やはり俺の○ル○ナは間違っている   作:hung

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はるのんはラスボスを除けば最強です
原作でもそうだったからね!

ところで今グリッドマンユニバースがアマプラで観れますよ!ぜひ見よう!

p5tはうーん、今の所は言及しないでおきます


隠す事も無く雪ノ下陽乃は最強格である

6月15日(金) ハルノパレス

 

 人の気配、生き物の息吹すら感じられない、死が充満しているかのように錯覚する空間。

 

 人が生きる場所ではなく魔の住み着く場所と化した、外観だけは現実と寸分違わない商業施設を模したパレス。

 

 その施設の一角、通路の曲がり角からアホ毛が主張する頭がひょこっと生えて三白眼じみた目つきで周囲を窺い、背後へと合図を送る。

 

 クリアリングの役割をこなす八幡が出てくると、それに続き一人、また一人と曲がり角から現れる。

 

 先頭に警戒兼ナビ役として八幡。その護衛の為、すぐ後ろから最高戦力に近い実力を持つ雪乃と火力特化の優美子が続き、回復役の戸塚、範囲攻撃を得意とする材木座、最後尾に全体を見守るモルガナ。

 

 ザイモクザパレスでの訓練でこれが雑魚シャドウに最も不意を打たれづらい、かつ不意打ちされても幾らでもリカバリーできる隊列だった。

 

 しかし、最善を尽くした行軍であると言うのに、後ろから二番目三番目の彼らの顔色はあまりすぐれない。

 

 それもそのはず。

 

 たとえペルソナと言う非現実に少しずつ慣れてきたとはいっても、今回のパレスは特別だ。

 

 

「は、八幡よ。ほ、ほん、本当にこの禍々しい気配の(みなもと)は、ち、近くに居ないのであろうな」

 

「…居ない、はずだ。よな、モルガナ」

 

「スンスン…ワガハイの鼻にも引っかからねえぞ」

 

「で、であるか。そうか、そうであるか。…………………はふぅ」

 

「ざ、材木座君もやっぱり、怖い…よね。僕もパレスに入ってから震えが止まらないや」

 

「あんまびびりすぎてっと、いざって時うごけないから。適度に息抜いときな」

 

 

 材木座と戸塚だけは前回、このパレスで雷に打たれるような死の予感に出会っていない。

 

 刈り取るものとの遭遇の経験が無い。

 

 しかし、パレスに満ちた死の気配だけは、感知型ではない彼らのペルソナでも敏感に感じ取ってしまう。

 

 結果、具体的な対象も無いのに、酷く恐怖心だけが駆り立てられるのだ。

 

 あるいはそれを本能と呼ぶのかもしれない。

 

 とは言っても、他のメンバーに余裕がある訳でもないが、既知である事が比較的マシに(強がって)振る舞えている大きな要因なのは変わらない。

 

 そんな全員がおっかなびっくり、遅々とした歩みをしていれば逃れようも無い事態と言うのは自然とやってくる。

 

 

「…前方二時方向。こいつは刈り取るもの、だな」

 

「後方八時方向にも同様の気配がするぜ。ちんたらしてたら挟み込まれるぞ」

 

 

 ついに死の恐怖との遭遇が避けられなくなった。

 

 もしかしたらこの異様な気配は前回の残り香で、居ない事を1%くらいは期待していた面々もごくりと喉を鳴らす。

 

 

「…姉さんが居るのは恐らく、上階。屋上だとか、その辺りだと思うのだけれど、その方向へ向かうにはどちらの方へ行けばいいかしら?」

 

「二時方向の気配の奥にフロアの切り替わりが感じられるから、多分、そっちだな」

 

 

 八幡の返答に一度だけ目をつぶり胸元を押さえて深呼吸する雪乃。

 

 ぎゅっと手を握り、眼を開く。

 

 そして宣言する。

 

 

「なら、そのまま前方の刈り取るものを突破して一気に突っ切るわ。…分かっているでしょうけれど、僅かにでも交戦しようとは思わない事。なりふり構わず、走り抜けなさい」

 

