やはり俺の○ル○ナは間違っている   作:hung

26 / 43
 コロナだったり怪我だったりパソコン古くなったりと言った不調。ポケモン新作に始まりサモンナイト、デジモン等のレトロゲー、他の二次創作読み漁り等でモチベが消えていたのですが、6月に入ったのと、暖かくなったのと更新無くてもお気に入り評価がじわっと増えている事と、フィクサービームでモチベが回復したので少しずつ更新再開します。
 グリッドマンユニバースは最高だったぜ!
 本日二話目の投稿ですが、前話はちょっとした振り返りと嘘ネタしかないので読まなくても支障はないです。
 今回の更新はしこしこ書き溜めてた分全ぶっぱするので、本編はこれ含めて9話分(GW~川なんとかさん)くらいです。


誰もが嫌な事はしたくないと思っている

5月2日(水) 朝 総武高校

 

「え~、であるからして」

 

 

 春眠暁を覚えず、とは全く正しい。

 

 ぽかぽか陽気は副交感神経を優位にし、涼しい風はゆりかごに揺られるがごとく。

 

 更に朝ごはんで血糖値を上がったことにより、脳に運ばれる血液も少なくなる。

 

 

「このとき用いられる公式は~え~、葉山君」

 

「はい、破壊力=体重×握力×スピードです」

 

「その通りです。重く、力が強く、素早ければその結果は分かるでしょう」

 

 

 だから、朝一の授業を寝てしまっても『俺は悪くない』。

 

 昼前は空腹で集中できないし、昼直後とかまた血糖値が上がってる。

 

 最後の授業なんて後は放課後か帰ることしか考えられない。

 

 まったくもって自然の摂理だから、放課後になって由比ヶ浜に起こされるまで寝てても仕方ない。

 

 

「いや、それは無理がある事ない?」

 

「全くだぜ」

 

「文系科目は予習してるし、理系科目は捨ててる。ほら問題ない」

 

 

 処置無し、と言わんばかりのため息を努めて無視する。

 

 あんな事が有った次の日でも、そんな平常運転だった。

 

 雪ノ下が持ち込んで淹れた柔らかな紅茶の香りが漂う部室。

 

 戸塚の件以降、悪神の欠片に関しての手がかりもない停滞の状況。

 

 2年になって初めての中間テストも視野に入り始める時期だから、むしろありがたくも感じている。

 

 雪乃がまたぞろ『特訓』と呟いているが、あまり面倒事を増やさないでほしいのも本音だろう。

 

 連休の合間に挟まる平日はそうやって過ぎて行った。

 

 

5月3日(木) 朝

 

 最高気温は20℃を越える日が続くが、夜に晴れていたせいか。

 

 夜の肌寒さが残る春の日の朝。

 

 陽光が差し込み続け、ようやく気温と一緒に意識が暖かくなる。

 

 羽毛布団をのそりとどけて意識をぼんやりさせたままトイレへと起き上がった。

 

 朝起きてまず何をするか、その次に何をするか、そう言った決まり切った行動を多くの人は持ち合わせているのではないか。

 

 八幡もその例に漏れず、そんなルーチン通りに半覚醒した身体が勝手に動く。

 

 

「およ、お兄ちゃん今日は早いね。どうせ昼まで寝るかと思ってたから朝ごはんとか作ってないよ?」

 

「ん~~、そうか」

 

 

 ジャムをたっぷりと乗せたトーストを咥えた八幡の妹、比企谷小町がフラフラとする兄に声をかける。

 

 振り向いた時に焼いたトーストからぽろぽろとパンカスが零れるが、どうせ後で掃除するからいいかと見て見ぬふり。

 

 生返事をして洗面所に向かい、トイレ、洗顔、歯磨きをしてようやくはっきりと目覚める。

 

 小町が朝ごはんを食べながら見ているのか、アナウンサーの声がニュースを読み上げる声が聞こえてくる。

 

 まったく、行儀の悪い。と思いながら、自分の朝飯が無い事にようやく気づき、適当でいいかとスナックパンとコーヒー(激甘)で済ませようとする。

 

