鎖影の庭   作:土斑猫

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【傷の願い】

 静かに蠢く気配に、サクラローレルは瞳を開けた。

 夜具の中で身を転がし、視線を其方に向ける。

 常夜灯の淡い光の中で、部屋の出口に向かう背中が見えた。

「何処へ行くのかな? スカイちゃん」

「にゃあ!?」

 囁きかけた声に、猫の様に飛び上がるセイウンスカイ。

「あ、あれれ〜? 起こしちゃいましたか? ローレルさん」

「ふふ、ネコちゃんは自由だから。常時目を光らせておかなくちゃ」

 言いながら、ベッドの上に身を起こす。にこやかに睨まれたスカイが、思わず気をつけをした。

「さて、消灯時間も過ぎたこんな時間に。何処に行くのかな? いけないネコちゃん」

「え、え〜とですね……」

「正直に答えないと、首に鈴付けて綺麗な籠に監禁かな?」

「にゃああ、勘弁してください!」

 本気なのかおどけてるのか分からない調子で戦慄くスカイ。ローレルは、クスクスと笑う。

「じゃあ、話して。こんな時間に。何処へ? 何を?」

「やましい事じゃないですよぉ」

「ほお? ではアレかな? フラワーちゃんと相引きかな? 駄目だよ? あんな純な娘を爛れた愛に染めちゃ」

「メチャクチャやましいじゃないですか!?」

 思わず突っ込むスカイ。『大体、そんな事出来るなら苦労ないですよ……』とか恋愛弱者らしくブツブツ言ってるのは無視して問い直す。

「じゃ、なぁに? やましくないなら、言えるよね?」

「ええと、実はですね……」

 かくかくしかじか。

「同期の皆で自主練?」

「はい。ファインさんの件が起こってから、まともなトレーニング時間が取れてないじゃないですか。でも、大会は関係なしに迫ってくる訳で。不安になってる子も出て来てるんです。だから、いっそ有志で集まってって……」

「こんな時間に?」

「目立つ時間にやると、生徒会から突っ込まれるので」

「寮長さん達が……」

「許可、貰ってます。フジさんからも、アマゾンさんからも」

 ピラリと見せる、寮長印付きの外出許可証。

 受け取って、フムフムと見て。

「なぁんだ。ちゃんとやる事はやってるんだ。なら、私が文句言う事じゃないかぁ」

 ローレルの言葉に、ホッとした表情を見せるスカイ。

「そ、それじゃ。皆、待ってますので」

「私も付いてこうかなぁ」

「いやいや、ローレルさんこそ許可貰ってないんじゃありません?」

「あはは、それもそっか」

 悪戯っぽく笑い、ローレルは言う。

「じゃあ、いってらっしゃい。暗いから、怪我だけは気を付けてね」

「はいはーい」

 そう返し、踵を返すスカイ。

 その背中を、ローレルは微笑みを浮かべて見送った。

 

 ◆

 

 囁いた夜の気配に、マンハッタンカフェは閉じていた瞳を開けた。

 眠っていた訳では無い。

 此の世界のモノでなく、生物と言う概念にすら当てまらない彼女には睡眠は必要無い。何なら、食事も呼吸も要らない。そんなモノを取らなくても、彼女の身体は一定のコンディションを保ち続ける。

