの効かない状態で間に合う訳が無い。
モルガナは最悪の想像をして、せめて少しでも強い自分が皆の盾になろうと覚悟を決める。
最も生き残る可能性が高いのはそれしかないと踏み出し…
『行くぞ! 八幡よ、我が極大呪怨魔法を受けてみよ!』
「いけねえ!」
「……え」
ぎゅるん、と目の前の黒猫よりも狙いやすい、アナライズの途中で無防備になっていた八幡に照準をつけられる。
前方に力を込めた分、身体が流れて後方をかばえない。
「ひっ」
「比企」
明白な狙いにそれぞれ左右に流れていた身体を止めて腕を伸ばすが、間に合う道理も無い。
『『ムド』!!!!』
そうして、紫を通り越して黒く染まった呪殺魔法が放たれ、八幡の身体を容易に飲み込んだ。
「ヒッキー!!」
「っ!」
「ハチマン!!」
悲痛な叫びがこだまする。
眼を逸らしてしまう。
己のペルソナにかつての力『リカーム』が備わっていれば、一時的な呪殺ならばなんとかなったのに、と後悔に歯ぎしりする。
「……?」
アマノジャク ハ 呪殺耐性 ダ
しかし、黒い塊からは何の変化も無い八幡の姿がそのままポンと排出された。
『む? お主には効かんのか。流石は我が過去に認めた男よ。ならばこっちだ『ムド』!!!』
ザシキワラシ ハ 呪殺耐性 ダ
『ぬぅ!! リア充は呪いすらも弾くと言うのか! ならばこちらよ! 『ムド』ぉおお!!』
ライジン ハ 呪殺耐性 ダ
ここでネタ晴らしをしよう。
実はこの奉仕部の3人のペルソナは総じて、呪殺に強い。
雪乃と八幡が破魔に弱く、結衣が火炎に弱いが、全員が2つ、ないしは3つの属性に耐性を持っている優秀なペルソナなのだ。
もちろん、耐性貫通をしてくるシャドウも居るだろう。
耐性があったとしても運が悪ければそのまま死亡していただろう。
しかし、ザイモクザ本人が元々人を殺してまでは…と考えている以上、その確率はさらに低くなる。
なにせ、ここは精神の方が上位にあるパレスの中なのだから。
だからと言って、それを許せるかどうか、納得できるかどうかは別問題。
『ぷ、ぷ、ぷ、ぷじゃけるなぁ!!!』
巨大な体をプルプルと震わせながら、絶叫する。
『ライジンは仕方ない! そもそもぉ? 冥界からの刺客である故、呪いに縁があるからぁ? それは耐性があっても仕方ない!
だが、何故分類的には妖精だとか外道になるザシキワラシとかアマノジャクが呪殺耐性を持っておるのだ!
こんなの詐欺だ!! チートだ! 不公平だ! サギートヘイだ!』
「由比ヶ浜の妖精はともかく、なんで俺外道呼ばわりされてんの?」
「あ、あたし、妖精? えへへ」
嬉しそうな顔で笑う結衣と、更に死んだような目になる八幡であった。
別に結衣が妖精みたいに可愛いとか、八幡の性格が下種すぎて外道と言う意味で言われている訳ではない。
あくまで彼らのペルソナをアクマのように分類するのであれば、そう言ったカテゴリに属すると言う意味である。
加えて、あえて雪乃の『ライジン』を言えば、破壊神か地霊と言ったところだろうか。
「ザシキワラシの性質として、家に富をもたらす事ばかりにクローズアップされるけれど、家を離れたら衰退すると言う、貧乏神としての性質も持ち合わせているわ。
そもそもザシキワラシの本質は家と言う広範囲に向けた呪詛をかける事。いわば、呪いをかける専門家とも言えるわ。なら、呪いに強くても当然でしょう」
「ゆきのん………って、あれ? 感動してたけど、ゆきのん、あたしの事貧乏神って言った?」
自分の事をよく知ってくれている友達に、じーんと感動したが、あれ? と我に返りそうになる。
「それに、こんな目つきをした人を死霊と言わずに何を死霊と呼ぶの。
既に死んでいる人を呪い殺すなんて、どんな矛盾かしら」
「……なんで、敵と味方の両方から攻撃されてんの? 混乱してんの? コンセンタラフーされちゃった?」
『むむむ! 一理ある!!』
「一理あるって認められちゃったよ。……俺の目つきの悪さは亡者級か、ハハハ」
「ハンカチ使うか? 小町殿がいれてくれてるぞ」
乾いた声でわざとらしく笑い声を出すその顔は、ちょっと湿っていた。
ありがと、とハンカチを受け取って目元に当てる。
とんでも理論だが、なんで普通の妖怪のアマノジャクが呪いに耐性を持っているのか分からないので、まぁひとまずそう納得するしかないのが悲しい。
涙が出ちゃうくらいには悲しい。
『えーい!! ならば、仕方あるまい! せめてもの慈悲として即死魔法をしてやっていたが、方針転換である!!
