やはり俺の○ル○ナは間違っている   作:hung

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ひとまず連続更新はこれで一旦終わります。
また書き溜め増えたら一区切り分、次は陽乃登場を更新する予定ですが、更新履歴みたら6月と11月にしか更新してないので、もしかしたら暑さに負けて過ごしやすくなるまで放置する可能性は高いです。あまり期待しないでお待ちください。


葉山隼人の願いはちっぽけで大きい

5月21日(月)

 

 遂に試験が始まった。

 

 総武高校では一週間丸々試験期間に当てられる。

 

 今までの勉強の集大成を見せる時だ。

 

 雨の日も風の日も、パレスの在った日も、ビジョンクエストに連れ回された日も。

 

 結衣の提案で、ファミレスで勉強会(勉強になったとは言っていない)した日も。

 

 負けずに日々積み重ねた努力の結果を見せてやるぜ! と八幡は意気込む。

 

 そう言えば、モルガナはどこに行ったのだろうか。

 

 最近ちょくちょく姿を消すが、また雪乃の家に行っているのか、(あるじ)とやらに報告に行っているのか…どうでもいいか。

 

 

 試験一日目

 

現代文からの出題

 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何より…

何が足りないでしょう

 

 パワーが足りない

→速さが足りない

 初めてですよ私をここまでこけにしたおバカさん達は

 

 手ごたえを感じる

 

 

5月22日(火)

 

 試験二日目

 

数学からの出題

 極道の花山君はちょっかいをかけてきた半グレをぶちのめす為に300の破壊力が必要です。

 極道の花山君はどれだけの握力でこぶしを握ればいいでしょうか。

 なお、花山君の体重は166kgとし、スピードは重力加速度とします

 

 握力は300必要

 握力×体重×スピードの公式を利用する

→真の英雄は眼で殺す

 

 何か違う気がする

 

 

5月23日(水)

 

 試験三日目

 

世界史からの出題

 エジプト文明で使用されていたとされる筆記具の名前を答えよ

 

→パピルス

 葦のペン

 青銅製のペン

 

 何か違う気がする

 

 

5月24日(木)

 

 試験四日目

 

地理からの出題

 千葉の名物と言えば

 

 みすピーとゆでピー

 京葉線の運航中止

→祭りと踊り

 

 手ごたえを感じる

 

 

5月25日(金)

 

 試験最終日

 

政治経済からの出題

 無気力症候群が発生したのは何年か答えよ

 

 2000年

→2009年

 未だに判明していない

 

 何か違う気がする

 

 

 ペンが全く進まない!

 

 

 

 

 

 

 紙のめくる音と、キュキュとペンが擦れる音が鳴る。

 

 真剣な目で複数枚の紙束を流れるように処理するのは雪乃。

 

 そして雪乃の様子をごくりと喉を鳴らしながら見つめている結衣。

 

 我関せんずとふぁと欠伸をする八幡と材木座。

 

 えっと、と何故結衣がこんなに真剣なのか分からず戸惑う戸塚。

 

 いつものメンバーが奉仕部の部室で集まっている。

 

 

「………終わったわ」

 

「ごくり」

 

 

 そんな一種、緊迫感を持っていた空間に雪乃の静かな声が通る。

 

 さっきまでペン入れをしていた紙束をもう一度ざっと流し見して、閉じ直す。

 

 

「で、どうだったんだ。テストの結果は」

 

「ギリギリね。予想平均点を大きく下回る科目はあったけれど、赤点は無し。

 大分厳しく採点したから、先生の裁量によってはもう少し上がることはあっても、下がる事はないと思うわ」

 

「ぃ、っやったーーーー!!!」

 

 

 そう、雪乃はつい先ほどまで総武高校で実施されていた中間テストの採点を行っていたのだ。

 

 

「ただし、あくまで、これは由比ヶ浜さんが『多分こう回答したはず』と言う記憶だよりの写しを採点しただけだから、予断は許さない事は」

 

「いや、普通の人は一回やっただけのテストを、問題から自分の回答まで完璧に覚えてられないからな」

 