「「りょ、了解/しょ、承知した」」

 

 

 ことさら、材木座と戸塚へと言い聞かせるように、二人を見つめて釘を刺す。

 

 いざ、接敵した瞬間、恐怖からパニックになってもらわれては困る。

 

 実際、八幡はパニックになって普段の彼ならしないような真似をしたのだから。

 

 

「モルガナちゃん。彼らのフォローをお願いね」

 

「任された」

 

「三浦さん、遅れないように」

 

「誰に物言ってんだし」

 

 

 強気な返事にふっ、と努めて軽い調子を作って笑顔を取り繕う。

 

 そして、最後に

 

 

「…比企谷くん」

 

「おう」

 

「信じて…いいのね?」

 

「いや、そんな期待されても困るんで、出来れば上手くいけば儲けものとでも「信じるわ。だから、確実に為すべきことを為しなさい」へ、へい」

 

 

 虚勢を張る自分とは違い、普段通りの彼。いつもの調子を崩さない様子を確認して、断言する。

 

 がちがちに固められた手を開いて、スムーズに走り抜けられるよう靴の調子を確認する。

 

 徐々に強まる恐ろしい気配と微かに聞こえてきた鎖の音に、今立ち止まれば足は震えが止まらなくなるだろう。

 

 それでも、彼女には先へと進む理由が存在した。

 

 

「行くわよ…全員、走れ!!」

 

 

 告げ、一気呵成に走り出した。

 

 

 

 

「前方、距離150、125、100…目視確認!」

 

「ヒッ…あいたぁあああ!」

 

「ぼさっとしてんなザイモクザ! 走れ(Run!)! 走れ(Run!)! 走れェェえええ(Ruuuuuaaan!!!)!!!」

 

「怖い…すごく怖い。けど! 僕は臆病者じゃ、ない。男なんだぁ!!!」

 

「接敵まであと50!」

 

「って、あいつ何か銃構えてんだけど!!!?」

 

「比企谷くん!!!」

 

「止まるんじゃねえぞ、走り抜けろ。残り30、20」

 

 

 ドタバタと走り続ける高校生たち。

 

 肉体的疲労が反映されないパレスの特性を活かして、全力疾走を続ける。

 

 目前に血に塗れたコートを羽織り、極大の威圧感を与える特大の銃を構えた、刈り取るものの姿が近づいてくる。

 

 異様な大きさの銃口が駆けてくる面々を屠ろうと向けられ、何かの力が光となってその銃先に収束していく。

 

 コンセントレイトされているわけではない。

 

 眼光を光らせ、多重行動しているわけでもない。

 

 ただの()()()()()()()を放とうとしているだけ。

 

 それを一発でも放たれ無防備に食らえば、彼らは塵も残らず三途の川を渡ることになるだろう。

 

 それほどまでに存在の格が違う。

 

 必死に足を動かす全員の瞳が妖しげな光を携える銃口に吸い込まれ、もう何をするにも間に合わない。

 

 視界がスローモーションに動き、走馬燈が流れるのを覚悟したその時。

 

 

「距離10…今! これでも、くらえぇ!!!」

 

 

 八幡が懐から取り出した人形をオーバースローで投げつけた。

 

 

「は?」

 

 

 誰の口からか、戸惑った声が漏れ出た。

 

 ふわりと、しかし素早く投げつけられたその金色の猫らしき人形は、今にも致命の一撃が発射されそうな銃口を通り抜け、その先。

 

 刈り取るものの、のっぺりした白い仮面にぺちっと軽い音を立てて当たった。

 

 そして…攻撃は、発射されない。

 

 ぼんやりと、自分に当たって転がり落ちた人形を不思議そうに見つめている。

 

 

「…よっし。今だ、逃げろぉおおおおおお!!!! 一応使っとくぞ『アマノジャク』! 『トラフーリ』!!」

 

 

 八幡の叫びにあまりの事態に止まりかけた足が再起動する。

 

