やはり俺の○ル○ナは間違っている   作:hung

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そこまで比企谷八幡は乗り気ではない

4月22日(日)昼

 

「あれで悪神の欠片が全部って訳じゃねえ。第二第三の悪神の欠片が」

 

「ネタじゃなく、本当だから手に負えねえ」

 

 

 材木座を迎えて第二回ペルソナ会議が駅前のサイゼで開かれる。

 

 開口一番神妙な顔でカバンから頭だけ出して口出ししてくるモルガナを詰め直す。

 

 飲食店にペットは厳禁だって言ったでしょおじいちゃん。

 

 なお、土曜日は各々が体力回復に努めた為、休養日である。

 

 

「期待はしていなかったけれど、やはりあれだけでは済まないのね」

 

「まあまあ、あれくらいだったらなんとでもなるんじゃない?

 あたしも中二も仲間になったんだし」

 

「考えがサッカリンよりも甘い」

 

「あっマッカンじゃないんだ」

 

 

 ザイモクザパレスを攻略し、悪神の欠片だった万年筆はモルガナが消滅させた。

 

 だからといって、甘く見ていいわけではない。

 

 なぜなら、今回対応した悪神の欠片はモルガナがこちらに来てから殆ど時間を掛けずに遭遇できたものであり、

 力も人一人を支配しきれない消滅寸前の残滓と言っても過言では無いものだったからだ。

 

 加えて言うならば、寄生された材木座本人の小心な性格のせいで大分危険度が目減りしていたと言う点も見逃せない。

 

 これから先は今よりも更に力を蓄えた悪神の欠片に対応しなければいけない。

 

 更に暴力的な人間や、悪辣な人間に寄生されてしまえば、今回の比にもならない被害が出てもおかしくない。

 

 そもそも、一歩間違えば壊滅していてもおかしくない位には強敵だったのだが、のど元過ぎれば…

 

 

「ふむ、ならば我は知らぬ間に世界を救っていたと言う訳か。

 八幡よ、我の勘定を背負ってもよいぞ」

 

「寝言は寝て言え」

 

 

 それぞれがドリンクバーとつまめるポテトだけを注文しているのに、一人だけがっつり注文している奴の会計を何故払わねばならん。

 

 共有財布を管理しているからと言って、無駄遣いが許されている訳ではないのだ。

 

 具体的には経費支出報告書と言う名の書類が先日雪乃からのメールに添付されていた。

 

 やだ、お小遣い管理されるうだつのあがらないサラリーマンみたい。

 

 

「モルガナが悪神の欠片をサーチ出来る位に有能なら良かったんだが、現状出来るのは待ちの一手だけ」

 

「仕方ない所は有るけれど、もどかしいわね」

 

「う~ん、もやもやするなぁ」

 

 

 ボコボコとストローに息を吹き込んで、「マナーが悪いわよ」と叱られる結衣。

 

 

「お前は何処であれを拾ったとか、他に似たようなのがあるかとか分かんねえのか」

 

 

 手詰まり感がある状況で、先日までの当事者であった材木座に水を向けてみる。

 

 

「幾ら我であっても、知っている事と知らぬ事がある。

 どうしてもと言うのなら、相応の態度と「あっ、じゃあいいや」待て待て待て待てぇい!」

 

「「うるさい」」

 

 

 無駄にもったいつける面倒くさいセリフを途中で切ると小声で叫ぶ。

 

 

「けっぷこぷ! 乞われては仕方あるまい。我があの邪悪なテラーマターと出逢ったのは「いいから端的に話せ。リアルネーム住所付きでお前の小説、ネットに放流するぞ」止めて!!」

 

 

 半分涙目で縋る。

 

 アイドルとかモデルのオーディションではあるまいに、知り合いが勝手に応募しました。

 

 そんな事を自作小説でされてはメンタルが死ぬ。

 

 雪乃の舌鋒がトラウマになっている彼には今のところ不特定多数に自作を晒すだけの自信が無かった。

 

 雪乃にトラウマを覚えてる人間多すぎじゃないですかね。

 

 