 

 ぴょんぴょん跳ねて身体全体で喜びを表し、よくわからないけどノリを合わせている戸塚にハイタッチしている結衣。

 

 八幡はそんな彼女に水を差すように告げる雪乃に、呆れたような口調で突っ込む。

 

 材木座は、結衣が自分の所にも来ないかな? 来られても困るけど。しかし、お山は素晴らしいな! と色んな感情で複雑そうな目で喜ぶ様子を見ている。

 

 

「じゃ、約束通り、行こう!」

 

 

 ひとしきり喜び終わった後、息を整えて大きく手を上げて告げる。

 

 ワクワクと、興奮を隠しきれないその背後にブンブン振り回される尻尾が見える。

 

 まるで「散歩? 散歩だよね、散歩!」とリードを咥える犬の様だ。

 

 

「はぁ」

 

「自己採点で赤点一つもなかったら打ち上げする約束!」

 

「分かってるわよ」

 

 

 ある日、中間テストに向けた勉強会をしていた最中。

 

 あまりにもモチベーションが低く、成果につながらない事に段々と焦れ始めた結衣。

 

 彼女はそれを「ご褒美が無いから」だと主張。

 

 そうしてなんやかんやと却下しようとした雪乃だが、結局雪乃の甘さと結衣の押しの強さで打ち上げを条件付きで約束させられたのであった。

 

 なお、残りの男三人衆には拒否権すらなく、勝手に参加が決まってしまっている。

 

 

「じゃ、何しよっか。ボーリング? カラオケ? ダーツ? えっとスポッチャ? あ、沙希も呼ぼっか」

 

「最後の一つだけで全部できそうだな」

 

「川崎さんはお家の用事があるって言ってなかったっけ?」

 

「あまり体力を使うのは…」

 

「とにかく、行こう! 行けばわかるって誰かも言ってたし!!」

 

 

 さあ行こう、やれ行こうとグイグイ押す勢いで部室を後にする一行であった。

 

 

5月25日(金)昼

 

 

「う~ん、どこで打ち上げる?」

 

「河川敷でも宇宙ステーションでも何でもいいから手早く済まそうぜ。

 土日挟んで週明けには職場見学なんだから、家に帰って準備しないとな」

 

「職場見学で準備しないといけない物とかあったっけ?」

 

「そりゃあるだろ。体力とか、気力とか、やる気とか」

 

「前提からして活力が足りなさすぎる!!?」

 

「あなたはまず生気を確保する所から必要じゃないかしら」

 

「生き血を啜る趣味はねえよ」

 

「こぷん、生ける屍(リビングデッド)の相棒には生に満ちた勇者が居ればいい、違うか、八幡よ」

 

 

 とりあえずどこに行くにしても交通の要所を抑えるかと千葉駅までダラダラ歩き到着する。

 

 そうして適当な壁にもたれかかり、さてなにをしようかと途方に暮れる。

 

 この中で主体的に音頭を取れるのが結衣くらいしかおらず

 

 そしてその結衣も5人のまとまりを引っ張れるだけの主導性を持っていない。

 

 開始早々グダグダっぷり、これはもう終わりですね。と八幡ではなくとも言いたくなる。

 

 

「…」

 

「ん? ゆきのんどうしたの?」

 

 

 そんな迷える子羊たちの内、一匹がじつと特に目立つものが何もない壁に視線を取られる。

 

 子羊、もとい雪乃の様子に気が付いた結衣が問いかける。

 

 

「え? あぁ、いえ。映画、と見えてちょっと思い出しただけよ。そう言えば映画観れていなかったなって」

 

 

 雪乃の言葉につられて面々が視線を向けると、壁には一枚の映画宣伝のポスターが貼られている。

 

 確かに前回、映画館に戸塚と行った際はレッドマンやビジョンクエストといったあれこれで、結局映画は観れていない。

 

 

「そう言えば我も最近公開された仇討ちモノが気になっておってな。八幡よ」

 

「そうか、俺の気分はホラーだな」

 

「僕的にはラブストーリーとかアクション系が無難かなって」

 