 トラフーリの魔法の効果で一気に距離を稼ぎ、それでもなお全員が走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、人形…人形(ひとかた)か。古くは人の厄を身代わりにする為、作られた概念。日本だとひな人形だとか藁人形が有名だったか。

 厄を押し付け、対象を誤認させるって役割としちゃあ、最適だな。懐に入れておくことで限界まで自身と見分けがつきにくくさせる。

 概念として存在してるシャドウからすりゃ、一瞬じゃ判別つくわけがねえし戸惑うのは当然。ハチマンおめえ、すげえじゃねえか!」

 

 

 走り続け、脇に認知の外れ、帰還スポットとして使えそうな場所を見つけてなだれ込み、ようやく落ち着いて話せるようになった時、モルガナが手放しに八幡を褒める。

 

 あ、うん。まぁな。うん、そうだろ。とか言って珍しく手放しに褒められている事に戸惑っている様子。

 

 それを「へぇ、やるじゃん」と見直している優美子に、「やっぱり八幡はすごいや」と頬を緩ませる戸塚。

 

 最も雪乃と材木座は「そこまで考えてたのかしら」「多分こやつそこまで考えておらんぞ」と訝し気に、けれど空気を悪くするのもなぁと黙っている。

 

 なお、真相は「いや、ほら。あるじゃんポケモン。ピ○ピ人形。あれってもう日本人的には共通認識じゃん? ニンテ○ドーは日本人だったら誰でも知ってるし、なんなら世界でも知られてるし。だからワンチャンいけるかなぁって」と言う雑な思い付きだった。

 

 知ってるか、ポケモン初代の発売は1996年…そんだけの時間があれば人の語り継ぐ神話としての格を得てもおかしくないだろとかなんとか。

 

 それが失敗したとしても、ギリギリまで引きつけてからの『トラフーリ』で目の前から急に消える事で逃げるデビルバットゴーストもどきとか、他にもう一つ奥の手を考えていたが、一発目で、しかも最も消耗の少ない策が成功して良かったと内心でホッとしながらポケットの中で握りしめる八幡。

 

 

「ともあれ、確実にあれから逃げられる手段が確立したのだから、懸念事項はクリアされたも同然ね。後は、目的地までひた走るのみ」

 

「うっし、ハチマン。ナビはワガハイに任せろ。その代わり、刈り取るもの対策は任せたぜ」

 

「…おう」

 

 

 咄嗟に取り出せるよう、ぎゅうぎゅうに詰められたカバンから人形を懐に忍ばせて、一行は気分新たに出発する。

 

 なお、材木座が「そのような効果のある切り札ならば我にもよこせ!」と所有権を主張して幾つか取り戻していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『およ? 遅かったねぇ。お姉さん、待ちくたびれちゃった』

 

 

 ようやくたどり着いたハルノの待つ場所の直前、階段の踊り場で準備を整え屋上に繋がる扉を開く。

 

 晴天の空の下、佇んでいたのは予想通りのハルノ。パレスの主の姿。

 

 

『まぁ刈り取るもの(あれ)は流石にやりすぎたとは思ったけど、今更設定変えるのも面倒だし、()()()()()()()()()()仕方ないっちゃ仕方ないか』

 

 

 陽気な様子でけらけらと笑う。

 

 その姿は現実と変わる事無く、ひたすらに自然体。

 

 

『雪乃ちゃん、案外負けず嫌いだからね。突撃しちゃったらヤバいかもって思ってたけど…予想より慎重に動けたね、偉い偉い』

 

 

 パチパチと軽い手拍子で上から目線で褒めるハルノにイラッと来る雪乃。

 

 しかし、その言動を止めようとする事はない。

 

 

『でも、雪乃ちゃんがそんな風に慎重になったのはもしかして、そこの友達の為? それとも…他の人の為?』

 

 

 なぜなら、彼女の成形(なりかたち)は本当に、誇張無く、現実と変わりが無かったのだから。

 

 通常、とは言ってもユキノ、ユイ、ザイモクザ、ユミコの経験則ではしかないが、悪神の欠片に寄生されパレスの主となった人間の様子は精神的に暴走し、肉体的には暗く染まり明らかに異常が見て取れた。

 

 これはモルガナの思い出せる記憶とも一致しており、メメントスやパレスで精神暴走を起こしている対象は見るからに現実の姿とは異なっていた。

 

 なのに、ハルノの様子は現実と同じ。強いて言えばうっすらと瞳が光っている様に見えるくらいだろうか?

