やはり俺の○ル○ナは間違っている   作:hung

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何かつべのおすすめにすっごい来るから葬送のフリーレン観ました
フリーレンとフェルンがかわいい
あと作画も良いですね
断頭台のアウラ見て………命令者ちゃん好きな人が好きそう(ジガ知らない人並の暴言)


いつになく沈む比企谷八幡と出会う少女

6月17日(日) 比企谷家 朝

 

「いいか、バカ息子」

 

「なんだ、クソ親父」

 

「男にはな、意地だとか、見栄ってもんがある。そう言うプライドは張り時ってのを間違えちゃいけねえ」

 

 

 珍しく、本当に珍しく。

 

 比企谷家のリビングにて、普段であれば昼まで寝ている筈の比企谷家の大黒柱、八幡や小町たちの父である男が座ったまま、同じく座っている八幡に声をかける。

 

 どうにも神妙な声で、常ならざる雰囲気を醸す状況にむず痒さを覚えた。

 

 

「間違った時に突っ張ったり、要らねえ意地を張っちまうと、取り返しがつかなくなるもんだ。

 例えば、意地を張って手前のプライドを守るか、見栄を捨ててでも大切なモンを受け入れるか…

 なんて状況は男として生きてりゃいつか来るもんさ」

 

「はぁ……?」

 

「もしも意地を張る時と場所を間違えちまったら、後悔してもしきれねえ事になるからよ」

 

「そうか」

 

「だから、お前は正しい意地の張り方ってやつを学べ」

 

 

 しかし、その内容はなんとも言いにくい物で、生返事をするしかない比企谷家の長男。

 

 それ、今言うべきことか? と思いながらも邪魔する事も出来ず、ただ聞き流す。

 

 

「つまり、男のプライドってのは有って悪いもんじゃないが、往々にして手前の脚を引っ張る事もあるってことを忘れんなって」

 

「さっきから何ボソボソ言ってる、この宿六」

 

「ひゃい!」

 

 

 リビングの床に正座して幾分か経ち、曲がり始めた背中をビクンと伸ばして返事をする父親。

 

 

「私が聞きたいのはただ一つ、このピンク色の名刺は何だってことだ。簡単だろ?」

 

「えーと、そのですね。そ、そう! 取引先の接待で」

 

「その言い訳は前回聞いた。その前は後輩への社会勉強、その更に前は上司に無理矢理、もっと前は社長からの紹介で断れきれずとか法螺吹いたか?

 おうおうおう、この不景気の中、広告会社ってのは何とも景気の良い事じゃない」

 

 

 一段高いソファーにどっかりよりかかり父を見下ろしながら、人差し指と中指につまんだ名刺(手書きの電話番号、アドレス、お店に来たことへの感謝の言葉)をピラピラさせて言い募る母親の姿に冷や汗が止まらない。

 

 死の幻覚を見ちゃうまである。パレスにおいて死の象徴は刈り取るものであるが、家の中において死を象徴するのは多分『母』なのだろう。

 

 家計簿的にも、飯的にも、家事的にも。

 

 さて、こんな情けない父親の姿を見た以上、男の意地だとかなんだとか、そんな無駄なものはさっさと捨てて全面降伏した方が良い。

 

 わかったぜ、クソ親父! 張り時を間違えた男の末路ってやつを! 『言葉』でなく『心』で理解できた!

 

 と言う訳で、スピード八幡はクールに去る「ゴミいちゃん? 何逃げようとしてるのかな? かな? 小町のターンはまだ終わってないよ?」「ひゃい」

 

 痺れ始めた足を崩して立ち上がろうとしたが、正面に立つ妹からのプレッシャーで座り直す八幡。

 

 そう言えば、家事的にはあなたも比企谷家の象徴でしたね。と据わった眼の妹小町のすごみに負ける。

 

 

「まぁね、ゴミいちゃんも高校男子なわけだから、こういうのを持ってても仕方ないってことは小町も分かるよ?

