五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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幸村隼人の秘密

風邪にはあまりならない


第14話 結びの伝説 3日目

 

「へっくしっ!ぬぁぁぁ!くしゃみ止まんねー」

 

林間学校3日目。朝からくしゃみが止まらない。しかもちょっとダルい。昨日夜風に当たりすぎたかな。

 

今日は自由参加の登山、スキー、川釣りのどれかを体験することになっている。まあ自由参加だから参加しなくてもいいらしいけど。

そして夜にはキャンプファイヤーだ。今からカツラ用意しとくか。

 

「幸村さん!おはようございます!」

 

「うおっ!?四葉ちゃんかビックリした…」

 

「上杉さんよりお寝坊さんですね!早く準備してスキー行きますよスキー!」

 

「分かったから部屋から出ようか。前の二の舞になるよ」

 

 

 

 

 

「さあ!滑り倒しますよー!」

 

「寒いし寝かせてくれ…というか俺滑れねーし」

 

「安心してください!どうしても無理なら私が手を引いて滑ってあげます!」

 

「よーし隼人!練習頑張るぞー!」

 

「俺は少しは滑れるけどね」

 

スキーに参加している生徒は登山や川釣りに比べて遥かに多い。まあ登山や川釣りよりスキーの方が出来るタイミング少ないし、ここまで多くなるのも必然か。

 

「他の四馬鹿はどうした?」

 

「一花は体調を崩して五月が看病してくれています。二乃はもう滑ってて、あと三玖なんですけど…あ、来た来た!」

 

「どーも」

 

「「誰だ!?」」

 

「三玖」

 

三玖ちゃんも四葉ちゃんも同じ服装で声聞いて顔をしっかり見ないとよく分からない。黙ってたらホントに分からない。

 

「普段教わってばかりの私ですが、今日は教えまくりますよ!!」

 

というわけで四葉ちゃんに教わりながら滑ることになったのだが、

 

「上杉さん!もっとスイィ〜っと進んでください!」

「幸村さん!クルクル回りながら滑らないでください!」

「三玖!雪だるま作ってないで滑らないと!」

 

 

「わーん!誰もいうこと聞いてくれない!」

 

「それは俺がいつもお前に思っていることだ」

 

体育会系というか、四葉ちゃんらしいというか。これでも真面目に聞いてるつもりなんだけどね、なんでかクルクル回っちゃう。

 

「わー、ぎこちないねー」

 

「ッ!ホントに誰だ!?」

 

「一花だよ」

 

スキーに悪戦苦闘する俺たちの前に現れたのは一花ちゃん。昨日風太郎と一緒にずぶ濡れになったって聞いたけど大丈夫なのかな。いやそうなると風太郎も大丈夫なのか?

 

「体調は良くなったのか?」

 

「まあ万全じゃないけど心配しないで。あと五月ちゃんは顔を合わせづらいから1人で滑ってるってさ」

 

「そうか…」

 

中野ちゃんは1人で滑ってるのか…顔を合わせづらいってなんかあったのかな。昨日はそんな風には見えなかったけど。

 

「ねー一花!この3人全然言ったこと覚えてくれない!」

 

「それは俺がいつもお前に思ってることだ!さっきも言ったろ!」

 

「じゃあ楽しく覚えよう…例えば追いかけっこ、とかね!」

 

そう言って滑り出す一花ちゃん。一花ちゃんや三玖ちゃんが普通に滑れるのを見るに元々の運動神経はみんな良いんだろうな。四葉ちゃんはそこから特化して良くなった。努力の賜物ってやつだ。

 

「じゃあ私が鬼やるね!いーち、にーい」

 

「ようやく進めるようになったってのに…隼人!「お先〜」クソッ、三玖一緒に…ってああ!あいついつの間に!!」

 

とりあえず今は逃げますかね。遊ばなきゃ損損ってやつだ。

 

「一花ちゃん、滑るの上手いね」

 

「四葉には負けるけどね」

 

「一花!隼人!お前らに聞きたいことがある!」

 

「もう追いついたのか風太郎」

 

「どうしたのー?」

 

「これ、どうやって止まんの?」

 

「風太郎!?」「えええっ、上杉君!?」

 

俺たちに追いついて急激な上達を見せたと思ったらそのまま雪景色の中に消えていった。

 

◇ーーーーー◇

 

「ふぅ…だいぶ滑ったね」

 

「そうだねー。少し動いたらお腹空いたかも」

 

「じゃあ何か食べに……そういや財布部屋だな」

 

「じゃあ一緒に取りに行こうか」

 