 

 思わず、モルガナに確認を取ってしまう程にはハルノの状態は異常(現実と同じ)だった。

 

 

「モルガナちゃん。本当に、姉さんに悪神の欠片が?」

 

「間違いねえ。悪神のアンチとして生み出されたワガハイの鼻は陽乃殿にビンビンに反応してるぜ」

 

『もう、雪乃ちゃん! 無視は私でも傷ついちゃうんだぞ。こんな事になって戸惑うのも分かるけど、幾らなんでもそんなザマじゃ…』

 

「…っ!」

 

 

 ぷんすか、と私怒ってますポーズを取るハルノに、直前まで死の恐怖そのものから逃げ続けてきた緊張感が緩んだ。

 

 非日常で張り詰めていた彼らに、問答無用に戦闘に入るのでもなく、見た目が普通で日常的な会話に拍子抜けしたと言っても良い。

 

 戸塚が、材木座が、優美子が「これはもうすぐにでも終わるんじゃないか」と油断したその瞬間。

 

 

『キョトンとした顔で死ぬことになっちゃうよ?』

 

「散開!!!」

 

 

 ギュンとハルノの身体が飛び出し、彼らの間に存在していた距離が一瞬で縮まる。

 

 

 ガァン!!

 

 

 ギリギリまで緊張感を張り続けていた雪乃とモルガナ。そして、あまりのうさん臭さに微塵も気を抜いていなかった八幡がペルソナで、突然の急襲に着いてこれずボケっとした他三人を突き飛ばす。

 

 彼らの立っていた場所に飛び込んできたハルノの拳がものすごい音を立てて突き立てられ…

 

 拳は現実味の無い程の勢いで音を立てて地面を抉り、陥没させた。

 

 最も周囲に気を払っていた八幡だけがその様からまともに当たっていた時を想像して、背筋が凍りつく。

 

 回避行動に移った全員が思っていた以上に衝撃で吹き飛ばされ、ハルノとの距離を取り直す。

 

 

『ありゃ、失敗失敗。うーん、中々難しいね、これ』

 

「げほっ、げほっ。不意打ちとか調子こいてくれんじゃん! 『ムジナ』!!!」

 

『…ふぅん』

 

「『アギラオ』!!」

 

 

 冷静さを取り戻すより先に、突き飛ばされた痛みと鬱憤を目の前の女をぶちのめす原動力に変え、優美子の指示で長いファーが躍り火炎中級魔法(アギラオ)がハルノへと撃ち出される。

 

 轟っと、まともに当たれば全身大火傷では済まない火力がハルノの目前まで迫る。

 

 よっしゃ! と直撃を確信した優美子。

 

 

『こうかな?』

 

「えっ」

 

 

 しかし、その焔がハルノを焼く事は無く、ヒョイっと軽く身をずらすだけでカスる事すらせずに通り過ぎた。

 

 

「ぬぅん、幾ら女人であろうともアンブッシュは許すまじ! 我の叫びを聞けえぃ!! 『ギュウキ』『マハガル』!!」

 

「合わせるよ、材木座君! 『ノヅチ』『マハコウハ』!!」

 

『うんと、ここ』

 

 

 起き上がって直ぐに八幡と同じ衝撃を感じて腰が引けていたが、優美子に触発され一足遅れで材木座と戸塚が初級範囲魔法で衝撃と光をまき散らす。

 