我がムドしか使えんと思いこんだのがそちらの敗因よ! いくぞぉおお!! 『
「攻撃範囲が広い! お前らは下がってろ!!」
鬼神義輝が、大仰なポージング(無駄)で広域衝撃魔法を詠唱する。
衝撃属性は耐性のある雪乃とモルガナにはあまり効果が無いが、それでも他の二人には厳しい攻撃だった。
「ハチマン、結衣殿だいじょうぶか?」
「正直キツイし」
「だいじょばないが、なんとかする……」
「いまは根性論とかどうでもいいから、早く体勢を立て直して…」
『むぅ! まだ、動けるか! ならば、何度でも攻撃するまでよ!! いくぞぉおおお………さっきなんて名前で攻撃したっけ?』
「もう、マジ無理なんだけど『癒しの風』!」
広範囲に衝撃が振りまかれたせいで放った側が一瞬見失ったが、すぐに補足される。
立て続けにうたれては壊滅必至だったが、どうにも変な所に気が取られて時間をえた。
その隙を見計らって、結衣が全体を回復させる。
『ええい! もうなんでもよいわ! 『
ビーム要素の全くない衝撃魔法がまたしても放たれる。
だが
『むぅ?! 我の狙ったところから見当違いの場所に魔法が?!』
その魔法の衝撃の殆どが明後日の方向に逸れていった。
「へっ、土壇場で覚醒、なんてのは主人公の特権だろうが………まぁ、悪くない」
『ぬぬぬ! は、八幡! お主何をした!!』
得意げな雰囲気をしている八幡にこの事態の秘密があると、地団駄を踏みながら(それだけで地響きがなる)問いただす。
「どうにも、俺の『アマノジャク』は人の足を引っ張るのが得意みたいでな………
つまり、またまたやらせていただきましたぁ! ってやつだ。もういっちょ『スクンダ』」
ゲーム的に説明するのなら、『アマノジャク』がレベリングの成果で新たな魔法『スクンダ』を覚え、鬼神義輝の命中率を下げ…魔法のコントロールの制御を乱したのだ
今までがモルガナで鎧袖一触だったり、弱体化に頼るまでも無い弱いシャドウばかりだったためその恩恵を初めて目にする一行だった。
「やるじゃねえか! 雪乃殿の時も結衣殿の時も役立たずだったのを面目躍如だな!」
「地味に気にしてたところを言うなクソ猫」
『全く意味が分からん! が、腹が立つ!! 我が…我こそが最強なのだぁ!!!』
アマノジャクまでも抗議するように狩衣の袖をブンブンと振り回している。
何が何だか分からないままでも、魔法があまり効果的ではなくなったと分かった鬼神義輝が巨体を思い切り振るって、殴りつけようとする。
「いけない、よけ…」
「いや、大丈夫だ。ペルソナでガード!!」
『死ねよやぁあああああああ!!!』
『『『『ペルソナ!!』』』』
10メートル近い巨体の拳を、四体のペルソナが完全に受け止める。
『ば、ばかにゃ! 我のゴッドブローを受け止めた、だとぉ!!』
「デバフは戦術の基本、ってか。案外すげーじゃん、アマノジャク」
材木座が無駄話をしていたり、時間を浪費したりしているうちに、せっせと八幡は分析とデバフ(弱体化)を続けていたのだ。
今の鬼神義輝の状態はゲーム風に言うのなら、『攻・防・命回 2段階ダウン』。
効果時間の関係上、最大までは下げ切れていないがそれでも十分な効果が発揮される。
いくら巨体故に攻撃力があるとはいっても、ここまでデバフを重ねられると流石に致命打とならない。
「さっきから、ずっとぼそぼそと独り言を言っていると思ったら、そんな事を………」
「でも、すごい楽になったよ!」
『あ、痛い! 痛いでござる! 受け止められた我の拳がいたーい!!』
見た目と反した攻撃の軽さ、拳から伝わる構造の脆さを実感して、返す刀で反撃する。
シミターが拳を割り、ナイフが広げ、扇子が圧し戻す。
「しかも朗報はもう一つ。あいつの分析も終わった。あいつの弱点は」
呪殺、広範囲衝撃魔法という構成からして、この相手は魔法に寄っている。そんなキャラの弱点はたいてい何だろうか?