「「ラブストーリーは無理、蕁麻疹が出る」」

 

「ヒッキー、中二とハモる位嫌なの?!」

 

 

 それぞれが何となく映画の話題にシフトしていく。

 

 胸元に手を当てて思案気な顔でボーっとしている雪乃にこてんと首をかしげる結衣。

 

 結局、その後は以前、前回の分を取り返そうと結衣が音頭を取り、改めて映画を観ることにした。

 

 その際、どの映画を観るかで

 

 「あたし、これ見たい!」

 「じゃあ、私はこれを観るわね」

 「そうか、なら俺はこれ観るわ」

 「我はこっちだな」

 「え、えっと」

 「じゃあ、各自観終ったら解散」

 「って、ストップストップストップぅうう!!」

 

 なんて変に息の合ったぼっち特性を発揮して、受付のお姉さんに飛び切りの愛想笑いをされてしまうのであった。

 

 結局決まり切らずに適当な話題の映画を全員で観て、喫茶店でグダグダと映画の感想を言い合って解散となった。

 

 打ち上げって、こういう物なの? と帰宅後に妹の小町に聞いてみたが「そんなもんなの…うぅ、お兄ちゃんが何か普通の高校生っぽい事してて、小町嬉しいよ」とかほざいていたので、そんなもんかと納得した。

 

 そろそろ寝るかと、ふとベッドを見てみると姿を見せなかったモルガナが寝息を立てている。

 

 家主よりぐーたらしてるんじゃねえとピキっと来たが、まぁ畜生のやることだ。多めに見てやるよ、と額にホワイトで「紳士」と書くだけにとどめた。

 

 来週は職場見学だ。

 

 

5月26日(土)

 

 沙希が月末で金欠がヤバいと言う事で急遽八幡、材木座、戸塚の4人でレベリングする事になった。

 

 モルガナが来ないのは珍しいな、と思った。

 

 翌日の買取であの指輪はやっぱりそこそこの値段で買い取ってもらえたので、男どもの財布が少し潤ったのは良かったと思います(小並感)。

 

 

5月28日(月) 昼

 

 先週受けた試験の結果が返って来た。

 

 八幡は文系科目は十分な点数を取っているが、理数系科目は壊滅に近い。

 

 ぎりぎり赤点ではないというだけで、一歩間違えれば後ろで「やった、見て見て優美子!」と騒いでいる結衣にすら負けている可能性がある。と言うか数学は確実に負けている。

 

 

「俺の志望校は私立文系だから(震え声」

 

「もう、進路決めてるんだ。早いね、八幡」

 

「まあな。それに、総合順位的に言っても学年で真ん中より上だし。戸塚はどうだった」

 

「えへへ。今回は僕、ばっちりだったよ。じゃん、学年50位以内に入ったの初めてだよ」

 

 

 テスト結果で一喜一憂。

 

 いかにも学生らしいやり取りをしながら荷物を纏める。

 

 テスト明けの月曜日は午前にテスト返却、昼からは職場見学となっている。

 

 八幡たちが選んだ会社は近場にある為、移動時間もあまりかからないので、少しゆっくりしていられる。

 

 そんな和気あいあいとしている二人のそばに一人の男が近寄ってくる。

 

 いつものように、人のよさそうな笑みを浮かべている葉山隼人だ。

 

 

「や。今日はよろしく」

 

「あっ、葉山君。こっちこそよろしくね」

 

「…じゃ、適当に行くか」

 

「戸部! 大和、大岡も、終わったら連絡するな」

 

 

 隼人の声に三者一様、「うぇーい」と気の抜けた大学生のような返事に苦笑する。

 

 優美子は「隼人ぉ、用事とかさっさと終わらせてよね」と愚痴っているが、他の二人、結衣と海老名になだめられ、隼人を抜いたクラスカーストトップグループの六人は一足早く教室を出て行った。

 

 

「待たせてごめん。行こうか」

 

「ううん、気にしてないよ」

 

「…やっぱ、俺こいつ嫌い」

 

「ほら八幡、いこ」

 