 男子ってそう言うもんなんだって知ってるから、小町の見えない所でなら何も言わないし、気付かないふりもしてあげる。あっ、今の小町的にポイント高い。

 でもね、幾らなんでもこういうのを見えるところに置かれてると、小町も掃除したりとかで入るのが億劫になっちゃうんだよ?」

 

 

 汚い物でも触るかのように、人差し指と親指で端っこをつまみ、ひらひらと見せびらかす小町。

 

 その指の間には薄い本、薄いのに高い、薄いのに1000円とか普通にする本が挟まれていて、広い肌色面積が描かれたページがチラチラと見えて()()に悪い。

 

 なお、その本の対象年齢はR18(ガチエ□)ではなく、R15(微エ□)であり、内容自体八幡の趣味とは少々ばかり趣が違う事をここに記す。

 

 

「違うから、それは知り合、と、友達のだから(男の見栄)」

 

「ゴミいちゃんに友達とか居ないでしょ(断言)。あっ、それとも次からは本棚の後ろに置いてるのとか、カバーだけ変えてるのとかも整理してから机の上に置いといてあげよっか?」

 

「止めろ、お前は俺の母ちゃんか!」

 

「あんたの母ちゃんは私だ」

 

「ゴルルァ(巻き舌)!! てめ、ボケ息子! マイ・ラブリー・エンジェル・ドーター小町になんてもんを見せて「あんたはこっちでしょうが」クゥーン」

 

 

 そんな平和な比企谷家の一幕であった。

 

 

「まったく、ヤレヤレだぜ」

 

「うなぁ~」

 

 

 

 

6月17日(日) 昼

 

「まったく、朝の早くから酷い目に遭った」

 

「自業自得だろ」

 

「うるせえぞ」

 

 

 外に出て梅雨のまだ明けぬ空模様からパラパラと降る雨を持ち手が赤い傘で防ぎながら、肩にだらんと垂れて説教もたれてくるモルガナを厄介者の様に振り落とそうとして失敗する。

 

 ぴちゃぴちゃと路面に溜まった水面を揺らしながら、しばらく喋る事無く進んでいると、意を決したように八幡が口を開いた。

 

 

「……あの人、パレスの事覚えてなかったな」

 

「まぁ、言っちまえばパレスの中の事は夢の中みたいなもんだからな。()()()()()使()()()()()()が、覚えてられる道理はねえってことさ」

 

「…そうか」

 

 

 それだけ告げて、またしても沈黙の中歩き続ける。

 

 そう。昨日、雪ノ下陽乃に発生したパレスの対処をし、現実へと戻った際に意識を取り戻した雪乃が無理を押して陽乃と顔を合わせたが、彼女はパレスの事を一切覚えていなかったらしい。

 

 モルガナが推理する所では、パレスの核になっていた悪神の欠片に異様な対処をしたせいでペルソナ運用を司る心の部分とコンフリクトを起こしたのではないか? とのことだった。

 

 悪神の影響から逃れて魔人と呼べるまで強力な力を振るったが、逆に、悪神が無くなったことでペルソナの才が目覚めたことも無くなったと考えられる。

 

 切っ掛けさえあれば陽乃もまたペルソナに覚醒できるだろうが、その時、今回の事件の影響がどう現れるのかは分からない。

 

 つまり、現在の雪ノ下陽乃は一瞬だけ悪神の欠片に寄生されて、そのまま解放された一般人であると言うのが、彼の下した判断だ。

 

 それが正しいのかどうかは分からないが、状況的にはそう判断するしかなかったとも言える。

 

 なにせ、考えなければいけない事は陽乃の事だけではなく、もっと喫緊な問題が噴出したのだから。

 

 

「悪神の復活ってのは…」

 

「わりい、それも断言できねえ。ワガハイもその可能性はほぼ皆無だと思っていたし、主も対処されていると仰っていたが…ハヤマは一体何を根拠にあんなことを」

 

「ふぅん」

 

 

 そっけなく、むしろ雑さを隠すことなく八幡はモルガナの返事を聞き流す。

 

 役に立てていない、迷惑をかけているとはモルガナも自覚する所なので、その態度に何も言えない。

 

 けれど彼がこうして怪盗団達と離れている原因を考えると、その可能性の有無を軽々に断言しきってしまう事は無理なのを考慮してほしい。

 

 例えモルガナの考えでは皆無な可能性でも、イゴールが対処していても。

 

 こうして悪神がよそ様に迷惑をかけているというありえない現状が存在してしまっているのだから。

 

 

