やはり俺の○ル○ナは間違っている   作:hung

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あとは閑話と顛末で三話くらい投稿したいです
閑話二話分は書きあがったので追加で投稿できますが、顛末が間に合いませんでした(11月20日現在)

多分今はP5Tに取り掛かり、終わったらDQM3が待っているので年内は無理だと思います
これ以上積みゲーを増やしたくないんです(アライズ、モナーク、メガテン3、13防衛、ポケモン追加DLC)おじさん許しちくりぃ
P3Rも待ってるし、いやぁ忙しいですね!(白目)
これはまた6月までかかるかもしれんな!ガハハ!
………彼らにヘイト貯め過ぎたくないのでできる限り早く書き上げます


雪ノ下陽乃の敗北宣言…?

6月15日(金) ハルノパレス

 

『負けた負けたぁ! 負けちゃったぁ!』

 

 

 身体中に焦げ跡と切り傷、そして削られた気力と負けを認めてしまった故の無力感に、大の字に倒れるハルノ。

 

 その周囲に回復の為陰から支え続けて疲労困憊の戸塚や、機を窺い続けて気疲れしたモルガナ、決定的な瞬間だけ火力を出す事に専念して比較的顔色がマシな材木座、同じくマシで唯一の女子として動けない雪乃を支える優美子たちが近寄る。

 

 その中でも一人、一度死んで生き返ったせいなのか、顔色が真っ青なまま這う這うの体で寄ってくる八幡に目を向けて、君さえ居なければなぁと思うも後の祭り。

 

 力の入らない身体を起こして座り込むのが精一杯。

 

 

「姉さんは」

 

『うん?』

 

「姉さんは、何がしたかったの?」

 

 

 さて、これ以上の悪あがきはみっともなさすぎるかと、素直に敗戦の将に甘んじようとするハルノに雪乃からの質問。

 

 この期に及んで別に嘘を吐く必要も、誤魔化すような意味も無く。

 

 

『…う~ん、何が、って言うと難しいけど。思い通りにならない人生、どうせなら滅茶苦茶になればいいって思ってた願望が膨れ上がった、って言うのが正直な所?』

 

 

 けれど、自分の内心程分からない物はない。

 

 特に自分の心にも嘘を吐くのが癖づいている彼女のような人間からすればなおさら。

 

 だからこそ、せめて他人の心を掴みたいとでもいう欲望が、彼女を『サトリ』と言うペルソナに目覚めさせたのだとも言える。

 

 レールの上を歩くような人生で多少なりとも抱いていた、自分の中に潜む破滅願望が悪神の欠片によって増幅させられた。

 

 そして、強力なチカラと、万能感に酔いしれたのが実態…

 

 

『あとはまぁ、私とは違って昔っからやりたい事、好きな事をやって来た可愛くも憎たらしい妹が、こんな面白い事を秘密でやってたって事もトサカに来たって面もなきにしもあらず?』

 

 

 悪戯っぽい笑顔で、皮肉気な言い回しで、ハルノはそう断言した。

 

 その言に思い当たる節はあれど、実感が伴わない雪乃が訝し気な様子を見せるが、ハルノの注意は既に妹から離れていた。

 

 今の彼女にとって最も注目する対象は

 

 

『そ・れ・よ・り……ねえ君、そうそこで死んだ眼と顔色してる男の子。雪乃ちゃんとデートしてた君』

 

 

 ギュルンと効果音が付きそうな目の色の変わりようで、八幡へと身体を向き直し、動かない身体をズリズリと無理くりに動かした。

 

 なお、『デート』の一言に雪乃が「だから違うと」とため息を吐き、材木座が「デートって、お主…嘘だよな。嘘だと、嘘だと言えぇ!!!」と八幡が死んだ時以上の嘆きで問い詰めようとしているが一先ず脇に避けておこう。

 

 

『私のペルソナが効かなかった理由は君のペルソナの名前を聞いた瞬間に理解したけどさ。でも、まだ気になる事はいっぱいあるんだよね! ねえねえ、教えてくれない!?

