今回はちょっと重たい話かも知れません。
時は流れて2ヶ月程経った。
あの日以降も美化委員の活動があるときは、通学路で朝練前の狼谷とよく出会い一緒に登校している。
「おはよう狼谷」
「鳶沢かおはよう」
気付けばお互いに呼び捨てで話すようになり、学内でも顔を合わせれば会話するくらいに仲良くなった。
「今日は朝早いな、美化委員の仕事か?」
「うん、そうだよ。」
「そういえば鳶沢は一人暮らしなんだろう、そろそろ慣れてきたか?」
「ああ、ある程度慣れてきたよ。でも大阪とこっちとでうどんやそばの味付けが違うから慣れないかも。」
そう、俺は親元を離れ一人暮らしをしている。
理由は両親が学生の内に親元を離れて生きる練習をさせておくと言う、教育方針からである。
「鳶沢は大阪出身なのか。普段関西弁は使わないのか?」
「関西弁はキツいとか怖いとか言われるって聞いたから、あまり使わないようにしてる。でもこの喋り方も好きだよ」
そんな話をしながら登校していると、バタンと大きな物音を立てて人が転けていた。
ん、あれは和泉か?
「大丈夫か?和泉」
俺が声をかけた人物は和泉だった。なぜ彼がこんな早くに登校しているのだろう?
「イテテ·····ありがとう、鳶沢くんいつもごめんね。それとおはよう。狼谷さんもおはよう」
「おはよう和泉くん」
「相変わらずの不幸体質だな·····今日は早いな式守はどうした?」
「今日は先生に頼まれごとをされててね、式守さんとは別行動なんだ」
「そうなんだ、とりあえずこのまま3人で学校へ行くか?」
「え、いいの?2人の邪魔しちゃ悪いんじゃ·····」
「「!!」」
和泉がそう言うと俺と狼谷は二人して反応してしまった。
「和泉くん私達は別に付き合ってる訳じゃないのだが·····」
「そうだ和泉、別に俺達はそういう関係じゃ·····」
「そうなんだ、2人はよく一緒にいるからてっきり恋人なんだと思ってた」
確かに狼谷が恋人なら·····想像すると顔が赤くなってしまった。だって俺は狼谷が好きなのだ。
狼谷といる時はとても居心地が良い。
ダメだもっと赤くなってるな、何か別のことを考えよう。
そうだ!和泉にも式守との関係を聞いて真っ赤にしてやろう。
「そ、そういう和泉は式守とはどうなんだ?」
「え!?し、式守さんとは"まだ友達"かな」
「ほぅ〜"まだ"ねぇ〜」
和泉と式守に対して思うことがある、お前ら絶対相思相愛なんだから早く付き合えよと。
「と、とりあえずそろそろ学校に行かないか?」
「そうだな、まあまあ時間食っちまったし、行くか」
「ご、ごめん僕のせいで」
そうして学校まで3人で歩きだしたのは良かったのだが·····
「危ない和泉くん!」
「狼谷っ!!」
この状況はかなりやばい、和泉に車が向かって来ている。
当たれば大怪我、悪ければ死ぬだろう。
まず狼谷が和泉を庇う形で突き飛ばした。
しかし、このままじゃ狼谷にあの車が当たるだろう。
それだけは避けたい!
咄嗟に俺は狼谷を突き飛ばし·····
「「え、」」
バンっ!