 

「小町ちゃん、テレビを見ながらご飯食べるのはお行儀が悪くてよ」

 

「ん~? お兄ちゃんも同じことしながら言ってなかったらもう少し説得力あったかもね」

 

 

 小生意気に反論してくる妹に、そりゃそうだ、と納得して自分もテレビを見ながらコーヒーを啜る。

 

 濃い目のインスタントコーヒーに牛乳、練乳、砂糖を混ぜた、意識を一発でアゲる合法のエナドリである。

 

 ついでに血糖値とかその辺も一気に上がるので、若いころだけに許される無茶であるのは言い逃れも出来ない。

 

 面白い番組が無いかと、ポチポチチャンネルを切り替える小町を横目に、だけどやめられないとまらない。

 

 軽快な音楽が流れたり、凄惨なニュースが報道されたり、一通りの番組を見てもピンとこないのか適当な通販番組でチャンネルを止めてリモコンもテーブルに戻す。

 

 

「およ。またやってるね、じかネット」

 

「しかし、考えてみたら全ての商品が時価とか恐ろしいな」

 

「直にもらえるならそれでいいじゃん」

 

「………時価って、その時々で値段が変わるって事で、直接って訳じゃないからな」

 

 

 八幡のツッコミに、一瞬「ん?」と首をかしげて、理解が及んだ瞬間、テヘペロと誤魔化す小町。

 

 この子、今年で受験生の癖に大丈夫なのか? そう思ってしまうのも無理はない。

 

 猫の根付を紹介している若干オネエ臭い喋りの社長の右上に表示されている時刻に目をやり、そろそろ準備するかと立ち上がる。

 

 

「あれ? 珍しいね、お休みなのに外出するんだ? 小町、嬉しいよ。

 お兄ちゃんが引きこもりから立ち直ってくれて」

 

「俺は引きこもりじゃねえよ。用事が無い時に出かけるとか、省エネを叫ばれる昨今の経済状況を鑑みてだな」

 

「あっ、そう言う戯言はどうでもいいから。あんな美人な友達が3人も出来て。

 これは更生もそう遠くないのかもしれないね。

 小町としてはお兄ちゃんの手がかからないのは、嬉しくもアリ寂しくもアリ。

 あ、今の小町的にポイント高い!

 で、どこ行くの? コンビニ? スーパー? コンビニなら小町、プリンが食べたいな! ちょっとお高いやつ」

 

 

 ナチュラルにタカリに来る妹に、財布の中身を考える八幡。

 

 しっっぜんに、奢る事に違和感を感じていない。

 

 これが調教の成果なのか。

 

 

「って、コンビニとか、買い物じゃねえよ。

 部活だ、部活。不本意ながらな」

 

 

 背後から驚愕の声をあげるのを聞きながら、動きやすく、汚れてもいい服に着替える。

 

 朝は冷えると言っても、日中は日差しで気温も上がるし体温調節はしやすい方が良い。

 

 ジーンズって、元々はゴールドラッシュで炭鉱夫に使いやすい事で広まったんだよな。

 

 そんな無駄マメ知識を思い起こしながら、古くなった少し厚いワイシャツとジーンズを纏う。

 

 タオルと軍手は前日に用意しておいたカバンに入れているから、後は出るだけだな。

 

 動き回ると汗が出る事を考えて飲み物を買うための財布も忘れないように持つ。

 

 

「お勤めご苦労様であります!」

 

「いや、なんで出所してる風なの? なに、極道なの? エンコ詰めたの?」

 

「お兄ちゃんって、本当に良く分かんない事言うよね」

 

 

 家を出る直前、嘘くさい涙まで流しながら、敬礼して見送りする小町にそう突っ込むが、呆れられた。

 

 呆れたいのはこっちなんだよなぁ。と言う言葉を飲み込んで、靴を履いて出発する。

 

 あっ、火打石とかやった方がいいかな? とか、なんだか知識の偏りが自分よりも酷い妹に一抹の不安を抱きながら。

 

