五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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幸村隼人の秘密

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第15話 五等分の0点?

 

「ふぁぁ〜〜っくしっ!ぬぁぁぁ…」

 

1人寂しくクシャミをしては鼻水を拭き、ゴミ箱に放り投げる。外れた。これで外した数は8個。今日はまあまあの精度だ。

 

林間学校の最終日、俺は結局風邪でノックダウン。キャンプファイヤーにも間に合わず、風太郎に謝るのも遅れてしまった。その風太郎本人は念には念を込めて入院している。入院費は中野家持ちだ。

 

それに比べて俺はアパートの自室で1人寂しく寝込んでおりましたとさ。

 

「37.8…だいぶ下がったな」

 

これなら学校にも行けるだろう。明日は休みだけど。まあ体も少し楽になったしちょっとコンビニで何か買ってこようかな。

 

『すみませーん。幸村君のお家であっていますでしょうか?』

 

「中野ちゃん??」

 

部屋のドアをノックしながら俺の部屋かと尋ねる中野ちゃんの声が聞こえた。俺の家の場所は知らないはずなんだけど…

 

「あらいらっしゃい。どうしたの?」

 

「上杉君にご自宅の場所を聞きまして、お見舞いに来ました」

 

そういえば一度だけ風太郎を招いたことがあった。去年の話だったな。

 

「とりあえず玄関で話すのもなんだし」

 

「すみません、お邪魔します。幸村君は1人で生活しているのですか?」

 

「うん、高校に入学する時に親元離れて1人でね」

 

「高校入学のため……何か理由が?」

 

「よくある話、五月ちゃんと同じ学校に通うためだよ」

 

「え!?私とですか!?」

 

「ああ!違う違う、高梨のほうね」

 

なんだかややこしいな。中野ちゃんのことも他の姉妹みたいに名前で呼んだ方がいいのかな。意識しないと変えられないからなぁこればっかりは。

 

「結局五月ちゃんは落ちて別の高校に行ったんだけどね…まあ、ある意味では五月ちゃんがいたら中野ちゃんとは出会わなかったかもしれないね」

 

「大袈裟ですよ。きっと幸村君と高梨さん、そこに上杉君もいて、私たち5人も揃ってますよ」

 

「そうかなぁ…そうだといいなぁ」

 

随分長い付き合いに見えて実はそこまででもない。でも俺の生活に彼女たちが不可欠になってる気もする。五つ子ちゃんに染められちゃったかな。

 

「麦茶ぐらいしか出せなくてごめんね」

 

「いえ大丈夫ですよ。そうだ、上杉君明日には退院出来るそうですよ」

 

「もう少し長引くと思ったけど案外早かったね。俺ももう大丈夫だから、明日の家庭教師補佐は顔出すよ。確か風太郎から小テスト出てなかった?」

 

「はい。今日は小テストの件もかねて伺いました」

 

中野ちゃんが差し出してきたのは大量のプリント。例の小テストだろう。答えは既に風太郎がメールで送ってくれている。

 

「上杉君が採点は幸村君に任せておけと」

 

「いいよ。それくらいちょちょいのちょいさ」

 

少しでも家庭教師補佐として貢献せねばね。まずは一花ちゃんから……

 

 

 

 

 

「おかしいな。0点が1人につき1枚ある」

 

採点は思った以上に早く終わった。五つ子、1人につき0点が存在してしまっている。自分でも問題を解いてみたり、再確認してみたけど0点だった。

 

「………」

 

「顔背けないの中野ちゃん。他の姉妹は分からないけど、中野ちゃんのことだから俺たちがいない間でも復習はしてたんでしょ?」

 

「しました…してこの結果なんです!途中から何が何だか分からなくなって…」

 

「全問埋まってはいるんだけどねぇ……やっぱり理科以外は難しい?」

 

「はい……」

 

理科となると数学なんかと違って暗記が多いような気がする。分子記号とかの覚え方はあるし、中野ちゃんが理科が得意ってことは『覚える』こと自体が得意なはずだ。

 

「国語は漢字、数学は公式を覚えれば高得点は狙えると思うから。社会も語呂合わせがあるし、問題は英語かな…」

 

