実は昔───だった
「くぅ……しんどいッ!」
今日は家庭教師補佐の日。期末試験まで残り1週間となった。俺も風太郎も中間試験のような点数は取らせまいと今回の範囲をカバーした想定問題集を作ってきた。一通りこなせば問題ないはず。
「や、やっとついた!起きろ風太郎」
「あ…ああ……」
「幸村君!?どうして階段で…上杉君はどうしたんですか!?」
「え、エレベーター、死んでる…」
「ああ…そういえば点検日でしたね」
エレベーターが使えなかったため中野家のある30階まで階段で上がってきた。それも風太郎を背負って。途中までは一緒に上がってたんだよ?途中までは!!
『無理』
『風太郎ォォ!!』
どうやら朝勉(朝まで勉強)していたらしい。無理するなって話だよまったく。
「2人揃ってあまりにも遅いのでみんなで先に始めてますよ」
「みんなやる気だね」
「こっちも家庭教師しがいがあるってもんだ。試験まであと1週間、そこで今回の試験範囲をカバーした想定問題集を用意した」
「な、なんですかこれ!?」
「これを一通りやればなんとかなりそうだよ」
「こ、この量を………上杉君これ」
「お前らだけにやらせるのもフェアじゃない。俺や隼人が手本にならないとな」
想定問題集、まさかのオール手書きだったりする。これは風太郎がプリンターもコピー機も持っていないのが原因の一つでもあるけど、さっきも言った通り自分達も解いてこそだ、という風太郎の意志の表れでもある。
俺はコンビニでコピーしようと思ったけど、自分で書いて頭で解いてるうちに人数分手書きで書いてしまった。腱鞘炎になっちゃうよ。
「ま、今回は俺たちにとってもリベンジマッチだからね」
「そうですね。今度こそ赤点を回避して高得点を取ってみせます!」
意気込みバッチリ!いざ勉強会の始まり始まり〜!
「三玖、この手をどけなさい」
「二乃こそ諦めて」
意気揚々とリビングルームに行くと二乃ちゃんと三玖ちゃんがリモコンの奪い合いをしていました。
「勉強してたんじゃないの?」
「チャンネル争いかよくだらねぇ。勉強中はテレビ消しまーす」
リモコンを奪った風太郎がテレビを消した。勉強中は消しといたほうがいいかもね。シャーペンの音だけ響くのも正直嫌だけど。
「はーい、みんな再開するよ。それじゃフータロー君、ハヤト君。これから1週間、私たちのことをよろしくお願いします」
「ああ、リベンジマッチだ」
「肩に力入れすぎない程度に頑張ろう」
◇ーーーーー◇
こうして始まった期末試験対策勉強会1日目。漢字って並ぶとカッコいいけど書けって言われたら面倒だと思う。
「全員集まるようになったのはいいが、新たな問題発生だな」
俺と風太郎は五つ子たちから少し離れたテーブル席で五つ子たちが終わらせた課題の採点を行なっている。
「あの2人のこと?」
「二乃と三玖…前から思ってたが仲悪いのか?もしこいつらがこのタイミングで仲違いしてみろ、目標達成が一気に遠のくぞ」
「お互い自分のテストのことで精一杯だからねぇ。俺も人のこと言える立場じゃないけど」
二乃ちゃんなんか多分姉妹の中で1番繊細だろうから衝突も多そうなんだよなぁ。
「どうしたら喧嘩も起きずにスムーズに事が進むと思う」
「フォフォフォ、お兄さんに任せなさい!」
【みんな仲良し作戦 by隼人】
「はっはっは、いやぁいいねぇ!」
「「!?」」
慣れてない勉強でいつもより神経質になっているはず。風太郎がいい気分に乗せてやれば喧嘩なんかも起きないはずだ。
「素晴らしい!2人ともいい感じだね。なんというか凄く良い。しっかりしてて…健康的で…良いね…うーん……偉い!」
褒めるの下手くそー!!いや風太郎がこういう奴だって俺が1番知ってるはずじゃんか。人選ミスだなこれは。
「どうしたのフータロー?」
「気持ち悪いわね」
「気持ち悪くはないから」
「本当のことを言っただけよ」
「それは言い過ぎ。取り消して」
「あれー?ってことはあんたも少しは思ったんじゃない?」
作戦失敗!!こうなったら次の作戦だ!
【第3の勢力作戦 by隼人】
「おいおい!まだそれだけしか課題終わってねーのかよ!」
あえて厳しく当たることでヘイトが風太郎に向くはず。共通の敵が現れたら2人の結束力が強まる、はず!