 

「いってきます」

 

「いってらっしゃーい…ってモーくん!」

 

「そう何度も捕まるワガハイじゃあねえ!」

 

 

 無駄に華麗なステップを踏んで伸ばされる腕を回避する黒猫を従えながら集合場所へと向かう。

 

 今日は清掃ボランティアの日だ。

 

 

「あっ、八幡! おはよう!」

 

「俺の為に毎朝味噌汁を作ってくれ」

 

「え?」

 

「すまん、間違えた」

 

 

 待ち合わせ場所に辿り着くと、一足早く着いていた戸塚がニッコリと笑顔で出迎えた。

 

 八幡は魅了された。混乱している。緊縛状態に陥った。魔封の為魔法は使えない。

 

 戸塚から名前で呼んでもらえるようになった事を噛みしめ、気分は絶頂期を迎える。

 

 

「そろそろ、みんな集まってるかな」

 

 

 つまりは、これからは下がっていくと言う事である。

 

 集合場所には既に数十人が集まっており、老若男女の統一感がない。

 

 

「お聞きになりました? 3丁目の所で小火ですって。怖いわねぇ」

 

「物騒よねぇ。物騒と言えば、最近援助交際で補導される女子高生が増えてるとか」

 

「携帯の電波悪くない? 今どき珍しいよね」

 

「地域の皆さんに貢献できるこの機会を大切にして頑張りましょう」

 

 

 まぁ、地域のボランティアで清掃活動とかに参加するのは意識の高い大学生とか。

 

 張り切り過ぎた教師に連れられた学生、繋がりを求めている老人だとか。

 

 そんな色んな人が参加するのだから、八幡たちばかりのはずがないのだ。

 

 きゃいきゃいと甲高い声で女子小学生が話しているのを、耳が痛いと顔を背けて他の奉仕部関係者はいないかと探す。

 

 

「あら、特大のごみを早速見つけてしまったわ。ゴミ袋に入るかしら」

 

「所有権は比企谷家に存在しているため、不法投棄は止めろ」

 

「今にも死にそうな雰囲気出してるからじゃん」

 

「分類的には燃えないゴミだな、ハチマンの性格的…に”ゃ”っ!」

 

「言ってやるな、雪ノ下、由比ヶ浜。久しぶりに外に出たりすると太陽が煩わしくなるものさ。

 ネトゲとか、迎え酒とか、テスト前後での徹夜とかな」

 

 

 動きやすく涼し気な恰好をした雪乃と、アームカバーとかつけて事務員のおばちゃん的な結衣。

 

 更に、サングラスとキャップをつけて遠い眼をしている気合十分な平塚教諭が集まっている所にのそのそと近寄る。

 

 開口一番飛んできた罵倒を受け流し、上手い事言ったつもりのカバンの中のなまもののしっぽを強く握る。

 

 一応、部活動(戸塚は部員ではないが)と言う事になっているので、固まったほうがいいかと言う判断である。

 

 そうして八幡と戸塚が女性三人の集まり、文字通りに姦しい集団に程近くなると、

 

 

「うむ、遅かったな。八幡よ、この滅塵滅相の宴が終わりし時には、我の書き上げた新たなる伝説を読むことをゆるぅす!!」

 

 

 材木座がどこからともなくぬるりと加わった。

 

 遅刻するのが嫌だから早めに来たが、知らない人間ばかりで委縮。

 

 ようやく見つけた奉仕部の面々も女子ばかりで合流を躊躇ったのがおよその真相だろう。

 

 制服ではないが、やはりその恰好は指ぬきグローブに厚手のコートと言う暑苦しい。

 

 八幡は露骨に距離を置いた。だが、材木座は追いすがった。

 

 そうこうしているうちに、今回のボランティアを主催した団体から代表者が出て来て説明を始め、各自に回収する為のごみ袋が渡された。

 

 

