五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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幸村隼人の秘密

実は目が少し悪い


第13話 結びの伝説 2日目②

 

少し前、風太郎の生徒手帳に挟まっている写真を見せてもらったことがある。

 

「誰これ」

 

「俺」

 

「お前ぇ!?これが!?ウッソだー」

 

「嘘じゃねぇよ…親父知ってるならわかるだろ」

 

「………あー、そう言われたら遺伝だなこの金髪は」

 

とても目の前にいる黒髪勉強星人がこのいかにも成長したら校舎壊しまくりそうな金髪少年の成長後とは思えなかった。

 

「目元はお前にも似てるんじゃないか?」

 

「俺こんなに目つき悪い?」

 

「目細めた時とかこんな感じだろ」

 

「そーかー?」

 

◇ーーーーー◇

 

「やっぱり…あの写真の子だ」

 

「な、なんのことかな?それより立てる?」

 

「うんありがとう……ねぇ、キミの名前を教えて!」

 

「え?」

 

二乃ちゃんを立ち上がらせると、彼女は俺に名前を聞いてきた。まさか幸村隼人は俺の名前じゃなかったのか??本人すら知らない衝撃事実なんだけど。

 

「あ、ごめんね。前にキミの写真を見てカッコいいなーって思ってたんだ」

 

「写真…」

 

「ここのコテージ、他の学校の生徒も林間学校で使ってるのは知ってたけど…まさか上杉の親戚に会うなんて思わなかったわ」

 

「風太郎の親戚……」

 

状況を整理しよう。

まず二乃ちゃんは俺を風太郎の親戚と勘違いしている。

二乃ちゃんは風太郎の親戚の写真を見たことがあるという。

でも二乃ちゃんが風太郎の家に行ったとは考えられないし。

そうなると風太郎は自分の持ってる何かの写真を自分の親戚だと言った。

 

風太郎の持ってる写真って……生徒手帳のアレか!?あれ風太郎じゃないか!!あいつ昔の自分のことを親戚だって言い張ったのか。

確かに今の俺は金髪(カツラ)で暗いから若干目を細めてる。

 

二乃ちゃんの夢を壊したくないし、ボロが出る前に四葉ちゃんに合流したいところだ。

 

「ねぇ、初対面でこんなこと頼むのも悪いんだけど…姉妹と逸れちゃったの。一緒に探してくれないかな」

 

「え、あ、ああ……」

 

 

 

 

 

2人で森を歩いて数分。とりあえず俺のことは「信繁」と名乗った。風太郎の親戚だから上杉信繁ってことになるのかな…もう歴史上の偉人じゃん!

 

早く出てきてくれ中野ちゃん!

 

「中々見つからねぇな……星もよく見えるしアレが出来るか」

 

「アレ?」

 

「星から方角を割り出すんだ。北斗七星のあの星間を5倍にした先が北極星、つまり北だ」

 

「へー、意外と物知りなんだね。頭いい人って憧れちゃうなー」

 

嘘でしょ!?貴女家庭教師のこと凄く嫌ってるじゃないのよ!?

 

「自分の成績をこれ見よがしにひけらかす奴とは違うわー」

 

「そんなことする奴がいんのか…」

 

「知ってるでしょ?キミの親戚の…あれ……キミ、顔見せて」

 

「えっ、なっ…まさか」

 

「ほら!おでこ怪我してる!」

 

バレたかと思ったぜ……探してる時に怪我したのかな気が付かなかった。

 

「ウチにもすぐ怪我して帰ってくる子がいてね。うん、これでよし!可愛い絆創膏だけど我慢してね」

 

「用意がいいんだな…わざわざすまん」

 

「これくらいなんて事ないわ」

 

きっとこれが二乃ちゃんの本来の優しさなんだろう。俺や風太郎みたいに踏み込んでくる奴に当たりが強いのであって、誰にでも当たりが強いわけじゃないんだ。

 

「ねぇ、何か声みたいなの聞こえない?」

 