 君が投げて雪乃ちゃんが起動したあの石の効果は? 直前まで意識が無かったのにどうやって示し合わせたように雪乃ちゃんと息を合わせたの? 愛の力だったり?  なんで一歩間違えたら死にかねないのにあんな大胆な事やれたの? まだ奥の手とか残ってたりする? 死後の世界ってあった? 名前は?何処住み?年収は?好きな娘いる?雪乃ちゃん?私はどう?』

 

「比企谷ですけど…いや、あの、近いですヒィッ」

 

 

 キラキラとした眼で怒涛の勢いで質問をぶつけながらにじよってくる筆舌に尽くしがたい美人(なお、立ち上がれないので姿勢的に貞○子に近く、八幡自身も復活直後であまり動けない)にドン引きしながら悲鳴を上げる。

 

 読心によって周囲を把握し続けていた今のハルノにとり、今なお欠片も読心出来ない八幡と言う未知はそれ程にまで興味を覚えるものであったのだろう。最後の方はたちの悪いナンパの常套句になっているが気にしてはいけない。

 

 なお、ハルノの意表を突いた八幡と雪乃の即席コンボは、意識を取り戻した八幡(戸塚の膝枕でもう一度昇天しかけたのは内緒)が、戸塚に雪乃宛の伝言を頼んだことで実行できた面がある。

 

 もちろん、普段からコンビネーションを取らざるを得ない程に振り回されている経験が多々あった事は大前提だが、戸塚や雪乃が読心の対象となっていない瞬間を見計らったのは八幡(ぼっち)の面目躍如。

 

 更に、あのデクンダの石は優美子のペルソナ訓練中に偶然拾った、一つ限りの虎の子。

 

 雪乃が事前に経費で買い込んでいた初級魔法の石とは異なり、外せば後は無かった。

 

 この秘策も元々はピ○ピ人形作戦、デビルバットゴーストもどきと同じく、刈り取るもの対策の最後の一つであり、他に策はなく、八幡の閃きは既に払底していた。

 

 更に加えて、イゴールの断言が無ければ自分のペルソナがハルノのペルソナにとって一種の天敵であると確信する事は出来ず、あそこまで果断になれはしなかった事は想像に難くない。

 

 しかも、その天敵、読心を阻む特性も冷静に対処されてしまえば、唯一戦力として加算できた雪乃の疲労度も考えると、他に打開する策はなくどんづまりになっていただろう。

 

 そう言う意味でも、最後の総攻撃がハルノの不意を打てる最初で最後のチャンスであり、ある種やけっぱちに近い自暴自棄も合わさり、やるしかなかったからやったと言うのが真相である。

 

 断じて愛の力だとかではないし、ついでに死後の世界は存在してた。あの世は青かった(ベルベットルーム並感)。

 

 

「いい加減にして姉さん」

 

『やぁん、もう雪乃ちゃんのけちんぼ』

 

 

 ズリズリと這寄れハルノさんしていた身体を、優美子の支えから抜けて雪乃が残り少ない力で近寄り身内の恥は身内で雪(そそ)ぐと言わんばかりにひっぺがし、放り投げる。

 

 両名それで最後に残っていた力も尽きたのか、どさりと二人ともが倒れ伏してしまい、今度は起き上がろうとも出来ない様子だ。

 

 戸塚とモルガナが慌てて雪乃の下に駆け寄り、気休め位にはなるだろうと回復魔法を施す。

 

 

『…まぁ、ちょっと不完全燃焼感は残るけど、仕方ないよね。お姉ちゃんの負けよ。

 結局、私の敗因はジョーカー(天敵)の君をフリーにしちゃった事か……』

 

「ずるみたいなもんでしたから、こっちとしてもあんま勝ったって感じでもないですけどね」

 

「ふははは! 八幡よ、良い言葉を教えてやろう。『勝てば官軍』!! 『終わりよければ総てよし』これが武家の習いよ!」

 

「オタクに同意するわけじゃないけどさ。最終的に良けりゃまぁそれでいいじゃん」

 

『そうそう。勝った方はその位でいいのよ。じゃ、私の心に寄生してるお邪魔虫は君たちにプレゼントしてあげよう』

 

 

 その時、八幡の頭に不思議な声が囁く

 

 

 

<汝は我、我は汝>

 

<我、新たなる繋がりを得たり>

 

<繋がりは即ち、前を向く支えとなる縁なり>

 

<我、悪魔のペルソナに一つの柱を見出したる>

 

 