「と言っても我が語れるのはそんなに多くはない。

 ほれ、八幡よお主と初めてペアになった体育の時間があったであろう。

 あの時、着替える為にトイレに制服を持って行ったときに、制服から落ちてきたのだ。

 買った覚えも無い物であったが故に不審には思ったが、何故か心が惹かれて手に取った。

 そこからは何故かなんでもできるような高揚感、万能感に満たされ気付いたらお主の元に書いていた小説を持って向かっておったのだ」

 

「着替えなのに、トイレ?」

 

「中二、ヒッキーの事好きすぎない? 普通に引くんだけど」

 

「毎日昼休みに雪ノ下相手に突撃するお前には言われたくないと思うし、キモイからやめて」

 

「本当に類は友を呼ぶのね…冗談はともかく。

 悪神の欠片が比企谷くんの愚者のアルカナに惹かれたのかもしれないわね」

 

 

 モルガナが最初から告げている『愚者のアルカナ』のトラブル吸引能力が発揮されたのか。

 

 状況証拠でしかないが、反証も出来ない。

 

 ならば残るのは事実だった。

 

 愚者のアルカナに悪神の欠片が引き寄せられる実例が出た以上、これからはのほほんともしていられない。

 

 

「だからと言って、何かが出来ると言う訳でもないのが苦しい所だな」

 

「中二のぱれす、無くなっちゃったもんね」

 

「我的には簡単に洗脳されるかもしれん所など消えて清々したがな」

 

 

 そうなのだ。

 

 ザイモクザパレスを攻略して、悪神の欠片を消滅させた。

 

 材木座も心の闇の暴走がなくなり、正常化したのならば必然パレスも消滅する。

 

 過去ダンジョンに潜れないとか、レベリングできる場所が無いとかRPGとしては落第点では?

 

 悪神の欠片がもっと力を取り戻して、全人類に対して働きかける事が出来るまでになれば、集合無意識のつまり大衆のパレス(メメントス)が出来るのだろう。

 

 しかし、それは本末転倒である。

 

 

「差し迫って近々に力を着けなければいけない訳ではないのが救いね」

 

「とりあえずこれ終わったら、こいつのパレスでドロップした戦利品を売って、軍資金にしてくるわ」

 

「ペルソナを鍛えられなくとも、物資の充実には力を尽くせるものね。

 ただ、逸話の在る武装ってとことんまで高額だから、焼け石に水」

 

「しないよりはマシだってことで」

 

 

 店売りで最強の武器を揃えて進むのが軽快にプレイするコツ。

 

 ただし、最後の町とかで買える武器を早くに手に入れればもっと楽勝になる。

 

 そんな精神が見えるのであった。

 

 数千、よくて一万程度で買える物なんてたかが知れるのだとしても。

 

 

「あたしは良いモノ拾ったけど、ゆきのんもヒッキーも持ち歩くのはきついもんね」

 

「天狗から授かりし宝具、我にこそふさわしいと思うのだが!」

 

「おじいちゃん、あなたには洞爺湖があるでしょ」

 

「中学の修学旅行で衝動買いした木刀が活躍するかもしれんなど、人生とは何があるか分からんな」

 

 

 八幡も雪乃も武器はホームセンターや通販で、高校生のお小遣いで買えて法律に違反しない程度の質。

 

 しかし、結衣の武器だけは一つ頭抜けて「いい」ものになっている。

 

 ザイモクザパレスで他のシャドウよりも少しだけ強い『コッパテング』が扇を落としたのだ。

 

 その名前も『天狗の扇』、そのままだな。

 

 使えば『ガル』を無消費で使える、お世辞抜きで逸品だ。

 

 しかも、シャドウからのドロップ品だからなのか、普段から持ち歩いていても誰も不自然に思わないと言う効果まである。

 

 昨日の夜、手持無沙汰で弄っているところを母親に見られても何も言われなかった事で判明した。

 

 

「ま、まぁ!? 我が自室で木刀担いでいても、『あぁ、いつもの』みたいな目で見られて気にもされんから実質引き分けだな!」

 

「コールドゲームだよ」

 

「親御さんも諦めてしまっているじゃない」

 

「警察には普通に捕まると思うよ、補導されるんじゃない」

 

 

 頭が痛い、と手をやる。

 

 結局、この日はまともな展望もなく、現状を確認するだけで終わった。

 

 帰り際、材木座が八幡だけを呼び止めて二人を残して解散する。

 