 先ほどの炎と比べて弱いが、それでも触れれば傷つき身体が揺らぐ風と光が薄く広がり、ハルノへと殺到する。

 

 しかし、それらもちょっとだけ考えたそぶりを見せたかと思うと小走りして、或るポイントで立ち止まり

 

 

「ウソでしょ」

 

「我らの魔法が…まるでモーセのように、あやつを避けておるだとぉ!?」

 

 

 範囲を広げた所でフォローしきれない場所はどうしても出てくる。

 

 元々威力の高くない魔法でもあり、ポイントポイントで凪のような場所が生まれる為、範囲魔法でもシャドウに避けられる事は普通にある。

 

 しかし、それを補うため隙を埋める二連続魔法だったのに、難なく見極められハルノの身体に一筋の傷すらつけることなく終わった。

 

 

『………びびったら、負け。だよ? 雪乃ちゃん』

 

「っ、『ライジン』!」

 

「雪ノ下!!」

 

 

 事態に着いていけず、呆然とする彼女たちにクスリとあざけるような笑みを浮かべハルノが身体を躍らせる。

 

 

「だ、大丈夫。けれど、生身、だとは、思えない程」

 

 

 ふわりふわりとまるで舞踊でも舞っているかのように、軽やかな動きでハルノが雪乃に襲い掛かり『ライジン』の腕を掴み、極めようとするのを咄嗟に躱し、その動きを逆手にとって脚を払い重心を崩す。

 

 しかしペルソナは脚を地面に着けていない為、思ったよりも効果が出ない事に『およ?』と軽く驚きながらも掌底を肩に叩き付ける。

 

 

『うん、案外難しいね。実戦って』

 

「っ、うっ。くぅ」

 

「フォローするぜ! 威を示せ『ゾロ』!!」

 

『ありゃ、刃物は怖いなぁ』

 

 

 そう言いながらも、『ゾロ』のレイピア、モルガナのシミターの連続攻撃をひょいひょいと避け、時には素手でいなし。

 

 そんな中でも雪乃への猛攻は止まらない。

 

 最も白兵に長けたモルガナを相手取りながらも、次点で強い雪乃の自由を奪い続ける。

 

 しかも

 

 

「だぁ! もう、あんたら邪魔だし!」

 

「ど、どうしよう。援護したくても、雪ノ下さんとモルガナの動きを避けて魔法を当てるのは僕には」

 

「我の照準は戦国の火縄レベルである故、スナイパーがごとき精密射撃は適わんぞ!」

 

 

 援護射撃を試みる三人の射線を常に意識しながらの動作を保ち続けてすらいる。

 

 最も立ち回りに長けている雪乃と経験からの技巧を持つモルガナ二人をして互角。

 

 いや、明確に

 

 

「二人がかりで手も足も出ないとか。雪ノ下の姉ちゃんは…化け物か」

 

 

 格上だという証左だろう。

 

 驚愕の声を溢す八幡の呟きが彼らの偽らざる心情だった。

 

 

『酷いなぁ。その言い草。そんなこと言う悪い口には』

 

「避けろ、ハチマン!! っぐ」

 

「やべっ」

 

 

 打突音と金属音が響く中、ハルノの腕がひょいと軽い調子で八幡の方へと振られる。

 

 その腕の先、手の平から小さな石が飛ばされ、床を陥没させる膂力から予想される威力に横っ飛びで逃げる。

 

 勢いあまってごろごろと転げながら中衛位の位置から魔法を飛ばしていた後衛までみっともなく後退した。

 

 咄嗟に警告を出したモルガナが腕を戻すついでとばかりのハルノに掴まれ、八幡の居たスペースに投げられ距離を離された。

 

 

『あれ?』

 

 

 変わらず雪乃へと襲い掛かりながら、ハルノは小首をかしげる。

 

 

「やべえ。なんだよ、あの怪物。マジでやべえ」

 

「だが、やってやれねえことはねえ」

 

『さっきから、思ったよりもあんまり力が出て無いような』

 

 

 放たれた石が当たらなかったのはともかく。

 