「え……女の声か?」

 

「五月かも!」

 

中野ちゃんの声に聞こえなくもないが、確証がない。そんな中二乃ちゃんを1人で向かわせるわけにもいかない。

 

「こっちの方が楽そうね。こっちから行こう!」

 

「そっちは……」

 

「ほら、森もすぐに「待て!そっちに行くな!!」

 

どうやら俺も頭が回ってなかったらしい。さっさと二乃ちゃんに状況を説明するべきだった。こんな時ばっかり頭が回らない。ホント、

 

「自分が嫌になるぜ!」

 

二乃ちゃんの手を取って、俺の力を全て使って引っ張る。なんとか二乃ちゃんは落ちずにすんだ。だけど今度は俺が落ちそうだ。幸村隼人ここまでってか?

 

「手っ!」

 

でも天は俺を見捨てなかった。俺の手を二乃ちゃんが掴み力いっぱい引き上げてくれた。その反動で二乃ちゃんを押し倒す形にはなってしまったが。

 

「悪い…助かった」

 

「こちらこそ…ありがとう…」

 

「立てれるか?」

 

「ごめん…ちょっと動けないかも」

 

「もしかしてさっきの」

 

「違う、そうじゃないの…そうじゃない…けど、怖いから……手、握って」

 

いつもの二乃ちゃんからは想像も出来ない弱々しい声。差し伸べた手も震えている。そりゃあんな思いしたら誰だって怖いだろう。

 

「って、初対面の男の子に何言ってんだろ!今のなしなし!」

 

「いいよ」

 

「え?」

 

「約束する。キミが怖くなくなるまで側にいる。絶対に」

 

震える彼女の手をしっかりと握る。夜風に当たった彼女の手は少し冷たかったが、震えはすぐに無くなった。

 

「信繁君……キミは明日もここにいるのかな?」

 

「え?ああ……」

 

「私たちの学校、明日キャンプファイヤーがあるんだ。その時やるフォークダンスに伝説があって、フィナーレの瞬間に手を繋いでいたペアは結ばれるらしいの」

 

「へ、へーそうなんだ…」

 

「結構大雑把な伝説だから手を繋いでいるだけで叶うって話もあったりで、人目を気にする生徒たちは脇でこっそりやってるみたい」

 

「それでいいのか…」

 

「ほんと大袈裟で子供じみてるわ……」

 

月明かりに照らされた二乃ちゃんは俺の手を両手で握り、

 

 

 

「信繁君、私と踊ってくれませんか?」

 

 

 

俺の目を見つめながらそう言った。

 

◇◇◇◆◆◆

 

「わぁあぁあ!!二乃ぉぉ〜よかった〜心細かったんですぅぅ〜」

 

「まったく、あんたが1人で逃げるからでしょ」

 

「二乃はよく1人で平気でしたね」

 

「違うわ、私は………

 

 

…待ってるから」

 

◆◆◆◇◇◇

 

「まずい…まずいまずいまずい!」

 

今、幸村隼人は色々な意味でまずいことになっていた。

 

1つ、二乃ちゃんにとんでもない嘘をついてしまったこと。なんでさっさと正体を明かさなかったんだ俺は!

 

2つ、二乃ちゃんと信繁としてダンスを踊る約束をしてしまったこと。これはまだなんとかなるかもしれないが……二乃ちゃんが伝説を信じてるなら、それはそれでまずいことになる。

 

3つ、21時に約束していたが……現在21時10分!!遅れてしまった。でも約束の場所まではもう少しだ。

 

「着いた!」

 

「おいおい久しぶりの再会だってのに、いきなり約束すっぽかされたかと思ったぜ」

 

俺に声をかけてきたのは朝にメールを飛ばしてき、俺をここに呼んだ張本人。

 

「真田…久しぶりだな」

 

「あの時以来だな幸村」

 

真田龍我。勇翔高校2年で俺の……旧友ってところか。

 

「わざわざ呼び出してなんの用?お兄さん忙しいんだけど」

 

