五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

20 / 39
中野二乃の秘密

今泊まっているホテルからコンビニまで地味に遠くて困っている。


第20話 八つのさよなら③

 

「おい…起きろ五月」

 

「うぅ……幸村君…あと五分」

 

「俺は隼人じゃない上杉だ」

 

「上杉君………えぇ!?上杉君!!!?」

 

俺の呼びかけで目を覚ました家出少女の五月は布団の上で正座をした。何が起きているのか理解できてなさそうだな。

 

「隼人からお前の面倒を見てやってくれって電話があったんだ」

 

「幸村君から?そういえば彼はどこに…」

 

「知らねぇよ。ただ分かってるのは、隼人かなりキレてたぞ。お前何やったんだ」

 

「ええ!?わ、私は何もしていませんよ!いえ、逆に何もしなかったのがダメだったのでしょうか……でも幸村君があっという間に全てやってしまいましたし…やはり少しでも家事を手伝うべきでした…」

 

まあコイツが隼人を怒らせることなんて無いだろうが……何にそんなにキレてたんだ隼人…

 

「ど、どうしましょう上杉君!私のせいで幸村君が出て行ったとしたら」

 

「自分の家なのに家主が出て行くわけないだろ…理由もなくいなくなるなんてのは隼人じゃない。何か理由があるんだろ。怒ってやるなよ」

 

◇◇◇◆◆◆

 

「いやぁごめんね。バットで殴られてからずっと視界がぼやけててね」

 

「色々聞きたいことがあるけど、とりあえず氷」

 

「ありがと〜」

 

殴られたであろう箇所に氷嚢を当てる幸村。コイツを連れてホテルに戻るの気まずかったわまったく…

 

「随分辛気臭い顔してるね。一人暮らしは快適じゃない?」

 

「死にそうな顔のあんたに言われたくないわよ……そうね、テレビは見放題だしエアコンの温度は自由自在、誰も散らかさないし自分の分だけご飯を用意したらいいから楽よ。学校までが少し遠いのがネックだけど」

 

「確かに、この辺だと40分はかかるんじゃないかな」

 

「それに目を瞑ればちょー最高よ。べ、別に寂しいからあんたを入れたとかじゃないから。休みたいって言ってたから入れただけよ」

 

「でも助かったよ〜ごめんね、学校休ませちゃ……あ、俺も連絡しないと」

 

「あんたの分もついでに連絡したわよ」

 

「いや、俺の後輩の分。俺が連絡するって言っちゃったからさ」

 

こんな時まで他人の心配なんて…いっつも自分のこと後回しにしてないかしらコイツ。どうしてそこまでするのかしら。

 

「あーい、お願いしまーす……よし、これで一安し…二乃ちゃん顔怖いよ?」

 

「別に睨んでるわけじゃないわよ!あんたが血生臭いからさっさとシャワー浴びてほしいだけよ!」

 

「そんなに匂うかな…くっさ。シャワーかりまーす」

 

ひとまず幸村をシャワーに追いやることはできた。ここからどうするかね。このままコイツをここに置いておくか、それともさっさと家に帰ってもらうか。

 

正直帰ってほしい気持ちはあるけれど、怪我人をそのまま家に帰すのも…なんか嫌。だからってここに置いておくのもなんか嫌だし…

 

「ねー二乃ちゃん、どっちがシャンプーでどっちがトリートメント?」

 

「緑のラベルがシャンプーで、ってなんで裸で出てきてんのよ!!露出魔!!」

 

「えー?下にタオルは巻いてるけど…ってか風太郎と裸の付き合いしたんでしょ〜?」

 

「警察に連絡するわよ!」

 

「ごめんなさい」

 

まあコイツといるのは…悪い気はしないけど、なんだか居心地が悪いような良いような…どっちかと言えば悪いほうだけど。

 

「ねぇ、ここに来る前に何があったの」

 

「車に撥ねられた」

 

「さっきバットで殴られたって言ってたじゃない。ふざけないで答えて」

 

「……ちょっと喧嘩しただけだよ」

 

「バットで殴られたのをちょっととは言わないわよ。それにしてもあんた、喧嘩なんてするんだ……なんか意外」

 

「二乃ちゃんが俺のこと心配してくれてるのも意外だよ」

 

「一人は楽だけど話し相手がいなくて暇なだけよ」

 

「……じゃ、一つ昔話でもしましょうかね」

 

それから私は幸村が話すのをジッと聞いた。

 