頑張ってる2人には申し訳ないがみんなが赤点を回避するためにはやむを得ない。
「まあ半人前のお前らは課題を終わらせるだけじゃ足りないけどな!あ、違った!半人前じゃなくて五分の一人前か!失礼なことを言ったな、訂正するよすまなかったな!!」
なんだか生き生きしてるな。
「言われずとももう終わるところよ!ほら」
「え、ああそうか……どれどれ………ん?そこテスト範囲じゃないぞ?」
「あれぇ!?やば…」
俺と風太郎の作戦が展開されている中でも勉強はしてくれていたみたいだ。範囲間違えてても知識にはなるからセーフセーフ。
「二乃、やるなら真面目にやって」
「…ッ……こんな退屈なこと真面目にやってられないわ!部屋でやるからほっといて!」
「おい!」
「二乃ちゃんちょっと待っ」
タイミング悪く電話が鳴った。確認すると電話主は佐助だった。この時間はバイトしてるんじゃないのかアイツ。
「ごめんちょっと電話」
「二乃は俺に任せろ」
二乃ちゃんを風太郎に任せて電話に出ると何やら焦った声で佐助が話し始めた。
「どうした佐助」
『兄貴ヤバいッスよ!いま真田の旦那が来てミルフィーユ食ってんすけど』
「切るぞ」
『待ってください待ってください!真田の旦那よりヤバいんスよ!兄貴、京都の近藤たち覚えてます?』
「ああ、中学の修学旅行以来か」
『近藤たち…やられたみたいなんスよ。しかもやった奴らがこっちに来てるって』
「はぁ?何が目当てで……真田か?」
『兄貴も含まれてるみたいッス…』
「マジかよ……」
この時期に聞きたくなかったなぁこういうの。だけど大人しくしてりゃ向こうも勝手に帰ってくれるだろ……
『どうしましょう兄貴…こっちから行きますか?』
「やらないっての……でもなんかあったらすぐ連絡しろ。いいな」
『りょーかいッス!』
下手したら期末試験どころじゃなくなるかもしれない。それどころか学校生活すら怪しくなるぞ……とりあえずは勉強会、あとはしばらくの間家庭教師補佐以外で彼女達にあまり関わらないほうがいいか…変に巻き込まれる可能性もなくなるだろ。
「あんなドメスティックバイオレンス肉まんオバケとは一緒にいられないわ!!」
「なっ…そんなにお邪魔なようなら私が出て行きます!」
「あっそ!勝手にすれば!」
電話を終えて戻った俺が目にしたのは喧嘩をしている五月ちゃんと二乃ちゃんだった。
「なぁにがあったのこれ……」
◇ーーーーー◇
スタートダッシュの失敗は陸上選手にとって致命傷になりかねない。
初級ホームランはピッチャーにとってモチベーション維持の低下になりかねない。
姉妹同士の喧嘩は勉強のモチベーションの低下になり、期末試験で致命傷になりかねない。
「日曜なのに呼び出してごめんフータロー、ハヤト」
「三玖!あれから何があったんだ。他の4人は」
「わざわざ俺にも連絡してくるんだから相当大変なことになったみたいだね」
昨日、俺が電話をしている間に五月ちゃんと二乃ちゃんが喧嘩をしたのは分かっている。昨日はその後お開きになってしまったのだが、
「あのあと一度収まったんだけど、2人が帰った後にまた喧嘩しちゃって。2人とも出ていっちゃった」
「2人ともかよ…」
「連絡は取れてる?」
「うん、一花と四葉が説得してくれたんだけど、お互いに意地張って先に帰ったら負けみたいになってる」
「馬鹿野郎が…でその2人はどこ行った」
「2人とも外せない用事があるって。一花は多分仕事」
「動けるのは俺たち3人か……」
昨日までは7人揃ってたのに。4人もいなくなるとこのリビングルームもかなり広く感じるなぁ。
「とりあえず、五月ちゃんは俺が探すから二乃ちゃんは2人でお願い」
「動かないことには始まらないか…」
「……電話には出ず………昨日からなら充電も切れてるか」
ひとまず行きそうな場所、図書館や学校には行ってみたが姿はなかった。それからもひたすら街を探してみたが姿はなかった。
少ししてから風太郎から二乃ちゃんがホテルに泊まってること、信繁に会わせろと言ってきたこと、そして五月ちゃんは財布を持っていないことを聞いた。
『ひとまず二乃は大丈夫だが、五月と信繁のことどうするつもりだ』
「信繁もいつかバレるだろうからな…なるべく早く謝るよ。それよりは五月ちゃんだ。一回財布受け取りに行くよ」
『分かった。とりあえず俺と三玖はマンションに戻る』
電話を切りマンションへと向かう。一文なしで一晩過ごしたとなると肉体的にも精神的にも辛いはずだ。しかもそれが喧嘩による家出なら尚更。流石に誰かの家に行ってると思いたいが……
「橋の下……いやいやそんな…」
念のため覗いてみる。ここら辺はホームレスもいないが、寝ようと思えば寝れるスペースは存在する。冬本番が近づいてるから虫なんかも少ないと思うけど…
「………あ、いた」
「………え、幸村君!?」
中野五月、確保。
デュエプレでごとよめコラボ始まってますよ!私は早くモルネクで戦略的ハートバーンしたいです。
次回は月が綺麗だと思います。