 そう言ってハルノは事もなげに悪神の欠片を自身から分離し、ふわりと浮かんだパンさん人形の姿をしたそれを見て、ようやく区切りがついた。

 

 こうして、雪乃との結衣への誕生日プレゼント選びに始まる雪ノ下陽乃とのゴタゴタは終焉を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!! はあ…はあ…! よかった、間に合った」

 

「由比ヶ浜?」

 

 

 しかし、陽乃の一件が終わったとしても忘れてはいけない

 

 

「それが、悪神の欠片、なんだね」

 

「どうして貴女がここに…?」

 

「ちょっと、結衣には内緒ってあーし言ったよね」

 

 

 雪ノ下陽乃が悪神の欠片を手にしてしまった原因を

 

 

「…ふぅん、そっか。もう最後の最後って所なんだ。だったら私(・)的には手間が省けてラッキーだったかも」

 

「結衣殿? さっきから何を言ってるんだ」

 

 

 悪神に飲み込まれる前の陽乃が雪乃との会話で言っていた

 

 

『ちょっとお家の付き合いってやつ。まぁ、うちのお母さんとは反対な、女所帯のうちが隣の芝生な小父様とショッピングしてたんだ。で、途中で雪乃ちゃんを見つけておもし、楽しそうだなって』

 

 さて、ここで一つ。原作で雪ノ下母が八幡と一緒に会食した際、ははのんは男の子と一緒に食事する事に(演技とは言え)舞い上がっていた(風説の流布)。

 ともあれ、女所帯の雪ノ下家は『男子との団欒』に一定の憧れがあるのは確かである。

 

 なら、その逆に『娘がおらず』『雪ノ下家と家族ぐるみの付き合いが有り』『陽乃が途中退席を躊躇わない仲』の人間とは?

 

 

「ごめんな、優美子。君の気遣いは嬉しかった。だけど、俺にはこうしなきゃいけない理由が出来てしまった」

 

「葉山君まで? えっ、えっ?」

 

 

 ようやく終わりが見えてきたパレスに、静かな足音と共に葉山隼人が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 6月15日(金) ハルノパレス

 

 前触れも無く現れた結衣。急いできたのか、息を切らしている彼女の登場に誰もが呆気にとられて固まる。

 

 その結衣の後ろからゆっくりと歩いてくる彼の姿に更なる戸惑いが隠せないメンバー。

 

 悪神を分離してブーストがなくなり読心が出来なくなったハルノも、眉間に皺を寄せて何が起こっているのか事態の進展を見極めている。

 

 ある種硬直している状況で、やはり最初に動くのは彼女だった。

 

 息を弾ませて隼人の先を進んでいた結衣が、唐突に怪しげな笑みを浮かべ…

 

 

「誰もそれ、取らないの? じゃ、私が貰っちゃうね」

 

「なにを…っ!?」

 

 

 宙ぶらりんになっていたパンさん人形(悪神の欠片)へと手を伸ばした。

 

 

「あははは! 回収おわりっ! なんだ、簡(・)単(・)で(・)し(・)た(・)ね(・)」

 

 

 結衣の唐突な行動に、疲労感も合わさり誰もが反応する事も出来ずに呆気なくその手にオタカラ―悪神の欠片―が納められた。

 

 普段の結衣の様子と比べると狂笑と言わんばかりの様相で笑う彼女に、その友人がまず初めに気付き指摘する。

 

 

「…あなた、誰。由比ヶ浜さんではないわね」

 

「あーしの友達の振りして、舐め腐った真似してくれんじゃん」

 

「え~。私だよ、私。優美子。私は由比ヶ浜結衣」

 

 

 きゃぴるんとした様子で、普段の由比ヶ浜結衣では絶対にしないような仕草で主張するそれに、白けを通り越して怒りの形相を隠せない二人。

 

 

「由比ヶ浜さんはおバカだけれど、あなたの様に人を小バカにしたような態度を絶対に取らないし、なによりもう少し品と言うモノがあるわ。ふざけているのかしら」

 

「つか、誰に許可とってあーしの名前呼び捨てにしてんだし。いい加減はっきりしな!」

 

「……ふふっ。やーん、葉山せんぱぁいばれちゃいましたぁ」

 

 