「そだな! 逝こうぜ戸塚!」

 

 

 戸塚との蜜月(八幡の中では)を邪魔されて、しかもいきなりリーダーシップを取られて、と根っからの陰キャ八幡が陽キャへの苦手意識を再確認し、戸塚に浄化される。

 

 そう、今回の職場見学は八幡、戸塚、隼人の三人が一組になって向かうのだ。

 

 

「つか、今石燕の所って雪ノ下の傘下だろ。お前なら親に頼んだりとか、どうとでも出来たんじゃねえの」

 

「そう言う所でコネを使うのは好みじゃないって言うのもあるんだけど…あまり知られるべきじゃないんだろ? ペルソナの力って」

 

「だから、わざわざ八幡に頼んできたんだね」

 

 

 そして、彼らが向かうのは今石燕の所属するシンクタンク。

 

 

「腑に落ちない所はあるけどな」

 

「今石燕って人に相談があるんだ。君たちになら隠す事でもないけど、オカルト(ペルソナ)方面の事だから皆には遠慮してもらったんだ」

 

「そこじゃねえよ。俺に借りを作ってまですることか、って意味だよ。分かってんだろ」

 

「前回の件で、貸し借りは無しじゃなかったか。それに、しらを切られたり、嘘を言われない為にもね。紹介するってそう言う事だろ」

 

「ウソ発見器じゃねえぞ」

 

「まあまあ、八幡。保証人として信じて貰えてるって事でいいでしょ」

 

 

 けっ、と悪態をついて歩を進め、目的地に着く。

 

 受付でアポを照会し、会議室らしい部屋へと通された。

 

 

「ほぼ連日だね、昨日ぶり。そちらのお二人とは初めまして、初対面だよね。ひとまず、私の職場に関しての説明と簡単な質疑応答をしたいと思う。

 …あぁ。もちろん、事前に聞いていたあの件に関しての時間も確保しているから安心してくれたまえ、乞うご期待」

 

 

 ホワイトボードの前で会社の概要を纏めていたいつもの恰好、白衣と分厚い眼鏡をかけた今石燕が早く、と急かすのに合わせて今回の職場見学と言う表向きの目的を果たす。

 

 長机に並ぶキャスター付き椅子に座り、今石燕の説明が始まる。

 

 後日、レポートだとか感想文的なのを提出しなければいけない為、ここをさぼる訳にはいかない。

 

 建築に何故民俗学やオカルト方面の知識が必要なのか、その具体例と、その業務の一部を開示してもらい、更に最近では()()()()()の研究も開始している。

 

 そこに言及されてようやく、隼人は本題に入る事が出来た。

 

 

「あなたに訊きたい事は一つです。その未知の物質―フォルマ―の研究を進めれば、それを生み出す存在を消し去る事が出来るのか。

 いいえ、この世から消す事は出来ずとも封印だとか、人間社会への干渉を遮断するとか、そういう事は可能なのでしょうか」

 

「ふむ…」

 

 

 葉山隼人は家庭的にも経済的にも恵まれた家庭に生まれた。

 

 親は高給取りの代名詞である弁護士と医者。

 

 弁護士である父親は太い顧客を持ち、誇りと正義を胸にしている。

 

 一人っ子であり、家庭内では上にも下にも気を使うべき存在が居ない為、父母のどちらの跡を継ぐのかはプレッシャーになるものの、過剰な押し付けがましい期待はされておらず、隼人本人の意思を優先してくれている。

 

 おそらく、何事も無ければ法学関係に進み父の跡を継ぐか、もしくは跡を継がずに似た別の道を選ぶだろうとぼんやりと考えていた。

 

 隼人自身も才能に恵まれ、その道を歩むことに苦労はしても不可能ではないと確信を持っていた。

 

 そうした16年ほどの人生で子供らしく過信によって間違ったり、正義感でから回ったりしたこともある。

 

 しかし、彼の歩みのほぼ全てで、一つ自信を持って言えるのは、行動が間違っていたとしても自分の信念は間違っていないと言う事だ。

 