 材木座、戸塚行こうぜ

 雪ノ下、由比ヶ浜行こうぜ

→効率優先で解散しようぜ

×先生、一緒に回りましょう(度胸が『ここぞで違う』以上必要なようだ)

 

 

「じゃ、俺こっち行くわ」

 

「ええ。私はあっちに。解散は各自でいいわね」

 

「待て待て待て、待ちたまえ君達」

 

「お前ら…」

 

 

 そしていざゴミ拾いを開始しようとした瞬間、八幡と雪乃が示し合わせたように散開しようとする。

 

 平塚教諭がそれにストップをかける。

 

 カバンの中から呆れ声も聞こえてくる。

 

 これにはほかの面々も思わず苦笑い。

 

 

「いったい何のためにこうして皆で参加していると思っているのかね。

 せめて表面上は協力している風を装うスキルを身に着けたまえ」

 

「いや、俺はあれですよ。おじいさんとかおばあさんとかの後ろで安全確認をするためにですね。

 決して、働いてるふりをしながら適当におしゃべりな老人たちに付き合う真面目な僕を演出したいわけではなくて」

 

「貴様の言い訳は聞きあきた。それにそっちに居るのは他校の高校生、しかも君の嫌いそうなリア充たちだが、いいのか?」

 

「よし、材木座。お前適当にあっちのグループに加わってきて打ちのめされろ。それを俺が回収して特大ごみとして提出するから」

 

 

 自分がゴミ扱いされた後だと言うのに、他人をゴミ扱いするのに躊躇も無い。

 

 そのやり取りに面倒くさそうな雰囲気を隠さない雪乃がため息をつき、結衣があははと愛想笑いを溢す。

 

 普段と変わりない様子に、杞憂だったかなといつもの癖で胸ポケットに手をやり一服する。

 

 

「だからさぁ」

 

「えぇ、でもぉ」

 

「はぁい。みなさん、お喋りばかりじゃなくてゴミを拾いましょう」

 

 

 一際甲高い子供特有の甲高い声に、つけたばかりのタバコを携帯灰皿に押し付ける。

 

 背後からの声に振り向くと、数人グループをいくつか作っている小学生集団。

 

 

「どうも」

 

「どうも」

 

 

 おそらく引率らしい平塚教諭と同じ職種の人間がぺこりと会釈してくるので、会釈し返す。

 

 教師の合図に、各グループがある程度の距離を置いて道に広がり、タバコの吸い殻や空き缶等のゴミを拾い始める。

 

 

「ほれ、小学生も仕事をしていると言うのに、高校生のキミたちは何をしているのかね」

 

「小学生すら仕事をしないといけないとか、産業革命以前かよ。現代人らしく余暇を満喫、あいたたた!」

 

「抗弁は聞かんといっているだろう、学習したまえ」

 

 

 反面教師役にした大げさに痛がる彼も、ぶつくさ言いながら他の面子と合流してゴミ拾いを開始する。

 

 やれやれ、本当に面倒くさいやつらだ。

 

 

5月3日(木) 昼

 

 がさ、とコンビニの袋を掻き分けコーヒーとサンドイッチを取り出す。

 

 横では大盛パスタのふたを開けようとして、蒸気に「あつぅい!」と叫んでいるデブ。

 

 運動部なのにそんな大きさで大丈夫か不安になる弁当箱を取り出す戸塚。

 

 

「案外、ゴミって多いんだね」

 

「我らの拾った分を一袋に集めたら、パンパンになりそうであるな」

 

「行儀の良い奴らばかりってわけでもないからな」

 

「風で飛んじゃったって事もあるんじゃない? あたしも歩いてるときにお菓子の袋とか偶に飛ばされるし」

 

「歩きながら食べようとしていたのが問題じゃないかしら」

 

 

 昼休憩になり、なんとなく全員が横並びに座り昼ご飯を食べる。

 

 某少年が一人になろうとした瞬間、平塚教諭の瞳が怪しく光ったのは無関係ではないだろう。

 

 もっとも、その本人はタバコ休憩も兼ねる、と単独行動しているのだが。

 