「そうだね。病人1人置いては行けないから」

 

「そこまで心配しなくていいのに」

 

四葉ちゃんから逃げながら2人でコテージに戻る。スキーって結構動くんだね。滑るだけだと思ってたよホント。あんなに回転するとは。

 

「へっ、くしゅん!ぬぁぁぁあ……」

 

「もしかして風邪引いた?移しちゃったかな…」

 

「まあまあ、風邪引いてても大したことないよ。それより自分の心配したら?」

 

「私は大丈夫だよ〜。これでもお姉さんだからね」

 

「何言ってんのまったく………お姉さんじゃなくて妹でしょ」

 

「え?」

 

 

 

「もういいでしょ中野ちゃん」

 

 

 

フードを外すと一花ちゃんには無い長さの髪が姿を現した。ゴーグルしてマスクしてフード被ってたら見てくれだけじゃ分からない。それに風邪気味なら声が少し変わってても喉をやられたんだと思わせることができる。

 

「ど、どうして…」

 

「一花ちゃんは普段風太郎をフータロー君って言うだろ。上杉君って呼ぶのは中野ちゃんだけだよ」

 

「お見通し…なんですね……」

 

「風太郎程じゃないけど、君たちと過ごした時間は多いつもりだよ」

 

「やはりあなたは上杉君とは違いますね」

 

「いや、多分風太郎もすぐに気づくさ。中野ちゃんが何のためにこんな事をしているのか話したくなかったら話さなくてもいい。だけどね、風太郎は君たちのことをちゃんと見てる、それだけは覚えといて」

 

中野ちゃんなりの理由があって一花ちゃんの変装をしているのだろう。これは彼女自身の個人的な理由。俺が問いただすことじゃない。

 

「幸村君…私……確かめたくって…」

 

中野ちゃんが何かを伝えようとした時、中野ちゃんのポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。

 

「すみません三玖からです」

 

「分かった。俺は財布取ってくるから、電話出てあげて」

 

「すみません……幸村君!」

 

「ん?」

 

「……ありがとう…ございます」

 

お礼を言う中野ちゃんは少しだけ明るくなっていた。

 

◇ーーーーー◇

 

「あー!一花と幸村さんみーつけた!!」

 

コテージからスキー場に戻る時に四葉ちゃんに捕まった。隣には二乃ちゃんもいるけど、もしかして巻き込まれた口かな。

 

「ねぇ2人とも。金髪の男の子見なかった?」

 

「金髪?見てないなぁ。ゆき…ハヤト君はどう?」

 

「ミテナイナー」

 

不味い。もしかしてこの時間ずっと信繁探してたのかな。だったら悪いことしちゃったな……キャンプファイヤーの時だけ姿を現せばいいと思ってたけど、二乃ちゃんの信繁に対する思いはかなり大きいみたいだ。

 

「名前なんて言うの?」

 

「ノブ君よ」

 

「ノブ君??」「ブッ!?」

 

「あ、ノブ君ってのは私が一方的に言ってるだけで…信繁君って名前なの」

 

ちょっと待ってちょっと待って。ノブ君??俺はお笑い芸人になったのか??あと本人がいないところで勝手にあだ名をつけるのはよろしくない!うん、そこだけ指摘しよう!

 

「その、ノブ君は信繁君って人に許可もらってから使った方がいいんじゃないかな??」

 

「それもそうね…!ありがとう幸村。上杉じゃこういうアドバイス出来なさそうね」

 

「アハハハ……」

 

心が痛い。本当にごめんよ二乃ちゃん。

 

「あとは三玖と上杉さんだけど……あ!あそこにいた!」

 

四葉ちゃんが指差す方にはフードコートから出てくる風太郎と三玖ちゃんがいた。風太郎のやつちょっとふらついてないか?

 

「三玖と上杉さんみーっけ!!こんなところで油断してちゃダメですよ!」

 

「なんだ四葉か」

 

「残るは五月を見つけるだけだね!」

 

「これだけ動き回って会わないのは不自然だな…」

 

鋭いね風太郎センセー。まあ中野ちゃんなら横にいるんだけど。とにかく中野ちゃんに何か目的があって下手に動けないのなら、ここは俺がなんとかするしかないな。

 

「よし、こうなったら手分けするか。風太郎と一花ちゃん、三玖ちゃんと四葉ちゃん、俺と二乃ちゃんで手分けしよう」

 

「まあ、アドバイスくれたわけだし…五月が何か危ない目に遭う前に見つけましょう」

 

