ところでどん兵衛CMのキツネ少女(CVはやみん)が癒やしすぎる
裏切りの音がする!からのハッハッハッ(木登り)がマジ愛おしい
4月30日(月) 昼 駅前
「ごめん、比企谷くん待った?」
「いや、今来たとこだ」
てってっ、と弾む身体の前で小さく手を挙げて戸塚彩加が一人佇む八幡に声をかける。
いつものちょっとダサい学校指定のジャージではなく、タイトな黒のパンツに少しだぼっとした白シャツ。
普段とは違う非日常なそのやり取りに内心非常に見苦しい感情を抱いているが、武士の情けで秘密にしておこう。
「ごめんね、急に付き合わせちゃって」
「戸塚のラケットが壊れたのは不用意にパレスで持ち歩いた俺の所為だからな。
それを買い直すなら当然付き合うさ。なんなら俺に奢らせてほしいが」
「ううん、こういうのは自分でお金を出さないと本当に愛着って湧かないから。
それに友達に貰ったものだと、大事にし過ぎて使えなくなっちゃうかもしれないし」
にっこりと笑って提案をやんわりと断る。
そのあまりの天使っぷりに『え、待って、マジ無理、尊い』と限界オタク化する。
そう、今日のこの買い物は前回のパレスで修復不可能までに破損したラケットの買い替えの為。
他にも時間が余るだろうから、適当に遊ぶのも目的に入っている。
きっとこの後一緒にお茶したり、ウィンドウショッピングしたり、服を試着し合ったりイチャイチャするのだろう。
そして調子に乗った八幡がさっき貰ったばかりの10万を貢ぐように溶かすのが目に見えて想像がつく。
「いいからサッサと再起動しろハチマン。人通りの多い所で醜態を見せるんじゃねえぞ」
「あっ、モルガナくんもこんにちは」
「くんづけはむず痒いから呼び捨てにしてくれねえか」
「うん、よろしくね。モルガナ」
「…………けっ」
もちろんそんな事にならないようなお目付け役が存在しているので、そう言った事は心配無用だ。
かつてトリックスターを導いた、かの水先案内人である黒猫に任せればどうという事はあるまい。勝ったなガハハ!
最近妹に押し付けてばかりでモルガナを振り切っていたからか。
小町から逃れるコツを掴んできた猫の追跡を巻けなくなってしまって、一人の時間が少なくなって不満を感じる生粋のぼっち。
カバンの中からひょこんと顔を出すモルガナに心底『こいつ邪魔だな、消すか』と言わんばかりの視線を送りながらため息をつく。
調教の結果、飲食店では静かにするようになったため面倒ならどこか喫茶店にでも入ろうと決意しながら二人と一匹は歩き出すのであった。
俺もくんづけはむず痒いから呼び捨てにしてくれねえかなとかなんとか考えながら。
「なぁ戸塚、マジで金出すぞ。いや、本当に。せめて半分くらいは」
「あはは、そっちは流石に手が出ないけど、こっちにはお手ごろなのがあるから」
「いや、でもなぁ」
そうして入ったテニス用品店で飾られているラケットの値段を見て、壊してしまった罪悪感が蘇って戸惑ったり。
「代わりにこれプレゼントしてくれると嬉しいな。動いてると汗かいちゃうし」
「リストバンド、まぁそれでもいいなら」
「ありがとう。じゃあ僕からもハイ。色違いだけどね」
「と、いや彩加。大事にする。家宝にするよ」
お揃いのリストバンドに興奮した事を切っ掛けに名前呼びに切り替わったり。
「ああいうがっしりした体格の人って憧れるんだよね。
プロテイン飲んで筋トレもしてるんだけどなぁ」
「体質はどうしてもあるからな、俺も細マッチョ目指したこともあったがめんどくてやめた」
「そう言えば八幡は運動神経良かったよね。体育の時間とか目立ってないけどポジショニングが良かったり、的確に動けてたり」
「ま、まあ運動音痴って訳ではないな」
「どっちが接待してるんだか、一目瞭然だな」
「ん? 何か言ったか?」
「何もねえよ」
ともかく双方ともに充実した時間を過ごしたと言っても良い。
そうこうしているうちにある程度の時間が経ち、小腹がすいたからと喫茶店で小休止する。
季節のフルーツを使ったタルトとカフェラテ、シンプルなパンケーキとブラックを頼んで人心地をつける。
「ん~~、柑橘系の酸味がジャムにされてるフルーツの甘さと合わさってとっても美味しい!!」