「物理攻撃。殴られたりするのに、弱い!」
『げ、げーーーー!!』
レベルを上げて物理で殴られるのに大体弱い。フィジカル的に考えて。
「………そう」
「なんだ、それなら」
カシャンと、雪乃と結衣がそれぞれの得物を構え直す。
『ま、まて! 我のこの強固な形状を見てみろ! 岩とコンクリとあとローマンコンクリに、砂利もあるこれにその細腕の攻撃が効くわけがない!!
だから、その物騒な物は即刻仕舞って、魔法合戦と行こうではないか! そう八幡よ、ここが我と貴様の天下分け目…』
「あぁ、ちなみに、俺はデバフを撃ち続けてそろそろガス欠だから、あとは頼んだ『タルンダ』」
「まぁそんだけ魔法撃ち続けりゃそうだな」
『ふぎゅうう!!』
ダメ押しとばかりに、もう一度デバフを撃つ。
タルンダの効果時間が伸びた。
「普段なら疲れたと言う言葉も無視して鞭打たせるのだけれど、今回ばかりはあなたの活躍がMVPね。いいわ、後ろで私達の活躍を見ていなさい」
「すぐに終わらせるから、休んでてね。モルちゃんも今回はあたしたちに任せて」
『ぴ』
ナイフを構えた雪乃が『ライジン』に『毒針』の準備をさせ、扇子をぐるんぐるんと回す結衣が『ザシキワラシ』に万一の為に回復を事前に指示する。
アトラクションゾーンからフラストレーションを貯め続けた彼女たちの前では、脆くなった城塞は無きがごとし。
つまり? 物理弱点とか、ボスに出しちゃダメでしょ。フルボッコターイム。
『ぴぎゃあああああーーーーー!!!』
「悪は滅んだ」
「むごいぜ」
ペルソナメモ
デバフ…敵の能力を下げる魔法。攻撃を下げる『タルンダ』防御を下げる『ラクンダ』命中・回避を下げる『スクンダ』。こういった魔法をまとめて『ンダ系』と呼ぶ。逆に味方の各能力を上げる魔法は『タルカジャ』など『カジャ系』はバフ。
バフデバフを制する者はメガテンを制す。と言うか、難易度ノーマル以上は補助系統の魔法を使いこなさないときつい。もしくは無理。
敵の能力を下げ、味方の能力を上げ、他の補助魔法を使って、更に耐性を考えてようやく普通にストーリーボスに勝てると言うのが、アトラスクオリティ。裏ボス? さらに装備も仲間、仲魔(ペルソナ)、スキルも厳選しろ。もしくはヨシツネの八艘飛びでごり押せ。
ザイモクザパレスの出現シャドウはオンモラキ等のフード系やスダマ等の妖怪。FOEにコッパテング(衝撃耐性)やカマプアア(Lv24)なども出現する為、弱体化したモルガナだけだと少しきつい。先制が出来なければ普通に苦戦するが、材木座の良心に助けられた形になっている。ボス戦は多分雪乃の口撃がなければ鬼神にならなかった為、もう少し楽だった。そのままの状態でもマハガルで全体を攻撃してくるし、運が悪ければムドで一発死もあるという一度戦線が崩れると、そのまま負けていてもおかしくない位にはボス性能だった。物理弱点じゃなかったら、女子に殺意を向けられて腰が引けていなければ、普通に負けてたと思う。