 雪乃と優美子の激発に口の端だけを歪ませて笑みを浮かべ、次の瞬間にはしなを作り媚びるかのような声で隼人へと走り寄る。

 

 その一幕だけとっても、彼女が由比ヶ浜結衣ではないという証明であった。

 

 結衣が葉山隼人にそうした態度を、しかも彼(・)の目の前で取るなどと言う事は決してあり得ないのは優美子などからすれば自明の理。

 

 だと言うのに、その女の顔も身体も声も。

 

 仕草以外の全てが由比ヶ浜結衣を主張していて、違和感が天を突いていた。

 

 

「はい、どうぞ。葉山先輩」

 

「………ありがとう、い(・)ろ(・)は(・)」

 

「むぅ! 折角変装してるのに、名前言っちゃダメじゃないですかぁ…まぁいいですけど」

 

 

 視線の集中砲火を浴びながらも淡々とした態度を取っていた隼人が結衣擬きに、そう呼びかけると「ぽんっ」と軽い音を立てて結衣の姿が煙に包まれ、その煙が晴れた場所には結衣とは似ても似つかない少女が一人。

 

 金(・)髪(・)に(・)花(・)の(・)髪(・)留(・)め(・)、(・)総(・)武(・)高(・)校(・)で(・)は(・)な(・)い(・)学(・)校(・)の(・)セ(・)ー(・)ラ(・)ー(・)服(・)を(・)着(・)た(・)幼(・)げ(・)な(・)女(・)の(・)子(・)の姿に優美子の視線が細められる。

 

 

「あ~、肩凝りました。ヤバいですね結衣先輩。あれ程のモノをお持ちとは」

 

「いろは?」

 

「けぷん。ともかく、はい葉山先輩。ご所望の品ですよ?」

 

 

 自分の軽口に視線が鋭くなった事に少しだけ焦ったようにしながら「いろは」と呼ばれた女の子は雪乃や優美子たちの姿は一切眼中に入っておらず、小首をかしげながら隼人へと奪い取った人形を差し出す。

 

 

「いろは…? それって。でも、あれとは」

 

 

 その様子を優美子は渋い表情で考え込んでいた。展開についていけない男どもも、この時点でようやく隼人やもう一人の女がこちらに敵対するような行動を取っている事に自覚しペルソナと武器を構え直した。

 

 

『…隼人、後からやってきて美味しいとこどりなんて横紙破りを私が許すと思ってる訳?』

 

 

 その中でぐぐっ、と困憊の身体を少し前までの雪乃と同じように気力だけで立ち上がらせて、睨み付ける。

 

 その様に目を細めながらも、隼人は意に介する事無く差し出してくるいろはと言う少女を見つめ、少し躊躇しながらも悪神の欠片を意を決したように受け取った。

 

 

「僕は、僕の正義を貫くためにどんな事でもやってみせる。

 どれほど醜くても、非難されても、許さない、許せない」

 

 

 その顔つきはほんの一週間前、サッカーの試合に応援に行ったときに見たものとは全く異なっていて、あまりの変貌に言葉が出ない優美子。

 

 疲労、戸惑い、コミュ障、それぞれの理由で気圧されている中、八幡だけが口を開いた。

 

 

「……こういうオカルトだとかは関わるべきじゃなくて、もっと大人とか責任の取れる組織に任せるべきとか言ってたのに、随分な変わり様じゃねえかよ」

 

「そう言われても仕方ないとは思う。だけど流されているだけの君が、そう言うのかい?」

 

「目で『何か言わないのか』って露骨に問いかけて来ておきながら、いざ言ったら梯子外すのってリア充っていつもそう。『誰か意見とかないですか』って聞いておきながら本当に意見が出てきたら『うわ面倒なやつが出てきたし』って顔に出すのマジで失礼だからな気を付けろよ」

 

「あっ、う、うん」

 

 

 いいや、隼人自身これが非難されるべきだと理解しているからこそ、最も憎まれ口をたたくであろう八幡を促した結果だったのだろう。

 

 少しでも時間を稼いで状況を改善したい八幡がその誘いに乗ったと言う、どこぞの貴腐人が見たら発狂する一幕だったが、それはさておく。

 

 予想だにしない反撃に、張り詰め過ぎた様子だった隼人が一瞬だけポカンとするが、直ぐに気を取り直す。

 

 