「アぁ…美味いな」
ほっぺに手を当て若干大げさにリアクションする戸塚と、その様子を見て満足げに口数少なに同意する八幡。
二人で買い物してカッフェで可愛らしい子とスイーツを食べるとかこれはデートでもういいよね。
まぁお邪魔虫が一匹いるけどその辺は四捨五入すれば切り捨てられるから誤差だ。
「あぁ…いい」
とか語彙が消滅しかかって感慨にふけってコーヒーを啜っているだけで深い意味など一切ない。
しかし、そんな様子を見てピタリと舌鼓を打っていた彼の手が止まる。
「………」
「どうかしたか」
もご、と口の中の物を咀嚼し嚥下する。
小さく動く喉仏にあぁ、そうだこいつは男だったと再認識する。
逡巡を見せながらも、柔らかい味わいのカフェラテで口を湿らせて口を開いた。
「ねえ、八幡。なんで八幡はそんなにカッコいいの?」
「「は?」」
おもわず、飲食店で喋らないようにしていた筈のモルガナまで呆気にとられた。
「…あっ、そ、そうじゃなくて! どうしてそんなに一本芯があるって言うか、頑固って言うかえっとその」
「………まぁ、とりあえず落ち着いてくれ」
たっぷり10秒フリーズして『こく、はく? じゃないな、うん知ってた』と再起動する。
目の前でワタワタと慌てているのに逆に落ち着くまである。
「なんていうか、僕って周りから『可愛い』とか『綺麗』とか『王子』とか。
そう言う風には言われるんだけど、『渋い』とか『カッコいい』とか『漢らしい』とは一度も言われたことないんだ」
「そりゃ、まあ。うん」
曖昧に濁すような返答だが、確かにそういった形容とは対極に位置しているのが戸塚彩加と言う少年だ。
小柄で、線も細く、渋さよりも甘さが似合う。
もしもそう表現する人が居れば眼科を紹介してしまうだろう。
「だけど、八幡は違うよね。寡黙で、人に何を言われても自分が動かなくて、すっごく漢らしいと思う!」
「ただのぼっちで陰キャなだけじゃねえか」
「やかましい、否定できないから突っ込むな」
寡黙なのは話す相手が居ないから。
言葉が心に響かない関係性しか築けていないから動じないように見えるだけ。
戸塚が八幡に見るそれは、いわばただの幻想でしかない。
「曖昧にしか覚えてないけど、パレスで三浦さんに大声で言ってた時ぼくはすごく八幡がかっこよく見えたんだ」
だけれど、その幻想が実態を持っていた瞬間が確かにあった以上、それを全面的に否定するのも憚られる。
「ごめんね。本当はあの時、起き上がるよりも前に目が覚めてたんだ」
『案外まじめで、ちゃんと謝る事が出来て、俺やこいつみたいな面倒なヤツと付き合えて、キョロ充っぽいけど陽キャグループで立ち回れて、不満があっても見せずに飲み込めて、友達に正面から向き合えるあいつを理由にしてバカやろうって根性が気にくわねえ!』
あれは彼の感情のままの叫び。
結衣を深くは知っていないものの、それでも他人と称するには近すぎる彼女を侮辱されたと憤ったその姿は確かに素の比企谷八幡の叫びだった。
今も覚えられているのは顔からアギラオ出る位に恥ずかしい気分だが。
「『女々しいんだよ』ってまるで僕に言われてるみたいで、だからあの時本当はすごく怖かったけど。
でも、そんな僕自身に負けたくなくて、立ち向かう為の勇気を振り絞る事が出来たんだ」
それを評価されて嬉しく思わない訳ではなかった。
「八幡みたいに『引っ張ってくれる漢らしい人』に僕もなりたいんだ。
だから、八幡にも協力してもらえると、嬉しい、んだけど…どう、かな?」
つい熱くなってしまい夢中に語っていた事に気付き、急激にごにょごにょとしりすぼみになる。
それでも撤回することなく言い切り、緊張で瞳を潤ませて上目遣いをする返事を待つ。
そんな彼に返される言葉など一つしか存在していない。
「俺で良ければ、幾らでも協力するさ」
「ほんとう?! 嬉しい!!」
戸塚との仲が深まった気がする
さしあたって一朝一夕に『漢らしく』なる為に、何かできる事も思い当たらず(髭でも伸ばしてみるか? と冗談で言ったら「僕体毛が薄くて、試したんだけどみっともなくなっちゃって」と試行錯誤を垣間見ることになった)。