という音共に俺は地面に倒れた。
「おい!鳶沢大丈夫か!?」
「ごめん!ごめん!僕のせいだ!鳶沢くんしっかりして!!」
何が起きた?狼谷と和泉がなんかすごい顔で俺に呼び掛けてるけど·····ダメだ眠たいなぁ。
次に俺が目を覚ましたら、知らない天井だった。
「鳶沢くん!目が覚めたの!?」
「鳶沢!!良かった、本当に良かった」
そう言って涙を流している2人、なんだこの状況は?そんなことより·····
「痛ってー」
右手に激痛が走った。
よく見てみると包帯だかギブスだかよくわからんのでグルグル巻きにされているではないか。
「ごめん、ごめん本当にごめん、きっと僕のせいだ、僕が一緒にいたからこんなことになっちゃって·····」
「いいや、和泉くんのせいじゃないよ。私を庇ったからこそ、大怪我をさしてしまった。すまない」
なんか、2人が泣きながら謝っていて話が進まない。
とりあえず2人をなだめてから何が起きたかを聞いた。
2人の話によると俺が車によってはね飛ばされ、咄嗟に手で落下の衝撃をカバーしたが、頭を打ってしまい気絶したようだ。
なるほど、それで手がミイラ状態な訳だ。
そして自分でもやっと状況を整理することができた。
「あー、思い出したよ。でもお前ら何言ってんだ?勝手に僕のせいだとか私のせいだとか、お前らは悪くねぇよ、それに助けたいから助けたんだ、だから気にするな。それよりお前らの方は怪我はないか?」
「僕は大丈夫だよ、本当にごめん」
「私も手を擦りむいたくらいだ、すまない」
「だから謝んなって、お前らは泣いてる顔より笑顔の方が似合ってるよ」
「それより、腹減った。和泉何か買って来てくれないか?それでおあいこでどうだ?」
「買い物くらい全然いいよ!でもそんなことじゃ鳶沢くんに何にもお返しできてないよ」
「何言ってんだ?俺たち友達だろ?困った時は助け合う。それだけでいいじゃね?」
「ありがとう鳶沢くん!すぐに買ってくるね!何が食べたい?」
「なんでもいいよお前に任せる」
そう言うと和泉は病室を出て買い物に行った。
途中「うわぁ」と言う声とバタンと大きな音がしたのは気にしないでおこう。
あと、病室って食べ物持ち込んでも良いのだろうか?それよりも狼谷だ、さっきから涙が止まっておらず、すごい顔になっている。
「だから気にすんなって」
「しかし、私を庇って君は·····」
そんな狼谷を俺は見ていることができずに抱きしめた。こんな事をして、大丈夫なのだろうか?嫌われないだろうか?でもこうすることしか俺には出来なかった。
大好きな人が辛そうに泣き続けているのが、俺も辛かったんだ。
「俺が助けたいから、助けたんだ!お前らのことが大事だから!だから気にしないでくれると嬉しい。」
「ああ、ありがとう、ありがとう」
「悪い、心配かけたな」
「でも、本当に、本当に良かった」
ようやく泣き止んできた狼谷の頭を撫でる。
すごくかわいい。
「そのなんだ、とても恥ずかしいのだが·····」
「好きだ」
「!!?」
勢いで言ってしまった。
今言いたかったんだ。
このタイミングで言うべきではなかったのかもしれない。
でも、今だから言える気がした。
「俺は、誰よりもかっこよくて優しい君が好きだ。君と一緒に過ごしている内にどんどん君の優しいところに触れたんだ。君が困ってる人に手を貸しているところを何度も見た、俺も初めて出会った時、君が手を貸してくれてすごく助かった。今回も和泉を助けていた。あんな風に人を助けられる君はすごくかっこいいし、とっても優しい君が好きだ!」
俺は短い期間だが、狼谷を見てきた。
だから分かるんだ。
狼谷はとても優しい、そしてかっこいい。見た目や仕草もすごくかっここいいが、彼女のかっこいいところはそこだけじゃない。
優しい性格がすごくかっこいいのだ。
「俺と付き合ってください」
全部言ってしまった、言ってしまったんだ。
こうなればもう、今までの関係では居られない。
だからいい方向になるように祈る。
「私は、ただ皆からの声や評判が多すぎてね、人の言葉に揺れ動くのって疲れるんだ。だから私は自分の事も、他人のことも考えるのをやめたんだ。でも、君に初めて優しいと言われた時から君のことを知りたい、私の事を知って欲しいと思った。そうして君と過ごして居る内に、君の人を思う事ができる優しさが好きになったんだ!だから、私からもお願いだ!君の傍にいさせて欲しい」
なんということだろう。
狼谷も俺の事が好きだったようだ。
とても嬉しい!
「ありがとう狼谷、君に優しいって言われるのはうれしいよ。これからもよろしくお願いします。」
そうしてしばらく無言で見つめあっていると·····
「おまたせ!!」
勢いよく扉が開かれると買い物から帰ってきたであろう和泉が現れた。
現れたのだが·····
「なんでお前頭から枝生えてんの?」
「え、これはギャグだから」
よくわからんギャグってなんだ?
「病院の人に差し入れの許可を貰ってたら遅くなっちゃった。一応消化にいいゼリーとかにしたけど大丈夫?」
「ありがとう、貰うよ」
和泉に貰ったゼリーを食べながらこれから狼谷と過ごす時間を想像する。
手を繋いだりするのだろうか?恥ずかしいが、すごく楽しみだ。
その後、式守、犬束、猫崎、八満と次々にお見舞いに来てくれた。
友達が来てくれるとすごく嬉しい。
両親も遥々大阪から来てくれた。
本当にありがたい。
俺の周りにはいい人が多いのを改めて自覚した。