◇ーーーーー◇

 

「俺って中学の頃って結構ヤンチャしてたんだよ。地元じゃ負け知らずってね。いろんなところに出かけては喧嘩してたよ」

 

「中学でよくそんなことして高校入れたわね…」

 

「ホントだよ。まあ勉強頑張ったからね。五月ちゃん…高梨ちゃんの方に色々教えてもらったんだよ」

 

「あの子も頭良いのね。同じ五月でも大違いだわ」

 

「高梨ちゃんとは中学2年の時に俺から告白してね。最初は断られたよ」

 

「意外と積極的なのね」

 

「恋は攻めてこそ、ってどこかで聞いたから。それでも諦めきれなくて何回か告白したんだけど、高梨ちゃんから付き合う条件を出されたんだよ。それが喧嘩しないって約束」

 

「でもあんた、確か別れてたわよね。それってつまり」

 

「去年の夏にねぇ〜俺の後輩や風太郎も巻き込んだ喧嘩が起きてね」

 

「上杉も!?あいつ喧嘩出来るの!?」

 

「いや全然。結局俺と俺の旧友が暴れてなんとかなったんだけど……俺は約束破ったわけで」

 

「まさかそれが理由で?」

 

「そ、約束守らない奴に付き合う資格なんて無いから」

 

「約束……あんた結構律儀よね。五月とも色々約束してるんじゃないの?」

 

「そーだね。五月ちゃんとも喧嘩しないって約束した」

 

◇ーーーーー◇

 

それを聞いた瞬間、私は思わず手で口を覆った。律儀なコイツはもしかして約束を破ったから…

 

「あんたまさか…」

 

「五月ちゃんも多分1人で大丈夫だろうし、何かあっても風太郎がいるんだし「ちょっと待ちなさいよ!」

 

「あんたそれ、ちょっと勝手すぎるわよ!確かに約束を守るのは大事よ。約束を破るのはもってのほか。だからって一方的に目の前から消えるのは違うわよ!残された人のことも考えなさいよ!」

 

「二乃ちゃん……もしかして泣いてる?」

 

涙が止まらなかった。思い出して重ねてしまったのかしら。私たちを置いて先にいなくなってしまった人のことを。

仕方ないことだとしても、残された人は何で置いて行ったのと少しは感じてしまう。

 

「どうせあんたのことよ、五月に勉強を教えるって約束もしてるんでしょ!その約束まで破ったら本当に最低な男よ!約束破ったぐらいで五月は怒ったりしな………怒るときもあるけど、あの子は許してくれる。私なんかよりよっぽど物分かりがいいんだから」

 

「二乃ちゃん…」

 

「あんたみたいな律儀でめんどくさい奴でも頼りにしてる人がこの地球上に1人はいるってことよ」

 

幸村は幸村なりの覚悟を持って挑んでくれてるんだ。上杉とは多少違うとしても私たちのためを思って動いてくれてる。

 

今なら五月が言ってたことも、私にも分かる気がする。

 

「二乃ちゃんって、ホント優しいね」

 

「私は五月のことを思って、ってなんでまた裸で出てきてんのよ!!」

 

「いやバスローブとかないかなって」

 

「着てきた服を……ちょっと待ってなさい取ってくるわよ」

 

◇ーーーーー◇

 

シャワーを浴び終えた幸村はバスローブ姿でくつろいでいる。着ていた服は洗濯に出した。夜にはびちょびちょでも着て帰ってもらうわ。

 

「ルームサービス呼ぶけど何かいる?」

 

「じゃあ飲み物貰っちゃおうかな」

 

「はーい、じゃあこっちで勝手に選んじゃうわねって何普通にくつろいでるのよ!」

 

「正座しといた方がよかった?」

 

「それはそれで居心地悪くなるわよ!」

 

図々しいというか、さっきの今でマイペースすぎるのよコイツは。掴みどころがないというか…まあでもコイツの秘密を知れたのはなんだか得した気分だわ。これで五月にマウントでも取ってやろうかしら。

 

「……なんで五月のことばっかり」

 

「…そりゃあ、二乃ちゃんが五月ちゃんのこと大事に思ってるからでしょ?そろそろ仲直りしてくれた方が風太郎も期末試験対策に専念できると思うんだけど」

 

「あいつの作ったプリントを破ったのは悪いと思ってるわよ…」

 

「そんなことしたのね…その調子で五月ちゃんにも謝ろう。俺も謝るから」

 