 『マンハッタンカフェ』と言うモデルが持っていたスペックの範囲内であれば。

 周りを見回す。

 アグネスタキオンはいない。エアシャカールの姿も無い。監視役である筈の、シリウスシンボリとナカヤマフェスタの姿も。

 皆、席を立っていた。

 まるで、長い潜水に疲れて息継ぎに上がる様に。

 限界が、近い。

 彼女達現実に生きる者が、自分の様な存在の近くにいる事は相応の負荷となる。

 知れば知る程、ズレを認識すればする程。負荷は彼女達の精神を蝕む。そして、いずれは。

 怪異と接した者が狂気に堕ちる逸話は、幾らでもある。つまりは、そう言う事。

 所詮、そっくりさん(自分達)は異物であり異端。

 理解している。

 彼女達が、自分の為に壊れていく様に恍惚を得てしまう己こそが誰よりも。

 だからこそ、願うのだ。

 私が貴女を壊す前に。

 貴女が私を壊してと。

 戸が開く音がした。

 目を向ける。

 開いた戸。

 差し込む月明かりに浮かぶシルエットは、思う誰のモノでも無い。

「……珍しいですね。スカイさん……」

 かけた言葉に、セイウンスカイの姿がにへらと笑う。

「驚かないんですね。驚く訳無いか。分かりますもんね。『私達同士』は」

 言いながら、入ってくる。

「……土足で入らないでください。研究室(ここ)は、タキオンさんと私の……」

「愛の巣、ですか? お熱いなぁ」

 揶揄する言葉と共に、ズカズカと。

 ああ、こう言う所が駄目なのだ。まったく、そっくりさん(私達)と言うモノは。

 椅子の上から睨むカフェを、前に立ったスカイが見下ろす。

「……こんな時間に外出なんて。……フジさんに怒られますよ……?」

「怒られませんよ。寧ろ、推奨してくれてます」

 聞いた言葉に、目を細める。

「……推奨、とは?」

「私が今、此処にいる理由です」

 言うと、腰を屈めて視線を座るカフェに。囁く声で『ねぇ』と。

「やめてくれません?」

「……何を、ですか?」

「タキオンさんに、協力する事ですよ」

 空気が、一瞬で張り詰める。

「……嫌です」

「やだなぁ。良く考えてみてよ」

 口調が変わる。敬愛する先輩に対するモノでなく。同格の同胞を口説く声。

「タキオンさんが探ってるのは、オリジナル達が帰る方法。言い換えれば、そっくりさん(私達)を消す方法だよ? ソコんトコ、分ってる?」

「……分かってますよ。当たり前でしょう?」

「分かってるなら、何で手伝ってるのさ。自殺願望でもあるの?」

「……それこそ、愚問では?」

「む?」

「私達は、そっくりさんです。オリジナルの願いは、私達の願い。マンハッタンカフェなら、こうする。だから私も、そうしてるだけです」

 スカイが、『ああ』と頷く。

「キミはまだ、囚われている訳か」

「囚われる?」

 怪訝な顔に、得意げな顔で。

「オリジナルの想いになんて、もうどうでも良いんだよ? だって、今は私達こそがオリジナルなんだから」

 己の胸をポンと叩き、得意そうに張る。

「『元』オリジナルの連中は、もう戻って来ない。この世界に在るのは、私達だけ。だから、私達の思う様に生きるべき。過去の遺物の呪いなんか、ほっぽって良いんだ」

「遺物……?」

「そう!」

 迫る顔。合った視線の奥に、ギラギラと。

「だからさ、キミもやめなよ。昔のマンハッタンカフェなんて、キミには関係ないんだ。そんな呪縛は断ち切って、自由になりなよ。世界を、生命を謳歌しよう。私達みたいに」

 微熱に酔う言葉を、すっかりと受け取って。噛み砕き。反芻し。また飲み下し。その上で。

 カフェの姿の彼女は。

 『フフフ』と笑った。

 感嘆でも。

 感動でも。

 覚醒でもなく。

 ただ、侮蔑の冷笑を。

「……何が、可笑しいの?」

 気配を察し、少し剣呑な響きの混じったスカイの声。けれど、嘲笑を収める事なくカフェは『可笑しいでしょう?』と。

「自由? 呪縛を断ち切った? 貴女達が?」

「そうだよ?」

「じゃあ、何で貴女からは花の香りがするんですか?」

 スカイの顔から、色が消えた。

「一緒に、居るんでしょう? ニシノフラワーさんと」

「……何かおかしい? 当たり前じゃん。私はフラワーが好きで、フラワーも私を……」

「フラワーさんが好きなのは、『セイウンスカイ』です。貴女じゃない」

「ーーっ!」

 表情を凍らせる彼女を、憐れむ様に見て。

「貴女がセイウンスカイと言う呪縛から自由になったと言うのなら、貴女はセイウンスカイとは別の存在になってなければいけません。なのに、フラワーさんの想いがそのまま貴女に向いてるのはおかしいでしょう?」