「ハッ、すっかり牙が抜けちまったみてぇだな。1発殴れば前みたいになるか?」

 

「冗談。俺はいつだって俺を忘れたことはねぇよ」

 

「そいつは安心だな。まあ今日ばっかりはただの挨拶だ。また昔みたいに仲良くしようぜってな」

 

「そういう挨拶なら別にメールで終わる話でしょ」

 

「………それもそうだな」

 

真田はハッキリ言ってヤンキーだ。気に入らない奴は殴って黙らせる。邪魔な奴は殴って退かす。そんな奴だ。

 

そんでもってバカだ。かなりのバカだ。多分真田にも家庭教師つけた方がいいと思う。苦労度は五つ子のほうが上かもしれないけどさ、ほら可愛いじゃない五つ子たちは。コイツ可愛くないもん。

 

「もういい?俺明日の準備しないといけないから」

 

「ああ、そうか。頑張れよ。俺も寒いし帰るわ」

 

クソッ!話これだけかよ!短かったなぁ!まあでも風太郎に相談できる時間は出来たな。

 

 

 

 

 

「……何かあった?」

 

コテージに戻ってきた俺が見たのはずぶ濡れの風太郎が先生に怒られているところだった。

 

「中野ちゃんに三玖ちゃん、風太郎に何かあった?」

 

「幸村君。キャンプファイヤーで使う木材を置いている蔵で一花と上杉君が2人で閉じ込められたみたいなんです」

 

「何でびしょびしょ?」

 

「中で焚き火してたみたい。寒かったからだと思うけど、確かに危ない」

 

「よく助かったね……」

 

閉じ込められて、寒さから焚き火をした。まあ怒られることだけど仕方ない事というか、なんとも難しい。

こういった場合先生などからは『閉じ込められた』ことさえ悪いことにされて怒られてしまう可能性が高い。理不尽だが確かに避けようはあることだ。

 

「先に戻るね」

 

「はい、おやすみなさい三玖」

 

「おやすみ三玖ちゃん。中野ちゃんはまだ部屋戻らないの?」

 

「私は一花の様子を見てきます。一花も濡れていましたから」

 

「そっか……あ、二乃ちゃんとは合流出来たみたいだね」

 

「その節はご迷惑をおかけしました……ですが怖くないと言った幸村君にも非があると思いますが!」

 

「あそこまで怖がるとは思わなくって……いや言い訳だね。ごめん、怖い思いさせて」

 

肝試しに誘って怖がらせて1人にさせてしまったのは俺の責任だ。ここは謝るべきだろう。

 

「お詫びと言っちゃなんだけど、俺に出来ることならなんでも言って。お兄さんがお願いを叶えちゃうゾ!」

 

「なんですかそれ。そうですね、でしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日のキャンプファイヤーのダンス、一緒にどうですか?」

 

 

「え?」

 

◇◇◇◆◆◆

 

「なーんて、冗談ですよ!駅前のファミレスで大丈夫です」

 

「び、ビックリした…それでいいなら任せて。それじゃ」

 

その場を後にする幸村君。その背中を見ながら私は思い返す。

 

『明日のキャンプファイヤーのダンス、一緒にどうですか?』

 

「私は…どうしてあんな事を言って……」

 

無意識だった。あんな言葉が平然と出てくるとは思わなかった。そしてこの気持ちはなんだろう。私は彼のことを……?

 

いいえダメです……ダメなんですそれは。

それに私は彼のことを知った気でいるだけ。

 

 

 

男の人はもっと見極めて選ばないといけないんですから。

 




簡単なオリキャラ紹介
真田龍我 さなだりゅうが
誕生日 3月11日
身長 181
隼人の旧友。バカで喧嘩っぱやい。

二乃と信繁(隼人)の約束、真田と隼人の約束、五月と隼人の約束。
この物語はこれから【約束】が大事になってきます。

次回はいよいよ3日目です。スキーも内容が少し変わります!
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