「明日、他の皆にも説明するが…

 今回おめえらに対処してもらってるのはあくまで悪神の残滓で、核と言える物は怪盗団のリーダー。ジョーカーが完全にぶっ壊した。

 だから、悪神の影響力は酷く限定的になってるはずで、直接的に及ぶ一人、それに巻き込まれて間接的な被害が増えはするが………」

 

「盛大に復活するってのはなし、ってことか」

 

「集合無意識の中で人間の歪んだ欲望が長年蓄積された結果生まれた偽神だぜ? そうホイホイ生まれねえし、核もねえ残滓から復活してたまるかよ」

 

 

 もちろん可能性としては0ではないのだろう。

 

 長く時をかけ、同じような怠惰の願いを蓄積させ続ければ、悪神の復活につながるかもしれない。

 

 そうならないよう、小さな影響で収まる様にこそ早急に対応する為にモルガナが今こうして、絆を結んだかつての仲間たちから離れてまで奮闘しているのだ。

 

 ベルベットルームの住人が導き手としてではなく、先手を打って対処している現状。0ではないかもしれないが、コンマの後に9個の0が並んでいる位の確率だ。

 

 結局、隼人の話を聞かない限り話は進まない。

 

 そして、問題はその隼人に関しても存在しており…

 

 

―ブブッ

 

 

「…雪ノ下も三浦も葉山には連絡が付かないとさ」

 

「そうか」

 

 

 ちらっとバイブしたスマホを見ると、そこには空振りの報告が届いていた。

 

 彼女たちは昨日から何度か隼人へと連絡を取ろうとしていたが、それは今の所叶っていない。

 

 ちなみに、結衣への安否確認を兼ねた連絡は呆気なく取れた。

 

 いろは、と呼ばれた少女が結衣の姿をして現れたことから悪い想像をしていたが、雪乃のかけた電話は即座に繋がったので杞憂でしかなかった。

 

 まぁ、そのせいで今回隠していた件を話さざるを得なくなり、結衣の機嫌という意味ではまたしても修羅場だったのだが、親友二人(雪乃&優美子)がなんとかしただろう、多分。知らんけど。

 

 八幡の元に来たのは怒りのスタンプだけだから、きっとなんとかしてくれたのだろう。だったらいいなあと思いました まる

 

 

「週明け、ハヤマが学校に来るのを祈るしかねえか」

 

「だな」

 

 

 とまれ、今の八幡にとってはそんなことはどうでも良い。大事なのは他の事だ。

 

 

「ところで、ペルソナってのはあんな風に変わったり、強化されたりするものなのか」

 

 

 あの日、悪神の力を失くした直後とは言えあのハルノを、倒れる直前まで疲労していたとは言えあの雪乃を一蹴した彼の変貌こそが八幡にとっては重要だった。

 

 若干、話が飛んだことに一瞬だけ戸惑うが、疑問に思う事も当然だろうと考え、モルガナは質問に答える。

 

 

「ペルソナってのは前に言った通り、自分の心の一側面を集合無意識から神話の型に嵌めて出現させる力だ。

 あくまで一側面である以上、別の側面が強くなれば有り得ることさ。人間の心がたった一つの仮面だけで出来てるとか、おめえも思っちゃいないだろ」

 

「一方からだけ見て理解できるくらい単純なら、よっぽど楽なんだろうがな」

 

 

 ちがいねえ、と軽く笑う。

 

 

「実際、ワガハイのペルソナもゾロとは違うカタチになって強化された事もあったぜ。

 だけど、ペルソナにまで昇華出来る人の側面ってのはそうそうあるもんでもねえし、ワガハイのそれも時間をかけて真の覚悟と大切な絆から生まれたもんだ。

 一朝一夕でペルソナ(心のカタチ)を変えるなんてのはそれこそ、前に言ったワイルドって特別な才能が必要だな」

 

「お前が最初に俺をそうだと勘違いしたやつか」

 

「おめえが愚者なのがややこしいんだよ」

 

 

 才能…ペルソナを扱うというだけで既に一種の才を開いていると言っても間違いはない。

 

 事実、葉山のグループはユミコパレスの際に巻き込まれて優美子と隼人が開花したが、それ以外の海老名や戸部、大岡等といった面々は目覚めなかった。

 

 しかし、才能の有無で上下があるとしたら、その才能の中でも上下は生まれる。

 