「コテージに戻ってないか三玖と見てくるよ!」

 

「なら俺たちは……ッ」

 

「フータロー、もう休んだほうがいいよ…」

 

思った以上にふらついてるな。やっぱりらいはちゃんから貰ってたか。それが俺にも移った感じかな……風太郎程じゃないにしろ俺も長時間は動けないか。

 

「いや……五月の奴、迷子になって泣いてるかもしれないしな……これでもお前らを任された立場なんだ。探し出してみせる」

 

「……中野ちゃんのことをそこまで」

 

「……五月が行きそうなところ…五月ならフードコートだと思ったんだがな……もっとアイツのことを考え………て…」

 

「上杉さん、フラフラじゃないですか!私たちとコテージに「待ってくれ!…五月が行きそうなところ…俺に心当たりがある……」

 

「……信じていいのね上杉」

 

「ああ…一花、付いてきてくれ」

 

「風太郎、頼んだ立場が言うのもだが、無理だと思ったら俺を呼べ。すぐに行く」

 

「おう、頼むぜ…」

 

こうして俺たちは別れて中野ちゃんを探すことにした。

 

 

 

それから20分もしないうちに、中野ちゃんから、風太郎が倒れたと言う連絡があった。

 

◇ーーーーー◇

 

「よく連れてきてくれたな。上杉は一旦この部屋で安静にさせて様子を見る。これ以上悪化するなら私が病院に送ろう。上杉の荷物を持ってきてくれ」

 

「はい…」

 

キャンプファイヤー目前。風太郎の体調が悪化して離脱することになった。

 

中野ちゃんから連絡があって、二乃ちゃんと駆けつけた時には風太郎の意識は半分無かったようなものだった。

それから風太郎を担いでコテージまで運ぶのはいいけど、二乃ちゃんは中野ちゃんに説教するし、三玖ちゃんと四葉ちゃんは大慌て、更には本物の一花ちゃんも体調が悪いのに部屋から出てきて更に二乃ちゃんが怒るハメに。

 

「お前たちは着替えて広場に集合だ。時期にキャンプファイヤーが始まる」

 

「わ、私も残ります!」

 

「ゴホッ…お前たちがいても仕方ないだろ…1人にさせてくれ」

 

「ちょっと、いくらなんでも冷たいんじゃ「二乃ちゃん」……ッ」

 

「ということだ早く行きなさい!これよりこの部屋は立ち入り禁止とする!見つけたら罰則を与えるからな!」

 

風太郎と先生はそのまま部屋に入っていった。はぁ……今回は俺のせいだな…

 

 

 

 

 

キャンプファイヤーまでもう少し。他の生徒が意気揚々と広場に向かう中、コテージの廊下で1人佇む二乃ちゃんを見つけた。

 

「二乃ちゃん、今1人?」

 

「幸村…あんたはお呼びじゃないわ。せめて信繁君を「その信繁君の話なんだけど。今風太郎から連絡があった」

 

「なんで上杉が…ってあいつの親戚だから当然か…」

 

「たまたまスキー場で会ったみたいでね。外せない用ができてキャンプファイヤーには行けないってさ。伝えるのが悪くなってごめんとも言ってた」

 

本当にごめん。今のこの状況で信繁として君と踊ることは俺には出来ない。無責任なのは分かってる。だけど俺には友達を離脱させといてキャンプファイヤーを楽しむほどの余裕はない。

 

「そう……嫌われちゃったかな…少し重かったかしら…」

 

「……そんなことないよ。行けなくなったことを伝えたってことは、行くつもりではあったはずだよ。行くつもりが無いなら言伝なんて頼まないよ」

 

「それも…そうなのかしら……」

 

「なんの気休めにもならないかもだけど、元気出して」

 

「何よ……あんただって見るからに元気が無いくせに……ムカつく…」

 

 

 

 

 

「私のせいです…私が余計なことを考えて一花のフリなんかしたから……」

 

「違うよ五月!私が…私が具合の悪い上杉さんを無理矢理連れまわして台無しにしちゃった…」

 

風太郎の荷物を取りに向かうと四葉ちゃんと中野ちゃんが部屋で落ち込んでいた。四葉ちゃんも中野ちゃんも優しい性格だから、きっと自分を責めてしまうんだろう。

 

「2人とも大丈夫?」

 

「幸村さん……私はなんてことを……」

 

「風太郎をあんな風にさせてしまったのは俺の責任でもある。中野ちゃんが一花ちゃんのフリをしていたのを知っていたのに…風太郎が苦しい思いをしてるのにすぐに伝えなかった俺の責任でもあるんだ」