 

「だけど、子供って元気だよね」

 

「遠くで聞いてると猿と間違えるな」

 

「疲れた身体には響くわね」

 

「二人ともひどくない!?」

 

 

 そんな彼らの少し離れた場所には先ほど平塚教諭が挨拶していた教師が引率していた小学生たちがキャイキャイ騒いでいる。

 

 自分たちも数年前はあんな無邪気だったなぁとか感慨にふける者もいれば。

 

 俺/我ならどんな言い訳しても来ないか、来ても一人行動だっただろうなと思う者もいる。

 

 そんな様を見ながら、視線を寄せていた雪乃の眉間にしわが寄る。

 

 

「どしたの、ゆきのん」

 

「…いえ、どこにでもあるのね。それだけよ」

 

 

 敏感に察知した結衣に緩く頭を振って何でもないと答える。

 

 ん? と視線を辿ると、そこには小学生のグループの一つ。

 

 小さく車座を作って親が作ったであろう弁当をつついている。

 

 なんでもないような光景じゃないだろうか。

 

 

「…まっ、小学生でも人間だ。なら、必然あるもんじゃねえの」

 

「ほむ、そう言う事か」

 

 

 他のメンバーも釣られて観てみると、材木座が納得したように頷く。

 

 結衣と戸塚、あと一足先に昼飯を終わらせてカバンに戻っていたモルガナは何のことか分からず首をかしげる。

 

 

「あそこの女子グループ。よく見てごらんなさい。

 他の子は騒がしく話しているのに、一人だけずっと俯いてお弁当を食べているわ」

 

「あっ、あぁ。そういう」

 

 

  人ほどの女子小学生の塊。

 

 なんとも騒がしく、賑やかに、楽しそうに話している。

 

 一人は性格なのか、相槌を打ったりしているだけだが、一人は違う。

 

 一人だけもそもそと肩身が狭そうな様子で、おずおずと口を挟もうとしてはうなだれる。

 

 

「むしろ子供だからこそ残酷って面もあるかもな」

 

「やりきれないわね」

 

「うん。ちょっと寂しいね」

 

 

 あと数時間もしないうちにボランティアも終わる。

 

 そうすれば関わりも無くなってしまう自分たちが何かをしても意味が無い。

 

 むしろ悪化させてしまうかもしれない。

 

 関わりを持つ理由もない通りすがりに何が出来ると言うのだろうか。

 

 せめて『泊りがけで関われる機会』があれば話は別だったかもしれない。

 

 

「………そろそろお昼も終わるね」

 

「で、あるな」

 

 

 出たゴミは支給のゴミ袋に入れて、軍手を付け直したり、伸びをする。

 

 今は席をはずしているあの人が居ればなにか違っただろうか。

 

 変わらず何も出来ない自分から目を背けて。

 

 

5月3日(木) 夕方

 

 そろそろボランティア活動も終わりが近づいてきた。

 

 大学生やママさんグループは既に終わった後にどこで打ち上げをするか、一足早く相談している。

 

 ジジババ達は一貫して無理なくお喋りしながら活動しているので、ペースは変わっていない。

 

 奉仕部の面々も、見えてきた終わりにやっとか、という空気を隠さない。

 

 

「葉山と三浦達の所為でとんだ災難だったな」

 

「当の本人たちはちゃっかり回避している事が余計に腹立たしいわね」

 

「ごめんね、僕の所為で」

 

「彩ちゃんは悪くないよ! えっと…先生を説得できなかったヒッキーが悪い!」

 

「その言で言えば雪ノ下嬢にも責任の一環が…いえ、なんでもないです」

 

「俺は悪くぬぇ、おのれディケイド!」

 

「ハチマンもザイモクザもよええな」

 

 

 空気が緩み、あとはもう帰るだけだろうと全員が思っている。

 

 そんな彼らに、こわごわと近寄る小さな影。

 

 何か小さな包みをレジ袋に入れて突き出すようにしている。

 