 力を揮う事に特化したペルソナ、攻守のバランスが良いペルソナ、周囲に影響を振り巻く事の得意なペルソナ、人を癒すペルソナ。

 

 そのどれにも最低限の力が、シャドウという敵と直接戦う事の出来る力が備わっている。

 

 だと言うのにだ

 

 

「(結局、俺のペルソナは誰かの足を引っ張る事しかできてねえじゃねえか)」

 

 

 八幡のペルソナが役に立っていないとは口が裂けても言えない。

 

 敵の弱点を見抜き、弱体化させるその能力があればこそ打開できた局面は多かった。

 

 けれど、比企谷八幡に取ってみれば雪乃や優美子、なんなら材木座だって。

 

 直接的に戦う事の出来る能力(隣の芝生)の方が羨ましい。

 

 それこそが朝の比企谷家で父が言っていた、男の意地だとは全く気付かない。

 

 特別な力を直接奮いたいと思う、男の子の欲望。言ってしまえば抜けきらない厨二病。

 

 戦力として負けている現実の情けなさを改めて考えてしまう。

 

 

「(今までは俺のペルソナが弱くても、自衛力すら低くてもなんとかなった。

 だけど、雪ノ下さんのように俺の能力がメタをはれるなんてピンポイントな奇跡がまた起きるなんてのは望むだけ無駄だ。

 彼女のような、もしくはそれ以上の力を持った存在に対処しないといけないのなら。悪神とやらが本当に復活するのなら)」

 

「ハヤマのペルソナが変わったのが心境の変化なんだったら…よっぽどショックな事があったんだろうな。それこそ、人が変わっちまう位に衝撃的な事がよ」

 

「(葉山の言う通り、もっと力を求めるべきなんじゃないだろうか…そう、もしも俺に、本当に『ワイルド』なんていう力があれば)」

 

 

 一人、男の子は心に(おり)を降り積もらせていくのであった。

 

 

 

 

6月17日(日) 雨 昼

 

 あてどなく歩いている八幡とモルガナ。

 

 どうせ明日の学校が始まるまでは動くに動けないのだ。

 

 ならば、いっそ開き直って気分転換するのも手だ、と散策している。

 

 お財布の中身は今までの売却益で十分にあるし、朝の一幕で僅かではあるが少し増えてもいる。

 

 基本あのクソ親父は母と妹が大好き(嫌われたら死ぬ)で、そして案外ちゃっかりものな小町はお小遣いをせびる(脅す)機会を逃しはない。

 

 しかし、そんな女子()が主役となった家中で身の置き場が無い(こういう時は居ない子扱いされるのがデフォ)八幡は父から(小町のおこぼれで)貰った野口さんをいそいそと仕舞いながら時間を潰せる場所を探す。

 

 せめて雨がなければなぁと思うもお天道様の気分次第であり、明日明後日は晴れてそのあと一週間は梅雨も続くようだ。

 

 この前のバーにでも行ってみようかと考えるも、こういう時は落ち着いて過ごせる喫茶店なんかを新規開拓するのが良いかもしれん、と普段行かない方へと歩いていく。

 

 雨を嫌ってカバンに引っ込んでしまったモルガナを良い御身分なこって、とわざと揺らしながら。

 

 

「うん? こんな所に良いふいんき(何故かry)な喫茶店が…千葉なのにオシャレな店とか在っていいと思ってるんですか、良いぞもっとやれ」

 

 

 ひんまがった千葉愛の発露が非常に気持ち悪い。

 

 外に置かれたミニ黒板には当店のオススメとしてさっくり生地のクリームパイが描かれており、とても美味しそうだ。

 

 この天気だからか、店内の様子も見る限りでは混雑もしておらず、静かなひと時を過ごせるだろう。

 

 うん、あんまり外で居続けるのも嫌だな、とフィーリングで入店を決定し扉に手を掛けたその時

 

 

「あら?」

 

「げっ」

 

「珍しい事もあるものね。土左衛門が動き回っているなんて、市中引き回しでもされているのかしら」

 

「水も滴る良い男って言葉を知らねえのかよ、何処がデコボコ顔で観るに堪えないって?」

 

「私の口からそんな酷い事を言えるわけがないじゃない。ところで、普段の焼き魚定食のような眼は何処に行ったの? 鳥に食べられた? 腐乱で膨れて見えないのかしら」

 