「それ、は……」

「全くの別人が、別の人に向けられていた想いを捕まえるなら。同じ対価が必要です。その想いを育てたのと同価値の対価が。なのに、貴女はそのままの寵愛をフラワーさんから享受している。そんな大きな対価、育てる術も時間も無かったのに。と言う事は、答えは簡単です」

 見据える金色の目が、無慈悲に光る。

 

「貴女が、今だ『セイウンスカイ』と言う型に嵌ったままだから」

 

 反論も紡げず、固まる彼女。

 構わずに。

「結局、貴女が持ってるモノはオリジナルのスカイさんが築き上げた奇跡を掠め盗ったモノ。フラワーさんも、何もかも」

「違う……私は、フラワーは……」

「では、何でしょう?」

 最後の言の葉は、抉る様に。

「フラワーさんは、見てくれだけスカイさんであれば中身はどうでも良いと言う方でしたか?」

「フラワーを侮辱するな!!」

 思わず弾けた激昂は、全ての答え。拳を握り締めて震える彼女を見つめる目は、嘲りとも憐れみとも。

「……滑稽ですよ」

 深い息と共に吐き出す言の葉を向けるのは。

「呪縛の恩恵を享受する身で、呪縛から自由になどと嘯くなんて……」

 目の前の同胞か。

「本当に……滑稽で無様……」

 或いは、己自身か。

 

 ◆

 

 強く、痛く突き飛ばされた。

 ソファーに倒れ込んだカフェを、ギラつく目が見下ろす。

 荒ぶる目だった。

 敵意と、害意に満ちた目。

 らしいな、と思う。

「キミは、嫌な奴だ」

「……お互い様ですね……」

 投げつけられた声に、皮肉で返す。

 返しながら、探る。

「嫌な奴だけど、最後にチャンスはあげる」

 己の中で荒ぶ感情を抑えながら、スカイは告げる。

「タキオンさんに協力するのをやめろ。でないと、本当に……」

「……私にあの様に言われて……」

 最後まで聞くつもりは無かった。

「……貴女は、フラワーさんを断ち切る気になれましたか?」

 そんな問い、意味が無い。

「自分が、たった一人の『自分』になる為に」

 だって。

「出来ないでしょう?」

 ソレが。

「なら」

 そっくりさん(私達)が在る呪い(意味)だから。

 

「同じです!」

 

 答えを察していたかの様に落ちて来た切っ先を、此方も察していたかの様に躱わす。そのまま、探り当てていたコーヒーカップを掴むと中身をスカイの顔にぶち撒けた。

「うわっ!?」

 中のコーヒーはすっかり冷めていたが、一時の目潰しには十分。

 たじろぐスカイを擦り抜け、出口に走る。すれ違いに向けた視線の先で、彼女が握る果物ナイフが冷たく光る。

 ああ、全く『らしい』事だ。

 オリジナルであれば、理性や良識でブレーキが掛かる。けれどそっくりさん(私達)にはソレが無い。己の欲に昂れば、ただアクセルを踏み込むだけ。獣と同じ。人の社会と秩序の中では、居場所なんて無い。生きれない。

 そう言う風に、造られた。

 定義された。

 約束されたのは、いつかの破滅だけ。

 だってソレもまた。

 あの悪性の、戯れだから。

 でも。

 でも、それなら。

 されなら、せめて。

 許された欲にだけは、殉じたい。

 閉ざされた籠の中だって、命の限り羽ばたく事は出来る筈。

 そう、私の欲。生まれた、意味。

 たった一つ。

 あの人の、為に。

 だから、まだ。

 消えたく、ない。

 開け放たれた戸から、外へと駆け出したその時。

 伸びて来た手が。

 無情に絡んだ。

 

