好きな食べ物はカレー(揚げ物があると更に食べる)
「終わった……」
「凄い沈み様だな。中野ちゃんと仲直り出来なかったの?」
昼食を終え午後の授業が始まる前のひと時。机に突っ伏してこの世の終わりの様な顔をしている風太郎を発見した。俺は先生からの用事で食堂には一緒に行っていないのだが、この様子だとまた何かやったのだろう。
「今度は何したの。見る痴漢ってやつ?」
「バカ言うな。そこまで落ちぶれていない……昨日の詫びを入れようと思って中野五月を探したんだ……で…」
『……またたくさん食ってる…』
「つい口に出てしまった……しかもそれを聞かれた…」
「まさか、それでまた嫌われた?」
「嫌われ……たよな…今日から家庭教師なのに空気が最悪だ!」
わざとやってるのだろうか。確かに風太郎の良いところでもあり悪いところでもあるハッキリと言う癖。今回ばかりは悪い方向に向いた様だ。昨日のが無駄になった可能性が大だ。
「で、あそこで覗いてる人と関係はあったりするの」
「え?……あー、悪目立ちリボンか。中野の友達だな」
「なんだ、もう友達出来たんだ中野ちゃん」
教室を除く1人の女の子。黄緑色のリボンをつけたオレンジっぽい髪色。見たことないような、あるような。多分他のクラスに来た転入生だろう。
「俺のテストを拾ってから何故か付いてくる」
「なにそれ。風太郎のテストはきび団子か何かかな?」
「知らねぇよ…それより次は体育だろ。そろそろ行こうぜ」
体育は更衣室で着替えてから授業を行う。そこまで行けば着いてこないと思ったのだろう。
「いつまで付いてくるの!?」
意外にもその女の子は更衣室まで付いてきた。しかも覗いてる。いやん恥ずかしいー。
「まだお礼を言われてません!落とし物を拾ってもらったら『ありがとう』です!天才なのにそんなことも分からないんですか?」
「ハハハハハッ。言われてるぞ天才上杉君」
「ったく………」
リボン少女に指摘されムッとした風太郎は紙を押しつけた。
「え?私の……」
「たまたま拾った。これで貸し借りなしだな」
「そっか!ありがとうございます!」
「お礼言っちゃったねこの子。ていうかなんでこの子のテスト持ってたの?」
「俺のテストと一緒に押し付けられた。0点のテストなんて初めて見たぜ…」
0点か。流石に俺もそこまでの点数は取ったことがない。酷い時は酷いが0点はないなぁ。
「そうだ…お前中野五月と仲いいんだろ?俺が悪かった、謝ってたってあいつに伝えてくれないか」
「ダメですよ上杉さん!そういうことは五月本人に言わないと!」
◇ーーーーー◇
「五月食い過ぎじゃない?」
「そうですか?まだ2個目ですが」
放課後。昨日の約束通りこれから風太郎の家庭教師の現場まで付いていくことになった。まあ流石に玄関までだろうし…ていうか頼んでもないオマケが来るとなると中野ちゃんも困るだろう。
そして家庭教師である風太郎本人はというと、顔出し看板に顔をはめて中野ちゃんと(風太郎曰く)中野ちゃんの友達2人を観察していた。バレないと思ってるのだろうか。
「この肉まんおばけ!男子にモテねーぞー!」
「やっ、やめてください!」
「悪くない光景だ」
「いつかお前が逮捕されないか俺は心配だ隼人」
「私だって昨日は男子生徒とランチしたんですからね!それに放課後は勉強まで教えてもらいました!」
「マジ!?だれだれ〜!一年?先輩?頭文字だけでいいから教えて〜!」
中野ちゃんと赤髪の友達の会話は終わることを知らない。というか1人いなくなってない?
「あ」「ん?あ」
とか言ってたらいつの間にか風太郎の目の前にいた。足音もなく近づくとは、忍者の類だろうか。ヘッドホンが目立つロングヘアの女の子だ。
「それ、楽しい?」
「…割と。こういうのが趣味なんだ…」
「ふぅん。女子高生を眺める趣味…予備軍…しかも2人」
「あ、お兄さんも入ってる??」
「……」
「ちょっと?無言で通報するのやめてもらってもよろしくて?あと俺も予備軍になってるの??」
「友達の中野にも言うなよ!?」
「……わかった。でも、あの子は友達じゃない」
「えー……」
そう言ってヘッドホンの子はそのまま二人と一緒に去っていった。中々ミステリアスだ。最近はヘッドホンが流行ってるのか?
「仲良く見えるんだけどな。やっぱり人付き合いって面倒くせぇ」
「人付き合いはめんどくさいものって偉い人も言ってるさきっと」
2人で3人の歩いて行った道を辿る。ここら辺はあまり来たことがないがお金持ちが住んでるイメージだ。特にあのデカいマンションなんかはまさにその象徴。靴を舐めさせられても入れるか怪しいレベルだ。いやそこまでではないか。
「おい…あそこが中野の家なのか?」
「風太郎が言ってた住所はここなんだわ。近づいただけでセレブになった気分ざますねぇ」
例のバカでかいマンションがどうやら中野ちゃんの家みたいだ。俺まで罵倒されそうな気がするが覚悟を決めてマンションへいざ突入!