 モルガナは残ろうとしたが、猫分を補給したい雪乃に捕まってげんなりしながら連れ去られていった。

 

 仔牛が売られていく音楽が流れていた気がする。

 

 ドリンクバーでおかわりをして改めて男2人で向かい合う。

 

 

「で、なんだよ。買取の約束まで時間はあるが、下らん用事なら帰るぞ」

 

「う、うむ」

 

 

 もじ、と太ましい身体を縮こまらせて、手持無沙汰に水滴の浮かぶコップを握る。

 

 唇をもにゃもにゃさせて何か言いにくい事を言わんとするのは分かる。

 

 だが、それをして微笑ましいと思えるのは可愛い女の子だけだ。

 

 

「その、だな。先だっての事で相談があるのだ」

 

「回りくどいのはいいから、バシッと言えよ。聞くだけは聞いてやるから」

 

 

 返事をするとも言っていない。

 

 ただ、まぁなんやかんやと付き合いの良い男である。

 

 みるだに面倒事だと分かりながら、ちゃんと話を聞いてやるのだから。

 

 きっとなんだかんだと言いながら最後まで付き合ってしまうのだろう。

 

 

「声優さんとお近づきになるにはどうすればよいだろうか?」

 

「あ、すいません、お会計」

 

「はちまーーーーーん!! 話は最後まで聞けぇい!!

 と言うか、真面目な話だから、本気で相談に乗ってくれ!

 でないと我泣くぞ! 恥も外聞も無くな!」

 

 

 八幡は逃げ出そうとした。

 

 しかし ざいもくざ は はちまん の うで を つかんだ にげられない

 

 欠片だけが残るフォッカチオの皿がガタと音を鳴らす。

 

 

「知っておる通り、我は、以前までの我ではない。真の目的を思い出したいわば、真(チェンジ)! 義輝!

 剣豪将軍がミッシングリンクを経て、進化した存在」

 

「メタルグレイモンよりも、スカルグレイモンに進化しそうになって失敗、コロモンになったような存在だろうが」

 

 

 渋々、席に戻った八幡に材木座の戯言が爆発する。

 

 

「我が夢を思い出した以上、それに向けて邁進するのは必然。故に、それを手伝う事を許す!

 と言うか、どうすればいいのか見当もつかんので相談に乗ってほしい」

 

 

 最初からちゃんと言えよ、と思いながらドリンクバーから持ってきたジンジャエールを口に含む。

 

 しゅわしゅわとした感触に、話題のつまらなさからくる眠気を誤魔化して少しだけ考える。

 

 

→それなりの案を出してみる

 なんでそこで諦めるんだ、頑張れ頑張れやればできるきっとできる一人で出来る

 そっとしておこう(元の選択肢に戻ります=ループ選択肢)

 

 

「………別に、どの声優でもいいんだったら、一つ(どうでもいいと言う意味での)適当な案がある」

 

「は、ハチえもん!!」

 

 

 感涙しそうな材木座をうっとうしそうな目つきで見ながら、5秒で考えた案を提言する。

 

 言葉通り、本当に適当な案の為実現可能性などは一切考慮に入れていない。

 

 しかし、口を回さない限りは目の前のワナビから逃げる事も出来ないなら仕方ない。

 

 命の危機には弱くとも、面倒な状況から逃げる際にはその才が活かされる。

 

 

「名付けて『現代版光源氏計画』もしくは『キミが俺にとってのシンデレラプロジェクト』」

 

 

 そして、八幡が語った作戦はこうだった。

 

 今は声優戦国時代。

 

 数多のアニメやドラマCD、吹き替え等で話題になり、声優を目指す人は増加傾向にある。

 

 だが、その一方で売れっ子の声優になる人はほんの一握り。

 

 そして、売れっ子になっている人には既に大量のファンが居る。

 

 ならば、今更材木座がその人に近づこうとしても、それはただの一ファンにしかならない。

 

 

「発想を逆転させるんだ。売れっ子声優と結婚するんじゃなくて、売れっ子になった声優はお前の知り合いなのだと言う状況に持ち込めばいい。

 具体的には、デビュー前からずっとファンで、お前の小説の成長と一緒にステップアップするくらいの運命力があれば最高だ」

 