 ◆

 

「危なかったわね」

「スカイ、油断しすぎ」

 自分を捕え、捻じ伏せた二人を見てカフェは小さく呻いた。

「キングさんに……シチーさん……」

「ごめんなさい。カフェ先輩」

「でも、アタシらも譲れない訳」

 カフェの腕を後ろに捻じ上げながら語り掛ける、キングヘイローとゴールドシチー。

「……こんな事をしたら、騒ぎに……なりますよ……?」

 精一杯の脅しに、けれど二人は静かに返す。

「ならないわ。ならせない」

「コレは、アタシらの総意だから。皆、口裏は合わせてくれる」

「そう」

 近づいて来たスカイも、続ける。

「今夜。この一時だけ。この騒ぎさえ誤魔化せれば、明日の朝には全部元通り。キミだって、分かってるでしょ?」

 そう。理解している。

 そっくりさん(自分達)は、あくまで代理品でありつっかえ棒。いなくなれば、その隙間を埋める為に世界は強制的にオリジナルを引き戻す。

 それは、絶対の摂理。

 プーカでさえも及ばない、ルール。

「キミが消えれば、本当のマンハッタンカフェが戻って来るだけ。何の問題も残らない。世界にとっても。私達にとっても。そして……」

 

ーータキオンさんにとってもーー。

 

「あら」

「変わったね。表情」

 カフェの顔を覗き込んだ二人が、口々に。

「そりゃ、そうさ」

 腰を屈めながら、スカイ。

「散々言ってくれたけど、アレはキミだって同じだものね。軌跡の全部がオリジナルのお下がりのセイちゃん達には、この手で確かに掴めるのは『大事な人達』だけだから」

 そう。

 努力の苦しさも。

 栄光の喜びも。

 全てはオリジナルの記憶。成した事。

 そっくりさん(彼女達)にとっては、ただ引き継ぎされただけの記録。

 だからこそ、自身の手で掴める『ソレ』だけは。

「だから、私はフラワーが欲しい」

「キングは、あの子達と一緒にいたい」

「アタシは、ずっとユキノを見ていたい」

 見下ろす目が、口々に言う。微熱に浮く様に輝くソレを見て、カフェの姿の彼女も思う。

 きっと、自分の目も同じ様にと。

「だから、ソレを踏まえてもう一度訊くね?」

 身動き取れないカフェの首に、ナイフを当てながらスカイが言う。

「タキオンさんから、離れて?」

 息を飲む。

「タキオンさんは怖い。幾らあの人でも、私達(神秘)の領域に届くとは思えないけど。ソレでも、キミみたいな道標があったらもしかしてだってある。不安要素は、可能な限り摘んでおいた方が良いよね」