「何故日本人なのに英語を学ばなければいけないのでしょうか…」

 

「全世界で通じる言葉ってことになってるからねぇ。英語となると俺も教えれる立場じゃないからなぁ」

 

「分かりました。英語は上杉君に聞いてみます」

 

驚いたな。中野ちゃんのことだから英語の先生に聞きますなんて言うかと思ったけど…ちゃんと風太郎のことを信用し始めてるんだな。

 

「明日はこのテストの復習をしょうか」

 

「0点を見たら、上杉君怒りそうですね」

 

「0点なっちゃったもんは仕方ないよ。次の期末でこの点数取らなきゃ大丈夫だよ。切り替えていこ」

 

「はい、分かりました。明日はよろしくお願いしますね」

 

小テストを受け取って帰ろうとする中野ちゃん。だけどその足は玄関に向くことはなく、

 

「幸村君、一つ聞いてもいいですか?」

 

「ん?」

 

「あなたの勉強をする理由です。高梨さんと同じ高校に行くためだけではありませんよね」

 

「んー………期末テスト、全科目俺に勝ったら教えてあげる」

 

「ぜ、全科目……前々から思っていましたが、幸村君も上杉君みたいに意地悪な時がありますよね……分かりました!私だって成長するんです!必ずあなたに勝ってみせます!勝ったら教えてくださいよ!約束ですからね!」

 

「うん、約束だ」

 

◇ーーーーー◇

 

次の日、家庭教師補佐として中野家にお邪魔した。そこで俺が目にしたのは同じ髪型にした五つ子をジーッと見つめる風太郎だった。

 

「一応聞いとくよ。何やってんの?」

 

「コイツがいきなり同じ髪型にしろって言ってきたのよ」

 

「ちょうどいいところに来た隼人。お前にも当ててもらいたい。誰が誰なのかを!!」

 

「いきなりだな。えーっと、俺から見て右から一花ちゃん、四葉ちゃん、中野ちゃん、三玖ちゃん、二乃ちゃん」

 

「このように!何のヒントも無ければ俺たちは誰が誰か分からな、え分かったの?」

 

「いや髪の長さとかあるでしょ」

 

五つ子だけあってやっぱり顔はそっくりだ。それでも一人一人特徴があって、例えば三玖ちゃんとか他の子と比べて眠そうな目をしている。顔のパーツ以外なら髪の毛が1番分かりやすい。中野ちゃんなんか飛び出てるもん。

 

「何でいきなりこんなことしてるんだ?」

 

「これを見てくれ…いや採点したのはお前だから分かるか」

 

「ああ、昨日採点した……なんで名前部分破れてるの」

 

風太郎から渡された5枚のプリント、それは昨日俺が採点した小テストだ。国数英社理それぞれ一枚、それも0点。確かに俺なら誰が誰か分かるけど、

 

「はぁ、怒らないから名前の部分破った人手あげて」

 

「幸村さん!それ絶対怒るやつじゃないですか!」

 

「怒らない怒らない。お兄さん優しいから」

 

(初日で説教した奴が何言ってるのかしら…)

 

「この小テストは風呂上がりの奴が俺にぶん投げてきたものだ。バスタオル姿で分からなかったが犯人はこの中にいる!四葉、白状しろ」

 

「犯人はこの中にいるとか言いながら、当然のように私を疑っている!?」

 

確かに四葉ちゃんは数学が0点だった。だけど名前の部分を破るような子じゃないと思うけどなぁ。

 

「お前らの顔の判別が付けばなぁ。お前らが間違えないのが不思議でたまらない」

 

「こんな薄い顔三玖しかいないわ」「こんなうるさい顔二乃しかいない」

「うるさいってなによ!」「薄いってなに?」

 

「良いことを教えてあげます!私たちの見分け方はお母さんが昔よく言ってました。愛さえあれば自然とわかるって!」

 

「…道理で俺は分からないはずだ。逆に言えば隼人は愛があるってことか」

 

「どうも愛の伝道師ですよ。それよりテストもう少しよく見てみたら?」

 