 

 傘を畳んで入店しようとしたその扉の向こうから、雪乃が退店してきたのだった。

 

 彼女も葉山の件で進展は見込めないと切り替え、どうやらこの雨の中、部屋でジメジメと過ごすよりはと外に出たらしい。

 

 

「由比ヶ浜さんがオススメだって言うから、来てみたのだけれど…」

 

「えっ、何? なんか言いづらい位に微妙なの」

 

「いえ、そう言う訳でもないし味もとてもよかったわ。今からなら特に何もないだろうし貴方を引き留める理由も無いわ」

 

 

 口さがない雪乃にしてはどうにもはっきりしない態度だが、店としては良いものだったのだろう。

 

 何とも言えない微妙な表情で雪乃はそのまま帰って行った。

 

 モルガナが引き留めようとしたが、流石に退店してすぐUターンするのは面の皮が厚い雪乃でも嫌だったようだ。

 

 彼女をしてモヤモヤを抱えてしまう喫茶店と言う事に逡巡するが、怖いもの見たさというものもあり扉を開いて入店する。

 

 コーヒーの香りが漂う店には幾つかのソファ席とカウンター席、コポコポと小さな音を立てるサイフォンが静かなBGMとして流れている。

 

 小さな店内はこざっぱりしており、申し訳程度におかれた観葉植物がちょこんと置かれていてなんというか『ザ・喫茶店』という感じでコーヒーを飲ませる空気が充満している。

 

 こうした所での注文は決まっている八幡は迷うことなく誰も居ないカウンターの一番奥に座り、ブレンドとオススメのパイを頼む。

 

 いぶし銀な老年の男性が手際よく淹れる様を見ながら、バーでアダルトな紳士として働くのも良いがこうして道楽気味の喫茶店のオーナーも捨てがたい。

 

 いつか連れ合いに養ってもらえるようになったら我儘でやらせてもらえないかしらん。

 

 そんな戯言を考えながら不意に壁に貼られてあるチラシが目に入った。

 

 バイト募集…ふむ、パレスのおかげでお金には困っていないが、こうしたのも経験か。

 

 なにより、今までバックレ続けたバイト経験しかないが、ここでなら続くかもしれないし、モルガナ監督の週末カレー&コーヒー修行に役立つかもしれん。

 

 いつになく積極的なことで、お客が少なく暇しているマスターにバイトの詳細を聞いた所、単発でもOKだとか。

 

 本当にバイトするなら履歴書だけ持ってきてくれれば良いよ、と言われ前向きに検討するのであった。

 

 オススメされるだけあって美味しいパイで小腹を満たした八幡は貰ったばかりの野口さんと元々持っていた分で追い野口さんで支払い退店する。

 

 しかし、雪乃はこの店のどこに言い難いナニを感じ取ったのだろうか。不思議だ。

 

 

 

 八幡の選択肢にアルバイトが追加された。

 

 

 

 

6月17日(日) 雨 午後

 

 人間現金なモノで、悩みが有ろうとなかろうと。

 

 美味いもの食って一息ついたら大抵のストレスがある程度どうでもよくなってくるものだ。

 

 朝しっかり食べて、昼に充実した仕事をして、夜ちゃんと寝る。

 

 健康的で文化的な日本人的に幸福な生活である…いや、昼の仕事はいらないな。

 

 感謝される仕事だろうが、充実した仕事だろうが、不可欠な仕事だろうが、仕事って単語が後ろに着くだけで、もうそれ要らなくない? って反射的に言っちゃうまである。

 

 そう、生活って言うのはもっとこう、静かで癒されて救われてないとダメなんだよなぁ。

 

 趣味的、道楽的な仕事なら可。百歩譲って喫茶店のマスター位。

 

 えっとぉ、私の希望的にはぁ、一年くらい適当にぃ、お茶くみだけしてぇ、あとはオッパイついたイケメンかぁ、超出来る美人な上司に「婿に、いや、嫁に来い」って言われてぇ、寿退社がいいなぁって、キャハッ言っちゃった!(クソキモボイス)

 

 腹ごなしにと傘片手に歩いているだけで、甘い物で回復したメンタルが勝手に削れていく八幡。

 

 徐々に雨脚が緩まり、空模様もマシになっているが、反比例するかのように落ち込んでいく。

 

 伴って目もまた死んでいく。

 

 はぁ。。。もうマヂ無理。。。マッカン飲も。。。

 

 甘い物の後に甘い物とはこれ如何に?