 正しさは報われるべきだし、弱きを虐げるのは悪い事だし、理不尽へと吠えるのは決して間違っていない。

 

 変えられない事もあるし、無駄な努力に終わるかもしれない。

 

 それでも、葉山隼人は理想に向かって疾走(はし)る事を諦めきれないのだ。

 

 最も自分の理想を体現する理想の背中、正義を求める父親の姿をずっと見て来ていたから。

 

 

「持ち込んできた物を得る為に、彼らは危険を冒しています。もちろん、これは彼らの事情であり金銭を得る為にそうした危険に飛び込んでいる訳でもなく、止むを得ない事情であって、そうした物を得るのはあくまで副産物に過ぎない。

 だけど、そうした危険があると言う事が、そんな危険な状況を子供が対処しなければいけないと言うこと自体が間違っていると思うんです。なら、根本的な解決手段を模索するのは当然だと…俺は考えます」

 

 

 そうなのかい? と視線で疑問をぶつけてくる今石燕に頷き首肯する八幡。

 

 安全マージンは極めて高く確保しているからと言って、危険が無いと言う訳ではない。

 

 具体的に言えばLv5位は上回るだとか、複数体は可能な限り避ける程度のマージンだとかで、石橋を叩くようにしている。

 

 けれど、八幡のナビがあるとは言え完璧に奇襲を防げるわけも無く、奇襲されれば全属性弱点なんて言う八幡が真っ先に死にかけるし、安全策を取りすぎて時間がかかり過ぎる事も多々。

 

 もしも、悪神なんていう不安要素が無ければ、八幡も雪乃も関わる事は無かっただろうし、そうなれば結衣も戸塚も関わらないだろう。材木座は知らん、嬉々として飛び込んで『前が見えねえ』と懲りるんじゃない? 知らんけど。

 

 だからこそ、隼人は憤るのだ。

 

 こんなモノ、無い方が良いんだと。

 

 危険からは遠ざかるのが一番なのだと。

 

 

「…結論から言うと、出来るかもしれないし出来ないかもしれない、まだ未知だとしか言えない」

 

「…」

 

「フォルマの研究をしていて見つかった性質に、何にでも成ろうとする特徴があるからね。例えばフォルマを作り変えてそれそのものを抑制する事は不可能じゃないと思う。

 だけど、フォルマによって特性、例えば君、比企谷君が持ってきてくれたのだと天使の羽根っぽいの。

 これの変動は秩序、法則性があるように見えるが、翻って先日の皮(モコイ産)なんかは無秩序に動く、まるで混沌にね。

 けれど、どちら付かずに動くかと思えばどっちをも殲滅に動く性質のものなんかもある。

 簡単に言うと、サンプルの少ない今の段階では断言できないと言う訳、はっきりとはね」

 

「つまり、もっとフォルマを持って来いって事ですか」

 

「強要はしないよ? する必要もないし、する意味を見いだせない」

 

 

 雪乃が、八幡が、結衣が戸塚が材木座が沙希が

 

 友達が、クラスメートが危険にさらされる。

 

 こんな理不尽に抗わないと言うのは隼人にとって不自然な事だった。

 

 だから、抜本的な改善を。危難からの解放を望んで、今石燕との会談に臨んだ。

 

 けれど、望んだ答えは返ってくる事は無く、逆に危難へと飛び込めと言われる始末。

 

 戸塚との雑談で出た話では八幡たちは一部、金儲けの手段として見始めている。

 

 この非常識を日常に組み込み始めているのだ。

 

 とても怖い事だと思う。

 

 クラスの友人に降りかかるとても怖い事を、いつまでも自分に降りかかってこないと思い込み続ける事は難しい。

 

 隼人は人の痛みに共感できる。

 

 他人の事も自分事のように考えられるからこそ、よそ事だと切り捨てられない。

 

 自分の周りの世界が、彼らの日常(非日常)に侵食されるのがとても怖いのだ。

 

 

「…すこし考えてみます。また、お時間をいただければありがたいのですが」

 

「うん、私としては別に構わないよ。はい、名刺」

 