意外とプリント1枚で個性というものはわかるものだったりする。

一花ちゃんはプリントがよれていることが多い。

逆に二乃ちゃんは丁寧にファイリングしているから四つ折りにすることはない。

三玖ちゃんは字が他の4人より綺麗だ。

四葉ちゃんは国語は得意な方だけど漢字が得意なわけじゃない。

中野ちゃんは間違えたら塗り潰したりせずに消しゴムを使う。

 

「一貫性がない……」

 

「となると?」

 

「……わからん!ややこしい顔しやがって!!」

 

「……時間も惜しいから正解を言うと「待ってくれ隼人。ここまできたら俺が犯人を突き止める。どうにもならなかったら教えてくれ」…分かったよ。りょーかいりょーかい」

 

勿体ぶるものでもないが、風太郎が自分で犯人を見つけると言うなら俺も言わない。

それにしても惜しいところまではきてるんだよな。一貫性が無いことに気がついているなら、1人ずつ0点の犯人だってのに気がつくのも遅くはないはずだ。

 

「最終手段だ!これは小テストの問題を集めた問題集。これが解けなかった奴が犯人だ」

 

「そんな無茶な!」

 

「私も分からない自信があります!」

 

「1番最後の奴を犯人とします。はいスタート」

 

まさかのゴリ押し!いや、これはこれで問題集の筆跡を見れば自ずと犯人が分かると考えているのか。流石頭の回転が早い奴だ。

 

「なんでこんなことになるのよ……」

 

「今日のフータロー、ちょっと強引」

 

「はーい、一番乗り〜」

 

「一花ちゃん早いね」

 

「私だってやれば出来るんだからね」

 

「ふむ…お前が犯人か」

 

一花ちゃんの答案用紙を受け取ってすぐに風太郎は犯人探しの答えを出した。

 

「ここ、bの書き方。1人だけ筆記体で書くことは覚えてた。俺はお前たちの顔を見分けられるほど知らないが、お前たちの文字は嫌というほど見ているからな」

 

「流石だな風太郎」

 

「やられた〜!」

 

崩れ落ちる一花ちゃん。と言っても彼女と犯人の1人なだけであって、

 

「一応私たちも終わりました」

 

「ご苦労。まずは採点を……五月の『そ』犯人と同じ書き方だ…よく見たら二乃の『門構え』、三玖の『4』、四葉の送り仮名……みんな犯人と同じ……お前ら、1人ずつ0点の犯人じゃねーか!!」

 

お見事、風太郎は正解に辿り着いた。ある意味簡単で、ある意味難しい問題。彼女たち五つ子をよく観察していたら簡単に解ける問題だったり。

そもそも考えてみたら俺と風太郎が教えているのに全教科0点なんてことはありえないんだ。彼女たちも着実にレベルアップしているのだから。

 

「まあ0点の犯人は分かったけど、名前の部分を千切って隠そうと持ちかけた犯人がまだ見つかってないんだけど、名乗り出る人はいる?」

 

「私よ。私が一花に隠してって頼んだのよ」

 

「二乃……」

 

名乗り出たのは二乃ちゃんだった。失礼だけど確かに彼女なら隠そうと提案しそうだけど、

 

「0点で怒られるのが嫌だったのよ。いっそ隠して、万が一見つかっても名前が分からなかったらバレないと思ったのよ」

 

「0点で怒るわけないでしょ。ねぇ?」

 

「俺は怒るz「怒らないってー!!それに良い点も悪い点も俺たちに見せてもらわないと、これからの方針が立てられないからね。もうやらないこと、いい?」

 

「はぁ……分かったわよ。あんたの正論説教の方が嫌ってのが改めて身に染みたわ」

 

多分二乃ちゃんは他の姉妹誰か1人が0点を取っても隠したと思う。家族想いの彼女だからこそ姉妹が怒られるのを見たくないはずだから。

 

「まったく…俺が入院した途端これか……密かにお前らの誰かと昔会ったことがあるんじゃないかと思ったが、あの子がお前らみたいなバカなわけねーしな」

 

「ば、馬鹿とはなんですか!」

 

「間違ってねーだろ五月。今日はお前らみっちり復習だからな!」

 

今日も今日とて家庭教師日和。

迫る期末試験に向けて今日も勉強開始だ。

 




次回は勤労感謝ツアーか期末試験に突入します。どっちになるかはまだ決めてません!
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