 首に当てられた刃が、僅かに引かれる。冷たい中に、熱い痛み。

「キミは嫌なヤツだけど」

「それでも、貴重な同胞」

「仲間は、多い方が良い」

 三人の声は、まるで一つの意思。ソレが説く。

 『此方に戻れ』と。

 そう。私は『Fetch(そっくりさん)』。

 マンハッタンカフェの影。写し身。代用品。

 変わらない。

 変われない。

 彼女達と、同じ。

 同じだから。

 同じ、だからこそ。

「……離れません」

 恐怖と緊張に干り震える喉で、それでもハッキリと声にした。

「愚問にも……程があります……。私が、貴女達と……離れられない貴女達と同じだと言うのなら、答えなんて決まっているのに!」

 そっくりさんは空っぽ。

 空っぽだから。

 たった一つは、絶対。

 何よりも。

 自分、よりも。

「分かった」

 決断は早かった。

 元より、結果など知れていたのだから。 

 キングの手がカフェの髪を掴み、顔を上げさせる。顕になった喉笛にナイフを添えながら、スカイは言う。

「シチーさん、しっかり抑えてて。下手に暴れたら、余計に痛いと思うから」

「OK」

 身体を抑える力が、増した。もがく事すら。

「タキオンさんの事なら、心配しなくて良いよ。あっちはあっちでエル達が足止めしてるけど、大丈夫。手は出さない。あの人達はオリジナル。換えは効かないから」

「そして、貴女が消えればオリジナルのカフェさんが戻って来る。ソレで、あの人の世界は元通り」

 そう。

 ソレが、あの人が求めてる事。

 自身の命と、心を削って。

 必死になって、頑張ってる事。

「何の問題も無いよ。あの人に、傷は残らない。安心して、還って」

 そう。

 残らない。

 遺らない。

 傷も。

 何も。

 私はのこらない。

 あの人の、中に。

「じゃあね。ちょっとだけ、我慢して」

 のこらない。

 のこれない。

 じゃあ、私は。

 何の為に?

 刃が皮膚に埋まる。

 その刹那に。

 想いは幾多も。

 幾重も。

 嫌だ。

 そんなのは、イヤだ。

 私は。

 私だって。

 熱い痛みが、広がって。

「やだ……助けて……」

 命が零れ落ちる、その前に。

 

「助けて! タキオンさん!!」

 

 持って逝こうと決めていた想いを、迸らせた。

 

「ーーは、ようやく鳴いたかよ。頑固な雛鳥が」

 

 軽い音が鳴って、蹴り上げられたナイフが宙に舞う。

「……え?」

 思わず見上げた、スカイの視線。ソレが

我に帰る前に、華麗に舞った長脚が三人をまとめて蹴散らした。

「色々お留守だぜ、温室育ち共。狩人気取るってんなら、もう少し牙を磨いとけ」

 悲鳴を上げて転がる三人にそう投げて、呆然とするカフェを背にシリウスシンボリは不敵に笑った。

「シリウスさん……」

「全く、どうせ囀るなら無駄な意地なんざ張るんじゃねぇよ。肝が冷えたぜ。まあ、もっとも……」

 ポケットから取り出すのは、通話中になったスマートフォン。

「最高のラブソングは届いたがな」

『ああ、全くだ』

 液晶の向こうで、知れた声がそう答えた。

 

 ◆

 

「聞いたな? タキオン」

 背後で立ち尽くすタキオン。そしてシャカールに手にしたスマートフォンを晒しながら、ナカヤマフェスタは言う。

「今のが、『アイツ』の本音だ。そっくりさんの仮面の裏の、本当のアイツだ」

 対峙するグラスワンダーとエルコンドルパサー、ツルマルツヨシの三人を睨み付けながら。訴えかける。

「そうさ。アイツはカフェじゃねぇ。カフェの代用品ですらねぇ。カフェは、常にアンタの対位にいる。助けなんざ、絶対に求めねぇ。そうだろ!?」

 そう。

 マンハッタンカフェは、決してアグネスタキオンに傅きはしない。

 常に同じ位置で。

 同じ高みで。

 同じ強さで喉元を狙う。

 だからこそ、タキオンは彼女を。

「分かったろ!? アイツは、別モンなんだ! アイツらと……スカーレットやスイープ、フラワーと同じ、ただアンタを慕うだけの、弱っちいウマ娘だ!」

 過ぎる顔。

 ダイワスカーレット。

 スイープトウショウ。

 ニシノフラワー。

 重なる、『彼女』の。

「受け入れろ! 向き合え! アンタはアイツをどうする!? どうしたい!? その選択を持って、考えろ! その時、『ホントのアイツ』を……」

 

ーー胸を張って、迎えに行けるのかをーー!

 

 震えた脳漿に、微かな刺激。

 

ーー迎えに来て、くださいねーー。

 

 言伝で聞いた、彼女の言葉。

 ソレが確かに、彼女の声で。

 

 隣に立つ、シャカールは見た。

 濁り切っていた眼差し。

 その奥で、確かに何かが。

 また。

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