「ありがとうございます」

 

 

 話の成り行きを見守っていた八幡と戸塚が、話が終わった事を確認して少し息をつく。

 

 八幡はぐっ、と背伸びをして立ち上がり、スカスカなカバンにもらったお茶のペットボトルを片付けて帰り支度をする。

 

 

「あぁ、そうだ。君、比企谷君。封印だとか根絶だとかは無理だけど、フォルマの研究がある程度結果を出してね。君に売れるモノが少し増えたよ。

 具体的に言えば、チャッカマン代わりだったり、静電気発生装置的な? まぁ、君に必要かどうかはわかんないけど、是非ごひいきに」

 

 

 今までのフォルマ取引量が彼女たちの研究成果を導いたようで、今石燕からそう告げられる。

 

 どうやら今石燕から買える物のラインナップが増えたようだ。

 

 パレスで使えばアギ等の初級魔法の効果を持つ使い捨てアイテムが追加された。

 

 

 

 今石燕との仲が深まった気がする

 

 

 

「君たちはこれからどうする? 俺は、優美子や戸部に合流してそのまま適当に遊ぶ予定だけど。よかったら二人もどうかな」

 

「僕は学校に戻って練習するから、ごめんね。八幡は?」

 

「予定はないが、行くつもりも無い」

 

「…そうか。じゃ、また明日」

 

「葉山」

 

 

 解散する直前、それぞれが分かれようとした背中に八幡が呼び止める。

 

 振り返るその顔は常の微笑みを浮かべているが、一体どんな心境なのだろうか。

 

 

「頭下げるんなら、仲間に入れてやっても良いぜ」

 

「…はっ。ナイスジョーク」

 

 

 意地の悪い顔で吐かれた言葉に、一瞬キョトンとしてやはり意地の悪い顔で拒絶する。

 

 危険は避けるべきという隼人の信条からすれば八幡や雪乃は相いれない。

 

 けれど、そこに友達である結衣や戸塚が含まれている。

 

 友達が危険に飛び込むことも出来るならば許したくない。

 

 その根本的な解決法を探る手段として虎穴に飛び込む必要が出てきた。

 

 だからと言って隼人が協力しようものなら、必ず優美子が追いかけてくる。

 

 友達を危険から遠ざけたいのに、自分から近づけさせてしまうのでは本末転倒。

 

 だからこそ、八幡の申し出を口実にする手段は、一つの方法としてよかった。

 

 優美子は決して彼女らに頭を下げようとはしないだろうから。

 

 

「君に下げる頭は無いよ」

 

 

 一人、皆との待ち合わせ場所に向かう中、独りごちる。

 

 スタンスも違えば信条も違う。

 

 自分を曲げるのは出来ればしたくないし、自分までも変な行動をとってしまえば誤魔化しがきかなくなってしまう。

 

 それが何よりも嫌だった。

 

 けど、その気遣い(とてもひねくれた)には内心、感謝しないでもなかった。

 

 

「ほんの少しだけ、だけどね」

 

 

 

 その時、八幡の頭に不思議な声が囁く

 

 

 

<汝は我、我は汝>

 

<我、新たなる繋がりを得たり>

 

<繋がりは即ち、前を向く支えとなる縁なり>

 

<我、皇帝のペルソナに一つの柱を見出したる>

 

 

 




愚者……比企谷八幡(アマノジャク)
魔術師…材木座義輝(ギュウキ)Rank2
女教皇…雪ノ下雪乃(ライジン)Rank2
女帝…平塚静 Rank2
皇帝…葉山隼人(ツチグモ)Rank1 New
法王…川崎沙希(オニ)Rank2

恋愛…由比ヶ浜結衣(ザシキワラシ)Rank2
戦車…三浦優美子(???)
正義…鶴見留美 Rank1
隠者
運命…戸塚彩加(ノヅチ)Rank2
剛毅(力)

刑死者
死神
節制
悪魔




太陽…比企谷小町 Rank1
審判…佐々木三燕(今石燕) Rank2 Up
世界…奉仕部 Rank2
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