「ともかく、この悪神の欠片は僕がもらう。僕が、僕の為に、そしてついでに人類の為にも有効に活用させてもらう」

 

「今までの犠牲者を見ておきながらそう言っているのなら、貴方にはコメディアンの才能が欠如しているわね」

 

「冗談なんかじゃないさ」

 

 

 気を取り直して宣言し直した隼人の眼は真剣で、雪乃の言葉にも揺らがない。

 

 

『だから、そんな自分勝手を私が許すと』

 

「ごめん、陽乃さん」

 

 

 ただ、ハルノの姿だけは直視しきれず、目線を逸らした。が、それだけだった。

 

 

「例え、これが悪(・)神(・)の(・)復(・)活(・)に(・)つ(・)な(・)が(・)る(・)かもしれなくても、僕は、これを利用して復讐を成し遂げる! それが、僕の正義だ!」

 

「はぁ!? 悪神の!?? ハヤマ、おめえ何を言って」

 

 

 隼人の言葉に思わず叫ぶモルガナだったが、それもそのはず。

 

 モルガナがこうして悪神の欠片に対処しているのは、あくまで悪影響を起こす被害を防ぐ為であり、悪神の復活だなんて世迷言は最初から想定していない。

 

 詳細を問い詰めようと勢いづけて迫ろうとするも

 

 

「はぁい、猫ちゃんは話の邪魔しないでねえ」

 

「やが、うなぁあ!」

 

「わわわっ、おっと」

 

「戸塚殿、ナイスキャッチである」

 

 

 間にすっと割り込んできた『いろは』と呼ばれた少女がモルガナをヒョイとつまみあげて、何でもない様に放り投げられ、戸塚が受け止める。

 

 そうして全員の視線がそれた瞬間を見計らって

 

 

「……ふん!」

 

 

 稼いだ時間で僅かでも動けるようになった雪乃が隼人へと襲い掛かる。

 

 その身体にはうっすらとライジンの姿が重なって見え、ハルノとの戦いと同じく異能の力を宿した、人間を超越した膂力から発揮される速度は意識しても見失いかねない程。

 

 無理に無理を重ねて絞り出した彼女の狙いは、ハルノから排出され今は隼人の手に握られる悪神の欠片(パンさん人形)の一点。その回収だけを目的とした不意打ち。

 

 限界を超えて倒れかけた直後の更なる無理は、その後の事を考えない無謀であっても正しく意識の隙間を突く奇襲となり……

 

 

「え?」

 

「ありがとう『アラハバキ』……ごめん雪乃ちゃん」

 

 

 反応出来るはずの無い完璧な奇襲は隼人の腕へと吸い込まれ、雪乃の手が触れる直前、ガンと言う硬質な音を立て弾かれた。

 

 絶対に決まると確信した直後の顛末に雪乃の身体が硬直、そこに隼人の背後から阿修羅像の様な姿…ではない、まったく異質な土偶のようなずんぐりとした体格をした異形が振り下ろした拳に打ちすえられ

 

 

「あっ」

 

「雪乃殿!!」

 

『雪乃ちゃん!! このっ』

 

 

 限界以上を振り絞った疲労と、不意を突かれ返した事で呆気なく意識が沈み倒れてしまう。

 

 案外妹愛の強い(シスコン気味な)ハルノが、幾ら幼いころからの弟分とは言え、越えてはいけないラインを越えたことで直接的な暴力へと訴えかけようとした。

 

 

「お姉さんの相手は私でぇす」

 

『なに』

 

「『テトラカーン』」

 

『を…』

 

 

 後悔の色をした瞳で沈む雪乃を見つめる隼人に飛びかかろうとしたハルノとの間に、またしてもいろはが躍り出て『物理攻撃反射魔法』を唱える。

 

 その精度はハルノが行使した『マカラカーン』とは比べるべくも無く、単純で真っすぐな鏡だった。

 

 しかし、頭に血が昇り、なおかつハルノの能力をブーストしていた核(悪神の欠片)が分離したことで弱体化していた彼女を地に沈めるのには十分な効果を発揮する。

 

 

『ぐっ』

 

「は、はやま何某のペルソナはツチグモであったはずであろう! その力も我らとそこまで変わらなかったはず! 何故(なにゆえ)姿を変えておるのだ! 幾ら弱っていたとはいえ雪ノ下嬢をこうも簡単に下せる! わ、訳が分からんではないか!」