「何君達、ストーカー?」
さっきの赤髪の女の子が車侵入禁止の看板に足を乗せて俺たちを通行止めしていた。
「げっ……まさかお前…」
「五月には言ってない」
風太郎が疑念の目を向けるがヘッドホンの子は言っていないみたいだ。俺もあんまり怪しむなんてことはしたくないんだけどなぁ。
「ほらほら、女の子がそんなに足上げないの」
「ストーカーが来なきゃこんな格好してないわよ。それより、五月に用があるならアタシらが聞くけど」
「お前たちじゃ話にならない。どいてくれ」
「コラ言い方。ごめんねコイツ思ったことがダムの放流みたいにドバドバ出てくるんだよ」
「ふぅん。君はともかく、アンタはしつこい。モテないっしょ。早く帰れよ」
何故か俺は大丈夫みたい!嬉しい!ていうか家の目の前まで来てるしぶっちゃけ帰ってもいいはずなんだよねぇ僕。
「まあまあ、コイツの家ここだから」
「そ、そうなんだよ!ここ僕の家なんだよ!全く失礼な人たちだ!」
「え、マジ?ごめん…」
騙して申し訳ない!同じ学校だろうしご希望なら埋め合わせするから!
それより君素直に謝ったね。結構キツい言葉投げてたけど実は優しい系かな?大丈夫?将来イケメンに騙されない?
「焼き肉定食焼き肉抜き。ダイエット中?」
「たまには別のもの食えって風太郎!!」
嘘はすぐにバレる。嘘の様なほんとの話。現に今バレた!
俺と風太郎は急いでマンションの中へと駆け込む。ここ番号入れないと入れないタイプのマンションか……
「ま、待て中野!」
風太郎がエレベーターに乗り込む中野ちゃんに声をかけるも間に合わず。エレベーターは非常にも上へと向かって行った。
「階数とか分からないのか?」
「えっと確か……30階…」
「…………階段だ!」
「うわあああっ!!!」
階段を駆け上がる俺と風太郎。30階まで駆け上がるとか正気の沙汰じゃないねぇこれ!お兄さんの足爆発しそう!
風太郎の姿はもう見えなくなってる。こうなったら俺が先に中野ちゃんに詫びを入れるしかない。少しでも穏便にことが進めば万々歳なんだけど!
「な、中野ちゃん!」
「え?幸村君!?何故あなたがここに?」
「えっと……ごめん、ちょっと待って…息が…」
最近運動してなかったな。苦しい。
「大丈夫ですか?ちょっと待っててください。すぐにお水を」
「いや、大丈夫!お兄さん体頑丈だから…これくらいじゃ死にはしないよ……」
「今にも死にそうな人のセリフではありませんよ!?」
いやぁ恥ずかしい。女の子の前で死にかけの姿を見せるとは、不覚ッ!
「お、追いついた……飛ばしすぎだ隼人!」
「な!?上杉君まで!」
「中野!…丁度よかった。昨日と昼のことで…その……わ、悪…」
風太郎も追いついたが息が続いていないのとあまり面と向かって謝った経験が無いのか目を逸らしながら喋っている。
「何ですか。用件があるなら早くしてください。これから家庭教師の先生が来てくださるので「それ、俺!」………は?」
「家庭教師……俺」
「ガーーン!!」
ガーン!って口にする子初めて見たかも。でもまあ今のところ印象最悪な風太郎が家庭教師の先生となるとそうなるよねぇ。俺が少しでもフォローしないと。
「だ、断固拒否します!」
「そうはいかない!俺だって引き下がれないんだ。昨日と昼のことは俺が全面的に悪かった。謝る」
「そんな……無理…」
「無理まで言われてるじゃないの……大丈夫中野ちゃん?ほら、風太郎は……ほら……ね?」
「フォローの言葉が見つかってないじゃないですか!よりによってこの人が私たちの家庭教師だなんて……」
「「!?」」
『私たち』?今なんかとんでもないことが聞こえたような気がする。もしかして生徒って複数人!?
俺と風太郎が精一杯思考を巡らせていると、もう一機のエレベーターが到着して、中から4人降りてきた。
「あれ?優等生くん?」
「いたー!コイツらがストーカーよ!!」
「え?上杉さんとそのお友達さん、ストーカーだったんですか?」
「ニ乃、早とちりしすぎ」
今初めて見る新顔を含めた4人。リボンの子を見たときに感じた違和感。初めて会ったのに何処かで会ったような感覚。見たことあるような無いような顔。
「まさか……君たち」
「夢だ…夢に違いない……ッ!」
「何も違いませんよ。私たち五つ子の姉妹です」
ただ風太郎に付いてきただけ。
それだけのことだったはずなのに。
俺の本能が訴えかけている。俺はとんでもない事に首を突っ込んだのかもしれないと。
次回は2話の内容に触れていきます