ホラーに耐性があるのは男っぽいなという偏見で映画を観ることになった。
なお、戸塚にホラー耐性は既にあり、お化け屋敷でも一切悲鳴を上げずに回り切れる。
うんうんと唸って考えていた八幡に気を使って、とりあえず実行してみるだけである。
本当、この子気遣いの鬼だわ。
4月30日(月) 夕方 映画館
「いらっしゃいませー」
朗らかな販売員のお姉さんの声が響く。
日曜の夕方とあってそこそこ多い人ごみに負けない位に良く通る声だ。
彼女の背後の壁には一枚の映画宣伝のポスターが貼られている。
特に言及するような特異性も無く『ハイセンスなフランス映画』と銘打たれた面白味も無いポスター。
数年前のリバイバルの映画らしい。なんとなく、鑑賞すると魅力が上がりそうな気がするが…
残念ながら八幡のパラメータに『魅力』は存在していない為、何の効果も出ないだろう。
「今、ホラー系やってたっけ?」
「プリキュアがオールスターやってることしか知らん」
場所を移して映画館へと赴いた。
ホラー映画を観る、と大雑把な行動指針だが観たいものがある訳でもなく。
適当に怖そうな奴がやってたら観てみるか位のノリ。
SAWっぽい生き残りゲームがホラー系かな、と上映リストを見ながら小首をかしげる。
プリキュアしか勝たん、と至上主義者が適当に勧められるままに決めようと流される。
にこやかに接客する販売員のお姉さんからすればどうでもいい二人組。
「あっ、あれ雪ノ下さんじゃない?」
「雪乃殿?」
「は? いやいや、流石にいくら雪ノ下でも休日に一人で寂しく映画館に来るとか言う平塚先生ムーブはせえへんやろ居るわ」
そんな二人の片割れがピッと指を指す先を見た途端、まるでどこかの漫才師のようなノリになってしまった。
いや、これは多分見えない所に由比ヶ浜が居る展開だな。
と、気付かれないようにシュババッと周囲を見回してみるが特徴的なお団子ヘアは見当たらない。
よく見てみると、彼女の手には何とも可愛らしいアニマル系のパンフが握られている。
きっとモルガナで中途半端に摂取してしまった猫分が中毒症状を引き起こしているに違いない。
それを落ち着かせるために一人映画鑑賞なんていうちょっと寂しい事をしてるんだ。間違いない。
「せめて見なかった振りをしてやるのが情けってやつだろ」
「え? そうかな」
「もしもあれが俺なら『くっ殺せ』って言っちゃうまである。畢竟、スルーしてあげるのが…「おーい雪乃殿!」おいバカ止めろ」
止める間もなくパンフを持ってじっと館内図を睨み付けていた彼女の名前を呼ぶ黒猫。
その声にビクンと肩を震わせ、こわごわと振り返り一瞬だけヒクッと頬を引きつらせる。
「…あら、ゾンビ映画なんて今やっていたかしら。精巧なポスターね」
「今はやりの3Dでもここまで立体的には出来んだろ」
「こんにちは、雪ノ下さん」
「ええ、こんにちは」
脛程の長さの淡い色のフレアスカートと白いトップスを、緩く後ろでまとめた長髪と一緒に揺らめかせて近づいてきた美少女。
そんな彼女は流れるような手つきで八幡の下げるカバンをひったくり、中でおとなしくしているモルガナをかいぐり回す。
しまった、と猫可愛がりされながら呼んでしまった事を後悔する。
ひとしきり撫でて満足したのか、カバンごとぐったりしたモルガナを返す。
「あなたたちは何を見に?」
「ホラー映画でも見ようかって事になってな」
「度胸試し的にね。雪ノ下さんは?」
「…面白そうな映画の広告がポストに入れられていて、暇をつぶしにきたのよ」
手に持つパンフにはいたる所から付箋がはみ出ていて、どう見ても衝動的な行動と言うよりも計画的な行動なのだが追求しない優しさが二人にはあった。
当の本人はホラー映画と聞いた瞬間、ピクッとまなじりを動かしたがそれだけだった。
「良かったら一緒に見ない? ほら、親善というか、懇親会的に。
あっ、もちろんホラー物じゃなくて、雪ノ下さんが観たい奴でもいいよ。
実は、ホラー系って僕あんまり怖くなくて」
「えっ、そうなの?」
「あはは。うん、実は、ね」
明かされるホラー耐性。ちくしょう! 実は『きゃーこわーい』されるのを期待していたのに!