 

 

 隼人の様子、そしてもう一人の自分と呼べるペルソナの変貌、それがもたらした光景に固まり続けていた材木座の叫びが響き渡る。

 

 その叫びはこの場に居る全員の代弁であった。戸塚も、優美子も、八幡も、モルガナでさえもが理解に及んでいない。

 

 その様子をやはり悲しそうな目で見ながらも、隼人は自分の手の中に視線を戻し

 

 

『あっ』

 

 

 人形を握りつぶした。

 

 

「陽乃殿!?」

 

 

 原形を保てなくなったそれは光の粒となって隼人の身体へと吸い込まれていく。

 

 悪神の欠片と言うパレスの核、延いてはハルノの核と呼べるそれを形はどうあれ破壊したのだ。

 

 弱り切っていたハルノが、自身の核を砕かれて存在を維持できるわけも無く、倒れ込んでいた彼女の身体はあっけなく消え去った。

 

 

「うそっしょ」

 

 

 呆然とする優美子、その視線の先に居る隼人は周囲の光の粒を吸い込み続け、数秒もかからず吸い込み終わった。

 

 

「あっ…ぐぅ! があ!!」

 

 

 直後、隼人は身体を折り苦しみ始め、その側にはいつの間にかいろはという少女が控えていた。

 

 同時にパレスである商業施設がゴゴゴゴと音を立てて揺らいでいく。

 

 

「いけねえ! パレスの崩壊が始まった!」

 

 

 モルガナの叫び通り、パレスの主であるハルノが消えパレスが崩壊し始める。

 

 だと言うのに、もう一方のパレスの核である悪神の欠片が隼人に取り込まれた事で、パレスが物理的に崩れ始めていると言うのに。

 

 隼人といろはと言う女子の周辺だけはグニャグニャと歪んでいるが、足場は安定しているように見える。

 

 

「陽乃さんが、あの人が、筋道を立ててくれ、た…心を、侵食されて、も…!

 心(ペルソナ)を、隔離して、おけば…俺は、俺の、ままに!

 そして、陽乃さんへの、侵食と…君たちへの、対処に消耗した、状態なら!

 この力を、純粋な…力として、使える、はず、だ!」

 

「隼人!! っ、なん、これ! 近付けないし!!」

 

「早く脱出した方が良いと思いますよ? これ(崩壊)に巻き込まれてどうなるのかは私知らないんで」

 

「おいおいおい、直ぐに逃げないとやばくねえか」

 

「なんと!?? 我、出来ればもう走りたくないと言うか、歩く事は出来ても走るのはちょっと遠慮願いたいんだが!?」

 

 

 優美子が隼人へと手を伸ばすも、崩壊し始めた事で生じたひび割れがそれを阻み、その様子を興味なさげにしっしっと手を振る少女に噛み付こうとするも八幡たちの言葉に、それをしていられる余裕が無い事を理解する。

 

 

「戸塚のペルソナでも雪ノ下の意識が戻らん」

 

「ごめん、僕のペルソナがもっと強力な回復が出来れば」

 

「このままでは我ら生き埋めになってしまうぞ」

 

「ここはワガハイに任せてくれ!」

 

 

 全員が疲労困憊で万事休すか、と思ったその時、モルガナの叫びが聞こえて来る。

 

 何か考えがあるのかと、振り返った全員が

 

 

「さぁ! ネコバス(ワガハイ)に乗れ!!」

 

「「「「((((ネコバス???))))」」」」

 

 

 危急の状況に似つかわしくない軽バンの姿をした可愛らしいそ(・)れ(・)からモルガナの声が聞こえてきた事に、驚愕と疑問符で一杯になった頭をかしげたのだった。

 

 

「隼人!!」

 

「優美子…雪乃ちゃんも! 君たちは、無力だ…だから、俺は…これを、選んだ! 力のないままでは何も出来ないから!」

 

「三浦さん! 今は逃げるしかないんだ!」

 

「例え俺に残された道がこれしかないとしても、俺は俺の意志でこの道を選んだ。無力な俺には…だから悪神! 力を! よこせぇ!!!」

 

「っ! 離して!」

 