 

 目についた公園に自販機を目当てに入り、お釣りの小銭を取り出す。

 

 将来的にデブまっしぐら、若いころに「私って太らない体質なんで」とか言ってる奴、大抵自制できなくて年取って基礎代謝減ったらぶくぶく太るからな気を付けろ!

 

 

「マ、マ、マ、マッカンのマ~はママの愛情のマ~…?」

 

「じーーーー」

 

 

 雨が止んだからと傘を閉じ訳の分からない鼻歌を歌いながら、銀色の小銭を筐体に入れようとする彼の側面からふと視線を感じ「やっべ、聞かれてたら恥ずかし過ぎて死ぬんだが」と横を見ると、八幡の腰位の高さと、それよりもう少し上から見上げる二対の眼。

 

 黄色い雨合羽を着た未就学児程の女児と、金髪で少し浮世離れした就学児程の女子が彼を見つめていた。

 

 二人の女の子に見つめられてヒクッと頬を引きつらせて及び腰になる。

 

 説明しよう! 昨今の社会情勢で権力を付与され続ける存在。

 

 この人痴漢です! なんて言われようモノなら碌に捜査もされず冤罪からの社会的死を簡単に与えられる程に発言権を持ち。

 

 どうしたの? 迷子? って心配して声掛けしても不審者です! って通報される。

 

 それが女の子って存在なんですよね(偏見と悪意に満ちた一部を誇張した表現)。

 

 

「じーーーーー」

 

「………っ」

 

 

 自販機で飲み物を買おうとしているだけの何の落ち度も無い男子高校生に何の用だろうか?

 

 留美の時とは違い、傍らに己の無罪を主張できる存在(前回で言えば雪乃)も、雨の中の公園という事で他に誰も居ない状況。

 

 唯一の証言者は雨が上がったことでカバンから顔を出してきたモルガナしか居ない。

 

 ただしモルガナの言葉が通じるのはパレスでモルガナが喋ると言う認知を得た人だけなので、片っ端からパレスに放り込むしかないんですね(大半は象徴化するので意味が無い)。

 

 下手な行動でも取ろうものなら即座に死亡が確定してしまう状況。

 

 これはもう「いっけなぁい! これ100円玉じゃなくってアルゼンチンペソだったぁ、うっかりぃ」とか言って退却するしかないとか明後日の方向に思考を飛ばす八幡。

 

 そうしてそそくさと取り出した小銭を財布に戻そうとした瞬間、横からじっと見続けている青みがかった髪を二つ結びにした幼女が金髪の姉らしき少女の腕を引き、もう片方の指を八幡に指しながらおもむろに口を開けて

 

 

「パパ?」

 

「ちゃうわぁ!」

 

 

 余りの衝撃発言に日本人なら誰しもが心の中に飼っている(ファ○通調べ)関西人が顔を出してツッコミを入れてしまう。

 

 キョトンとした顔が大声によって泣きそうに歪むのを見て大慌てで甘い紅茶(女の子は絶対紅茶が好き)を与えて事なきを得るのであった。

 

 なお、もう一人の金髪の女の子は慌てふためく八幡をケラケラ笑っていた。

 

 なんだ? 「お兄さん、私にもちょーだい」? 分かった、缶ジュースの一本二本…9本で良い? 謙虚だな(震え声)

 




 ペルソナメモ
 ペルソナではアルバイトが出来る。金策によし、新規コミュ探しによし。家庭教師? 清掃員? コンビニバイト? いっぱいあるぞ! ただし、八幡のアルバイト適正は最低ランク。原作でもコンビニバイトを三日でバックレた(あくまで最速タイムではあるが)。しかも金欠ではないので、動機づけが難しい。なので、喫茶店(レトロ風)以外だと単発しか無理だろう。

 八幡はどれだけ願ってもワイルドにはなりえない。『ワイルドは愚者のアルカナ持ちである』は真である。しかし『愚者のアルカナ持ちは必ずしもワイルドではない』彼が持つ役割はそんなものではない。
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