と内心嘆く愚かな男子高校生がそこに一人。
「私は同行者が居ても気にはしないけれど…」
「露骨に嫌そうな顔でこっちを見てて気にしないもクソもねえだろ」
「人の表情を察するスキルはあるのね。どこで身に着けたの? 前世?」
「死んだ経験とかねえから」
ともかく、二人と一匹が三人と一匹に増えたが、結局することは変わりない。
にこやかに営業スマイルを浮かべるお姉さんからチケットを買って、指定されたホールに向かうだけ。
「ごゆっくりどうぞー」
その道すがら横に抱えたカバンから軽い衝撃が伝わってくる。
「おい、なんか変な感じがしねえか。なんだか鼻がムズムズするぜ」
「映画館って独特な臭いがするからね、もしかしてくしゃみしちゃいそうなのかな」
「そう言われれば、そう…か?」
「…一応、気を付けておきましょう」
「うん、カーディガン持ってたかな?」
ぽしょぽしょと聞こえてきたモルガナの警告。
この猫の独自の感覚を知らない戸塚はのんびりしている。
だが、以前そういった警告が真実だったことを八幡は覚えていた為、少し怪訝に周囲を見渡す。
しかし、目に見えて異変がある事も無く、ペルソナの力も使える気配も無い。
気のせいだとは思いつつも、雪乃は己の警戒レベルを一段階引き上げる。
念の為、手がふさがるようなポップコーンや飲み物の購入はやめておく。
何事も無く指定されたホール前に到着し、独特の重みのある扉に手をかける。
これも平常であった。
そして、平常なのはそこまでであった。
会場へと入室した瞬間、ブザーが鳴る。
「え、嘘! 開演時間までもうちょっと時間あったよね」
「急いで席に着くぞ」
スクリーンには「No More 映画泥棒!」とブレイクダンスを踊っているカメラ怪人。
少しだけ違和感を覚えるが、スクリーン以外は真っ暗なホール内を足早に指定された席へと急ぐ。
予告や本編が始まる前に何とか落ち着けたと一息つき、スクリーンを注視しようと集中しようとし気付く。
「人が、居ないわ」
「えっ」
日曜の夕方、しかもさっきまでは確かに混雑していた。
扉を開けるその直前までは雑然とした喋り声や雑音がひしめき合っていた。
なのに、今は前にも後ろにも人っ子一人見当たらない。
上映時に静かになると言っても、それで説明がつかない程に『人の気配』が感じ取れない。
バッと振り向いても映写機の光がスクリーンを照らすばかりで、並ぶ席に座っている人影は見えやしない。
「モルガナちゃん!」
「これは、いや、なんだ…パレスとも、ベルベットルームとも異なる」
「………………」
明らかな異常事態に大人しくカバンの中に納まっていたモルガナが飛び出てくるが、館内に立ち込める異様な気配にきょときょとと首を振るばかり。
人工物に囲まれたその場所にまるで似つかわしくない、太古の自然にかこまれた圧倒感だけが感じ取れる。
「戸塚、逃げるぞ」
「サイカ殿…サイカ殿?」
「………………」
何が起こっているのか、またしても悪神なのかと考えるがとどまっているよりも逃げる方が良い。
そう考え、戸塚に促そうと声をかけるが返事が返ってこない。
訝しく思い様子を窺ってみるが、当の本人は声を掛けられている事に気付いていないようにボーっとスクリーンにくぎ付けになっている。
「いったい、何を…」
「雪乃殿? ん? …」
何が映っているのか、疑問に思いスクリーンを見た瞬間。
先までの警戒心が一切抜け落ちた表情で、雪乃も、八幡も、モルガナもがストンと席に腰を落とす。
真っ暗な一室で、三人と一匹が何も映されていない幕を虚ろな瞳でじっと見つめていた。
ペルソナメモ
ペルソナにて映画館とはデート場所であり、パラメータを大幅に上げる場所であり、意識しなければ殆ど行かずに終わってしまう場所である。なおQ2は除く。
月ごとに公演は変わり、ツッコミどころの多いタイトルなどもあるが、総じて何かおかしいイベントが入る余地のない平和な日常イベントだけが存在している場所である。
しかし、過去、アトラスはペルソナではない作品でシアターに一つの重大な要素を入れていた事がある。キーワードはソウル。彼らは一体何を鑑賞するのであろうか?
なお、数か月前にそのタイトルの続編が出ているが、正直シナリオ的にはナンバリングを名乗らないでほしい出来であった。ゲームの出来的には別タイトルとしてなら十分面白いが、あの作品の続編では断じてないと思う。
愚者……比企谷八幡(アマノジャク)
魔術師…材木座義輝(ギュウキ)Rank2
女教皇…雪ノ下雪乃(ライジン)Rank1
女帝…平塚静 Rank1
皇帝…葉山隼人(ツチグモ)
法王
恋愛…由比ヶ浜結衣(ザシキワラシ)Rank2
戦車…三浦優美子(???)
正義
隠者
運命…戸塚彩加(ノヅチ)Rank2 Up
剛毅(力)
刑死者
死神
節制
悪魔
塔
星
月
太陽
審判
世界…奉仕部 Rank2