 小さな身体は確実に迫り、奉仕部の面々までもうあと3m程に近付きギリギリ聞こえる程の大きさの声で

 

 

「あ、あのぉ」

 

「あれ? どうしたのかな、何か用事かな?」

 

 

 呼びかけられた中で、最も素早く人当たりの良い結衣が返答する。

 

 

「そ、その。あの」

 

「焦らなくてもいいよ。あたしはちゃんと聞くから」

 

 

 目線を合わせてしゃがむ。

 

 にっこりと微笑む、柔らかな雰囲気に徐々に気持ちが落ち着いてきたのか、声がはっきりとし始める。

 

 

「…あの子」

 

「どうしたの雪ノ下さん」

 

「あの子、お昼の時に無視されていた子ね」

 

 

 訝しむ雪乃に戸塚が声をかけ、その事実にあっと気付く。

 

 周囲を見てみると、そこそこ離れた場所からこちらを見ている。

 

 黄昏に紛れて全員は見えないが、ニヤニヤと意地の悪そうな目をしている子も居る。

 

 

「向こうの、路地でちっちゃいイヌがね、倒れてて。で、どうしたのかなって思って触ったら冷たくて」

 

「そっか、どうしたらいいのか分かんなくてお姉ちゃん達に聞きに来てくれたんだね。ありがとう」

 

「う、ううん。別に。だから…それだけ!」

 

「あっちょっと!」

 

 

 持っていたレジ袋をひょいと地面に置いて、その女の子は走ってこちらを見ている4人の元へ戻った。

 

 一人はその姿を見て直ぐ3人から少し距離のある自動販売機に向かっている。

 

 

「なんだろ、これ」

 

 

→結衣を止める

 結衣を止めない

 

 

「触るなよ」

 

「え? ヒッキー」

 

「条例はどうなってたかな? 責任者の人に相談した方が良いよね」

 

「由比ヶ浜さんは出来るだけ見ないで。…ショックだろうから」

 

 

 小さく膨らんだレジ袋に手を伸ばしかけた結衣を止めて、その間に身体を挟み込む。

 

 戸塚が少し思案して、今回のボランティア活動の代表者、朝に挨拶していた人の所に走る。

 

 ぬぅ、と立ち尽くし唸る材木座もその袋の中身に予想がついているのだろう。

 

 彼らの様子と走り去った女の子との会話を思い出して、ようやくそこにある物に予想がついたのか結衣は顔を青くする。

 

 

「…やっぱりな」

 

「最後の最後で、とんだ爆弾を放り投げられた気分だわ」

 

 

 一応、と嫌々ながらもレジ袋の中身を確認する八幡が、その中身を見た途端に顔をしかめる。

 

 大きくため息をつく雪乃はけして近寄ろうとはしない。

 

 彼女はそれに対して大きな苦手意識を持っているから。

 

 いや、それが動いている時こそが真に苦手なのだが、それでもだ。

 

 

「流石にこれをゴミ袋に入れる訳にもいかねえしな」

 

「それをした瞬間、ワガハイの牙がおめえの喉に向かう事になるぞ」

 

「あぁ、おっかねえ」

 

 

 小さな身体はとうに冷たくなり、無機質な袋の中で眠るだけだった。

 

 走ってくる戸塚と、相談を受けた責任者らしき人物、なにかあったのかと着いてくる平塚教諭。

 

 

「嫌がらせにもほどがあろう」

 

 

 全員の心境を材木座の独り言が代弁したのだった。

 

 

 中身を予想した状態で結衣をかばった事で八幡の度胸が『なくもない』に上昇した。

 

 

 




 ペルソナメモ

 ペルソナの授業では雑学を出題され当てられる事がある。その回答があっていると知識のパラメータが上がるし、その知識を元にテストの出題がされる。パラメータが高くないとコミュを取れないキャラも居る為、パラメータを上げるチャンスは逃さないようにしないといけない。

・知識………偏りがある
・度胸………びびり→なくもない
・コミュ力…つっかえる
・根気………ゆとり
・器用さ……ぶきっちょ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。