「ごめん!」

 

 

 必死に隼人へと近づこうとする優美子は、見かけによらず運動部らしい力強さで戸塚が押し込み、倒れ込んでいる雪乃を抱えて八幡も続く。

 

 一足早く運転席に座った材木座がハンドルを握り、モルガナから最低限の運転方法を教わる。

 

 二人、隼人といろはと呼ばれた眼鏡の少女を残したまま、モルガナカーは発進した。

 

 優美子が伸ばした手は届くことなく、崩壊していくパレスを脱出するのであった。

 

 

「……なんだってんだよ」

 

 

 全員に言いようのない不和だけを残し、ハルノパレスは崩壊した。

 

 




 ペルソナメモ
 ハルノパレスの流れでは全体的に選択肢が無かったが、これは八幡がそれ以外の行動を選んだ瞬間、ガメオベラしてたから。優美子を押し倒したり、積極的に行動したりしてたのも、それ以外の行動を取った場合漏れなくパトっている為。キャラ崩壊しなければ勝てないはるのんであった。
 なお、あくまで魔人としては出来損ない。人間の位階を飛び出した故の魔人だが、結局人の心、ペルソナを捨てきれなかったので魔人としては格下。吹っ切って行き着く所まで行けばテトラオート、マカラオート、スクカオート常備で必中、回避率超高、読心耐性持ちには開幕アンティクトン五連打とかする鬼畜魔人(メガテン4仕様)になるに違いない。今作ではそんな理不尽ボスにはならないので安心である。


サトリ…覚とも。人の心を読み、脅かし、隙を見て食おうとするが、意想外の出来事があると逃げてしまう。また、人を害そうとしないと言う説もあり、山神の化身ともされるとかなんとか。余談ではあるが、東方二次ゲーム、車椅子探偵さとりの第6話のOPはメガテン風にメイクされている。本当に何の関係も無かった

 アルカナ…悪魔

 ステータス…耐性無し、全属性弱点

 スキル…マカラカーン、テトラカーン、サトリ(全ての攻撃を回避し、一部魔法を強化する)

 当たらなければどうという事も無いを体現するペルソナ。八幡のアマノジャクと同類で補助に傾倒した性能。攻撃方法がないのも、弱点が多いのも、陽乃自身が根っこの方で『オカルトなんて有り得る訳が無い』と言う現実主義を捨てきれないから。『有ればそれはそれで楽しいよね』とロマンも捨てきれない為、最低限のペルソナの資質は持ち合わせていたのと、悪神の欠片と言うショックでこんな歪な形になった。
 ゲームでバトルするなら、サトリが有る限り全反射(無制限)、全回避(超高確率)なので勝機は無くなる。八幡が戦闘メンバーに居る限り、サトリが無効化されるという完全に八幡がメタ存在になるボス戦。なお、八幡のアナライズ、エネミーサーチ等の分析系も同じように効かなくなるので、弱点も分からない…が全属性弱点なので『八幡→デバフ、モルガナ→魔法ストーン、雪乃or優美子→魔法、総攻撃、戸塚→回復』で勝てる。ただし、八幡はイベントで途中まで退場させられるので、負けイベだと勘違いして全滅しない様にしましょう。悪神の欠片は全てステータスアップに費やされているので、物理一発、魔法反射だけで下手しなくても壊滅します。

悪魔のアルカナの正位置には『裏切り・堕落』逆位置には『新たな出会い・束縛からの解放』と言った意味が含まれる。


愚者……比企谷八幡(アマノジャク)
魔術師…材木座義輝(ギュウキ)Rank2
女教皇…雪ノ下雪乃(ライジン)Rank2
女帝…平塚静 Rank2
皇帝…葉山隼人(ツチグモ)Rank1
法王…川崎沙希(オニ)Rank2

恋愛…由比ヶ浜結衣(ザシキワラシ)Rank2
戦車…三浦優美子(ムジナ)Rank2
正義…鶴見留美 Rank2
隠者
運命…戸塚彩加(ノヅチ)Rank2
剛毅(力)

刑死者
死神
節制
悪魔…雪ノ下陽乃(サトリ)Rank1 New
塔
星

月
太陽…比企谷小町 Rank1
審判…佐々木三燕(今石燕) Rank2
世界…奉仕部 Rank2


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