「な、成程!! デビュー開始前から寄り添った関係になれていれば、好感度に下駄をはいた状態であり、声優との結婚に飛躍的に近づける。

 我が赤羽○Pであり、武○Pとなれば、我モテモテ…お主天才か」

 

 

 感銘を受けているが、そんな都合よく材木座と二人三脚してくれる人が居る訳が無い。

 

 そもそもデビューしていない声優などただの一般人なのだ。

 

 声優に成って大成しそうで、その道を目指していて、尚且つ誰にもその才を見出されていない。

 

 そんなダイヤの原石を誰よりも早く見つけて、寄り添う。

 

 しかも相手も材木座を好いてくれる。

 

 うん、そう言う運命力はワイルドの持つモノであって、99%無理だろう。

 

 適当な事を言って、適当に煙に巻く八幡のコミュ力(限定的)の発露であった。

 

 

 材木座の戯言をあしらう事で八幡のコミュ力が『つっかえる』に上昇した

 

 

「と言っても、そもそも売れっ子になる声優を見出すとか、株とかFX並に先見の明が必要だし、お前の小説が良くなっていくと言う前提も…」

 

「よぉし! そうと決まったら、売り出される前の声優さんを調べるところから開始する!

 どうせ我を好きになってくれる声優さんとかほとんどいないだろうし、ここは数打てば当たる作戦である!

 片っ端からファンレターを送って、徐々に絞っていくのだ。

 更に自分の小説を書き上げて………こうなっては時間がいくらあっても足りんな。

 八幡よ、またお主に助けを求めるかもしれんが、その時はまたよろしく頼む! では、さらだばー!!」

 

「聞いてねえし」

 

 

 テンションの上がった材木座はふんすと鼻息荒く立ち上がり、どすどすと歩き去って行った。

 

 材木座との仲が深まった気がする。

 

 

「声優への応援(大量)と、自分の作品を書く、両方やらんといかんのがこの作戦のデメリットだったが…

 まぁ、あいつの熱量なら、突っ走れるところまでは突っ走るだろ」

 

 

 ジンジャエールをもう一度飲み、呆れた風に顔を歪ませる。

 

 空になったグラスをテーブルに置いて、伝票を片手に自分も帰路に就く。

 

 次に助けを求められる時は、せめてまともな作品を読むだけで済みますように、と叶わない願いを抱きながら。

 

 

「………、つか、あいつ自分で食った分の会計済まさずに帰りやがった」

 

「ありがとうございました~」

 

 

 帰りに今石燕に会って戦利品を売却したが、前回言っていた通り、前は初回特典としてさらに色を付けてくれたようだ。

 

 それでも高校生のお小遣いより多めには思える額だったが、材木座の所為であまり財布の厚みは増えなかった。

 

 帰ってから自室でペルソナを鍛えられる事は出来ないかと、モルガナに聞いてみた。

 

 しかしそんな都合のいいものは知らないらしく、最終的には自分磨きに力を入れろ。

 

 カレー作りを熟達しろ、バッティングしろ、将棋をやれだのと魔女の飼い猫よりも口うるさく言われるだけであった。

 

 材木座の相談みたいな面倒くさい事にこれからも巻き込まれるなら、嫌でも人間力が上がるだろう。

 

 それでも事前に自分磨きをしておけば少しは楽になる、と言われて少しだけ前向きに検討するのであった。

 

 

 




ペルソナメモ

 メメントス…大衆のパレス、これこそが悪神の本拠地であり、なによりも悪神が復活していることのバロメーターにもなりうる。逆説的に言えばこれが発生していない現状は、悪神の力が戻っていないとも言えるのではないか。しかし、大衆に力を及ぼせないとはいえ、かつては世界を統べる一歩手前にまで到達した神。影響力の範囲は狭くとも油断はできない。

愚者……比企谷八幡(アマノジャク)
魔術師…材木座義輝(ギュウキ)Rank2 Up
女教皇…雪ノ下雪乃(ライジン)Rank1
女帝
皇帝
法王

恋愛…由比ヶ浜結衣(ザシキワラシ)Rank2
戦車
正義
隠者
運命
剛毅(力)

刑死者
死神
節制
悪魔




太陽
審判
世界…奉仕部 Rank1


・知識………偏りがある
・度胸………びびり
・コミュ力…さっぱり→つっかえる
・根気………ゆとり
・器用さ……ぶきっちょ
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