 

「幸村君は私のわがままを「心のどこかで、多分大丈夫だろう、って思ってたんだと思う」

 

なんとかなる。俺はそう考える時が多い。

昨日だって、怖がりの中野ちゃんを肝試しに誘った。他の姉妹がいるから大丈夫だろうと。

 

二乃ちゃんのダンスの誘いを受けてしまったこと。きっとダンスが終われば2度と信繁と会うことはないだろうと考えた。

 

真田との約束だって、走れば間に合うと、なんとかなると心のどこかで考えていた。

 

中野ちゃんを探す時だって、風太郎の体調が悪いのが目に見えて分かっていたのに…どこかで『まあ、大丈夫だろう』って考えていた。

 

五つ子の家庭教師補佐を受けた時も、まあなんとかなるだろう、って

 

「俺は……どこまで行ってもヘラヘラしたテキトー人間だって改めて実感したよ」

 

「そんなことありません!幸村君は私たちのこともちゃんと考えてくれているじゃありませんか!」

 

「それに上杉さんのことを適当に思っているのなら、そんなに思い詰めた顔はしませんよ」

 

「2人とも……ッ…ダメだなぁ俺は」

 

あの時から何も変わってない。俺はあの時のまんまだ。あの時のままじゃダメなのになぁ。

 

「3人で上杉さんに謝りに行こ!」

 

「え、今からですか!?」

 

「こっそり行けば大丈夫だよ!ほら、幸村さんも!」

 

「……うん、そうだね。まずは風太郎に謝らないと」

 

◇◇◇◆◆◆

 

「主任…主任…主任!起きろハゲネズミ!」

 

「!?」

 

「キャンプファイヤーも終盤です。手伝ってください」

 

「あ、ああ…今行こう」

 

真っ暗な部屋から学年主任の社会の先生が出ていきました。

私は今上杉君が安静にしている部屋に忍び込んでいます。私はなんてことをしているのでしょう……少し前ならその気持ちに囚われていたでしょう。

 

でも今は…

 

「行ったかな?」

 

「早く電気付けなさいよ!」

 

「何処にあるか分からない」

 

「うーん…あ、これだ!」

 

明かりが部屋を照らす。私たち五姉妹はみんな揃いに揃って部屋に忍び込んだのです。

心配する人、謝りたい人、想いはそれぞれですが、みんな上杉君のことを思っている。私にはなんとなく分かります。

 

「二乃が来るのは意外だったね。やっぱり上杉さんが心配なんだね」

 

「一緒にしないで!私は信繁君からの言伝をコイツから聞いて……そのお礼よ!礼儀よ!心配なんかしてないわ!!」

 

「照れてる」

 

「私と三玖はフータロー君が心配でね」

 

「私と四葉は、上杉君に謝罪をしようと思って」

 

「でも完全に寝ちゃってるね…起こす?」

 

「病人を無理矢理起こすわけにはいかないでしょ!」

 

「病人……そうだ、手握ってあげようよ」

 

「私たちが病気の時、お母さんがよく手を握ってくれた。元気になるおまじない」

 

キャンプファイヤーも終盤なのでしょう。窓から明るい光が差し込んでいます。上杉君の顔がハッキリ見えるくらいの明るさでした。

 

「あの時もずっと耐えてたんだね。私も周りが見えてなかったな…ごめんねフータロー君」

 

「あんたのそのナリ、らしくないんだから…早くいつもの調子に戻りなさい」

 

「私たち5人がついてるよ。だから安心してねフータロー」

 

「上杉さんごめんなさい。そして早く元気になってください」

 

「その時は改めて謝罪を。本当に申し訳ございませんでした。早く良くなってくださいね」

 

 

 

私たちの、この思いがあなたに届きますように。

 

 

 

 

 

◆◆◆◇◇◇

 

「ッ……あれ…俺なんでこんなところで」

 

頭が痛くて目を覚ました。なんで床で寝てるんだ俺は。確か風太郎に謝りに行く前に自分の泊まった部屋に戻ってそれから……それからの記憶が無い。

 

「うわっ、もうこんな時間…はやいとこ…いかねぇ……と…………」

 

薄れる意識。ギリギリだったのは俺もだったか。すまん、風太郎…

 




これにて林間学校編終了になります。アニメでいえばこれで一期が終わりました。ペースがアニメとほぼ一緒になってる気がしますが多分気のせいです。多分。

次回は風邪でぶっ倒れた隼人のお話、つまりオリジナル回です。
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