 それが狙いよりもずっと近くに落ち、後ろの目障りな有象無象ごと潰すつもりだったモルガナも途中で失速し、クルンと空中で姿勢を取り戻して再突貫してくる。

 

 最初の一撃はともかく、それ以降は自身の想定以下の結果しか出ていない事を訝しむハルノ。

 

 攻勢を緩め、少し防御へと意識を傾けながら自分の想定を外す事になった要因を探す。

 

 

 

 雪乃、緩めた攻勢ですら必死になっている。余計な事をする余裕もないし、過去の経験からも自身の想定を崩すのは無理。

 

 猫、自分の知らない技術があるかもしれないが、見る限り搦め手よりも正々堂々と挑む性質。違う。

 

 後ろの女の子、自分たちの攻防に何とかして隙を見つけられないか目を凝らしているだけ。あと短気そう。違う。

 

 中性的な子、自分のやる事を決めてる感じ。だけど、こっちに割り込もうって意識はないね。多分違う。

 

 太ったの…は、オロオロしてるだけだし、100%違うね。

 

 

 

『…じゃあ、キミだ』

 

「っ!!」

 

 

 じとり、と消去法で残った男の子を、八幡を睨む。

 

 考えてみれば、最初から彼は周囲を庇ったり、声をかけて警戒を促したりと視野を広く保っていた。

 

 このパレスと言う『らしい』空間に満ちさせた気配に惑わされず、冷静さを保てている点だけでも注意に値するのに、今まで注目できなかったのは彼自身の影の薄さに起因するのだろうか。

 

 …あと、みっともない堂々とした逃げ姿とか、隠しきれない情けない様子もカモフラージュとして働いていたのが多分にある。

 

 己に向けられた視線に気付き身をすくませ、こそこそとするがもう遅い。

 

 

『…へぇ。力を弱くする魔法かぁ』

 

「ばれてしまったようね。けれど、気付かれたところで意味はないわ。

 彼が重ねた弱体化で、既に姉さんの力は私一人でも対処可能な範疇に収まっているのだから」

 

 

 自慢気にする妹をあしらいながら、ふむと思案する。

 

 確かに、ハルノの攻勢は眼に見えて落ちている。

 

 とは言え、目の前の雪乃とモルガナへの対処はハルノにとっては()()()()()()()

 

 

「さあ。姉さん。少しは痛い目を見なさい。これまでのあれこれを反省させてあげるわ」

 

「ゆ、雪乃殿。私怨が混ざってねえか?」

 

「結局、いつものパターン(弱体フルボッコ)であるな。勝った第三部完!!」

 

「最初のあれからすれば拍子抜けじゃん」

 

 

 けれど、それは端的に言って

 

 

『面白くないんだよね』

 

「えっ」

 

 

 ぼそりと呟いた瞬間、ハルノの現実と変わりない身体が二重にブレ

 

 須臾(しゅゆ)にして消えようとする隙間からドロリと黒が湧き出し

 

 刹那の間に黒の汚濁がハルノを染め上げてしまう。

 

 ハルノの姿は今までのパレスの主のように黒くなり、そして

 

 

「あ、あぁ…」

 

「ウソ、だろ」

 

 

 パレスで何度も逃げ回ったあの()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()噴き出していた。

 

 

 

 確かにパレスの主であるなら、そのパレスに徘徊するシャドウより強くともおかしくない。

 

 けれど、それでも、いくらなんでも

 

 刈り取るものと言う存在は規格外にすぎた。

 

 死の気配を振りまき、見るだけで圧倒的な格の違いを感じ取らせる。

 

 生物として立ち向かっては、いいや関わる事すらするべきではないと理解してしまう理外の枠。

 

 それを越える訳がないと、あれが居たのは何かしらの間違いだと、全員が内心、眼を逸らしていた事実が目の前にある。

 

 であるならば、気のゆるみと言う隙間に浸透してしまった恐怖は必然

 

 