「昔は人を叩いたりする子じゃなかったわ。まるで知らない子になったみたい……そうよあんたと関わってから変わったのよ!五月を返しなさーい!」

 

「痛い痛い、傷口に普通に大ダメージだから」

 

「あ、ごめん…てかおでこの傷に絆創膏貼り忘れてるわね」

 

シャワー終わりに手持ちの絆創膏を駆使して傷の手当てをしたけど、傷が多くなくて良かったわ。上半身の手当てはなんだか緊張したけど……

 

「随分可愛らしい絆創膏なことで」

 

「普通の絆創膏が無くなってるのよ。全部それにしなかっただけありがたいと思ってちょうだい」

 

「はーい。ありがとね」

 

はあ、服が乾くまでどうしたらいいのかしら……

 

「そうだ、二乃ちゃんが良かったら勉強教えようか?」

 

「お断り……って言ってもやることないし、いいわよ」

 

「……わぁお」

 

「何よその顔!」

 

「いや、なんでもないよ。頑張ろうか」

 

こうしてワンツーマンの勉強が始まった。幸村が教えてくれるたびに怪我した手が気になったけど、途中からそんなことは気にならなくなった。

 

途中から、こんな雰囲気も悪くないって思ってしまっていた。

 

◆◆◆◇◇◇

 

次の日、学校に来た俺は教室に入るところで立ち止まってしまった。うぅ…気まずい。

 

昨日は結局夜まで二乃ちゃんのところにお邪魔して家に帰った時には五月ちゃんは風太郎の家に泊まっていた。風太郎に頼んだのは俺だから別に問題はないんだけど。

 

『女の子を1人残していなくなるなんて、最低です。幻滅しました』

 

「いや落ち着け。こんなこと言われるはずないよ多分…うん大丈夫大丈夫」

 

「幸村君?」

 

「はい幸村ですよっどわっふぅ!?」

 

「な、なんですかもうビックリしましたよ!」

 

声をかけてきたのは例の五月ちゃん。見た感じあんまり怒ってなさそうだけど…いや顔だけで判断はよくないな。

 

「き、昨日…一昨日か?とにかくごめん!勝手にいなくなっちゃって」

 

「一昨日…ああ、夜中のうちにいなくなっていたことですね。私もビックリしたんですからね?」

 

「ごめんなさい……」

 

「朝上杉君がいたのもビックリしましたが、上杉君が『隼人は理由も無しに出て行く奴じゃないから、怒ってやるな』と言っていました。上杉君に言われなくても怒るつもりなどありませんでしたが」

 

「五月ちゃん…」

 

「だって幸村君、理由がない事はしないじゃないですか。それくらいは幸村君のことを分かってるつもりですよ」

 

今俺はとてつもなく泣きそうである。五月ちゃんは俺のことを信頼してくれている。なのに俺は約束を破って、しかも彼女の前からいなくなろうとした。

『勉強を教えてほしい』と頼んできた彼女の気持ちを完全に踏み躙るところだった。

 

「さ、今日も勉強頑張りましょうね」

 

「うん、頑張ろうか」

 

◇ーーーーー◇

 

「そんなことが…よくそれだけの傷ですんだな」

 

「日頃の行いが良かったのかもね〜」

 

「関係ないだろ」

 

風太郎と情報共有で一昨日の一件を伝える。俺が狙われた以上風太郎も狙われないとは限らないからな。あの後泣きながら消えてったから地元に帰ったと思いたいけど。

 

「そっちも大変そうだね。よりによって陸上部か」

 

「ああ。お前からなんとか言えないか?」

 

「高校は1年から真面目に過ごそうと思った俺がすぐに辞めた部活だぞ?アイツとは相性最悪だよ」

 

「どうしたものか……とにかく目の前の障害から片付けるとしよう。まずは二乃と五月を仲直りさせる」

 

「出来るの?」

 

「俺に任せろ。これでもあいつらのパートナーだからな」

 

頼もしい言葉が風太郎から出たが、

 

 

 

 

 

『頼みを聞いてくれるか、ノブくん』

 

「……あいよ」

 

すぐに俺が出張ることになった。

 

 

期末試験まであと3日と迫った夜の出来事だった。

 




デュエプレで五月のスキン分課金してパックを引いたら、二乃1枚、五月3枚の結果でした。デイガ超次元組みました。

次回は信繁と二乃の話です。五月の出番が少なくて苦しんでいます。助けてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。