「ぁ、ぁぅ、わあああああああぁああ!!! 『コウガ』ぁ!!!」

「ぬぁああああ『エイガ』!!!」

「っきしょうがぁ! ぶっ飛ばすし『アギラオ』!」

 

 

 恐慌をもたらす

 

 

 戦闘・遭遇回数(経験)の不足していた三人が突発的な死の顕現にパニックを起こし、己の出し得る最大火力を振り絞って殺到させる。

 

 光が、闇が、炎が

 

 異常な空気を生み出す元凶を消し飛ばさんと限界を超えて力を注ぎこんだ一撃がハルノに叩き込まれる―――

 

 

『『マカラカーン』』

 

「えっ」

 

 

 直前、僅かに身じろぎしてぽそりと呟くようにハルノの口が動き、彼女の前に光り輝く鏡のようなナニカが歪な形をして現れた。

 

 それぞれが周囲を気にすることなく勝手に放った、バラバラに飛んでいた魔法が歪な鏡に()()()()()着弾し

 

 

―――反転

 

 

 万能属性以外の魔法を問答無用に反射させる魔法『マカラカーン』

 

 これが作用するのはたった一度限り

 

 一回の使用で一回分の魔法だけを反射する。

 

 もちろん、範囲魔法に使えば、その規模までを反射する。

 

 しかし、単体魔法であるならば、その魔法を放ってきた持ち主へと反転するのが()()()『マカラカーン』である。

 

 だと言うのに、ハルノの出現させた反射鏡はデコボコと歪な形をし、立ち位置の調整と併せて三発の魔法を全く同時に受け止め、一度の魔法行使で全てへと対処してしまった。

 

 それだけで筆舌に尽くしがたい絶技である。

 

 一度で最大限の結果を得る事の出来る才人、超人と言い換えても良い。

 

 ならば、それを更に

 

 

「逃げろ! ハチマン!!」

 

 

 三つの魔法を()()()()()()()()()()()()()()()などと言う芸当を為した者をどう表現すればいいのか。

 

 別々のタイミングで放ったはずの魔法群は、全く同時のタイミングで反射され、すべての破壊力をそのままに後方でとにかく弱体化の為『タルンダ』を連発していた八幡へと殺到し

 

 

「ぺる…」

 

 

 モルガナの叫びにギリギリで出せたペルソナ、『アマノジャク』の姿が

 

 

「あっ」

 

 

 狩衣姿のもう一人の彼が現れたのと同時に中級魔法三発(コウガ・エイガ・アギラオ)が一斉に着弾、不意を打たれた事で全属性弱点となってしまった事で拮抗すらできずに消し飛んだ。

 

 

「…八幡?」

 

 

 そもそも大きくない、他者評では腐っただとか死んだようなと形容されるその目、黒目の部分がグルンと反転して白目をむき

 

 膝からカクンと力が抜けるように、どさりと崩れ落ちた。

 

 

「八幡? 八幡、八幡ったら!」

 

 

 戸塚の声にも、揺さぶりにも応えることなく、倒れた身体は為すがままにされていて

 

 

「ウソであろう…そんな馬鹿な事があってよいわけがない。こんなあっさりと、なにを為す事も無くお主が! 道半ばで倒れる訳が無かろうが! 八幡! 眼を開けよ!!」

 

 

 材木座の叫びを鬱陶しがることもなく

 

 

「息、してないし」

 

 

 確認する為に手を口元にかざした優美子が確認した通り

 

 

 

 比企谷八幡は死んだ

 

 

 







比企谷八幡は三度死す



ペルソナメモ
 P2の時点で歴史の浅い都市伝説が敵として出現(ツチノコ、テケテケ等)しているのであれば、ポケモン初代も十分認知の範疇だろうとピッピ人形的な効果で刈り取るものを回避しました。もちろん、これはペルソナ原作にはないし、なんならトラフーリだけでも十分なはずだが、それだけで安心できない位には恐怖心が掻きたてられた。仕方ないよね、刈り取るもの(裏ラスボス)なんだから!
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